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第258話 闇の獣人、カレーを宝物に設定することを思いつく
しおりを挟む自在門を通った俺はそのままコア・ブランチに異世界商店で購入して、ヒョドリンに食わせて増やしたカレーライスの一つを丸い球体の中に押し込んでみた。
「ふおおおおおおお!? 何ですかこれは! 何というか珍妙と言うか…。こ、これは料理…ですか!?」
「ああ。お前に料理を吸収させたら、宝箱の中に皿に乗ったカレーライスとか出せるんじゃないかと思ってな」
「料理ですかー。私、つい今しがたまで味覚があるなんて思わなかったんですよ。でもこの料理ってちょっと辛いけど、癖になりそうですね。御主人様かダンジョンでしか手に入らない物だという事なら、きっとダンジョンがにぎわうと思いますよ?」
と、コア・ブランチは色を白くしたり、紅くしたりと球体の色を忙しく変えたりしている。
どうやら興奮しているようで、それは半透明のオバサン体型の四つ目の妖精も空中を高速で飛びまくっている。
それからはスプーンやナプキンもコア・ブランチに吸収させていく。これでカレーライスだけが出て、食べる道具がなくて泣いてしまう、という事態は避けられたというわけだ。
「どうせ出すのなら、今しがた吸収させたスプーンと、ナプキンも一緒に出してくれ。人間や獣人は料理を食べるのに道具が必要だからな」
「それくらいはわかっていますよ。…はい、宝箱の中に出してみました。どうでしょうか?」
「どうでしょうかって言われても…おお、ちゃんと罠なし、鍵なしで簡単に開けられるな」
と、言いながら宝箱を開けた俺は、途端にさっき嗅いだ刺激臭を鼻に感じた。
確かにカレーライスを乗せた皿とスプーン。そしてスプーンを乗せたナプキンも一緒に入っている。
「なあコア・ブランチ。この宝箱が出るダンジョンを一つだけにする事ってできるか?
実はエルモーラ王国ってダンジョンが少ないから、いっそ王都ミリサリアから徒歩で一日の所にダンジョンへの入り口とか作って、地下50階層までのダンジョンを作ろうかと思ってな。
ただカレーライスを求めてこのダンジョンに入る奴が増えて、奪い合いになりかねないからな。
一階層辺りの広さは俺の建てた城の俺の私室の10倍ほどの広さにしてほしい。それぐらい広くしないと魔物を冒険者同士で奪い合って、殺し合うからな。それは避けたいんだが、できるか?」
「せっかちですねぇ。もちろん新規のダンジョンだけにそのカレーライスでしたっけ? を入れた宝箱を出すこともできますよ? もっともそのカレーライスの入った宝箱が出る確率は極めて低いですけどね」
「それでいいんだよ。あまり出る確率を高くすると、今度はそのカレーライス目当ての冒険者に奪われかねないからな。あと、このカレーの入った宝箱は完全にランダムで、ボスモンスターを倒さなくても得られるように設定を変えてほしい。それと宝箱の中に入れておいてある状態に限り、賞味期限は永久にしておいてくれ。
珍しい食べ物だから、家族や友達に食わせてやりたいと時間を置いてたら、中のカレーライスが腐っていたり、カビとか生えたのなら目も当てられないからな。それと地下10階層までは下級回復ポーションの材料の薬草を。
地下20~30階層では中級回復ポーションの材料の薬草。上級回復ポーションの薬草は地下50階層で生えるようにしておいてくれ。再生時間は一時間。ダンジョン内部の魔物やボスのリポップも一時間後にしておくようにな」
俺がそう言うと、半透明の四つ目の小妖精はクスリ、と笑った。
「はぁい。そのようにいたしますけど、何だか今の御主人様ってお父さんか、幼い子供達を気遣うお兄さんみたいですね♪」
意外な言葉に俺は目が点になった。何だそりゃ。俺には家族なんて王都ジェルロンドにはいなかったんだけどな。
でも言われて悪い気はしないな。でも今はダンジョンだ。とにかく一階層はやたらと広くしておかないと、カレーライス目当ての冒険者でごった返すかもしれないからな。
何しろこのカレーライスの入った宝箱は、魔物さえ倒せば出るのだ。それも階層は関係なく。
さてカレーは大分決まったから、後はダンジョンの詳細を決めるかな。トラップはもちろんなしの方向で。
後はレストスペースだが、最初は格安の宿屋とかダンジョンの各階層の出入り口に設置しようと想ったんだが、止めにした。
あまりに値段を安くしてダンジョン内に宿屋なんて置いたら、王都の宿屋とか客が来なくなって儲からなくなってしまうのが一つ。
もう一つはダンジョン内に宿屋を設置して、その値段が安かったら…絶対に外に出ないでダンジョン内にこもりっきりになってしまうから却下するしかないな、こりゃ。
それに王都の近くにダンジョンを作れば、自然に露店とかテントを売る店とかできるだろうし。
小さな村とかできるかもしれない。ダンジョンは魔物とお宝を生み出してくれるからな。
魔物を倒す実力さえあれば、その遺体を冒険者ギルドに売れば金になるし。
それにダンジョン内にも薬草とか生えるようにしておけば、外で冒険者同士で奪い合いになることが少なくなるからな。
実際に人口が増えると、薬草採取の依頼を新米の冒険者が多く受けて、街の近くの森に行って薬草を採取するんだが、森の奥には当然ながら魔物が出没する。
だから森の浅い地域が新米の冒険者でごった返すことになる。
それに薬草が生えている地域や薬草の量にも限りがあるが、ダンジョン内で数時間置きに生えるように設定してしまえばいいのだが、これも冒険者の数が増えることを考えて、1時間置きに生えるようにしておいた。
あまりに強い魔物が出ないように、三大雑魚(ゴブリン、コボルド、オーク)がメインで登場した方がいいかもしれない。その分だけ宝箱の中身もショボくなるように設定しておかないとな。
あとは10階層おきに出るボスだな。エルモーラ王国では、あまり強力な冒険者はいない。
というのもみんな隣国にして俺の故国のレナリアーラ王国の王都にあるダンジョンへ出稼ぎに行ってしまうからなんだよな。
だからこの国の王都から近い所にダンジョンを置けば、エルモーラ王国から冒険者が流出する事態がなくなるかもしれない。
もっともこの国のダンジョンは強力なモンスターは地下40~50階層にしか出ないように設定するようにしておく。
というのもあまり浅い階層で強い魔物が出ると、ダンジョンに潜ることを止めたり、やっぱりレナリアーラ王国のダンジョンの方が実入りがいいとか言って、この国にダンジョンを設置する意味がないからだ。
問題はどうやって新しいダンジョンができたかを知らせるか、だよな。
一応俺は聖人認定されているのに、ダンジョンまで作れましたなんて言ったら、どういう目で見られるかわかったもんじゃない。
やっぱりここはアレかな。昔、造られていたダンジョンの封印が解けたってことにして誤魔化すしかないかも。
後はコア・ブランチと相談して、人型の魔物を中心にして出すこと。罠やトラップはなし。
宿屋とかもなし。代わりに休憩所を一階層置きに設置。通称、レストスペース。ここでテントとかを作って、寝ることもできるが、同じ冒険者に襲われて何か盗まれないように注意しておく必要はあるな。
この新規のダンジョンは王都ミリサリアから徒歩一日の距離で。
地下10階層まではオーク、コボルド、ゴブリンの3大ザコメイン。地下20階層からは3大雑魚の上位種や変異種。
地下30階層からはゴーレムや半魚人、リザードマンといった亜人種型の魔物が出没。
地下40階層からはミノタウロス、オーガ、トロールといった大型の人型魔物が出没。
地下50階層では今までの敵が総出で来るので、複数のパーティで組まないとまず倒せない仕様。最終階層だけあって鬼畜仕様の5000体。これはスタンピード対策で冒険者の技術やレベルを上げる為と、他のパーティと組んで共に戦うことで冒険者同士の絆を高めるという狙いもある。
もちろんこの5000体は定期的に狩らなくても、スタンピードには全く関係しないように設定されている。さすがにここまで来られる冒険者パーティーは、滅多にいないからな。この数の魔物を倒せる冒険者となると世界中を探してもごく一部だし。
ま、コア・ブランチには小規模のスタンピードが起きるようにできるとのことで、冒険者が定期的にダンジョンに潜って魔物の数を減らさないと、起きるようにしておいた。ダンジョンから溢れ出る数は100体から200体くらいと、歴史上に残るスタンピード現象に比べたら少ない方だ。
こんな感じで俺は最近になってできた精液ポーション50億本と、いつか何かを付け足したりすることも考慮して、100億本分の精液をコア・ブランチの内部に転移させた。
これは時空の精霊王に頼んでやってもらった。さすがにダンジョン・クイーンを名乗るだけあって、今までのように酔っぱらうような現象は起きなかった。
後は王都ミリサリアの冒険者ギルドに行って、ミスリルの装備品とか一番大きな倉庫に匹敵するマジックバックやマジックアイテムとか渡してくるか。魔法の誓約書も…うん。万単位であるね。
でも何て説明しようか。やっぱり封印されているダンジョンがあったので、冒険者達に間引いて欲しいと言った方がいいかもな。
つい数時間前に異世界から来たダンジョン(実際には墓だったのだが、中には凶暴な魔物がいたのでダンジョン呼ばわりしてもいいと思う)を吹き飛ばしたばかりだから、この異世界ダンジョンの影響で封印が解けてしまったから、冒険者に装備とマジックアイテム上げるから、自分達で頑張ってね♪ って感じで渡した方がいいかもな。
ちなみに地下50階層の人型魔物の5000体のオンパレード。また3倍(または3分の一)にしてくれるリボンを手足に付けて運を3倍に上げていってから全員を寿命強奪と無形の刃の二つで倒すと、案の定、4230個もの宝箱が出て、そのうちの半分近くの2032個がカレーライス入りでした。
もちろん時間停止かけて、他の宝箱のお宝もゲットしました。
一応、時空の大精霊や上級精霊達に罠とか鍵を解除しておくように命じたので、カレーとか金貨入りの袋(ざっと見てみたら全部の宝箱に入っていた袋の数からして、最低でも20万枚は入っていた)とかは時間停止をかけてから5000体の遺体と一緒に闇の中の空間に放り込んでいきました。
当然ながらカレーライスの皿の下にもマジックアイテムが置かれていたんだけど、そういう宝箱ってでかいからすぐにわかるんだよな。
で、何が言いたいのかというと…カレーよりもまたマジックアイテムとか、宝箱に何個も入っていたりして、数えたり、分類する気も失せたので、持ち主に危険だけもたらす効果の呪いのアイテムとかは、魔皇神からもらったポーション瓶を飲んで、ディテクト・デンジャーアイテム(危険なアイテム探知魔法)で、まとめて床の上に置いてからは、時空、光、闇の大精霊達に総出で装備、所持、アイテムの機能発揮などができないように封印させた。
何で封印させたのかというと、何故か嫌な予感がしたからとしか言えない。強い不安というか危機感というものが胸の奥にわだかまっていて、危険なマジックアイテムの山を見ていると、それがどんどん強くなってきたので封印したってわけだ。
幸いなことに封印したら、不安感や危機感は綺麗に消えた。おそらく俺には効果はなくても、普通の冒険者には死亡するかもしれない、危険極まりないものが混じっていたんだと思う。
他のマジックアイテムは通常通りに闇の中の空間に収納。
何か疲れたので俺も王城リリウェルに用意された部屋で休むことにした。
装備やマジックアイテムを渡すのは明日にしよう。幸いなことにアルロンやロンドウェルは特に変わった所もなく眠っているので、俺も毛布を被って朝まで寝ることにした。
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