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第200話 闇の獣人、光と闇の大精霊召喚したことを後悔する

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 封鎖区画はこの城内に4か所存在する。それは通路や各室内に備えられたパネルに表示されているので、すぐにわかった。

 問題はこの城、やたらと部屋の数が多いので、結果的に部屋の中にいるゾンビもどきとご対面! ということになる。普通なら。

 だが大精霊にとってはゾンビもどきなんぞ敵ではない。光の大精霊ロンナも、闇の大精霊シェンダルも不意討ちを食らうほど馬鹿じゃないようだった。

 片っ端からドアを破壊して(シェンダルは主に蹴破って)、中にいたゾンビもどきを光か闇そのものに変化させて消していく。

 当然ながら、これらのゾンビもどきに巣食っていたウイルスという病原体も一緒に光か闇に変えるので、お手軽だな。

 風に変えるとウイルスが残る危険性があるし、土や水でも同様。火だと城に備わる火災防止機能が働いて勝手に天井から水が降り注いでくるので却下。

 というわけで光と闇の大精霊を召喚したが、どっちか片方だと消耗が激しいので両方とも召喚したが、二人共反目しあっている割には、結構仲がいいようだった。

 俺は壊れたドアを超・修復をかけて直していることぐらいしかしていない。異世界で作られた物品とか大丈夫かと思ったんだが、普通に修復できて安心した。

 普段なら不意討ちを警戒する所だが、あいにく俺にはアナントスがいるし、「状態異常完全無効」のアビリティがあるからな。いくら邪神王でも一柱の神であることには変わりない。俺のアビリティを無効化、削除、書き換え、封印、破壊、移動などの操作は、2万柱以上の神々が同意しないと不可能だ。

 そんな訳で実際にはしていないが、気持ち的には、両腕を頭の後ろに組んでこの二人が片っ端からぞんびもどきを光と闇に変えていくのを見守りながら進んでいる。

 だがそれも途中までだった。この城には掃除や防衛の為のゴーレムが数百体は存在するらしい。

 で、何が言いたいのかというと…俺は城の人工精霊レメリアーナが新規登録してくれたから、まあ攻撃されることはない。

 だがこの二人は登録していない。そのせいで二回ほどゴーレム・ナイトから攻撃された。

 慌てて俺は二人を呼び集めて、地下のレメリアーナのいる場所へ転移した。

 それからは二人共新規登録されたおかげでゴーレム達から攻撃されることはない。

 もっとも一体壊しちゃったけどな。俺がゴーレムを止めようとしたけど、二人の息の合った同時攻撃で、二人を侵入者と勘違いしなゴーレム・ナイトが光の刃と影の中から出てきた闇の槍で、一瞬で破壊されてしまった。

 幸いなことに俺がすぐに二人を掴んで地下に転移したから、他のゴーレムの救援が来ることはなかった。

 いや本当に、下手すると城中のゴーレムを全部破壊しないといけなくなる所だったよ。

 だが本当に厄介なのは、この後の出来事だった。二人共仲良くゾンビもどきを光と闇にそれぞれ変換していたのは最初の内だけだったようで、時間が経つにつれて仲の悪さを露呈するようになってきた。

 おそらく新規登録されていないのを俺に気づかせなかった事で、お互いにお前が悪いと口論になりかけたのが原因だったのだろう。

 それからは二人はお互いにわざと間違った攻撃をした振りをして、ゾンビもどきもろとも相手を攻撃しようと躍起になっている。

 「あら、ごめんなさい。間違えちゃいましたー!」

 「気にするなお嬢さん。おや儂も間違えてしまったぞー!」

 と、さっきから棒読みの台詞を何度も何度も、飽きもせずに口にしながらお互いに光と闇の魔法を繰り出していってる。

 おかげで部屋や廊下の壁が穴まみれになって、俺も修復するのに手一杯になってしまった。

 だがこの二人のお陰で、二つの封鎖区画にいる全てのゾンビもどきを光、あるいは闇に変換することができた。

 「のう、婚約者殿。この封鎖区画…よく見たら住居区画が隣にあるんでないかの?」

 と、かなり離れているのに、アナントスは白い蛇の頭をもたげて、遠くにあるパネルに表示された地図を見つめている。

 緑は人がいる区画だ。感染者ばかりで特殊な魔道具の筒の中に入れられて眠っているとか。

 赤色は危険を意味する。この区画はゾンビもどきが出没しているので、俺達が全滅させると白に変わる。現に二つのエリアが赤から白に変わったしな。

 だがこの封鎖区画は今までとは違った。アナントスが言った通り、魔道具の筒の中に入れられて眠る人達がいる緑の区画が隣にあったのだ。それも二つも…。

 「ほーっほっほっほ! その程度でしかのですかぁ?」

 「なんの! この鍛えぬいた筋肉の前には貴様などゴミクズにすぎんわぁ!」

 と、ワラワラとやってきた死臭まみれのゾンビもどきを闇や光に変換する二人。

 だが範囲型じゃなくて、光弾や闇弾といった一体ずつを狙う形に変えている。どうやらどっちがどれだけ多くのゾンビもどきを消し去るのかを競い合っているようだった。

 それはいいんだけどね、君達。流れ弾が四方八方に飛び散っているんですけど!?

 うぉ!? 危ぶな…っ! 今、しゃがまなかったら俺に直撃していたぞ!?

 おまけに流れ弾が壁や天井に当たって、穴まみれになっているし!

 まあ複数操作で超・修復を3つ以上かけられるから、天井や壁、床の修復はできるんだけど…このままじゃキリがない。

 …ってまた壁に穴が開いた! しかもゾンビもどきが穴の中に入っていったし!

 「こらーっ! お前らいい加減に…」

 「婚約者殿。説教は後にしてまずはあの臭いゾンビもどきを何とかせんと」

 「全く…あんな連中なんか召喚するんじゃんかったよ…そりゃ実戦経験ないのは知ってたけどさ…」

 俺の頬の獣毛を舌で舐めて元気づけるアナントス。正直くすぐったいけど、確かに住居区画に入ったゾンビもどきを始末する方が先だ。

 闇転移ですぐに穴の側まで行くと、俺は紛れ込んだゾンビもどきを消す為に室内に飛び込んだ。


 

 
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