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第255話 闇の獣人、アンネリーザに賢者の石について聞いてみる
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それからはアンネリーザの家に訪問してみた。もちろん時間停止を解除して、の状態だ。
そういえば山をくりぬいたダンジョンを攻略して、吹き飛ばして…といった事をしてまだ現実時間は昼過ぎなんだよな。
ならば今から訪問すれば大丈夫だろう。俺はアナントスに頼んで、店にいる客を買い物を済ませて外に出るように頼んでおく。
「それなら外から客が寄り付かない方が、スムーズに話が進むじゃろう。わしが小娘の店の人払いの結界を店の内部と外側に展開しておこうかの」
「話の邪魔にならないようにしてくるのはいいけど、結界の効力は今日だけにしておいてくれよ? 店に客が寄り付かなくなったら、俺がアンネリーザに怒られるからな。
もともと彼女の営業する店は半ば道楽とはいえ、腕は確かで冒険者の中でも利用者はいるらしいから、雨が降っているわけでもないのに、客が全く何日も寄り付かなくなると、いくらアンネでも落ち込むだろうからな」
「わかっておるわい。…ほれ、結界を展開しておいたからの。もう2、3分待てば店内にいる客が帰るから、その時まで転移は待った方がいいぞ?」
アナントスはアンネの事を小娘呼ばわりしている。どうやら以前に混乱して俺を襲おうとした彼女にはいい印象をもっていないようだった。
確かに彼女は変人だけど、一応信者なんだからもうちょっとソフトな言い方にしろと言っているのだが、信者でなければ手加減しないで眷属の蛇に絞め殺させているわい、と一向に彼女に対する態度を改めないのだから困ったもんだ。
そして俺が記憶にあるアンネリーザの部屋の前に時空魔法で転移してから、透視の魔法を使ってみたが、誰もいなかった。
おかしいと思って二階をくまなく探してみたが、いない。変だな? また地下で何かやっているのかと思って下を透視のアビリティで探して見ると、いろんな壁にかけられた装身具の整理をしているようだった。
俺が階段を下りていくと、ぎょっとした顔をした後で俺を睨んできた。
すぐにアナントスが白い蛇体を起こしてアンネを威嚇する。
「ちょっと~。転移魔法を使ってくるのなら、事前に連絡とかしてくれてもいいんじゃないかしら~? それに今はお店の営業中なんだから、お店が閉まっている時間帯に来てちょうだいよ~」
「ふん。小娘がいっちょまえの口を叩くでないわ。大体お前のことじゃから、閉店後にわしの婚約者殿が出向いた所で店を閉めてリラックスしている時に来るな、とでも言いそうじゃろうが。
あいにくもう今日は客は来ないぞ? 人払いの結界を張っておいたから、今日はもうこの店を利用する者はいない。わかったら儂の婚約者殿の質問に答えんかい」
と、紅い舌をチロチロと口の中に出し入れしながら、アンネを睨むアナントス。
自分の崇める神に威嚇されて、さすがに図太いアンネもひっ、と息を呑んで三歩ほど後退した。
「あー。悪いけど質問したい事があったから来たんだ。まだ夜になっていないから、訪問しても大丈夫かと思ってな。もちろん報酬は払う。今日、客が来れなくしたのは悪いと思ってる。本当にすまない。
お詫びとして金貨1000枚でどうだ? これだけあれば大丈夫だと思うが」
「金貨1000枚って…どうやらかなり重要な質問があるようね~? ま、普通は金貨200~300枚くらいが相場なんだけど~。とにかく何を質問したいのかを聞かないと、その袋に入ったお金は受け取れないわね~」
と、腕組をして虚勢を張るアンネリーザ。やっぱり蛇の神アナントスに腰が引けている。
そりゃそうだろうな。ここにいるアナントスは分身でもないし、眷属の蛇に魂の一部を分け与えたものじゃないんだから。蛇の神にして誓約を司る神、本体が来ているのだから、アナントスに会うのは二回目とはいえ、腰を抜かして座り込まないだけ肝が据わっているな。
「それじゃ二階へ移動しようか。ここで話を聞かれるとまずいからな。質問というのは錬金術で生み出される、最重要アイテムの一つについてなんだ。その劣化版を俺は今日、手にすることができた」
真面目な顔で言う俺に、アンネも真顔になって即座にカウンターに走ると、また調合中なので臨時閉店しますと書かれた札を外に出てドアに付けたようだった。
「これで大丈夫よ~。それじゃ二階に行きましょうか~」
笑っているがその笑みはどこかぎこちない。俺は早足で階段を上って行くアンネの後に付いていく。
二階のアンネの部屋についた俺は賢者の石の劣化版を三つ出して、火を石に変えて、真水を水晶に変えて、その水晶を完全な球状にしてみせた。
事前に三つの赤、青、緑の石について説明したにも関わらず、アンネリーザは唖然、呆然とした顔で椅子に座ったまま動こうとしない。
「というわけでな、劣化版とはいえこれらは異世界の賢者の石と言えるらしい。最近、異世界からいろんな化け物が召喚されているってのは、以前話したと思うが、今度はダンジョンごと転移してきてな。
正確にはダンジョンじゃなくて巨大な墓場だったようなんだけどな。その時に手に入れたのがこの三つの石なんだけど…ってアンネ? 聞いているか?」
「あー…こりゃ駄目じゃな。婚約者殿。この小娘、目を開けたまま気絶しとるぞ?」
「あ、本当だ。話をしたんじゃ信じてくれないから実演したんだけど、逆効果だったか? とにかく起こした方がいいよな。おーい、アンネ。アンネリーザ。戻ってこーい」
なるべく優しく起こすべく、彼女の左側に回って、アナントスの指摘通りに目を開けたまま気絶している彼女に語り掛けるのだが、アンネは一向に目を覚ますことはなかったので、優しく起こすにはどうしたらいいのかを俺は考えなければいけなかった。
そういえば山をくりぬいたダンジョンを攻略して、吹き飛ばして…といった事をしてまだ現実時間は昼過ぎなんだよな。
ならば今から訪問すれば大丈夫だろう。俺はアナントスに頼んで、店にいる客を買い物を済ませて外に出るように頼んでおく。
「それなら外から客が寄り付かない方が、スムーズに話が進むじゃろう。わしが小娘の店の人払いの結界を店の内部と外側に展開しておこうかの」
「話の邪魔にならないようにしてくるのはいいけど、結界の効力は今日だけにしておいてくれよ? 店に客が寄り付かなくなったら、俺がアンネリーザに怒られるからな。
もともと彼女の営業する店は半ば道楽とはいえ、腕は確かで冒険者の中でも利用者はいるらしいから、雨が降っているわけでもないのに、客が全く何日も寄り付かなくなると、いくらアンネでも落ち込むだろうからな」
「わかっておるわい。…ほれ、結界を展開しておいたからの。もう2、3分待てば店内にいる客が帰るから、その時まで転移は待った方がいいぞ?」
アナントスはアンネの事を小娘呼ばわりしている。どうやら以前に混乱して俺を襲おうとした彼女にはいい印象をもっていないようだった。
確かに彼女は変人だけど、一応信者なんだからもうちょっとソフトな言い方にしろと言っているのだが、信者でなければ手加減しないで眷属の蛇に絞め殺させているわい、と一向に彼女に対する態度を改めないのだから困ったもんだ。
そして俺が記憶にあるアンネリーザの部屋の前に時空魔法で転移してから、透視の魔法を使ってみたが、誰もいなかった。
おかしいと思って二階をくまなく探してみたが、いない。変だな? また地下で何かやっているのかと思って下を透視のアビリティで探して見ると、いろんな壁にかけられた装身具の整理をしているようだった。
俺が階段を下りていくと、ぎょっとした顔をした後で俺を睨んできた。
すぐにアナントスが白い蛇体を起こしてアンネを威嚇する。
「ちょっと~。転移魔法を使ってくるのなら、事前に連絡とかしてくれてもいいんじゃないかしら~? それに今はお店の営業中なんだから、お店が閉まっている時間帯に来てちょうだいよ~」
「ふん。小娘がいっちょまえの口を叩くでないわ。大体お前のことじゃから、閉店後にわしの婚約者殿が出向いた所で店を閉めてリラックスしている時に来るな、とでも言いそうじゃろうが。
あいにくもう今日は客は来ないぞ? 人払いの結界を張っておいたから、今日はもうこの店を利用する者はいない。わかったら儂の婚約者殿の質問に答えんかい」
と、紅い舌をチロチロと口の中に出し入れしながら、アンネを睨むアナントス。
自分の崇める神に威嚇されて、さすがに図太いアンネもひっ、と息を呑んで三歩ほど後退した。
「あー。悪いけど質問したい事があったから来たんだ。まだ夜になっていないから、訪問しても大丈夫かと思ってな。もちろん報酬は払う。今日、客が来れなくしたのは悪いと思ってる。本当にすまない。
お詫びとして金貨1000枚でどうだ? これだけあれば大丈夫だと思うが」
「金貨1000枚って…どうやらかなり重要な質問があるようね~? ま、普通は金貨200~300枚くらいが相場なんだけど~。とにかく何を質問したいのかを聞かないと、その袋に入ったお金は受け取れないわね~」
と、腕組をして虚勢を張るアンネリーザ。やっぱり蛇の神アナントスに腰が引けている。
そりゃそうだろうな。ここにいるアナントスは分身でもないし、眷属の蛇に魂の一部を分け与えたものじゃないんだから。蛇の神にして誓約を司る神、本体が来ているのだから、アナントスに会うのは二回目とはいえ、腰を抜かして座り込まないだけ肝が据わっているな。
「それじゃ二階へ移動しようか。ここで話を聞かれるとまずいからな。質問というのは錬金術で生み出される、最重要アイテムの一つについてなんだ。その劣化版を俺は今日、手にすることができた」
真面目な顔で言う俺に、アンネも真顔になって即座にカウンターに走ると、また調合中なので臨時閉店しますと書かれた札を外に出てドアに付けたようだった。
「これで大丈夫よ~。それじゃ二階に行きましょうか~」
笑っているがその笑みはどこかぎこちない。俺は早足で階段を上って行くアンネの後に付いていく。
二階のアンネの部屋についた俺は賢者の石の劣化版を三つ出して、火を石に変えて、真水を水晶に変えて、その水晶を完全な球状にしてみせた。
事前に三つの赤、青、緑の石について説明したにも関わらず、アンネリーザは唖然、呆然とした顔で椅子に座ったまま動こうとしない。
「というわけでな、劣化版とはいえこれらは異世界の賢者の石と言えるらしい。最近、異世界からいろんな化け物が召喚されているってのは、以前話したと思うが、今度はダンジョンごと転移してきてな。
正確にはダンジョンじゃなくて巨大な墓場だったようなんだけどな。その時に手に入れたのがこの三つの石なんだけど…ってアンネ? 聞いているか?」
「あー…こりゃ駄目じゃな。婚約者殿。この小娘、目を開けたまま気絶しとるぞ?」
「あ、本当だ。話をしたんじゃ信じてくれないから実演したんだけど、逆効果だったか? とにかく起こした方がいいよな。おーい、アンネ。アンネリーザ。戻ってこーい」
なるべく優しく起こすべく、彼女の左側に回って、アナントスの指摘通りに目を開けたまま気絶している彼女に語り掛けるのだが、アンネは一向に目を覚ますことはなかったので、優しく起こすにはどうしたらいいのかを俺は考えなければいけなかった。
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