上 下
110 / 386

第107話 闇の獣人、家屋、井戸、畑の神々に頼んでセレシアを説得してもらう

しおりを挟む
 悪魔竜を倒した俺達だったが、あの性悪ドラゴンかかけた精液のせいでセレシアが死にかけていたことを配慮するのを忘れていた。

 だから俺が射精しようとしたら、攻撃してきたんだろう。セレソロインに頼んで彼女の周囲を映しだしてもらったら、幽鬼のような表情で本体の木の周囲をうろついている。

 こりゃ駄目だ。一応、時間停止空間の中だから俺がただの獣人じゃないってことはわかるはずなのに、死にかけた恐怖が全てを狂わせている。

 こりゃ時間停止を解除しても結果は同じだな。

 ただでさえ死にかけている彼女に乱暴なことはしたくない。

 とにかくエネルギー吸収・奪取系のアビリティ使用は却下だ。もちろん攻撃するのも論外。

 彼女は被害者なんだから、神経過敏になっているだけであって、こちらから攻撃するわけにはいかない。

 ただしアルティメットヒールとかパーフェクトヒールをかけるにしても、あそこまで枯渇していると効果は薄いだろうな。

 今の彼女だと抵抗されるだろうし。しかし何でゾイガスの奴は射精してセレシアを枯渇させようとしたんだろうかね。おかげで俺が大迷惑ですよ。

 いや普通に考えて射精するというのが変態じみているんですけどね。いいじゃないか。ちゃんと効果あるんだし。

 基本的にこっちはほとんど無報酬でやっているんだから、それくらいは我慢してもらわないと。

 実際に海の汚染地域とかも浄化しているんだし、文句言われる筋合いはないぞ?

 と、俺が落ち込み気味に座り込んでいると、気を利かせたアナントスが慰めてくれた。

 実は彼女も説得しようとしたんだが、ドラゴンに似た体型でゾイガスの仲間だと思って、セレシアの奴に信じてもらえなかったのだ。

 今の俺達はセレシアから信じてもらえずに追い払われたという関係上、奇妙な連帯感というか新たな絆というか、そういうものが芽生えてきている。

 とりあえず拘束の多頭蛇というアビリティを使おうかと思ったが、通常ならまだしも…相手は寿命の尽きかけたおばあさんである。

 うかつに拘束するとショック死しかねない。

 これが難しいんだよな。しかも相手が精霊だからマジック・ブレードとか「無形の刃」とか使う訳にはいかない。

 あれはエネルギー体のみ攻撃する武器とアビリティだ。今の彼女にそんな攻撃したら、本当に死んでしまう。

 そうなると問答無用で癒した方がいいだろうか? そりゃ若返ったりするけど、そうなったらなったで、ますます攻撃に苛烈さが加わるような感じがするんだよな。

 何しろ毎週ゾイガスの毒の混じった精液を本体の木に浴びせられていたようだったし。

 そりゃ精液不信になるのも無理はないか。なら粉末とかにして根元にふりかける…のは難しいな。

 海神王様に相談? ダメダメ。そんなことしたら「上級精霊風情がいくら酷い目に遭ったからといって、ろくに話も聞かずに私のラフィアスに攻撃するとは不届き千万!」とか言って本体の木ごと吹き飛ばすに決まっている。

 だとしたら冥王様か? いやいや。あの御方はアンデッド専門だからな。死にかけているセレシアにアンデッドなんて逆効果だ。下手すると魔精霊か邪精霊になっちゃうので却下。

 大体あの御方は海神王様と同じか、それ以上に俺の事を気に入ってくれているようだから、誤解とはいえ、一度俺に攻撃したセレシアをいい目では見ないだろうな。これ以上苦しまないようにあの世に送ってやれ、とか死神に命じそうだな。

 念の為に死神に確認したら、「十中八九そのような命令を私に下すから、冥王様に今回の件は終わるまで伏せておいた方がいい。さもないとあの勘違いした上級精霊は本当に私か派遣された他の死神によって殺されるぞ」と脅されました。

 これでまだ出会っていなくて初対面だったら、召喚したクラーケンとかけしかけて木が攻撃される前にクラーケンを倒して「危なかったですね。でも、もう大丈夫ですよ」と自作自演だけど彼女には有効だったかもしれないのに。

 そうなるとあのカワウソの元・天使様に頼んでみるか? いや…あの天使って結構過激だし。

 あいつがいつも持っているカボチャのランタンは結構、凶悪な威力を誇るからな。植物の精霊に火のついたランタンなんて、逆効果もいいところだし。

 そりゃサラマンダーツリーとか火山地帯に生えている、耐熱効果のある樹木も存在するけどさ。彼女の本体の木はごく普通の樹木だからな。

 そうなるとやっぱり…家屋、井戸、畑の神様かな? でも新人の神様を14柱も押し付けた俺としては心苦しいんですけど。

 だけど他にいい方法なんてないわけで。大精霊も説得しようとしたけど、セレシアさんは聞いちゃいないようだし。

 本当に勘違いしている上に死にかけている精霊ほどタチの悪いのはいないなー。

 うん。確か俺が山の頂上に登って世界中の空気を綺麗にする為に射精しまくった時、時間停止空間の中で一ケ月ほど経っていたとアナントスが言ってたな。

 それなら精液ポーションも134億本ほどできているはず。それをセレソロインに確認したら、ちゃんとできているとのこと。

 それなら話は早い。時空魔法で俺とアナントスはポーション置き場の空間に転移した。

 以前一度行ったことあるし、マーキングしている上に精液ポーション使ってここの事はバッチリ記憶してあるので目をつぶっていても転移できる。

 そこで俺は畑の神、井戸の神、家屋の神にそれぞれお30億本ずつ、合計90億ポーションの精気を献上した。

 あと今後世話になるかもしれない冥王様にも同じように30億本の精液ポーションを献上した。

 それとサービスで、山の神、川の神、魚の神にも以前の残りをちょっと入れて、それぞれ5億本ほど献上しておきました。考えてみればこの神様達と知り合った頃から、俺が多くの神様達に会って、その結果、大精霊や上位魔神、魔神王を従えることになったんだよな。

 まあ本当はあのカワウソの元・天使にも俺の精液ポーションの精気を上げたかったんだけど、あいつのことだからな。自分よりも神々に精気を献上しろと言うに違いないので、神様達に献上しておきました。

 それから井戸、家屋、畑の神様達を呼び出したら、次の瞬間にはポーションの格納空間に三柱の神々が出現した。

 おお…。全員後光がさしている。全身から光を放出していて、以前のようなみすぼらしい老人じゃなくなっているのがすごい。

 以前に1億本ずつ献上した後も凄味が増していたけど、さすがに30億本も献上したせいか、本来の力を取り戻したようだった。

 三柱の神々は全員が満面の笑みを浮かべて俺の元に歩いてきた。俺は全裸だったので、慌てて覇王竜のマントで前を隠した。恥ずかしい…! というか何で俺全裸だったことに気づかなかったんだろう!?

 「そんなに恥じることはない。お前さんの悩みはもう知っておる。あの死にかけた樹木の上級精霊のセレシアとやらを助けたいのじゃろ?」と家屋の神。

 「今の儂らならたやすい事じゃ。お前さんは世界中の空気を浄化したんじゃから、そこで待っていなさい」

 「畑を司る儂の力、見せてくれるわ。勘違いとはいえ、儂らの大恩人に手を出したこと、後悔させてやるぞ。セレシアとやら」

 何か約一名、いや一柱ほど物騒なことを言っていたけどもう大丈夫だ。俺は予感、いや確信をもって三柱の神が閃光と共に消えていったのを見て安堵のため息をついた。

 そして全裸であったことを思い出して、慌てて自分自身に浄化魔法・ピュリファイをかけてから、フェランさんが創造した服を闇の中の空間から取り出して、着用した。

 後に残ったのは俺とアナントスだけだった。ここで待っていろと言われたから、待っていることしかできない。

 するとアナントスがクックックと含み笑いをし始めた。

 「しかし流石はわしの婚約者殿じゃのう。自分一人では解決しにくいから、事前に供物を捧げてから神々に助力を求める。その柔軟性と行動力。大したものじゃ。その為にあれほどの大量のポーションを惜しげもなく使うその豪胆さも気に入ったぞ」

 「ポーションはまた沢山作れるからいいんだよ。だけど神様達、大丈夫かな? 手荒な事をしていないといいんだけどな」

 「その辺りはもう井戸の神々に任せるしかないじゃろ。儂らはできるだけの事はした。後はここで大人しく待っていればいいんじゃよ」

 アナントスの言う事は最もだったので、俺はポーションの格納空間に座って、神々が帰還するのを待つことにしたのだった。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 というわけで後書きです。いろいろ書いていますが、とにかく相手が死にかけている上級精霊なので、うかつに手が出せない。治療はできても誤解は解けていないので、そんな事したらますます相手を凶暴化させてしまうので、困ってしまったラフィアスとアナントス。

 と、まあ多くのアビリティ持っているからといって、いつも簡単にうまく事が運ぶわけではありません。

 しかも相手は精霊で、強い力をもつ上級精霊で大精霊にもっとも近い精霊である上に、死にかけのおばあさんときているから、大抵のアビリティは無効化されるか、効果半減されます。

 殴って気絶させようにも、彼女が死にかけですし手加減せざるを得ない。上位魔神なんて呼び出して数に物言わせて取り押さえたら、悪魔竜の仲間だと誤解に拍車をかけてしまうので却下されました。

 そんなわけで、アビリティとかも大切ですが、やっぱり世の中大切なのは人脈ということでしょうね。

 それでは読んでいただきありがとうございました。 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

黒豹の騎士団長様に美味しく食べられました

Adria
恋愛
子供の時に傷を負った獣人であるリグニスを助けてから、彼は事あるごとにクリスティアーナに会いにきた。だが、人の姿の時は会ってくれない。 そのことに不満を感じ、ついにクリスティアーナは別れを切り出した。すると、豹のままの彼に押し倒されて―― イラスト:日室千種様(@ChiguHimu)

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】触手に犯された少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です

アマンダ
恋愛
獣人騎士のアルは、護衛対象である少年と共に、ダンジョンでエロモンスターに捕まってしまう。ヌルヌルの触手が与える快楽から逃れようと顔を上げると、顔を赤らめ恥じらう少年の痴態が――――。 連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となります。おなじく『男のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに想い人の獣人騎士も後ろでアンアンしています。』の続編・ヒーロー視点となっています。 本編は読まなくてもわかるようになってますがヒロイン視点を先に読んでから、お読みいただくのが作者のおすすめです! ヒーロー本人はBLだと思ってますが、残念、BLではありません。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

【R18短編】白銀でクールなむちむち奴隷サキュバスから正直にされる催眠に墜とされ、両想い判明から結婚確定中出しえっちを思う存分にするお話

フォトンうさぎ
恋愛
奴隷のサキュバスさんに催眠をかけられて正直にさせられ、お互いに好き好き言いあいながら婚約えっちするお話です。 表紙は『NovelAI』に出力していただきました。 ※旧題『白銀クール奴隷サキュバスに催眠をかけられ、両想い判明からの婚約中出しをする話』

処理中です...