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第174話 闇の獣人、召喚妖怪を撃破して女神様にお願いを書いてみる

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 奇妙な船はやたらと派手な装いをしたチンドン屋みたいな感じの空に浮いている船だった。

 そしてその船は北の常冬の大陸、つまり俺が以前にアリの化け物退治をした時の大陸に不時着したようだった。

 時間停止空間の中で動けるってことは人外の魔物だな。もしくは精霊か。いずれにしろ只者じゃないのは確かだ。

 その船からは九つの人の頭部をもったでかい蛇が這い出てきた。覇王竜の叡智で鑑定してみると…

 「相柳(そうりゅう)。九つの頭をもつ怪物。毒を撒き散らす怪物で大地を汚染する農民の宿敵」と出た。

 他にもミノタウロスの亜種と思われる四つの目と六本の腕をもつ蚩尤(しゆう)という化物もいた。周囲をキョロキョロと見回して、いきなり岩を食べ始めた。

 覇王竜の叡智で鑑定してみると、岩や石を食べるという怪物で大食い。…こいつを野放しにしていたら貴重な鉱石とか食い尽くされるな。

 とにかく九つの頭をもつ化け物を竜王の息吹をかけてみたら、急にのたうち回り始めた。やっぱり怪物だな。もしくは魔族か。

 異世界から来た魔族だかなんだか知らないが、こっちの世界にはこっちの世界のルールというものがあるんだよねー。

 というわけで血液とか地面に沁み込んで汚染されるのが嫌なので、早速だけど魔皇神から授けられた「魔法浸透」を事前に北の大陸全体にかけてから、竜王の息吹、覇王竜の息吹、パーフェクトヒール、アルティメットヒール、ピュリファイをかけてみた。

 これで相柳は消滅したが、蚩尤は俺の方を見て岩とか投げつけてきた。

 へえ、結構強いじゃないか。どうやらこいつはパワーファイター系でいわゆる脳筋らしい。飛んでくる岩とか余裕で避けられるけど、こっちが反撃しないでいると舐められるからな。

 というわけで北の大地全体に魔法浸透効果が働いているので、サンダーボールとか手加減しながら、蚩尤に向けて放ってみた。

 とっさに直撃は回避した。意外と素早いんだな…でもサンダーボールの効果は稲妻が四方八方に飛び散ることにあるんだよ。

 さすがの蚩尤も直撃は免れたとはいえ、八方に飛び散る電撃には逃れる術はなかった。そのままバッタリ倒れるがすぐに起き上がった。

 結構しぶといんだな。そんなしぶといお前に敬意を払って海神王の槍をレベル2で投げてやろう。

 そしたらこれも、もっていたでっかい剣で打ち返そうとしたのか、逃げないで槍を剣で弾こうとしたが、俺の魔力で生まれた槍だよ?

 結局、蚩尤はそのまま槍の重さと勢いに弾き返すことができずに、体をかすめて地面に刺さって、サンダーボールと同様に周囲に衝撃波を撒き散らす槍の効果をまともに食らった。

 そのまま勢いよく吹き飛んで、岩山に激突する蚩尤。そのまま立ち上がろうとするが、すぐに地面の上に両膝をついてバッタリと倒れてしまった。

 頭部からは勢いよく血が流れているが、こいつ石とか岩を食べる怪物なんだよな? だったら血液とか毒とか混じっていたらイヤだから、火の大精霊達を呼んで徹底的にこいつの遺体を焼き尽くしてもらった。

 他にも船には俺を相手にして勝ち目がないと思ったのか、数十の怪物が一斉に船から飛び去っていこうとした。

 俺は火の大精霊達に、蚩尤の遺体を灰にしたら今度は船を焼き尽くすようにと命令して、怪物達を追跡した。

 空を飛びながら覇王竜の叡智で鑑定すると、「ペリュトン。牡鹿の頭と脚を持った大きな鳥の姿をしており、生きた人間を襲って殺すアンデッド。集団で行動し、通常の方法では倒せない。最低でも魔力の込められた武器がないとダメージを与えられないので、攻撃魔法が使えない者は逃げた方がいい」

 と、ありましたのでこいつらアンデッドなので、また竜王の息吹とか使いまくって浄化しました。

 だけど本当に厄介なのがこいつらに紛れていたんだよな。その名もベールゼブブJr。

 蠅の姿をしていて、地獄の大魔王の一柱のベールゼブブの子供達。見た目は蠅そのもので通常の蠅と見分けがつかないが、魔力の光が判別できる者なら違いが一目でわかる。

 厄介なのはこいつらが船が不時着して、俺が蚩尤とか相手にしている間に世界中に飛び散ってしまったことにあったんだよな。

 もっとも人が住んでいる街や村には俺が結界を貼っておいたから入れないが、外にあるダンジョンに潜る冒険者とか街から街へと旅をする商人に害をなすかもしれない。

 覇王竜の叡智で鑑定してみると、直接的な害はないが…時間をかけて相手を病気にしてその遺体に卵を植え付けて増殖するという、えげつない方法で増えてこいつら自身も成長するという、人類の敵でした。

 それで俺は一旦ダンジョンの地下131階層へ戻って、時間停止を解除。魔力探知の効果のある胸飾りをヒョドリンに食わせてから大量に増殖して、1000個以上に増やしてみた。

 後は分身の900名に増やした魔力探知のペンダントを装備させて、全員をダンジョンの外に転移させる。

 そして再度、時間停止をかけてから世界中に分身を派遣した。俺は王都の外で待機してエレンソル、セレソロインと待機。

 分身の行動を監視しているので、彼等の装備する魔力感知が反応したらセレソロインに頼んでベールゼブブJrかどうかを確認。続いて北の大陸にかけた浸透魔法を解除しておく。

 本当に蠅魔王の子供だったら、時空魔法で空間ごと圧縮して潰して殺虫。

 これを世界中に分身を派遣して飛ばせて、時空の大精霊達に確認して全部退治できたとわかるまで、通常時間で3日ほどかかりました。

 ダンジョンとか洞窟とかに隠れられたらおしまいだからな。そうならないように分身を世界中に飛ばせて、反応がなかったらまた呼び戻して…って900体も使役したせいか、精神的にめっちゃくちゃ疲れました。

 実際にダンジョンとか洞窟とか、使われていない鉱山(廃坑ともいう)に、逃げ込んだベールゼブブJrがいたけど、範囲型の浄化魔法ならお任せ。半径10キロ以内で魔法浸透をかけてから、竜王の息吹、覇王竜の息吹、アルティメット・ヒール、パーフェクトヒール、ピュリファイを一度に起動して(もちろん範囲も半径10キロにして)、
片っ端から浄化していきました。

 一方、船を焼き尽くした火の大精霊達からは、奇妙な球を渡された。船ごと燃やした後で生存した魔物がいないかを確認した後でこの球を見つけたのだという。火の大精霊の熱に耐えた球とはすごいな、これ。

 鑑定してみたら「式神の球。魔力をもった術者が創造する人工の精霊を創るのに必要な術具」と出ました。

 ま、いろいろ調べてみたし、時空の大精霊のセレソロインに頼んで調べてもらっても、特に邪悪な反応とか瘴気とか毒とか感じなかったので、そのまま闇の中の空間に放り込んでおくことにした。

 それでどうにかダンジョンの地下131階層へ戻ったら、緑色の髪をもった尖った耳の女性―エルフの女性が俺を待っていた。

 …まだ時間停止は解除していない。なのに動けるということは彼女も神族の関係者ということか。

 「お帰りなさいませ、ラフィアス様。今回のハエ魔王の子供の根絶、御苦労さまでした。あなたの眷属が送ってくれたポーションで、アミリルス様は大いに喜ばれて、また自分に叶う願いならどんなものでもいいから、一つここにあるボードに書いてほしいと仰せです」

 と、言いながら彼女は無表情かつ無感動な声で、俺に水晶でできた板と紐で結わえられたペンを渡してきた。

 考えてみたら俺、今回は頑張ったよな? それもほとんど一人でやったし。火の大精霊は後始末だけだったし。

 最近ではアナントスはダンジョンコアの分身であるコア・ブランチの下で寝ている。

 これはいつも神である彼女が俺の側にいたら、彼女に頼りっきりになって俺が成長しないから、たまには一人にさせておくことも大切だと馬鹿親父のゴルンルプスや元・爺さんの二級創造神の今は美少女の姿をしているフェランさんに言われて、コア・ブランチの下でふてくされている。

 特にこれから俺が王国や帝国に行く時も同行したいようだが、できないでいるので寝ることで俺と一緒にいたい不満を紛らわしているらしい。

 俺は受理されるわけないな、と思いながらも水晶板に付けられたペンを使って「願いが叶うのならアミリルス様と交尾して、俺の精液を存分に何度も子宮内に射精したいです」と書いてみた。

 書き終わると水晶板に「ほんとうにこの願い事でいいですか?」という文字が浮かべ出て、はい、いいいえの選択が出たので、俺は迷うことなく「はい」を選んでペンを当てた。

 すると水晶板が消えたので、それを確認したエルフの女性は小さく頷くと役目は終わったといわんばかりに一礼して、空間に溶け込むようにして消えてしまった。

 俺はまさか本当にアミリルス様に交尾できるわけないよなー、と思いながら感触変化と液体の吸収、浸透の効果を促進する魔法を自分にかけて、限界突破ポーションを1本ずつ飲んでいく。

 おいしいけど全身に満ちる痛みと痺れが俺を襲う。10本ほど飲んでも痛みとか痺れが薄まらないんですけど。

 でも気のせいか体が引き締まったような感じがする。

 こんな感じで俺が100本ほど飲み終わったら、確かに痛みと痺れは少し収まってきた。体も少しだが、明らかに引き締まっている。腹筋も割れている方だが、それでも本格的にバキバキに割れているわけじゃないのに、今では本格的に体を鍛えまくっている戦士や騎士と同じような状態になっている。

 鏡を見ながらちょっと感動している時に、俺の前に招待状が一通転移されてきた。

 招待主はアミリルス様。封筒を開けてみると…「あなたの願いは叶えられました。私の処女をあなたに捧げますので、あなたの都合のいい時にこのボタンを押してください」という内容だった。

 みれば手紙の中に黒い四角の部分がある。そこに矢印が書かれていて、ここを指先で押してください、と書かれていた。

 それからは俺はまた限界突破ポーションを新たに100本飲んで、全能力をちょっとだけ上げてから、ミリーヤとセレソロインといった大精霊だけにこっそりと打ち明けて、ちょっと留守にすると伝えた。

 大精霊達は女神を魅了するとはさすがご主人様、と小さく感嘆の声を漏らしていたが、サキュバス・エンプレスのミリーヤはむっつりとした顔で短く「行ってらっしゃいませ」と言っただけだった。
 
 どういうわけか怒っているミリーヤを見ていると、そっぽを向いてしまった。

 あ、もしかして俺が女神様と交尾できるのが妬ましいんだな? かわいい所もあるじゃないか、と思いながら俺は黒い四角のボタンを押した。

 すると周囲の光景が一変して、俺は白い巨大なベッドの置かれた部屋に立っていた。

 だがこれが悲しい事件を引き起こすことになるとは俺も、女神も思わなかった。

 今から振り返ってみれば、沢山のポーションを捧げて女神様の力を強化したんだから、これぐらいはいいよね! と慢心していたのかもしれない。

 あんな事を書いたせいで俺は悲しい思いをすることになった。わかっていたはずなのに、全然わかっていなかったんだろうな。本当に馬鹿な事をしたものだと悔やんでも悔やみきれない。


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