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第146話 闇の獣人、神々からの贈り物を検分する

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 俺はフェランさんのアドバイスに従って、音楽の神様に精液ポーション捧げてみた。それも大量にだ。

 だが音沙汰なくて特に変わったことはなかったのが肩透かしだった。

 もしかしてアビリティとか来たのかとフェランさんに聞いてみたが、一つも届いていないとの事。

 アナントスにも何か変わったことはないかと聞いてみたのだが、異常は感じられないとのこと。

 「もしかしたら婚約者殿があの魔皇神を愛人にしたことで恐れをなしているのではないかのう? そうでなければこれほど大量の精液ポーションを捧げたのに関わらず、音沙汰無しというのは普通は考えられないからのう」

 アナントスによると音楽の神様というのは、双頭の神様で男女双子の神様ということだった。

 そしてやろうと思えば男女二人に分かれることもできるのだとか。

 やっぱり神様っていろんな姿形で容姿が一定していないんだな。

 一方で蜘蛛と鳥の神様達は、ちゃんとアイテムを送ってくれた。

 蜘蛛のマークを宝玉の中に刻んである指輪が送られてきた。俺専用で、これを身に着けていると俺が危機の時に蜘蛛の神様かその眷属が助けに来てくれるらしい。

 そして鳥の神様も似たようなアイテムで、こちらはサイズを自在に変更できる輪だった。

 こっちも俺専用で、指輪にもブレスレットにも、チョーカーにもできるという便利な代物だった。

 そして植物の大女神アミリルス様にしょっちゅう大量の精液ポーションを捧げたせいか、薔薇の花が水晶玉に入っているアイテムが送られてきた。大きさは2cmほど。持ち主が念じれば掌に収まるほどの大きさにまで拡大できるらしい。

 鑑定してみたら、俺専用のアイテム。一度触るといつでも念じるだけでこの薔薇の入った水晶玉を手にすることができるんだそうだ。しかもこの水晶玉。宙に浮かべることもできるし、指輪やブレスの中に収納したままその効果を発揮することができるんだと。

 で、この水晶玉自体の効果なんだが…。どうも植物に関する知識や力を水晶玉を創造した女神から得られるためのアイテム、という意味がよくわからないアイテムでした。

 そこでドラフォールさんに話して実験台になってもらいました。

 試しに水晶玉をもって蔦でドラフォールさんが縛られるというイメージをすると、どこからともなく蔦が現れて彼を拘束してしまった。

 慌てて消えるようにイメージしたら、次の瞬間には消えた。

 後は俺が倒してきた大量の植物系のモンスターのイメージを再現して、そいつが出現するように念じてみたら、本当に出ましたよ。花の化け物で凶暴で、トゲのついた触手を振り回して毒の花粉を振り撒く厄介な奴。

 だがそいつは鑑定してみたら、ただの俺のイメージの産物ではなくて召喚されたモンスターだということだった。

 俺が召喚主だからか、異常なほど大人しい。続いてサボテンの化け物の事も思い出したので、連続して10体ほど出るようにイメージしたら、また本当に10体ほど出現した。

 これもどこからか召喚されたらしい。例によって誰も攻撃することなく、ただそこにいるだけだった。

 薔薇の入った水晶玉を手にした俺を主人と認めているらしく、命令待ちしているようだったので、俺が踊れと念じたら踊り出したし、歌えと念じたら、聞いたこともないダミ声で歌い出した。

 さすがにヴァイオリンを演奏している俺ほどじゃないが、それでも十分酷かったのですぐに止めさせた。

 しかし口がないのにちゃんと歌えるのがすごいな。

 こいつらの寿命を奪ってやろうかと思ったんだが、ヒョドリンが近くにいるのでそれはまずいと思い、俺はもうこいつらには用はないので短く「戻れ」と言って、ちょっと格好つけて左腕をさっと振ってみた。

 そしたら次の瞬間には、花とサボテンのモンスター達は跡形もなく消滅した。

 …どうもおかしい。俺はアビリティ強化を発動させて「新・覇王竜の叡智」を1万倍に増幅してから、この花の入った水晶玉を鑑定してみた。

 するとこの水晶玉は俺専用で他人が使う場合は、俺が許可しても一定の時間が経つとまた許可を出さないといけないらしい。召喚しようと思えば、ダンジョンやこの世界に住んでいるモンスターを召喚できるし、植物限定ではあるが、創造しようと思えば植物や種子、植物系モンスターも創ることができる。

 もちろんキャベツやキュウリも大量に創造できるが、見渡す限りの範囲だと最低でも10万~数百万のMPを消費する。どの植物を創造するのかによって消費MPが違うので、最初に一つから数十の植物を創造してからにした方がいいかもな。じゃがいもならじゃがいもを30個といった感じでな。腐敗しないように時空魔法で調整しないといけないけど、いろんな植物が創造できるのはいいな。

 だが、いくら植物の種を創造しても、肝心の土地が良くないと芽が出たのはいいが、そのまま萎れてしまったりして育たないので、土のいい場所を選んでおかないと駄目みたいだった。
 
 それなら痩せた土地でも育つ丈夫な植物を選べばいいんだろうが、そこまで植物には詳しくないからな、俺。

 それにそういうのを創造したら、実は俺オリジナルのモンスターで、近くの動物とか捕食して食っちまったりする可能性もある。

 さらにこの水晶玉。植物系モンスターを操って襲い掛かってきた植物系モンスターを大人しくさせたり、同士討ちさせることもできる。要するに植物に限定されるが、この水晶玉をもっているだけで植物に関することはほとんど、何でもできるアイテムだと思えばいいらしい。

 もっともモンスターを生み出してしまったり、突然変異を起こしたりして周囲の植物に寄生したりして、その土地の生態系を破壊しかねないから、植物を創造したり、新たな植物を見知らぬ土地に植え付けるのに使用するなら慎重にやらないと駄目だな。

 また防御面でも性能が高くて、この水晶玉をもっているだけで植物系モンスターには付き物の毒や寄生、腐敗などの攻撃も無効化できるし、トゲが刺さっても次の瞬間には勝手に抜ける効果もあるんだと。

 さらには薬学の知識がある者にはどの植物の、どの部位をどれだけの量を使うか、また他の植物の根や葉と混ぜたら、どういう薬ができるのかといった事まで水晶玉を持つだけでわかるんだそうだ。

 つまりこれはいろんな薬を作ることもできるということか。アンネリーザが泣いて欲しがりそうだな。俺専用だから使用許可与えても3日ほどでまた許可出さないといけないらしいし。

 それに使用許可を与えても得られるのは知識の吸収だけらしい。まあこれだけでも結構なものだと思う。

 有毒なのか無毒なのか。食っても大丈夫なのか、そうでないのかは植物の見た目だけじゃわからないしな。

 実際に見た目が綺麗な植物ほど、身を守るための毒やトゲをもっていると暗殺者ギルドで習ったしな。

 でもこの水晶玉に限らず、指輪であれ伸縮自在の輪であれ、壊したら神様達が悲しむので、俺はヒョドリンに神様達から送られたこれらのアイテムを革袋に入れて食わせて増やすように頼んでみたら、「オレに任せるのだぁああああ!」とはりきって大きな口のなかに革袋を放り込んでくれた。

 そして待つこと数十秒。ヒョドリンの根元では相変わらず俺の分身達が射精しまくっている。

 それを見ていると「できたぞぉおおおおお!」というヒョドリンの声がしたので上を見上げると、それほど大きくない実が30個ほど実った。

 そこで念動のアビリティで全部を枝から取って、収穫して身を割ってみたら革袋が出てきた。

 30個だから30袋、中には蜘蛛のマークの刻まれた指輪、伸縮自在の輪と薔薇の入った水晶玉が入っていた。

 まあ全部俺専用なんだけど、万が一の時に壊れたらまずいので、残りの29個は革袋に入れたまま闇の中の空間に収納しておきました。

 これで邪神やその眷属との戦いになってアイテムが壊れたとしても、予備がこんだけあれば神様達もガッカリしないだろうな。

 と、思ったら俺の右のブーツに何か挿し込まれた感じがした。

 慌ててブーツの中から取ってみると、紫色のハンカチとポーション瓶が二本入っていました。

 鑑定してみると「魔皇神の精液をハンカチに変化させたもの。もっている(この場合は異空間に収納しても同じという意味)だけで魔族を強く魅了して戦闘でなかなか攻撃できないようにすることができる。

 力の強い魔族であればあるほど魅了効果が強くなる。交渉次第では仲魔になってもらえる可能性もある、と出ました。

 いや…その、俺ってもう上位魔神とか魔神王とか眷属にしてますからね。シャイターン5人組も部下というか性奴隷にしているし。でもサキュバスとかインキュバスとか呼び出されたら、戦闘にならないで話し合いで終わるのはいいかもしれない。

 そして一緒に入っていたポーションは「下級魔族召喚のアビリティ習得のポーション」でした。

 早速飲んでみた。…例によってまずかったけど、中級・上級の魔族召喚アビリティ取得のポーションほどじゃなかったです。

 続いて最後のポーションは「魔族・不死者・邪神専用の回復系アビリティの取得ポーション」と出ました。

 また飲んでみたら、とにかく…やたらと渋い感じがして、飲み終わった後何度も何度も咳き込んでしまいました。

 ステータス・ボードを開いてみたら「デモニック・ヒーリング。闇属性の者が使うと相乗効果が出て、レベル1でも癒しの効果が2倍以上になる。普通の回復魔法ではダメージを受ける魔族、邪神、妖魔、不死者を癒すことができる」

 と、ありました。うんこれもレベル30までか。うーんそれじゃグレーターデーモン召喚して、いじめてこの回復魔法のレベル上げて見ようかな?

 ってこれ絶対に冒険者やレヴィン達の前じゃ使えねーじゃんか! そんな事したら俺が聖人じゃなくて魔人として世界中から弾劾されて異世界へ逃げるしかなくなるに決まっているって。

 まあ一応これもレベル上げておくか。一応、俺も「ダークネス・ヒーリング」といって精神鎮定効果もあり、闇属性のモンスターなら治療できるアビリティをマスタークラスで取得したけど、デモニック・ヒーリングは肉体持っていない闇・魔の属性の連中を癒す効果があるようだった。

 しっかし何だかなあ。アビリティ多すぎて整理不可能状態になっているけど、アイテム送られてきたら、それはそれでまた整理不可能になりそうな。

 とりあえずこのハンカチをまたヒョドリンに食べてもらって、30個に増殖しました。

 これで魔皇神に怒られなくて済むな。使用できるのは俺だけなんだけど、許可すれば誰にでも一定期間の間使用できるからね。その意味でも増殖しておいて損はないので増やしてみました。

 そういえば…確か廃城でアーク・ヴァンパイアとリッチを死者完全支配で部下にしたっけ。

 部下にした以上はあいつらを傷つけて回復魔法の実験体にはしない。俺には上級魔族の召喚魔法が使えるからね。

 だけど…あいつらには俺の演奏聞かせたらどうなるかな? ちょっとワクワクしてきたなー。早速試してみようかな。確かあいつらは宝石の中に閉じ込めてから闇の中の空間に収納したんだっけ。

 俺はあいつらがどんな反応を示すのか内心楽しみにしながら、ヴァイオリンに松脂を粉末にしたものを塗って手入れをすることにした。

 
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