上 下
211 / 386

第206話 闇の獣人、図書室に行って良さそうな本を探してみる

しおりを挟む
 浮遊城の図書室。そこは二重のドアによって遮られていた。管理者権限で入ることができたが…。

 俺が王都ジェルロンドで見た図書室とは真逆の意味ですごかった。

 まず、本が閲覧用のテーブルの上に山積みにされている。受付の執務用の机とかにも関係なく置かれている。

 それだけじゃなくて本をしまうときは普通は背表紙(タイトルが書かれている部分ね)を次に読む人の為に外側に出しておくのが鉄則であり、基本的なルールだと思うんだが…そんなのお構いなしって感じで、とにかく本さえ運び込めればそれでいいって感じだった。

 おまけに本を横向きにして本棚の中に何冊も重ねて入れてあるし。

 それにさすがに本を直接、床の上に置くということはないが…本を入れた木箱が乱雑にそこらに置かれているので本棚にはあまり本は置かれていない。

 本当に非常事態だったのだということがわかる、慌ただしさだった。

 まあいいか。とりあえず良さそうな本を片っ端からもらっていくか。え? 火事場泥棒みたいだって? そりゃ今は緊急事態だからな。この城の結界のせいで時間停止空間がうまく機能しないんだから仕方ないだろ?

 本当なら動力室に行って城ごと封印するべきなんだろうが、そうしたらこの図書室の本を先に回収しておく必要がある。

 だからこの図書室の本を回収する必要がある。

 そこで魔本とかないかと魔力感知、敵性感知、毒物感知などの探知系のアビリティを一つずつ室内の本全てにかけていった。

 そしたら敵性感知に引っかかったのが何冊かあった。アナントスに目配せすると、虚空から7体の銀色の蛇が出現して、本を口に咥えて丸呑みしてしまった。

 本が蛇の体の中で暴れているようだが、アナントスに召喚された蛇はびくともしておらず、平然としている。

 「こいつらはリビング・ゴーレムが本になったような怪物じゃ。わかりやすく言えば宝箱に偽装して冒険者を騙して不意討ちをかける、ミミックと同じような連中じゃ。殺しても本に戻るわけじゃないからの。あくまでも「本に擬態した魔物」であってそれ以上でもなければ、それ以下でもない。このまま消化させても問題はないぞ?」

 とのこと。それなら放置しても大丈夫だな。というわけで蛇さんたちにはそれぞれの住処に戻ってもらった。

 さすがに毒物感知に反応する本はなかったが、魔力の込められた本が何十冊も出てきたのには驚いた。
 
 これはいわゆる魔書とか妖魔本とか言われる奴かな? 覇王竜の叡智で鑑定してみたら、魔法書と言われるものだった。

 …あれ? 確か魔法書って魔法の使い方とか、魔力を増大させる方法とか、その道具を作る為の方法が書かれてあるんじゃなかったっけ?

 それとか他に魔法の種類とかに付いて触れている本だとも聞いたことがある。

 あるいは魔法についての魔術師達の論文を載せたものとか。

 だがさすがに異世界相手に俺の生まれた世界での常識は通用しないだけあって、この魔法書は読んで理解さえできれば、それだけで魔法が習得できるという、夢のような本だった。

 妖魔や悪魔が禁断の知識を教えるという物騒な魔本は、俺がアルティメット・ヒールや竜王の息吹、覇王竜の息吹を3回以上使って、さらに魔法浸透を事前にかけていたから浄化されたのではないか、というのがアナントスの意見だった。

 それで、肝心の魔法書だが…やっぱり異世界の本というだけあって何が書かれているのかぜんぜん理解できなかった。

 もちろん魔皇神に頼んで翻訳の魔法が使える薬とか出してもらえることは可能だが、それは今でなくてもいい。

 というか今、そんな便利な薬を出されて飲んだら、魔法書を読むことに躍起になってしまってとても城ごと封印することができなくなる。

 今は俺は元の自分が生まれた世界での街の治療とか浄化をしなければいけないんだから。

 やるとしたら全ての街を浄化と癒しを施して、それが終わってからでないと駄目だ。

 でも何が書かれてあるのかくらいは、知っておいて損はないだろう。

 ということで覇王竜の叡智を起動して、一冊ずつ鑑定していった。

 そしてわかったのが冒険者にとっては大切でも、俺にとってはあまりありがたくない、低レベルの魔法書ばかりだということだった。

 簡単に照明、腐敗や劣化防止の保存魔法、攻撃力や防御力を上げる支援魔法。

 逆に敵の防御力を下げる装甲劣化や攻撃力を下げる攻撃力下降の攻撃補佐の魔法。

 それと毒や猛毒の回復魔法。傷や大怪我を治すヒールやグレーターヒールなんてものがあった。

 あとは付与魔法だな。武器や防具に支援魔法をかけて長期的に効果が出るようにした魔法だが、誰かに解呪されたらそれでおしまい、ということになる。

 もちろんポーションに付与魔法を施しても、飲む前や飲んだ直後にディスペル・マジックをかけられたらそれでおしまいだ。

 後は攻撃系の魔法が意外と多かった。火や水、電撃に土と俺の世界でもポピュラーな攻撃魔法が使える本ばかりだったが、「全魔法使用可能」のアビリティを習得している俺にとってはどれも使える魔法ばかりだった。

 いくら「全魔法使用可能」のアビリティがあっても、広く浅く使える程度だからな。

 おかげで闇属性の俺でも普通ならマジックアイテムのサポートなしじゃ使えない、光属性の魔法も使用できる。

 できるけど、光属性の魔法ではアルティメット・クラスまでは使えない。

 まあそれは光の大精霊達と契約しているから特に問題ないんだけどな。いざとなったらマジックアイテムとか探せばいいし。

 時間はかかるけどマジックアイテムも作成可能だから、魔皇神に頼めば作り方とか記したアイテムとか、俺に渡してくれるだろうし。

 ただ材料とか集めるのが面倒だし、作っても必ずしも成功するわけじゃないのがネックなんだよな。

 そんな失敗ばかりする事に力を注ぐのなら、他の方向に力を入れるべきなので魔道具作成とかは俺はやらないようにしている。

 下手すると研究室だけじゃなくて、その部屋のある建物ごと吹き飛ぶ可能性があるからな。強力なマジックアイテムの暴走は周囲を巻き込むことが多いから尚更、手を出したくないんだよな。

 しかし…異世界の魔法というから興味津々で魔力反応のあった本を全部、鑑定してみたんだが…俺が目をひくような魔法は一つも見つからなかった。

 てっきり異世界から何者かを召喚する魔法の本とかあればよかったのに。

 他に過去の勇者が装備していた武器や防具を召喚できる魔法とか。

 他にも魔力の消耗さえ除けば、物質だけでもコピーできる魔法とか。

 ヒョドリンに食わせればいいんだろうけど、いちいち魔法で小さくしないといけないのが欠点だしな。

 後は気体や液体だと、ものによってはヒョドリンが食べても増えないことがある。

 硫酸とか王水とか実らせる時に実を溶かすようなものは、ヒョドリンがカイザートレントで食べることができても増やすことはできないらしい。

 というか酸とか平然と食べるヒョドリンがすごいと思うんだが、それは俺の分身達がヒョドリンの根元で射精しまくっているから、回復力がずば抜けているからできるのだぁああ! と断言されました。

 実際にはヒョドリンの根を張った土の栄養が良くないと、増やせる実の数が少なくなるし、実の中の増やした物の質も良くないものができるようだからな。情報源はドラフォールさんだから信用できる。
 

 やっぱり気体・液体・個体のどれかだけでもコピーできる魔法とかあれば欲しいものだな。

 もちろん魔皇神に頼めばコピー魔法とか使えるポーション瓶をくれるけど、それだと楽して手に入れて俺自身がダメになりそうだからな。非常事態とか本当に必要な状況でない限りは魔皇神には頼りたくない。

 実際にアミリルス様に甘えて交尾したいなんて、馬鹿なことを願ったばかりに俺の子供ができてすぐに死んでしまったからな。

 コピー魔法とかはすごく欲しいけど、何がなんでも、という程じゃないからあればいいっていう程度かな。見つけられたらラッキーという感じだと言えばわかりやすいかも。ダンジョンでどうせ外れだと思っていた宝箱から、高品質の鉱石とか装備とか出てきて、大喜びするパターンに酷似しているかも。

 あとインフィニティ・オーブとかの知識とか情報もここにはなかった。

 一度作成したら、無限の力を発揮する宝玉だというからな。あるとしたら禁書とかの扱いになるから、ここにはなくて当然か。

 でも宝物庫も見たけど、それらしい物はなかったし。

 まあ…インフィニティ・オーブが見つかっても、俺専用の楽器を造りたいだけ、なんてくだらない目的の為なんだしな。

 自慢じゃないけど、俺って演奏オンチだし! 歌も魔皇神と関わっているせいか兵器レベルになっているし!

 おまけに魔法で創った飲食物は全部味がしない代物で、何十万個創っても、創っても味がしない物ばかり大量生産しちまっているし!

 更に酒とかは「状態異常完全無効化」のアビリティと装備の二重効果でぜんぜん酔わないから、いくらアルコール濃度が高い酒を飲んでも変わった味のしたジュース程度にしか感じられないし!

 後はバトルだけど、聖人認定されているから戦闘狂になったら、マネされるからこれも程ほどにしないとダメって馬鹿親父のゴルンルプスやフェランさんから言われているし。

 それに飲食不要、排泄不要、入浴不要、睡眠不要のアビリティがあるから、腹が減らないんで無理して料理する必要もないし。

 だったら後はもうセックスするしかないじゃないか。幸い俺は性的行為までは禁止されていないんだしな。

 何だか本が無造作に積まれている空間を見て、虚しくなった俺はまたセレソロインを召喚して、室内の本を全部、専用空間に回収してもらうように命じた。

 ほんの2分ほどで全ての作業が終了した。何だか空っぽになった図書室って変な感じだな。

 まあ利用する連中は今は寝ているから問題ない。俺が全部、中身を覚えてから返すからな。

 もちろん永久保存化と劣化防止の魔法も一冊ずつかけてから返すつもりだ。

 俺はそのまま地下にある動力室に移動することにした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

黒豹の騎士団長様に美味しく食べられました

Adria
恋愛
子供の時に傷を負った獣人であるリグニスを助けてから、彼は事あるごとにクリスティアーナに会いにきた。だが、人の姿の時は会ってくれない。 そのことに不満を感じ、ついにクリスティアーナは別れを切り出した。すると、豹のままの彼に押し倒されて―― イラスト:日室千種様(@ChiguHimu)

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】触手に犯された少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です

アマンダ
恋愛
獣人騎士のアルは、護衛対象である少年と共に、ダンジョンでエロモンスターに捕まってしまう。ヌルヌルの触手が与える快楽から逃れようと顔を上げると、顔を赤らめ恥じらう少年の痴態が――――。 連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となります。おなじく『男のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに想い人の獣人騎士も後ろでアンアンしています。』の続編・ヒーロー視点となっています。 本編は読まなくてもわかるようになってますがヒロイン視点を先に読んでから、お読みいただくのが作者のおすすめです! ヒーロー本人はBLだと思ってますが、残念、BLではありません。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

【R18短編】白銀でクールなむちむち奴隷サキュバスから正直にされる催眠に墜とされ、両想い判明から結婚確定中出しえっちを思う存分にするお話

フォトンうさぎ
恋愛
奴隷のサキュバスさんに催眠をかけられて正直にさせられ、お互いに好き好き言いあいながら婚約えっちするお話です。 表紙は『NovelAI』に出力していただきました。 ※旧題『白銀クール奴隷サキュバスに催眠をかけられ、両想い判明からの婚約中出しをする話』

処理中です...