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第267話 闇の獣人、態度変えない勇者にイラついて大惨事を起こして顔面蒼白になる

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 聖剣を俺の眼前に突き付けるアレランに、俺は時空魔法で転移して、彼の背後に瞬間移動した。

 それと同時においしい料理を闇の中の空間から出して彼の足元に念動のアビリティで移動させてみた。

 だがアレランはおいしい料理とか見て、興味はもったものの…10秒ほどで、また俺の方に向き直って睨んでいる状態に戻ってしまった。

 やっぱり餌付けはアンデッドには難しいようだな。こいつの好きな食べ物とかあればいんだけど、どうも聖剣に憑りついているようなので、うかつには霊魂解析はできない。

 同様に、敵対しているわけでもないのに覇王竜の叡智も使えない。

 万が一、アレランに気づかれたりしたら…今よりもっとややこしい事態になりかねないからだ。

 しかし幽霊って思っていたよりも厄介だな…。肉体もっているわけじゃないから、料理とか興味ないみたいだし。

 それなら聴覚に訴えて素敵な演奏を…って無理だわ。俺がやったらダメージ与えるだけだし。かえってアレランを怒らせてしまう。

 なら最後の手段で快楽責め、ということになるが…。一時的に実体化させているだけだから、アレランの方で実体化とか解除されたら、と思うとなあ。

 第一、アンデッド相手に性的行為とかできるんだろうか?

 いや、できたとしてもドラフォールさんやヒョドリンから顰蹙とか買いそうだな。

 と、なると…。ここはやっぱり実力差をわからせるしかないか?

 つまり戦って、力で屈服させる方法だな。こちとら伊達にほとんど毎日のように苦くてまずい限界突破ポーションを飲んでいないし、タラミレーナの送りだしたアダマンタイトのゴーレム800体を素手で殴って壊しているわけじゃないんだからな。

 こうして考えている間にも、アレランは聖剣を振って俺を斬ろうとしているが、こちらも死ぬわけにはいかないので、ひたすら回避に専念している。

 アレランの剣は実に避けやすい。何というか太刀筋がまっすぐで、予測しやすいんだよな。

 剣士だったらもっと変則的な剣の振り方とかするんだろうけど、アレランの場合は絵にかいたような、それこそ型通りのものでしかない。

 あまりにも単調でまっすぐすぎるその剣筋は、目をつぶっていても避けることができるくらいだった。

 それにこの聖剣、試しに腕に受けてみたが…痛みは感じても服が切れるほどじゃなかった。

 これは俺の纏うエネルギーが強くなっているからだ。

 さすがに聖剣を使った特殊攻撃とかはしてこないのが安心すると同時にガッカリもした。

 それも無理はないだろう。相手はすでに死んでいるのだから。

 これで剣風とかで俺を吹き飛ばしたり、聖剣に魔力を込めてさらに切れ味倍増とかはできるだろう。

 なのに何故やらないのかというと…。答えは簡単。霊体で特殊攻撃とか魔法を使うと、それだけ霊体のもつエネルギーが少なくなるからだ。

 俺の場合は覇王竜シリーズで身を固めている上に、いろんなアビリティを吸収している上に、魔力回復系のアビリティのおかげで、大抵の魔法は連発しても大丈夫だ。
 
 だが肉体をもっていないアレランにとっては、魔力回復系のポーションとか飲んだり、魔力回復系のアイテムを装備しないと回復しないのだ。

 これが霊体の弱点だな。それに肉体がないから、誰かに魔法攻撃されたら、回避しないでまともに受けたら、霊体が消滅する可能性も十分にある。

 逆に霊体だと肉体ではないので、疲れ知らずということになる。

 このままじゃキリがないので、いっそこいつのもっている聖剣を取り上げることにした。

 隙を見て聖剣を取り上げようとしたんだが、これも上手くいかない。

 そこで呪術師達から教わった「真剣白刃取り」とかいうのをやってみた。

 これは両手で剣の刃を挟み取るという技だが、俺なら片手で、それも二本の指で同じことができる。

 アレランは聖剣の刃を二本の指で挟み取られて動けないでいた。

 必死になっているが、どうにもならないようだったので、俺も少し気合を入れてアレランを投げ飛ばそうとしたがそこで事故が発生した。

 何をやっても聖剣を俺が先端の刃を指で挟んでいるので、電撃を聖剣にかけたのだ。

 これだと聖剣を接触している俺にも電撃の効果が及ぶ。結構本気で魔法を使ったようで、思わず手を離してしまったのがまずかった。

 そのまま電撃をまとった刃を俺に振り下ろしてきたが、さすがに俺も予想外の魔法の使用に焦っていたのか。
 
 こっちもアレランの事を忘れて、無意識の内に両手に闇の魔力を込めて、聖剣ごとアレランを殴って吹き飛ばしてしまった。

 「あっ…。しまった」

 起き上がったアレランと俺が視たもの…。

 それは俺の闇魔法を両手にかけた状態で殴られたせいか、見事なまでに真っ二つに折れた聖剣が床の上に転がっていた。

 「うわぁああああああああああああ!!!」

 無残な姿に変わり果ててしまった聖剣の残骸へと這って進んで手にしたアレランの悲痛な叫び声が、俺の耳に突き刺さった。

 その…ごめん。頑張って修理するから許してくれ…。
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