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第292話 闇の獣人、お茶会に行って火の粉を振り払う

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 俺が進化させる為の肉棒×10、血液×10、尻尾×10、牙×10、精液×10や七大精霊石とそれぞれ統合したものを装備品に添えて(もちろんダイヤモンドなどの最低限必要なものは全部添えてある)進化させたものだから俺が発狂して襲い掛かるんじゃないかと危惧していたアルロン達は、アナントスの説得でどうにか俺の質問に答えてくれることができた。

 「うーむ。戦いがあるわけでもないのに完全武装で行くのは…ご主人様が生粋の騎士であるのなら、それが正装といえば通りますが…世間で、しかも3国で公認の聖人様が武装していくのは、違和感がありますな」

 と、ロンドウェルが顎に手を当てて地面を見ながら思案する。

 「やはり少し前までの恰好であるマント、ブーツ、額飾りだけの装備品で行かれた方がいいのではないかと思います。その、覇王竜の初期型シリーズと言われる装備品が入っていた宝箱の中にあった白い服を着ていけば、十分に聖人らしく見えますから」

 と、元は騎士かその関係者だったアルロンが言ってくれた。

 そんな訳で、俺は以前から装備していた覇王竜の額飾り、マント、ブーツ、指輪を装備している。進化させた剣は指輪の中に収納してある。

 もちろんその下は統合化して+10になったランニングシャツとパンツ。その上には上級の宿屋の従業員が着ているような上質の襟付きの純白のシャツに、白い長ズボンと白ずくめだ。

 アナントスはお茶会に招待されていないので、またコア・ブランチの球体の下でブツブツと文句を言っているが、今回は留守番だ。

 「儂がいない間に婚約者殿に何かあったらどうするんじゃい!」

 と、文句を言っていたが馬鹿親父とフェランさんが招待状を読ませて、招待されたのが俺だけだということで特に俺に対する危害は加えられないだろうということで、お留守番をすることになったのだ。

 俺は早速王都の王城リリウェルへとそのまま時間停止をかけたまま歩いていった。

 門の前で俺は闇の中の空間から招待状を出して、門番の近くまで行ってから時間停止を解除した。

 それからゆっくりと門番のいる所まで歩いていってから、招待状を出した。

 彼は俺の顔を知っているのか、ぎょっとした顔をして俺と招待状を3回ほど交互に見つめていたが短く「失礼します。本物かどうかを確認するのも私どもの仕事ですので」

 と、言いながら大慌てで封筒から手紙を出して血走った眼で読んでいく。目すごい速さでが右から左へと動いていく。

 そんな速さで本当に読めているのか? ちゃんと頭の中に入っているのか? と心配になったが、おそらく速読術の訓練でも受けているのだろう。

 もしくは速読できるマジックアイテムでも装備しているのか。暇つぶしに魔力感知を門番にかけると、体の各所が光って反応していたからな。

 いつのまにか俺の周囲には4人ほどの衛兵が集まっており、遠巻きではあるがいつでも腰にある剣を抜けるような警戒心バリバリの雰囲気を全員が纏っていた。

 そんなに警戒心出さなくてもそっちから攻撃してこない限りは何もしてこないってば。

 もっとも…俺に危害を加えようとしたら、俺の尻尾が光って唸る! なんてことはしないけど、今はズボンの中だからな。

 これが不便なんだよな。お茶会終わったら、獣人専用の下着とか服とか作らないと駄目だな。尻尾の出し入れが不便で仕方ない。

 最低でもこの清浄作用のある+10タイプの白い服の上下、下着の上下とかは無料配布しておかないとな。

 それとあの後、パンツを作った後でパンツのコピーをヒョドリンに食わせて作ってみた時、大量のパンツを闇の中の空間に収納していた時、ふとシーツとかバスタオルとか作れないかと思って、服の神に頼んでみたら本当にシーツとかバスタオルとか作れました。

 もちろんシーツやバスタオルもヒョドリンに食わせて増やしまくりましたとも。時間停止かけていなかったら、タオル、バスタオル、シーツとか増やすのでまる一日使っていたかもしれない。

 それだけ大量に増やしたけど、ヒョドリンも忙しかっただろうに気にするなぁあああああ! と元気一杯にうるさく返事してくれました。

 そのシーツとかお姫様にあげようと思っている。

 と、まあそんな事を考えていると招待状を検分していた兵士が顔を上げて、封筒に招待状を戻すと、そのまま俺に敬礼して、詰め所にいる緊張した顔の同僚の兵士に手を挙げた。

 するとそれが開門の合図だったのか、大きな音を立てて城門が開かれていった。

 そして俺の周囲を囲んでいる兵士の内、二人が俺に敬礼して「案内しますので我々の後に付いてきてください。王女殿下のおられる離宮は少し入り組んでおりますので、どうかお気をつけてくださいませ」

 と、汗を額に浮かべながらもぎこちない笑顔を浮かべて、歩道を歩き始めた。

 何というか…えらく緊張しまくってんなーこの兵士達、と思って本当は腕を頭の後ろに組みながら歩きたかったんだが、とてもそんな事ができる雰囲気じゃないので、俺は無言で頷くとそのまま歩きだした二人の兵士の後に続いて歩き出した。

 王城リリウェルの敷地内はそれは見事なものだった。噴水や庭園といった城にお決まりのものがあるのだが、どれも豪華なものではなくて花とかもゴテゴテと色彩豊かな花を植えたのではなく、見る者が癒されるようにと王が命じたのか、薔薇園は一つだけで他の庭園はエルモーラ王国で功績を上げた武人の彫像や水晶の等身大の初代国王とその妻の像が置かれていたりと、どこぞの美術館のような感じがする。

 意外だったのが、蛇の神にして誓約の神であるアナントスの彫像が置かれている庭園があったことだ。

 そこにはこの世界で蛇が好んで食べる、蛇の好物の一つであるヘビイチゴが全長3メートルはあろうかという白い石で作られたアナントスの彫像の周囲に生えている。

 この世界では蛇も種類によっては冬眠しないで一年中過ごす種類がいる。

 そんな中で冬は食べ物が少なく、毒蛇が家の中に入ってくることも多かったそうだ。

 そこでアナントスは植物の女神アミリルス様に相談して、冬でも生える苺を作ってもらったそうだ。

 それからは冬眠しない種の蛇が家の中に入ってくることはなくなったそうだ。これはアナントス本人(?)から聞いた話だから間違いない。

 …やっぱりアナントスをダンジョンの地下131階層に置いてきてよかった。

 これで王城に俺の腕に巻き付いたアナントスを見て、彼女が分身ではなくて本体であると知ったら、あまりのうれしさや驚き、畏れ多さに卒倒する兵士や女官だらけになっていただろう。

 それはさて置き…、案内の兵士さん二人が奥にある五階建ての屋敷の門が見える所で足を止めた。

 「あの屋敷が第一王女様の住まわれる所です。帰りはあの屋敷の門の兵士に送ってもらえばいいので。それでは我々はこの辺りで…」

 「心配するな。いざとなったら転移魔法で帰る。この場所は記憶したからな。次回からは直接ここを訪れるようにするから次からの案内は、他の屋敷に行く時くらいだ。もう君達は任務を果たしたから、持ち場へ戻れ」
 
 と、尻尾を持ち上げて城門の方を示して偉そうに言う俺。ちなみにこれは幻影。本物はズボンの中だけど、穴がないのでこうして幻を出している。

 あまり幻とか使った機会がないけど、俺には全魔法使用可能のアビリティがあるから使える。大して練習していなかったけど、うまくいったようで何よりだな。

 でもこうした方が舐められなくていいんだよな。転移魔法と聞いて驚きとも不安が入り交じった顔をしている二人を尻目に俺はそのまま屋敷の門の所に歩いていった。

 屋敷の番兵はそのまま招待状を受け取って、短く「入れ」と言った。

 鍵が錠前に挿し込まれて門が開いていく。さすがに王城の敷地内に入る時の門に比べたら小さいが、それでもかなり頑丈な造りだった。

 そのまま屋敷へ歩いていく。門から屋敷まで徒歩3分といった所だろうか。

 門から住まいまで近い方が荷物とか運びやすいのに、どうして金持ちはこういう見栄を張りたがるんだろうか、と考えながら屋敷へと入っていく。

 幸いなことに扉には鍵がかかっていなかったので、そのまま扉を開けて入っていく。

 だが中には誰もいない。人払いでもしているんだろうか、と首を傾げながら廊下を一人で進んでいく。

 だが階段の近くまで来た時に、招待状を見た時に嫌な予感がしたのは正解だったと思い知らされた。

 そこには騎士二人と侍従の青年と少年。あとメイド四人が立っており、全員ナイフとか獲物をそれぞれ持っていたのだから。

 「俺、招待されてきたんだけど。あんたら王女様から俺の事聞いていないわけ?」

 と、招待状を右手でヒラヒラと振りながら半眼で連中を見る俺。何というか連中から出ている波動は、殺気にしては中途半端だし、闘気にしては弱すぎる。

 おまけに見ただけでわかる。こいつら雑魚の集団だということが…。

 面倒なので眼力を使って全員を「性的絶頂(別名・エクスタシー)」にかけて、すごく気持ちよくさせてやる。

 当然ながら男達は股間を抑えて悶絶し、女達も股に手を当てながら倒れている。

 射精とかしているようだから、魔法浸透をかけてからピュリファイで連中の愛液や精液を消してから、再度、性的絶頂をかけてやる。

 そしてまた魔法浸透をかけてからピュリファイ。これを10回ほど繰り返すと、いくら性的絶頂をかけても反応しなくなった。

 完全に気絶しているようで、俺は分身を魔法で創ってから、俺に永遠に恋をする首輪を渡して、連中の首につけては外すようにと命じた。

 まずそんな事はないと思うが、気絶した振りとかしていないとも限らないからだ。

 こうして邪魔な連中に首輪をつけては外していき(この首輪は一度付けると外しても効果が続く)、霊魂解析で連中の住んでいる離れに寝泊りしているとわかって、その館に自在門を開いて放り込んでやった。

 もちろんそのまま放り投げると怪我するから、念動のアビリティで門の向こう側に移動してやる。

 分身にやらせてもよかったのだが、それだと連中が気絶した振りをしていて、襲い掛かってきたら分身の場合だと手加減しても軽くても骨折、下手すると一生、手足に障害が残るかもしれない。
 
 そんな訳で全員をこの屋敷から遠ざけると、俺は分身を消してから一度玄関に戻った。

 もしかしたら連中が目を覚ましてここに戻ってくるかもしれない。あいつらなら合鍵くらいもっているだろうからな。

 それではまずいのでエンペラースライムのエペランを召喚して、眷属のスタン・スライムを呼び出してもらって扉に張り付いてもらい、玄関一杯にスタン・スライムを配置して山盛り状態にした。

 これであいつらが合鍵を使ってドアを開けたら、麻痺効果の粘液を出す、スタン・スライムの餌食になるというわけだな。

 それからこの屋敷の裏口を探してみたらすぐに見つかったので、そっちにもスタン・スライムを配置してもらった後で、エペランにはまたダンジョンの地下131階層に戻ってもらった。

 そうして屋敷内を探知してみたら、五階に一人いるだけでたぶんこの人が王女様だろう。

 他の階には人はいない。動物、アンデッド、妖精、精霊などの反応もなし。

 こうして俺は質実剛健な屋敷の五階へと向かうべく、階段をゆっくりと上っていった。


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