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第241話 闇の獣人、ミスリル鉱石や装備などをドワーフ王に献上する

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 北東のダンジョンから戻った俺は、潜った時から6時間ほど経って、午後3時頃になっていたのもあり、ゴルガン王は城に戻っていた。アルロン達は軍の宿舎に戻ってそこで待機しているようだった。うん、確実だな。

 そこで城に行くと、衛兵達が敬礼して一人が壁についた連絡の為の通話機を使って何か話している。

 そしてもう一人の衛兵が玉座の間に案内してくれた。一度通っているし、通行の許可をもらうだけで十分なのだが、畏怖を込めた目で俺を何度も振り返りながら先導している。

 どうやら城砦を3回作っては、破壊した俺を恐れているらしい。ま、普通はそうだよな。

 そしてゴルガン王のいる玉座の間に通された俺は、相変わらず長老と思われる老いたドワーフ達が左側に10人ほど並んで立っているのを見て、内心げんなりした。

 というのも年寄りというのは頑固で偏屈で保守的で、変化というのを認めない者が多いからだ。

 だから俺を見ても何かと反対してくるんじゃないかと思ったが、彼等は俺を見るなり、ほぼ全員が小さく体を震わせていた。

 ゴルガンも俺を畏怖の目で見ている。沈黙が玉座の間を支配している。誰も話そうとしない。

 どうやら俺が来たことで、いろんな話とかあっただろうに、今は俺の用件について最優先で取り組もうということらしかった。

 誰も何も言わないので、俺の言葉を待っていると判断して間違いないようだった。

 彼等は恐れている。俺だけじゃなくて俺の腕に巻き付いているアナントスも。以前はアナントスの術だか眷属だかに巻き付かれて拘束されたんだから、よほどの馬鹿じゃない限りはこの誓約の神にして蛇の神を畏れ敬って当然なんだからな。

 まずここに来てから俺は以前に趣味で作った、ミスリルの道具一式、オリハルコンの道具一式、アダマンタイトの道具一式をそれぞれ作っていた。

 そしてミスリルの武具や防具を作るのに、オリハルコンの鍛冶道具が早く、かつ高品質で作れるということがわかった。

 特にアダマンタイトの包丁はそれ一つで屋敷が建てられるほどの価値があるものだと、覇王竜の叡智でわかったのだが、今回王様のゴルガンに献上するのは、オリハルコンの鍛冶道具一式が3つ。

 あとはミスリルの武具・防具一式と中級ポーションと状態異常回復ポーションがそれぞれ100個の入ったリング(最初は防具だけにしようと思ったが、それでは攻撃の決め手に欠けるし、回復手段もあった方がいいので急遽手配した)、あとは聖地の創造神の聖なる波動を吸収した石が1万個入ったマジックパックを王の前に置いた。

 そして一つずつ、指で指し示して説明していく。

 後はダンジョン二つについて北東と北北西の二つにあること。どちらもアンデッドが出るので、このオリハルコンの鍛冶一式セットを使って、非戦闘員の職人に聖なる波動を吸収したこの石を加工して、武器や防具を作らせることを説明。

 さらにそれまでの間は、ミスリルの武器・防具一式に身を包んでダンジョン探索に勤しむこと。

 そして当分の間は鉱石の採掘は邪神の封印されていた地域に踏み込んで、封印を解いてしまう可能性があるので採掘は俺の許可がない限りは禁止することを説明したら、案の定、全員が渋い顔をしていた。

 「その、聖人様なら邪神の封印された場所とかわかるのではありませんか? いくらなんでも鉱石がないと我々としてはその、生活がままならなくなります。この都市の建造物の建築や建材の作成、すでに建てられた家屋の増強や修理などに必須のものでして、その…採掘ができないのでは…」

 と、ゴルガンがダラダラと油汗を流しながら俺におずおずと低姿勢かつ上目遣いで聞いてくる。

 「それができるのなら苦労しない。邪神を封じた神も、大昔の大戦争で邪神に滅ぼされたりして、その封印の場所がわからないのだ。第一わかっていれば、とっくに封印のある場所に向かって邪神を滅ぼしている。

 それにだ。もしも封印を解いてしまったら、お前達全員、邪神に滅ぼされるか、精神支配されて永久に生きたまま奴隷にされるぞ? それだけじゃない。封印から解かれた邪神はこの大陸における人間や獣人などを支配下に置いて他の邪神の封印を解こうとするだろう。そうなったら俺でも勝算が低い。

 つまり野放しになってしまうということだ。お前達は自分達の欲の為に世界を危機に陥れたいのか?」

 と、俺がドスの利いた声で唸るように言うと、全員がぶるぶると、そんなつもりはありません! と首を勢いよく左右に振った。

 「それにじゃな。家屋や建築物なら何も石でなくてもよいじゃろうが。木を切り倒して木造の建築物にすればいいだけではないかの?」

 と、アナントスも白い蛇体を伸ばしてゴルガン王に提案する。

 「いえ…それが。木造建築は仰る通り、手軽に建築できますが火事になったら燃え尽きてしまいます。

 それに木製だとあまり長持ちしませんが、石造建築だと家屋や施設が長持ちしますので…」

 と、しどろもどろにアナントスを怯えた目で見ながら抗弁するゴルガン王。

 確かにこの王様の言うことは正論だ。木造建築だと火事になったら燃えやすいのに対して、石造建築だと石なので火事になっても一部が焼失する程度で済む。
 
 特に水に乏しいこの地下都市なら、採掘した鉱石を精錬したり、武器や防具を作るのに火を多く使うのだから、石造建築に拘るのも無理はないだろう。

 仕方ないので、闇の中の空間から水晶を大量にとり出して、そのまま足元へと下ろしていく。

 「これで水は井戸を掘らなくても大量に確保できるだろう? それとそんなに鉱石が欲しいのならダンジョンに潜ってみればいい。お前達も知っているとは思うが、魔物を退治すれば毎回とは限らないが、宝箱を落とす。

 その宝箱の中にお前達が望む鉱石が入っていることも十分にありえるんじゃないのか?」


 と、言いながら俺は腕組をしながら、先程置いた水晶の山とオリハルコンの鍛冶道具一式に視線を向けた。


 「た、確かに…。それならわざわざ我々が採掘をしなくてもダンジョンに潜って魔物狩りをすれば、鉱石が手に入るということですね?」

 「そうだ。そしてそうすればダンジョン内で魔物が溢れて外に出てくることもなくなる。大人数で挑めば、それだけ大量の魔物を狩れるのだから、宝箱も入手しやすくなるだろうな。そうなったらルビーやエメラルドでできた家や小屋などが作れるかもしれないぞ?」

 そこまで言えば十分だった。…彼等は色めきたって鉱石が手に入るダンジョンについて興味をもったようだった。

 しかしまさかここまで鉱石に執着するとは予想外だった。オリハルコンの鍛冶道具一式にチラチラと視線を向けているドワーフの騎士達も多くいるが、それだけで動こうとしないとはな。

 こりゃあ、後でコア・ブランチに連絡して、北東と北北西のダンジョンに限っては、魔物を倒しても一時間置きに魔物が発生するように設定を変えるように言わないとダメだな。

 それと宝箱の中には高純度の鉱石(建材に使われるのは三種類あって、火成岩、変成岩、堆積岩などがあり、この中からオニクスなどが大理石の一種として挙げられる。

 まあ俺が鉱石作成のアビリティでどんどん大量に作れるんだが、それをやったらこの連中は俺なしじゃ生きていけなくなるからな。

 だからコア・ブランチには宝石だけじゃなくて建材として見た目の美しい鉱石とかを宝箱の中に入れておくように指示しておかないと。

 だけどこいつらにはオリハルコンの鍛冶道具持たせたから、その応用でいろんな鉱石の家とか施設とか作りだしそうだな。

 俺が鉱石作成で手を貸すのは、もっと後にしてからで良さそうだ。

 何度も頭を下げてお礼を言うゴルガン王に、俺は手を振ってこれから北北西のダンジョンへと向かうと言い残してから、いったん地下131階層へと転移した。



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