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第92話 闇の獣人、街中を癒した後、ストーカーと化した町民に尾け回されてダンジョンへ行く

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 コルドン隊長に案内された中央広場は包帯を巻いた怪我人が多くいており、最も目立っていた。

 この場に集められた者達に通用する雰囲気…それは疲労と倦怠感だった。

 もう何が起ころうと、どうでもいい…そんな感じの目をした者達が顔を上げて俺を見るが、すぐに項垂れて地面だけを見つめている。

 俺は隊長に目配せすると、隊員達が俺の周囲を囲んだ。その中には俺に因縁をつけたガルスンの姿もあった。

 彼を見ると、畏怖と恐怖を交えた目で俺を見て、ペコリと頭を下げる。

 …へぇ、結構素直でかわいい所があるじゃないか。

 そして俺は竜王の息吹、覇王竜の息吹、パーフェクトヒール、アルティメットヒール、ピュリファイと超・修復の六つを同時に起動して街とその周囲の畑まで範囲拡大してかけてやった。

 街の外まで範囲拡大したのは、モンスターの度重なる襲撃で畑の作物が駄目になっている可能性があったからだ。

 もうそろそろ冬になるのに作物なんてとっくに刈られているって?

 甘いな。冬にしか実らない作物もあるんだよ。ラディッシュやルッコラなどが寒さに強くていい例だな。

 だからそういう作物とかもこういう回復魔法とか連続使用すれば息を吹き返すんじゃないかと思ってな。

 それにダンジョンから出てきた怪物達を消し去る効果もある。

 実際に王都ジェルロンドではレッサーデーモンが消滅していった。

 ここでも、もしかしたら邪神の眷属の仲間がいるかもしれないからな。

 そんな訳で範囲拡大してみたんだが…光が収まった後は全員、信じられないと言いたげな顔をしていた。

 その顔に浮かぶのは驚愕。それ以外の何物でもなかった。

 特に義手や義足を付けていた者は、勝手に外れたそれらの人工的なパーツを手にして、生えた己の手足を見てひたすら驚愕している。

 俺はコルドン隊長を手招きすると、井戸まで案内するように言って歩き出す。

 彼は最敬礼をとると、背後に控えていた病人、怪我人を集めていた衛視達も同じように最敬礼をとった。

 本当はこの街の地図を「知的生物の総合分布図」で見て井戸の位置とか数とか把握しているんだけどな。ただし一人で動くとなると、俺の信者になった町民達に付き纏われて鬱陶しくてたまらないし。

 俺が早足で移動していると、彼等も俺に負けじと早足で移動して周囲からの質問とかに適当に応えながら、俺を信者と化した町民から守ってくれる。

 そして井戸の側に来ると「無限の湧水ポンプ」のアビリティを発動した。

 すると光と共に井戸にポンプが出現した。俺は脳裏に示された使い方通りに、ポンプを使って水をくみ上げていくのを実演する。

 そしてこのポンプは絶対に外したり破壊したりしないように厳命しておいた。

 後は街中を歩き回って、各井戸を「無限の湧水ポンプ」のアビリティを使って設置していく。

 その間に俺の治療を受けた怪我人や病人、そしてその知人友人や野次馬が衛視達に阻まれても、しぶとく周囲を覆っていろいろと囁き合ったりしている。

 その度に隊長が質問には後で答えるから聖人様の邪魔をしないようにと大声で怒鳴りつけている。

 そうしたら一時的に周囲の野次馬が減るものの、時間が経つとまたワラワラと周囲に満ちていく。

 

 こうして街中の全ての井戸に「無限の湧水ポンプ」を設置したら、次は倉庫などに行って過酷な肉体労働をする場所に「腰痛緩和」のアビリティを起動。主に馬車の荷台にも荷物の積み下ろしがあるので、街にある全ての馬車にもかけてやった。

 この「腰痛緩和」だが隊長の耳に畑の神と家屋の神の両方を崇めると、腰の痛みが4分の1になるから、後で街の者達に知らせて、井戸の神と一緒に三神を祀って積極的に崇めるようにと言ったら、涙目で頷いていた。

 やっぱり40過ぎたら腰痛とか身近なものになるんだな。それが軽減されるのは彼にとってとても大切で嬉しいことなんだろう。

 最後はあまりにも野次馬が鬱陶しいし、衛視達がいくら注意しても減らないので、苛立ちが頂点に達した俺は衛視を全員、念動のアビリティで屋根の上まで持ち上げると、もっていた馬車の模型を取り出して実体化させた。

 「お前達が注意すれば野次馬が減るかと思ったが、ぜんぜん減らないからもう街ごと「害虫忌避結界」を貼る。わかったら乗れ」

 俺は馬車のドアを乱暴に開けると、顎をしゃくって戸惑う衛視達を馬車の中に入れて、この街の中央まで馬車を飛ばして移動した。

 さすがに地上で俺のストーカーになっていた元・怪我人や病人達も、空を飛ばれては追ってくることができないで困惑している。

 その間に俺は範囲を思いっきり拡大して、「害虫忌避結界」を街全体にかけてやった。

 幸い、それほど大きな街じゃなかったが、それでもMPが枯渇寸前だった。一回の使用で消費MPが100万だからな。それを範囲拡大したら軽く1億ポイント近くなってもおかしくない。

 こうして害虫忌避結界を張り巡らせた俺は、街の出入り口まで馬車を移動させた。

 …うん。いないな。もしかしたらダンジョンから出てきたモンスターがいるかと思ったが、今の時間帯はいないようだった。

 隊長によると東にもっと進んだ所に街道からやや離れた所の林の中に、最近になってダンジョンができたらしい。

 そこでダンジョンの上空まで空飛ぶ馬車で移動していった。


 
 ダンジョンの上空まで来た俺はそのまま待機しているように衛視達に命じると、馬車から外にでて空中に浮かんで眼下を睨みつける。

 そして念話で時空の大精霊達に「海神王の槍」を使うから、手分けして馬車のガードと、ダンジョンの周囲に広がる衝撃を食い止めておくように命じておいた。

 すでに俺の下僕と化した大精霊達は喜々として俺の命令に従ってくれた。

 俺は安心してダンジョン内を透視してみる。結界があってもこれだけ近いとないも同じだ。

 ましてや術者が死亡した今では、結界のあちこちに綻びが生じてしまっている。

 そんなもろい結界なんて何の意味もない。実際に透視できたしな。
 
 で、ダンジョンの中には、まばらだがゴブリンやオークがうろついている。
 
 再度鑑定してみたら、地下30階層までのダンジョンと出た。

 …よかった。変化なしだ。ダンジョンは成長することがある。特にこういう風にいきなり出現したダンジョンの場合は注意しておかないといけない。

 これ以上大きくならないように、俺は海神王の槍の10メートルサイズをダンジョン目掛けて投擲した。

 槍がダンジョンの出入り口の洞窟に当たると、大爆発を起こした。

 すさまじい閃光と音が周囲に響き渡るが、思っていたほど大きな音じゃなかった。

 それも時空の大精霊達がガードしてくれているからだろう。

 そして光が収まった後は、ダンジョンは跡形もなく消えていた。

 残っていたのは巨大な穴だけだった。その穴も鑑定してみたら、元・ダンジョンのあった穴。今では海神王の槍で爆破されてコアも残っていない、と出た。

 そういえばダンジョン・コアってのがあったな。最下層まで行ってコアをぶんどってくるべきだったかな?
 
 いや…ダンジョン・コアは姿を隠すのが得意だし、警護の為に強力なモンスターを最低でも1体はコアの周囲に設置しているからな。

 戦って負けるとは思わないが、過信は禁物だ。

 穴を念入りに「新・覇王竜の叡智」で鑑定してみたが、やはりダンジョン関係の情報はなく、モンスターも全て死に絶えたのか、全く情報が出ることはなかった。

 安心した俺は馬車へと戻っていった。

 馬車の中では全員が座席から降りて床の上にひれ伏していた。

 そりゃ中は広いけどさ。何でそんなことしてんだよ、あんたら。

 「ラフィアス様。漆黒の獣聖人様。どうか街の者達の無礼をお許しください。ですからどうか、どうかあの槍を街に投げないでください! お願いします!」

 必死に懇願する隊長。うん、わかったからさ。もうちょっと冷静になろうね君達。

 「いいから落ち着け。俺はあの槍をダンジョン破壊のために使ったのであって、あのメデフィア街に投げるつもりはないぞ? そりゃあいい加減あの野次馬達にはイライラさせられたがな。それでも街を滅ぼそうとか思っていないから安心するがいい」

 そして俺は家屋の神、井戸の神、畑の神の崇拝を勧めた。

 この時の為に時間停止させて密に三神の幻像を作るのに練習したんだよな。

 最初は色だけの人型とかだったけど、200回ほど練習していったら、だんだんうまくなっていった。

 今では本物と同じくらいのリアルさで、それを絵にするアビリティも精液ポーション50万本で購入したからバッチリだ。

 しかし幻像を紙に焼き付けるアビリティなんてあったんだな。さすがはアビリティ購入権利(精液必須)だな。

 おかげで紙に焼き付けられた三神の絵を10枚ほど作っておいたので、衛視達に渡してから順に説明した。

 そして「害虫忌避結界」、「腰痛緩和」、「無限の湧水ポンプ」の三つを街に設置したこと。

 さらに各アビリティの詳細を話してやった。

 特に「腰痛緩和」は家屋の神と畑の神を同時に崇めていれば腰痛が4分の1になること。

 そして「無限の湧水ポンプ」は俺がもともとあった「毒無効」につけ加えて「猛毒無効」「汚物浄化」に「ボケ防止」に「血行促進」「疲労回復上昇」を付け加えておいた事を説明したら、全員が感涙の涙を浮かべていた。

 「そこまでしてくださるとは…あなたこそ、真の聖人様です! またこの街の近くにダンジョンができるかもしれません。その時はどうかまたこの街に来てくださいませんか? 街の者達にはよく言っておきますので、その時はどうか、どうか治療をお願いします!」
 
 と、隊長さんが熱心に頭を下げてきた。

 「実はその事なんだが…今の俺は鍛錬と瞑想を重ねて、お前達に一時的にではあるが回復魔法をかける事ができるようにすることができる」

 おお、と衛視達がどよめいた。

 「だが問題があってな。まず資質にもよるが一人一人の才能に限界があること。

 次に消費するMPの量が多いこと。もちろん才能に限界はあってもエクストラヒールまでは誰にでも実行できるようだからそれを伝授したいが…そういえばこの中で結婚している者はいるか? あるいは恋人がいる者とか。
 
 いたら伝授はできないな…って全員独身なのか。それなら好都合だが、本当に妻とか恋人とかはいないんだな?」

 「おりません、ラフィアス様。もともと衛視って地味で給金が低い職業ですからね。例え危険でも冒険者に夢見る女の子って多いんですよ。実際に一攫千金を手にした冒険者も多いですしね。もしくは商人とかですね。衛視をやっていれば今回みたいなモンスター襲撃みたいな事件はあっても、あんなこと滅多にないので危険じゃないけどその分だけ地味で退屈で給料が低いのが俺達衛視です」

 と、ガルスンが小さく手を挙げて隊長の代わりに答えてくれた。

 「そうか。それなら安心だ。実はお前達衛視に回復魔法を一時的に使えるようにしても、だ。

 大抵の者は魔力が低くて、一度使えば魔力枯渇になってしまう。だから魔力はおろか生命力も急速に回復させるポーションを作ってみたんだが、それが少し飲みにくくてな…。お前達に飲めるかどうかわからんが、それさえクリアできれば魔力枯渇になっても、俺の特性ポーションを飲めばすぐに回復できるので、安心してエクストラヒールを何度もかけられるほど魔力を増大させていくことが可能なんだが…」

 腕を組んで悩まし気に唸る俺。演技や芝居じゃない。実際アレは飲む人を選ぶポーションだからな。

 「ラフィアス様。それなら試しにそのポーションを我々が飲んでみるのはどうでしょう? それがどうしても飲めないほどまずいのであれば、我々も諦めます。ポーションの料金は払いますので一度、試させてくれませんか?」

 と、隊長がおずおずと手を挙げた。

 「ポーション自体はそれほどまずくはない。材料もタダだ。というのもそのポーションというのはな…」

 そこで俺は衣服を闇の中の空間に収納して、全裸になった。仰天する衛視達に俺は地面を見ながら回答する。

 「実はそのポーションというのは、俺の精液なんだよ…」

 そう言うと、馬車の中にあったガラスのワイングラスを念動のアビリティで引き寄せて、グラスに俺の肉棒の先端を入れてやる。もう面倒なので「王者の霊衣」の効果をアビリティ・リミッターで下げないでいるせいか、俺の肉棒の先端の鈴口からは、まるで山から川へ流れる源泉のように細いが、透明な雫を生み出している。

 それは時間が経つと細い流れのように、肉棒の根元へと伝い落ちていき、止まることがないのだ。

 「今の俺は射精もある程度制御できるようになった。そして連続射精も可能になった。今から実演するからよく見ていてくれ」

 そう言いながら俺は鈴口の先端から勢いよく射精しているのをイメージした。

 すると陰嚢から肉棒へとすさまじい快感が沸き起こり、あっという間に鈴口から大量の白濁液が大量に撃ち出されていった。

 回数にして16回ほど撃ち出されていった精液。それは間違いなく光っていた。

 「そしてこれが連続射精だ。やろうと思えばグラスが溢れるまで射精し続けることができる」

 俺は目を丸くしている衛視達に無表情で告げると、また射精をイメージする。

 もうアビリティをアクティブにする必要すらなかった。この程度の量ならイメージするだけで十分だった。

 どうしてこんな事ができるのかはわからないが、おそらく「王者の霊衣」の影響だろう。あれをパッシブにしていても、マントの効果を3000倍にしたのだ。射精制御能力も桁外れに上がっていてもおかしくないだろうな。

 そして連続で射精されてワイングラスの中は1分ほどで精液で溢れそうになっていく。

 そこで射精を終えると、俺はテーブルの上に念動のアビリティでグラスを置いた。

 そして亀頭部の先端を指で押して残りの精液を鈴口の先端から強引に押し出すと、もうグラスの中に入り切れなくなったのか、数滴の精液がグラスから溢れていった。

 精液で満たされたグラスは光っており、室内の照明を落としてもグラスの側なら本が読めるほどの光量をもっていた。

 そういえば俺も今の精液がどれだけの効果があるのか確かめていなかったな。

 しょっちゅうグレードアップするから鑑定するの面倒だったんだが…。

 そんな訳でどれだけLPとMPが回復するのか、という点に限定して鑑定してみたら…

 250mlタイプの精液ポーションを全部飲んだと仮定した場合の回復量・LP回復量2000万。MP回復量2800万。

 …うん。一級創造神様の分身を呼べるほどの精液だからね。今更驚くことじゃないよね。

 「どうだ? 俺の精液は光っているだろう? これさえ飲めればLPとMPが2000万までならポーション瓶を一つ飲めば完全に回復するんだが…何しろ精液だからな。やたらとベトベトしていて飲みにくいってことは同じ男のお前達ならわかるだろ? …って飲んでるぅ!?」

 ゴクゴクとワイングラスの中の精液を一気飲みしていくガルスン。

 ぷはぁっと口に付いた俺の精液を拭うと、目をキラキラさせて

 「ラフィアス様。これ、そんなに不味くないですよ? ちょっとベトベトするけど、それさえ我慢して飲めば結構イケます! それにこれさえ飲めればエクストラヒールが使えるんでしょう? だったら俺は合格ってことになりますよね?」

 「あ…あぁ。確かに合格だが…。しかしお前、よく飲めたな。男の精液だぞ? 気持ち悪いとか生理的に無理だとは思わないのか?」

 「そりゃ他の男の精液なら無理でしょうけど。でもラフィアス様は街の連中を癒しただけじゃなくて、水汲みしやすいように、大量のMPを消費して専用のポンプを置いてくれたじゃないですか! それだけじゃない。腰痛緩和の結界とか害虫除けの結界とか。

 さらには俺達があれほど苦戦していたモンスター達の根城のダンジョンさえも破壊してくれたんですよ!?

 そんなラフィアス様の精液が薬でこそなれ、毒になるわけないじゃないですか! だから俺はあなたの精液なら飲むことができます。それこそ俺の胃袋が一杯になるまで…」

 そう言いながらガルスンは俺の怒張して天を衝いている肉棒をそっと手にしてしゃぶりだした。

 「あ、こら! ずるいぞガルスン。最初は隊長である俺がやろうとしてたのに!」

 「じゃあ次は隊長ですね。その次は俺が…」

 「いいや俺が三番手だ!」

 と、まあ急に騒がしくなった馬車の中だった。

 結局、ガルスンが俺の精液を飲んで、俺のイチモツをしゃぶって逝かせてくれたおかげで、他の衛視達も全員、俺の精液を飲むことができるようになった。

 念話や読心のアビリティを使ってこいつらの本音を覗いてみたが、回復魔法を使う事で女の子にモテたい、という不純な動機じゃなかった。

 単に怪我人や病人を助けたい、見ているだけはもう嫌だ、という思いがどの衛視にも共通していた。

 そして俺は衛視全員にエクストラヒールと浄化魔法のクリーンとピュリファイを伝授した。

 使用したアビリティはもちろん、「アビリティ付与」だ。

 もちろん事前に慢心したり、治療費を馬鹿高い額で請求しない、できる限り怪我人、病人を助けるなどの事を誓わせて、誓約の鎖のアビリティで縛ることは忘れなかった。

 そしてエクストラヒールでは限界があり、絶対に慢心しないこと。そして医者や施療院に勤める者達を馬鹿にしないこと。彼等に協力して、不摂生な生活は慎むことなどを守らせた。

 そして隊長が蛇の神、アナントスの信者だったせいか、俺が誓約の鎖を使った後に己の手首を軽く切って、その血で俺の精液、および精液ポーションについての秘密を守ること、俺に対して絶対にして永遠の忠誠を誓うとアナントスの名において誓ってくれた。

 それは他の9人も同様だった。隊長から渡されたナイフで一人ずつ己の手首を切っては、誓約の言葉を言って蛇の神、アナントスに誓っていった。

 こうして俺はダンジョンでコア・ブランチに作ってもらった精液ポーションが1万本入るバックパックに最新型の精液ポーションを1万本詰めたものを全員に渡した。

 いやー。10個作ってもらったけど、今じゃ時空の大精霊達がいるから、100万本とか1億本とか入るバックパックとか作れるから、どうしたらいいのか困っていたんだよね。

 おかげでこいつらにプレゼントと称して処分することができたわ。

 そしてそんな事を知らないこいつらは、早速身についたエクストラ・ヒールを自分の手首にかけてはその効果に驚いている。一応、俺の許可なしにはこのバックパックは売らないように言っておいてある。

 このバックパックでも冒険者にとっては垂涎の的だ。捨て値で捌いても金貨1000枚はするだろう。

 「よし。魔力枯渇になったらすぐにこのバックパックに入っているポーションを飲むんだぞ? わかっているとは思うが、1万本入っているからって無駄遣い禁止な。言っておくがこのポーションは魔力枯渇を回復させる為に、お前達に分けたに過ぎない。回復効果が優れているからって、薬屋とか錬金術師に売ったりするのは厳禁だ。

 ここにいる仲間以外には中身とか知らせないように。よほどの緊急事態を除いて他人に飲ませるのも厳禁だからな。そんなことしたら、どうして精液なんか飲ませるんだと争いの原因になるからな。聖人様の特別な術が込められていて部外者には精液として飲みにくいように感じるんだと、適当に誤魔化しておくように。いいな?」

 俺の言葉に衛視全員が頷いた。こうして俺は街の門まで馬車を移動させてから、全員を下ろして王都へと帰還することにした。

 …何だかなあ。俺の精液ポーションの理解者が増えたのは嬉しいが、また狂信者が増えたような気がする。

 まあ今回は隊長含めて、全員がアナントス様の信者だったようだから、俺の為に狂っているとしか思えない行動をとるとは思えない。いやそう思わないとやっていけないから、そう考えることにしよう。

 「アナントス様。何だかあの衛視達、あなたよりも俺に信仰をもってしまったみたいで。以前にもこういう事があったので、お詫びとして俺の精液ポーションで良ければ召し上がってください」

 と、時空魔法でダンジョンの地下131階層に山積みされた100万本の精液ポーションを示したら、次の瞬間にはポーションの中身が全て、一本残らず中身だけ綺麗に消え失せた。

 …消えた! 半分冗談でやったのにマジで消えた!!

 何だか怖くなったので、俺は馬車を人里離れた森の中で止めてから模型に戻して、王城の中の隠し部屋の中へと転移した。
 
 時間を示す宝石を見ると、まだ午後2時頃。夕飯までにはまだ時間があるな。それじゃ寝ているか。何か今日は疲れた。いろんな意味で。

 だが俺は知らなかった。俺が施したアビリティはどれも素晴らしい成果を上げていたことに。

 そして「無限の湧水ポンプ」が予想以上の素晴らしさに三柱の神々と同じかそれ以上に俺が崇拝されていることに。

 メデフィア街に住む全員が俺の熱心な信者になっていた事を知るのは大分後になってからだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 後書きです。というわけで今回もまた信者という名の、ラフィアスの取り巻きが誕生しました。

 しかも全員男で、一人はレヴィン宰相に匹敵するほどのムキムキマッチョです。

 最初は猜疑心と敵意に満ちていたのに、ラフィアスの実力の片鱗を見せたら素直でいい子になりました。

 これからは彼等がラフィアスの代わりに街を守るでしょう。

 それでは読んでいただき、ありがとうございます。


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