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第134話 闇の獣人、冒険者の為にミスリルの防具や武具を作ろうと悪戦苦闘する

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 ジャイアント・ファイアーボアを退治した俺は、そのまま闇の中の空間にしまっておくには惜しいと思って、王都ジェルロンドの冒険者ギルドのマスターであるヘインズに事情を説明して、全長60メートルはあろうかという、巨大なイノシシの遺骸を寄付することにした。

 そして目玉や牙、毛皮といった部位は高額で売れるが本当にいらないのか? としつこく聞いてきたヘインズに、俺は金を受け取ることを辞退した。

 そして代わりに性悪な冒険者を生み出さないように、このギルドに属する冒険者の教育をしっかりすること。

 もしも性悪な冒険者ばかりだと、神の怒りに触れるだろうと警告したら、最近になってタチの悪い冒険者がボコボコにされるという襲撃事件を思い出して、俺がその事件に関わっていることを悟ったのだろう。

 もちろん証拠なんてない。だが彼は薄々、俺がその実行犯だということに気づいただろう。

 壊れた人形のように何度も首を縦に振っていた。

 それから俺はダンジョンに戻って、相変わらず手甲(ガントレット)や具足(グリーブ)を作ったりしていたんだが、失敗ばかり。

 うまくいかないので壊す。壊れたミスリルをまた塊にしてやり直し。

 もちろん鎧作成とか武器作成とかのアビリティのレベルは少しずつ上がっている。

 だが俺にはどうも、物作りというか創作系の才能はあまりないことがわかった。もちろん全部を試したわけじゃないが、武具や防具の才能はあまり無いのがわかった。

 もちろんアビリティ「モチベーション超・増大(精液必須)」で精液ポーション1本使って、レベル30にしてやる気も1000倍にしてあるが、結果がこうも失敗ばかり続くとは思わなかったんだよな。

 まあ盾みたいに単純な構成のものなら、比較的簡単に作れた。おかげで金属の神からもらった「盾作成」はすぐにレベル30になったし、大小さまざまな盾を作ることができた。

 でも他の防具(兜、手甲、具足、鎖帷子、上半身だけを守るハーフプレート)の作成はあまり上手に作成できないんだよな。

 剣や鎌といった刃物もうまく作れない。だがやる気だけは十分すぎるほどあるので、途中で空飛ぶ巨大なタコとか
象とかこの世界に現れた時以外は、時間停止空間の中でひたすら武具や防具を作っていった。

 それでジャイアント・ファイアーボアを倒す前の二週間を入れると時間停止空間の中で2月ほどいろいろ作ったりしたが、盾以外がまともに作れないということがわかっただけだった。

 それでも一応、ミスリル製の防具とか作れることは作れるんだが、防御の面はともかく装備の面で問題あるものばかりで、特に手甲は指を入れる部分がうまく作れなかった。大きすぎたり、逆に小さすぎたりした。

 もちろん戦闘訓練とかもドラフォールやヒョドリンとやったりした。

 何だか思っていたほど強くなくて内心ガッカリだったけど、まあ腹心であって専門の戦闘職じゃないから仕方ないんだろうけどな。

 というか素手で手加減した一撃で、あっさり吹っ飛ぶってドラフォールさんちょっと弱すぎ。

 だがフェランさんや馬鹿親父、セレソロイン達の意見は違っていた。ドラフォールさんは十分すぎるほど強いと。

 単に俺と彼の実力がありすぎて弱いように見えるんだと。

 そうなのかな? そこで今度は彼の剣を避けたり、受け止めたりしてみたけど、思っていたほど威力のある魔剣じゃないと、俺の獣人としての本能が告げていた。

 そこでわざと剣を頭に受けてみたら、痛みはぜんぜん感じないで逆に剣の方が刃こぼれを起こしてしまった。

 さすがにそれはやり過ぎだということで、超・修復をかけてなんとか刃こぼれを修復することに成功した。

 だが戦闘ではヒョドリンやドラフォールさんを圧倒できても、武器や防具の作成の才能がないんじゃなぁ…。

 そしたらエペランが見かねたのか、俺の前に飛び跳ねてきた。相変わらずかわいいスライムだよな。

 今は気分でエメラルドグリーンになっている。さすがエンペラースライムだな。体色変えるのなんて朝飯前か。

 「主様ー。あのね、主様が一生懸命、武器とか鎧とか作ろうとしているのを邪魔したくなかったから、今まで黙っていたんだけどね。ここで主様がいろんなものを作るのをはじめてから、もう二ケ月経ったよ?

 だからね、主様…言っちゃ悪いけどいろんなものを作るのはストップして、溜まった精液ポーションをまたいろんなことに使ってみたらいいんじゃないかと思うの。そっちの方が気晴らしになるし。ね、そうしようよ主様!」

 そう言いながら精液ポーションが大量に収納されている空間へのドアを呼び出して、触手を伸ばしてドアを指し示すエペラン。

 というかもうそんなに時間経ったのか。それなのにレベル30まで上げられなかった俺って…。何だか情けないよな。何が漆黒の獣聖人なんだか。

 そういえば魔法で創造したパンも全然味がしなかったよな。おまけに毒を分解する作用が災いして、パンにジャムとかバターとか塗りたくっても全部消えちゃうから、数万本のパンが闇の中の空間に死蔵されているんだよな。

 まあ覇王竜の額飾りと、超・修復と「モチベーション超・増大(精液必須)」があるから、何日も落ち込んで、枕を涙で濡らすほどじゃないけどな。でもやっぱり俺には製造系の才能はあまりないとわかって、ちょっとショックかもしれない。

 さて、体感時間で2ケ月も武器や鎧を作っているとは思わなかったが、おかげで精液ポーションも345億6千万本ほど製造できた。

 そこで今回は針の神、糸の神、服の神、それと妖精神と道具の神と鍵の神に本の神の合計7柱の神々に俺の精液ポーションをそれぞれ40億本ずつ献上することにしました。

 あとそれとは別に鏡を司る女神さまには特別に、俺を守ってもらうことをお願いしながら60億本の精液ポーションを捧げました。

 針や糸は縫物するのに必須だし、服に魔力込めることができれば鎧とか買わなくてもいいという、俺なりに考えた苦肉の策だ。服に魔力を付与することもできるが、神の加護があればもっと長持ちするだろうしな。相乗効果ってやつだな。

 あと妖精神というのもいるらしい。ここの世界と少しずれた場所にある異界の一種で、全ての妖精の神ともいえる存在だが、邪神達との戦いで力の大半を失っているのは他の神々と共通している。

 もともとはエペランの妖精の姿を見て、俺の精液ポーションを捧げる気になったのが発端だ。

 もちろんエペランはダンジョン・コアの分身であって、妖精じゃない。

 だがお世話になっているし、もしかしたら妖精の神の力も借りる日がくるかもしれないので、一応だが俺の精液ポーションを捧げる気になったというわけだ。

 それから、いろんな道具とか沢山収納できる箱とかもっと手軽に作れないかと思って、道具の神様にも俺の精液ポーションを捧げてみた。同様の理由でもっと人生の役に建ちそうな本とか知識とか得たいので、一時的でもいいからそういう本を出してくれそうな本の神様。

 あとこれは仮説だが、アンネリーザによると人間であれ、獣人であれ、生きるのに本来ある能力のほんの3パーセントしか使っていないんだそうだ。

 だから鍵の神の助けを借りて能力を少しずつ解放できないかと期待して、鍵の神様にも精液ポーションを捧げてみた。まあ鍵のかかった扉とか開けるのを普通は期待するもんだけど、それは門と扉の神様のアビリティにすでにあるからな。

 そして一番重要で守ってほしいと思うのが、鏡の女神様。アナントスによると女性の神様で、冥王陛下の長女で、真実を司る冥王陛下に嘘が通じないのと同様に、鏡は真実を映すので彼女にも嘘は全く通用しない。

 だから俺は彼女には特に守ってもらいたかった。それは俺がこの世でもっとも恐れる神具「真実の鏡」からだ。

 あれに万が一でも俺の姿が映ってしまったら、俺の今までの人生が全て鏡に映し出されてしまう。

 そうなったら、俺がどんだけ淫らなことをしていたのか周囲の者達にわかってしまう。

 それじゃ聖人としての面子が崩壊してしまい、俺が何を言っても誰も聞く耳をもたなくなるだろう。

 例え奇跡を起こしても今までのように、即座に従ってくれるとは思えない。

 また鏡のマジックアイテムって大抵は幻を破壊したり、消し去ったりするものが多い。

 俺も好き好んで聖人になったわけじゃないが、今更真実を知られたら今後の活動に支障が出る。

 それだけは避けたいので、どんな状況になっても俺が真実の鏡や他の鏡に映し出されることがないように、例え俺の姿が映っても、周囲の者達にバレないようにしてほしいと必死に祈りながら他の神々よりも多くの精液ポーションを捧げた。

 これで少しはマシになってくれるといいんだが。背後で死神と他に誰か一人が苦笑していたのを感じたが、誰なのかはわからない。知ろうとしても徒労におわるだけだし、知るつもりもなかった。

 あと残りの5億6千万本は、7体の精霊王様達にそれぞれ8千万本ずつ献上した。

 考えてみたら、俺って大精霊と契約して世話になっているのに、上司の精霊王様達に挨拶一つしていなかったんだからな。今更だろうが、何もしないよりかはいいだろうと思って、8千万本ずつ献上した。

 そしたら俺の目の前に本が閃光と共に現れた。眩しかったのも一瞬で、その本のタイトルは「楽しい防具作り」とあった。

 うーん…よく考えてみたら俺って自己流で鎧とか盾とか作っていたんだよな。

 ほとんど勘で作っていたし。そりゃ失敗ばかりするようになるか。

 これは言い訳になるけど、俺が師匠というか教師を雇わなかったのには理由がある。

 というのも、腕のいい職人ほど才能はあっても、性格や言動に問題が多い連中ばかりだからだ。

 つまり気に入らないという理由で罵倒や文句を弟子にぶつけるのは当たり前。下手すると道具とかぶん投げてきたり、暴力も弟子に平気で振るったりするほどだ。

 それが原因で正当防衛で師匠を殺してしまい、職人の家族から訴えられてまるで弟子が師匠を積極的に殺してしまったという冤罪をでっちあげられて奴隷落ちした者もいる。

 それが俺の先輩の暗殺者だ。本人から聞いたから間違いない。彼は言っていた。「師匠の弟子になるのはお勧めできないが、どうしても弟子になりたいのなら、技術よりも人間性を重視しろ」と。

 俺もそんな理不尽な罵倒や暴力を振るわれたら、黙っていられるほど大人じゃない。

 当然、やられたらやり返す主義の俺だからそういう問題のある連中を力づくで黙らせるだろうな。

 そうなったら相手を暴力で黙らせることになってしまう。そうなればもう武器や鎧の作成どころじゃなくなるわけだ。

 だから自己流でやっていたんだが、こういうハウツー本があるとは思わなかった。

 そこでさっそくこの本を読んでみた。もちろん忘れないように今まで計算違いで余っている精液ポーション100本使って「超・記憶力(精液必須)」で完全に記憶させてもらいました。

 結構面白くて為になる本だった。それを読み終わって本の内容を完全に記憶すると、今度はまた別の本が閃光と共に現れた。

 今度の本は「楽しい武具作り」だった。防具の作り方の本と同様に、いろんな武器の作り方が書かれている。

 これも記憶したら、今度は「楽しい裁縫」という本がまた新しく出た。

 簡単な縫い物なら俺にでもできるが、この本には上級者向けの縫い方とかもあったりしてなかなか興味深い内容だった。もちろん精液ポーション100本使って、この本も完全に記憶させてもらいましたとも。

 そんな感じで本の通りにやったら、以前ほど失敗することはなくなって、さらに一月、時間停止空間の中でいろんな物を作っていった結果…どうにか鎧や兜といえるものができるようになった。

 もちろん鍵の神様に頼んで俺の製造系の才能を少しずつ開花してほしいとお願いして、そのアビリティを吸収して暇さえあれば使いまくっていたことも関係あるんだろう。

 何はともあれ、伸縮自在の魔法のミスリルの鎧、兜、具足、手甲やミスリルの剣、槍、斧、弓矢などが本を読んだおかげで大分楽に製造できるようになった。

 これで冒険者の役に立ってもらえたらいいんだけどな。そう思いながら俺は新たに製造された172億8千万の精液ポーションをまた7大精霊王に20億本ずつ献上した。

 それと残りの32億本は冥王様の為に献上した。そして製造系のアビリティでもっとうまくもの作りができるようになりたいので、どうかあなた様が越権行為にならない程度にお力をお貸しください、と念じながら献上した。

 背後で俺の担当の死神が盛大にため息をついていたが、これで製造系のアビリティがどんどん上がれば、俺は聖人としていろんなものを民衆にプレゼントできるんだからいいじゃないかと思うぞ?

 あと磨いておいたミスリルの鎧などを闇の中の空間に収納して、王都ジェルロンドの上空へと転移した。

 


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