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第265話 闇の獣人、勇者アレランについてアナントス達と話してみる

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 三日眠るといっても、俺にとってはあっという間だった。まあ時間停止空間の中で寝ているから、現実には一秒も経っていないんだから、何か月も寝てもいいんだけど、さすがにそこまでやるほどのダメージは受けていない。

 目覚めたのは当然ながら地下131階層の塔の五階の内部に建てられた城だ。

 うん。時空の大精霊達が空間拡張しているせいで、どういうわけか俺がコア・ブランチの主人にいつのまにかなっている=このダンジョンの管理者というか主というポジションになっているようで、それなら城に住まないと駄目ってことになって、城塞を作るアビリティをちょっとだけ使って建ててみたんだよな。

 普通なら数万~数十万の住人が住める都市としての住宅とか家屋とか、いろんな建築物がまるごと作られるんだけど、俺の城の場合は城塞の本体だけ。

 それでもかなりでかい。俺が目覚めたのは当然ながらその城の中にある自室。

 だが部屋の隅を見ると(とはいっても空間拡張されていて相当広くて異世界にある東○ドームが入るくらいの広さだと呪術師の連中は言っていた)、アルロン、ロンドウェルの寝ているベッドが並べられていた。

 そういえばこいつらも時間停止の中で動けるようにしたんだっけか。

 で、俺が寝ているのなら特にすることもないので俺に付き合う形で寝ることにしたらしい。

 俺が起き上がったと同時に、アナントスがベッドの隣の枕から這ってきて俺の腕に巻き付いた。

 「よく寝ていたようじゃの。しかし婚約者殿が甘いものが苦手だったとはのう。儂は甘い物は好きなんじゃが、付き合わせてしまってすまなかったのう」

 「実はさ。勇者アレランについてなんだけど…。エルモーラ王国で大体やる事はやったから、次は帝国に行かないといけないんだけどさ。

 王都、いや帝国だから帝都か。その帝都って下級から中級の魔物とかいるんだろ?

 連中が大人しく俺の浄化と癒しを実行させるわけないと思うからさ。勇者アレランならアンデッドだから、先に行ってあの連中を始末してくれないかと考えているんだよ」
 
 そう言いながら俺は帝都モリーシャスが見えるように自在門を開いてみた。

 これ、最近になってわかったんだけど…。自在門って開いたらそのまま向こう側の映像が見えるだけで、こっちから話しかけてもよほど勘の鋭い人間以外は気づかないものらしい。

 そりゃあそうだよな。でなきゃ監視なんかに使えないし。

 もっともこちらから物を門の向こう側に投げ入れたり、攻撃魔法を放って門の向こう側が例えば砦だったら、ダメージを与えることができる。

 それでわかったことだが、俺が異世界から召喚されたり、この世界のあちこちに封印されていた強力な魔物の対策の為に二重の結界を世界中の街や村などに張り巡らせたんだが、それで帝都に潜んでいた邪神の眷属というか、魔物たちは、結界の外に転移魔法を使うか、下水道を伝わない限りは出られなくなった。

 もっとも今ではアミリルス様のくれた薔薇の入った水晶玉で創造した、汚水浄化の木があるし、ネズミの神、ラトマウリーの信者が目を光らせているから、二重の結界を貼った直後ならともかく、今では下水道を伝って出入りするのもほぼ不可能だ。

 そんな事したらラトマウリーの眷属のネズミたちや、信者のネズミの獣人に見つかるからな。

 ラトマウリーから聞いた話だと、魔物にとっては(種類によるけど)不潔な場所とか、嫌な匂いのする場所がいいらしい。瘴気とか発している魔物も多いから、悪臭漂う下水道とかに逃げても、ずっとそこで生活できるほどなんだそうだ。

 でも今では汚水浄化の木があるから、悪臭はほとんどしないし、ラトマウリーの信者の獣人達にも、俺がアビリティ付与したから、汚物とかどんどんクリーンやピュリファイとかで浄化されている。

 ちなみにこの二重の結界は、住民に対して敵意や悪意、危害を加えようとしている者をシャットアウトして侵入できないようにする効果があるので、内側から外側に転移魔法で脱出できても、帝都の外から転移魔法で内部に移動はできない。

 それはいいんだが、ざっとわかっているだけでも数十の魔物がいる。

 これが厄介なんだよな。一体や二体なら自在門を通して退治できるけど、数が多すぎる。

 いくら竜王の息吹、覇王竜の息吹、アルティメットヒール、パーフェクトヒール、ピュリファイを同時に使って不意討ちしようにも、地下に邪神がいるのはわかっているから魔法浸透はかけられない。

 つまり俺がやると確かに魔物達を浄化(連中にとっては殲滅だろうが)しても、地下にいる奴らは生き残って、帝都の住民に何かしたり、人質にとられるかもしれない。

 前はもっと多かったようだが、俺が結界を貼ると驚いて転移魔法が使える連中はみんな帝都の外に逃げたようだった。

 つまり今、残っているのは転移魔法が使えない雑魚(それでもB~Cランクの冒険者にとっては手ごわいが)の魔物しか潜伏していない。

 問題は帝都で俺が浄化や癒しをする時に、連中が黙って見ているかということだ。

 先に城塞創造のアビリティで、100万人規模の城塞都市を作って、後は住民を結界移動で連れ出すことになるがそれを魔物達が妨害するのはまず、間違いないだろう。

 だとしたらこちらから先手を打って、アレランに帝都で潜伏する魔物達を狩ってもらうというのはどうか、というのが俺の意見だ。

 それに対して、馬鹿親父のゴルンルプスと元・老人の美少女のフェランさんは難色を示した。

 彼等曰く、アンデッドは融通が利かないので、自分の思考に凝り固まっているので、こちらの提案を容易に聞き入れるとは限らない。

 むしろその可能性は低いので止めた方がいい、と言われた。

 「アンデッドは妄執というか、生前の思い…特に死ぬ直前の感情に引きずられやすいからの。アレランはもっと冷静になって戦えば、あそこまでの死傷者は出なかったのは事実。

 しかし権力の亡者と化した双子の召喚した勇者二人を相手にして戦ったのじゃからなあ。

 あの勇者二人も巻き込まれたわけじゃし。アレランも妹を失ったのじゃから逆上するのも無理はない。

 今は商人や冒険者を助けているといえば聞こえはいいが、実際には魔物退治をして怒りを紛らわせているだけじゃからの。宗教関係者が権力を持って、またあの双子のような愚かな者達が出ない為に、何人か教祖を殺しているからあいつの無念は、人が滅びるまで続くじゃろうな」

 「それならさ。アレランに帝都の住民を守ってくれって頼めばいいんじゃないかな? ついでに魔物退治できてアレランの怒りを紛らわせることができる。住民達も助かってハッピー。俺も帝都の人々を人質にとられないからハッピー。誰も損はしないから、呼び出して魔物退治してくれって頼む価値はあると思うけどな」

 と、俺が力説すると、馬鹿親父もフェランさんも、アナントスも一応は納得…はしきれないようだけど、反対する気はなくなったようだった。

 「ならば呼び出してみるかの? 婚約者殿なら十分にその才能や資格はあるからの。もっとも婚約者殿はアレランの容貌とか服装とか知らんじゃろうからの。今から映し出すからこの映像を参考にしてみるといいぞ?」

 と、アナントスが目から光線を出すと、茶髪で紫の瞳をもった少年の全体像が空中に映し出された。

 これがアレランか。何だかもっと大人かと思っていたけど、まだまだ幼い感じだな。着ている半身鎧とかがないとどこかの貴族のお坊ちゃんじゃないかと思いたくなるほど、荒事には向いていなさそうな外見だった。

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