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第103話 闇の獣人、蛇の神アナントスの助言に従って弱った精霊を神に昇華させる

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 俺は蛇の神にして誓約の神、アナントスに気に入られている。本人は番(つがい)候補と言っており、神様を婚約者にできるというのは実に畏れ多いことである。

 もはやその事実は国中に広まっており、うかつに外を出歩けば王都の住人全員が深々と一礼するほどだ。

 普通なら、これじゃ迂闊に外を出歩けない、といって落胆するんだろうが、あいにく俺には暗殺者としての訓練を受けているので、変装は得意だし、姿を変える方法なんてアビリティを使えばいくらでもできるので、それについては不自由していない。

 元・廃村と無人島の街の新たな住人達を俺が創造した城塞都市を2回破壊したのを見て、全員が俺の信者というか下僕になった。

 そして困ったことがあっても、本当に俺でないと駄目なのか。もしもそうなら、真実の鏡の前に立ち、今までの人生を映して、そのすべてをさらけ出す覚悟のある者が持ち込んだ依頼でないと駄目だということも伝えておいた。

 それでまる一日潰したので、俺は精液濃度5000倍。つまり「王者の霊衣」のマント5000枚分の濃度の精液を1億本ずつ、家屋の神、畑の神、井戸の神に献上して、無事に国内の村と街。そして元・廃村と無人島の街の住人達も、神と精霊を畏れ、敬い、愛する心を持ったことを伝えた。

 これは本当に素晴らしいことである。そしてそうなったのは、外ならぬ井戸、畑、家屋の神々のおかげだ。

 だからお礼として1億本の精液ポーションの精気を、この三柱の神々に捧げたのだ。

 もちろん彼等の姿は何度も見てわかっているので、そのイメージに向けて精気を捧げるという方法をとっているのだが、もともとこういうやり方は人間達が勝手に決めたことなので、そんなにうるさく言わなくても、神を敬う気持ちさえあれば、適当なやり方でも大丈夫だというのが、蛇の神にして誓約の神アナントスの意見だ。

 誓約の神様の言う事だから説得力あるな。だから彼女から見れば、神々を崇める経典とか教典とか読んでも、すぐに放り投げてしまったし、彼女を崇める王都の信者達の式典を、こっそりと30分ほど前に行って見てみたが、式典やるのに時間がかかりすぎてイライラしているのがはっきりわかった。

 式典の開始から終わりまで半日ほどかかったが、それに対して彼女は不機嫌だった。

 どうも彼女は崇拝されることよりも、信者が幸せに生活しているのを見るのが好きらしい。

 なのに人間達が勝手に決めた細かい規律や作法なんかで無駄に時間を費やしている、とかなりご立腹だった。

 それに彼女が怒っているのは時間がかかりすぎているからじゃない、自分を崇めているのだから、神として祝福しろ、とかもっと聖人様に会わせろといった、心の中に隠れ潜む欲求を持つ者が多くて、純粋に自分を崇めて、俺に感謝し、敬愛している者は数百人の式典に参加した者達の中でほんの数人だったという。

 …そういえば、肝心の王都ジェルロンドの近くに城塞都市を作って、王都の連中の目の前で破壊して、神罰の恐ろしさを見せてやるのってまだやっていなかったな。

 それをアナントスに説明したら、気持ちとしては同意するが、女王の許可をもらってからにしろ、と意外と冷静なアドバイスをもらいました。

 もう女王と姫とは俺と肉体関係になっているしな。俺が頼めば露骨に嫌がったりしないだろうしな。

 とはいえ、俺の精液濃度が濃すぎて途中で気絶なんかされた経験上、彼女達と積極的に関わる気が失せているのが現状だ。

 それにあまり彼女達に関わると、貴族達に俺に会いたいとか、握手しただけでも運気向上しそうだから、せめて握手だけでもと、俺に会いたいと切望する貴族が多い。

 それに王城に勤める使用人達は全員、そして貴族の大部分は俺のポーションが精液だということに気づいている。

 そりゃそうだよな。あんなドロドロした液体。すぐにわかるって。

 それでも若返りの効果はあるし、飲んだり体に塗ったりすればそこの部位が活性化してシミとか消えた。

 白髪が黒くなった。ハゲている部分に毛が生えてきた、鬱病が治った、などの報告が圧倒的に多い。

 俺が全ての街と村で城塞都市を作っては大精霊達に命じて破壊させたので、もっと敬遠されるかと思ったのだが、王都で城塞都市を作っては破壊するということをしていないせいか、俺に対する熱狂的な信仰心は留まる所を知らないようで、俺の全裸が見たいとか、俺のイチモツをしゃぶって直接精液飲めば、末代まで幸せになれる、なんてデマがまかり通るありさまだった。

 そんだけ井戸の効果がすごかったんだろうな。実際ポンプのおかげでバケツをいちいち汲み上げなくてもいいわけだし。

 その効果も猛毒無効だから、その水さえ飲んでいれば毒物混入されても全く影響ないわけだからな。

 そんな訳で以前よりも俺に対する信仰心が過熱していて、念話でのやり取り以外は王女達に会っていない。

 だって女官達とかと顔を会わせると抱いてほしい。とか精液を飲ませてほしいとか頼まれるんだからな。

 それもこっそり頼む場合もあれば、人目をはばからずに堂々と言う場合もあるし。使用人の場合はそんなことしないんだけど、貴婦人の場合だと思いあまってというか、何か一世一代の想いをぶつけてくるって感じで、本人にとっては大真面目なつもりだけど、言われた側としては引くしかないわけで。しかも俺以外にお付きの従者とかもいるしな。

 さすがにこれ以上愛人を増やすわけにはいかないので、彼女達には申し訳ないけど、断らせてもらっている。それでも諦めない場合は、アナントスとレオンフレイムを出現させて威嚇してもらっている。

 ただそれだと涙目で遠巻きにしてこっちを見ているので、俺が気晴らしにお前らが寝ている間に強姦して、性欲のはけ口にしてもいいのなら、といったらそれでもいいと言われたので、とりあえずこいつらをマーキングして、その場は収まった。

 しかしこれだと城内を歩くには、姿を隠すか時間停止をかけないと彼女達を刺激させてしまうな。過熱した信仰心が沈静化するのにまだ時間がかかるようだな。

 とりあえず王城ジスニーヴァインに住む連中のマーキングをしてみたんだが、その間にもあちこちを護衛する見張りの親衛隊の兵士はおろか、メイドや貴族の雇う専用の女官とかはもちろん、城の文官とか典礼兵とかも熱のこもった眼で俺を見ているのは何故だろうか。

 そして近くを通りかかったら、やっぱり俺の股間を見て何事か言おうとして止める。それの繰り返しだった。

 中には小姓の子供に俺を尾行させたりしている時もあった。

 さすがに我慢しきれなくなったので、角を曲がった瞬間に隠し部屋の一つに転移した。

 「うーむ。何だかお前さん、城の連中にやたらとモテるのう。このままじゃラチがあかないから、いっそアンケートでもとってみたらどうかと思うんじゃが?」

 「アンケート? それは何についてのものだ?」

 俺が首を傾げると、アナントスは苦笑して気づいておらんのかと言いながら紅い舌をチロチロと口の中から出し入れしている。

 「もちろんお前さんに抱かれたい、あるいはお前さんの生の精液を飲みたい者はレヴィン宰相の部屋に、その旨を記した手紙を出せばいいんじゃよ。数が多いから、専用の箱を部屋の脇に置いておくとかするといいかもしれんな」

 それは名案だ。俺としても彼等全員が何を考えているのかは大体予想がついている。

 だが全員がそうじゃないし、例えそうだとしてもなぁ…。時間がどれほどかかることやら。

 とにかく集計を取る事は大切なので、俺は念話で王女と女王に俺に気のある人物はその旨を記した手紙を宰相の部屋の前にある箱に置いておくようにと頼んだ。
 
 後はレヴィンだ。どうもレヴィンの魂を調べてみたら、ミュリエール皇子と一緒に庭園を散歩しているらしい。

 成程。俺の前には姿を見せるのが嫌なのでレヴィンの方から誘ったらしい。早速、時空の大精霊に命じてその情景を目の前の空間に映してもらった。

 レヴィンは終始、優しい笑顔を浮かべながら庭園のあちこちを案内して、どこかオドオドしている皇子を引率している。背後には護衛の二人の獣人の騎士が二人ほど離れすぎず、近すぎず、の距離を保ったまま付いてきている。

 そこで俺は念話ではなくて、レヴィンに俺が考えた情報のコピーをレヴィンの魂に送り込んでやった。

 するとレヴィンは一瞬だが驚愕した顔を浮かべたが、皇子の前なのですぐに笑顔を取り戻した。

 だがレヴィンは頭を左右に振りながら何かを呟いていた。レヴィンの魂を解析してみたら、もうヤケクソといった感情が一番強かった。おそらくどうなっても知らんぞ、とか言ったんだろうな。

 「それじゃそろそろ宝物庫の所に行こうか。確か精霊の反応が複数あるんだっけ?」

 「うむ。恐らく、剣の神が万一の為に作った分身の精霊じゃろうな。ただ気配が酷く弱いので、お前さんが精液を振りかけて復活させてやらんといかんぞ」

 「それなら任せてくれ。許可も女王陛下からもらっているからな」

 俺は腕に巻き付いたアナントスと一緒に、隠し部屋から宝物庫の前に転移した。

 いきなり目の前に現れた俺に、二人の衛兵が仰天した顔を見せるが、すぐに自分が何者なのかを思い出したらしいようだった。

 そこで俺が女王陛下から渡されたカードを見せたら、疑わしそうな顔は消えないままだったが、そいつの持っている短剣を素早く抜き取ってから、握りつぶした。

 驚く二人の衛兵の前でその短剣を「修復」のアビリティを使って直してやる。

 「どうだ? これでも俺が漆黒の獣聖人でないと言うのか?」

 「ほ、本物の聖人様ならその精液が光っているはずです。試しに我々にその精液を飲ませてもらえば本物だと証明できると思います」

 赤い顔をしてモジモジしている二人の衛兵。ははーん。なるほど。お前らも俺の精液飲みたいわけね。

 このままではらちがあかないので、俺は衣服を闇の中の空間に収納すると、二人の衛兵に俺の精液を飲ませてやった。

 時間がもったいないので連続射精するといったら、二人共頷いており、一度も噎せることはなく、俺の心配は懸念に終わったようだった。

 二人が満足して扉を開くと、そこには大小さまざまな宝石や武具、防具、道具などが大きな純白の棚の上に置かれていたりした。

 俺はアナントスが頭の中で命じるままに、壊れた全身鎧の立てかけられている場所へと歩いていく。

 俺の背後には盗難防止の為か、それとも監視のためかわからないが一人の衛兵が付いてくる。

 それを無視して、俺は壊れた剣、壊れた短剣に弓、全身鎧、壊れた盾と腕輪と杖と槍と斧と額飾りとマントとペンダントと指輪とポーション瓶を全部、闇の中の空間に回収した。

 「これらのアイテムは全て壊れているので、俺が修復して俺が自由に使っていいと、女王陛下から仰せつかっている。お前が心配しているような、他の財宝を持ち出したりすることはない。だから安心するがいい」

 そう言うと、衛兵は安堵したように頷いていた。それを確認すると、俺はダンジョンの地下131階層へと転移した。何か衛兵が言っていたようだったが、急いでいるので無視だ。すでに俺の精液はたっぷり飲ませたんだから、文句を言われる筋合いはないしな。

 


 そしてダンジョンの地下131階層で、壊れた全身鎧などを調べてみたら案の定、全部神々が所持していた武具だったが、邪神との戦争で破損して、宿っていた精霊達が酷く弱っている状態になっているようだった。

 俺はアナントスに言われるままに、「王者の霊衣」のマントの枚数を1万枚にした。今の所、これが最大だ。
 
 さらにアビリティ増強で効果を2万倍に。これで2億倍の濃度になったが、ここまで酷く破損していて大丈夫だろうか。

 ちなみに修復や、超・修復をかけてみたんだが、ただの物品じゃないようで直らなかった。

 やはり2万倍にすると陰茎と陰嚢がうっすらと光っている。精液じゃなくて肉棒と精液を生み出す玉袋そのものがうっすらとではあるが光っているのだ。鈴口から自然に流れる透明な体液も光っている。

 しかし「王者の霊衣」の方を増強していてよかった。もしもアビリティ強化の増幅作用を2万倍以上にしたら、いかに「王者の霊衣」の射精制御効果があっても、増幅効果が強すぎて性的な事だけしか考えられず、己の性的欲望のみを果たすケモノになっていたかもしれない。


 ここは地道に俺の精液を壊れた品物に一個ずつかけるしかない。俺は時間停止をかけると、壊れた全身鎧に連続射精して、すさまじい量の精液を浴びせ続けた。

 こんな感じで俺は一個ずつ修復していった。精液を浴びせていくと全身鎧なら、全身鎧が光り始めて勝手に破損個所が直っていく。

 アナントスが手伝ってくれたので、精液が対象の物品に吸収されやすくなっていたせいか、思っていたよりも修復作業が終わるのは、早かった。

 だが14の物品を修復するのに現実時間でまる一日。つまり時間停止空間で二週間もかかったとアナントスから聞いた時はさすがに驚いた。

 俺の前では光り輝く武具や道具などが宙に浮いている。

 「ありがとうございます、ラフィアス様。あなたの聖なる精液で我々は復活することができました。

 いえ、それだけではありません。あなた様のおかげで我々は格こそ低いものの、神になることができました」

 え? 神様って…俺は光り輝く全身鎧や弓、剣、短剣などを見ながらしばらくの間、立ち尽くしていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 後書きです。ラフィアスの精液は連続して時間をかけて浴びせ続ければ、精霊も神に進化させることができます。

 もっともアビリティ強化の2万倍があるから、ここまで短時間で修復できたんですが。

 そしてアナントスのサポートもあって、壊れた物品は修復されましたが、本当に大変なのはこれからです。

 読んでいただきありがとうございます。

 

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