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第65話 闇の獣人、女騎士の事を思い出して手を打つことにする(後編)
しおりを挟む「どうだ? 俺はお前達の心と体の病を癒してやった。まだ体と心の痛みや障害を感じる者はいるか?」
俺の問いに全員が首を横に振る。
「いいえ! どこも悪くありません。痛みは完全に消えました!」
「私もです! 今までは辛くて体が重苦しかったのに、体が軽くて今まで痒くてたまらず体中を掻きむしっていましたが、もう痒くないんです。それどころじゃない。肌がボロボロだったのに、今では肌が元通りになっているどころか、赤ちゃんみたいにツヤツヤの肌になっているんです!」
精神的疾患の恐ろしさは体にも影響が出ることだ。体を掻きむしっていたこの中年の女性は心が病んでいたから、それが痒みとなって表れたんだろうな。可哀想に。
だがパーフェクト・ヒールやアルティメット・ヒールで体の方は完治して、精神の病は「超・修復」で完全に治っただけでなく、心も強くなったのでもう痒みが再発することはないだろうな。
俺は周囲を見回すが、誰も苦しんだり、辛そうな顔をしていない。
「そうか。どうやら俺はお前達を助けることができたようだな。ではお前達に頼みたいことがある」
そう言って俺は闇の中の空間から、「眠り姫の棺」と彼女の愛馬のゴーレム、ジュナーを取り出してリアーナのことについて説明した。
彼女が借金返済の為に危険なことに手をだしていること。実力が足りないのを知っていながら、漆黒の獣聖人から離れようとしないので止む無く眠らせていること。
だが最近では悪魔をはじめとする魔族が出現してきた事で、漆黒の獣聖人の側に置いておくのは危険である上に、彼女の実力では足手まといにしかならないこと。
それでも自分が説得しようとしても彼女は意固地になって側にいたがるだろうということを、この場にいる者達に説明していった。
「だから俺は魔族を何とかしなければならん。今はこのリアーナという娘に煩わされている場合ではないのだ。そこで、神の力を借りた俺に癒されたお前達なら、俺の実力を目の当たりにしているので、目覚めた彼女に説明できるだろうから、うまくリアーナを説得できるだろう。もちろん大勢で説明しては彼女が混乱するだろうからな。
ゆっくりと時間をかけて一人一人、丁寧にお前達がどんな症状でどんな思いで辛い日々を過ごしていたのかを説明してやるのだ。そしてそれがどのようにして完治したのかをリアーナに説明してやるのだ」
「「「「「「はい、漆黒の獣聖人さま!!」」」」」
「それから商人達よ。お前達にやってもらいたい事があるので前に出てこい」
相変わらず偉そうな口調で群衆の端の方で俺を拝んでいる闇商人達を俺は人差し指をクイクイと折り曲げて、早く来いというジェスチャーをする。
すると俺を苛立たせたら大変なことになると思ったのだろう。また雷を落とされるのが嫌だったのか、ものすごい速さで俺の前に整列した。数えてみたら27人ほどいた。
俺は闇の中の空間から、直径15cmほどのダイヤモンドを5個ほど取り出して、さらに最初に換金しようとしていた金塊も闇の中の空間から取り出して、両方とも念動のアビリティを使って俺の前に浮かべてみせる。
すると案の定、商人達は畏怖と畏敬を抱いたのか、先頭に出てきていたあご髭男が片膝をついたのを切っ掛けに、全員が俺の前に跪いた。数秒、遅れて元・病人達も跪いていった。
「まず、リアーナが抱えている借金を返済しなければならん。だからこのダイヤモンド一つで事足りるとは思うのだが、リアーナの両親が抱えている借金が増えている可能性もある。そこでこの金塊も付けるのでお前達の中で、少なくとも7名はリアーナと共にエルモーラ王国の彼女の実家に行って、彼女の両親の抱えた借金を清算するために尽力してほしい。
そしてダイヤモンドと金塊の二つで足りるのであれば、余った金はそのまま滞在費として使ってくれ。彼女の借金を返済したら、その次にエルモーラ王国内で、廃れて荒れ果てて使われなくなった神殿、教会、寺院を探し出してほしい。
もちろん邪神を崇める神殿も調査対象だが、あくまで調べるだけだ。それより女王神メランティアをはじめとする正しき神々を崇めていた施設の調査をしてほしい。護衛にはリアーナがいれば大丈夫だろう。心配するな。お前達には印をつけておく。これをマーキングというのだが、これを付ければ、距離に関係なく俺がお前達の影の中から現れて助けることができる」
そこまで説明すると、商人達は大きく目を開いて驚愕している。それは背後に控えている元・病人達も同様で、すごい、とかそんなことができるとは、とか慄いている。
うん。これって治癒魔法使ってこいつらを治していなかったら、俺って化け物扱いされていて王都から追い出されていたよな。絶対に。
「そして次に。他の闇商人達の内の10名は調査の為に動いてもらいたい。
この王国はもちろん、王都ジェルロンドでも小さな寺院でもいから、邪神以外の神を崇めていた施設や祠の調査を頼む。もちろん強引な方法で調べるのは論外だ。調査費用はダイヤモンド1個を換金した額で十分だろう。
全ての使用されなくなった宗教施設を調べ上げたら、今度はそれらの施設を修復しなければならん。
俺の治療を受けて病気や怪我が治ったお前達なら、俺のもつアビリティが神々から授けてもらったものだということが理解できるだろう? そして神が存在するということをお前たちは身をもって知ったはずだ。
ならばその神々を崇める施設を直し、神々を崇め、祈りを捧げなければならん。
もちろん報酬は出す。このダイヤモンドは俺がダンジョンで数多くの魔物を退治した時に取得したものだ。
これを金に換えるのだ。まずはお前達の生活の改善。衣、食、住を改善し、人並みの生活がおくれるようにしてやるが、間違っても豪華な生活など望むなよ? それは残りの10名の闇商人達に一任するが、これらのダイヤモンドを換金した金を必要以上にこいつらに渡すな。一度に大量の金を渡すのではなく、一月毎に渡すのだ。いいな?」
闇商人達も全員、壊れた人形のようにかくかくと頷いている。ダイヤモンドを見てその大きさと純度に未だに本物かどうか信じられないようだった。
「あの、漆黒の獣聖人様。国中の宗教施設を建て直すとなりますと、そこに住む人を派遣して手入れとかしなければいけませんが、その人員についても調査した方がいいでしょうか?」
と、頭領格のあご髭男がおずおずと手を挙げて質問してくる。
「調査するのはその宗教施設の神官や僧侶といった連中だ。そいつらの中で権力や名声の亡者ではなく、信仰に生きる人間を調査して手配するのだ。
そしてこの場にいる元・病人や怪我人達を手配して神官や僧侶に育てればいい。金で雇われた信仰心のない僧侶や神官などゴミ屑同然だ。それよりも信仰心のあるお前達の方が100倍価値がある。
もちろん学校に行きたければそれでいい。卒業してから神殿や寺院に住めばいい。強制はしないが…俺としてはできるだけ寺院や修復された宗教施設に住んでそこの管理をして、神々の為に祈りを捧げる生活をしてもらいたいと思っている」
「しかし…その、漆黒の獣聖人様の御言葉に歯向かうようで恐縮ですが、調査して子供達を教育するのに手本となる僧侶や神官が見つかったとして、彼等がそう素直に修理されたとはいえ、他の寺院や神殿に住みたいと思うでしょうか?」
おずおずとあご髭男が手を挙げて言う。
「お前の言うことも最もだな。しかし俺はフィラーレ女王陛下、シャリアーナ王女、レヴィオール宰相とは親しい付き合いをしていてな。俺が国内の荒れ果てた神殿や寺院を修理して、この王都にて仕事のない者を僧侶や神官につかせたいと願えば、すぐに担当の神官を派遣してくれるだろう。
数が多くてどうしても見つからないのであれば、俺が探してスカウトしてこよう。だからお前達は心配するな
先程も言ったがこの厳しい世界の中で生きてきて俺の治療を受けて信仰に目覚めたお前達の方がそこらの金の亡者に成り下がった神官長や大神官に比べてはるかに価値がある。だからこそお前達はその信仰心を糧にして互いに支え合い、いかなる難事も切り抜けてほしいと思っているのだ」
そう言うと、群衆の内の4割が歓声と共に人目を憚らずに笑顔で泣きだした。嬉し泣きというのだろうか?
え? もしかして価値があると言ったから? 何かもう、忠誠心とか観測するマジックアイテムがあったら、測定不能というメッセージが出そうなくらいの熱狂ぶりだ。
しかもその熱狂ぶりは俺に対して向けられている。どんなに歓声を上げても、泣いても俺を見て俺の方を向いて、祈りの形に両手を組んでいるのがその証拠だ。
何だかいたたまれなくなって、俺は宗教施設を建て直すのに何十か所も必要だということ。こいつらの生活させるためにも金は必要だからダイヤモンド3個じゃ足りなくなるだろう。
ただダイヤモンドを多くだすと希少価値が下がってしまうかもしれないので、俺は闇の中の空間からミスリルゴーレムを出してみた。
「国内の多くの使われなくなった宗教施設を建て直すのにダイヤモンド3個じゃ足りなくなるだろうから、これを金に換えるがいい。とりあえず200体ほど出せば国中の施設の工事の職人の調査や派遣の費用に足りるか?」
と、俺はあご髭男に聞いてみた。彼は俺と出された、自分の身長よりでかいミスリルゴーレムを交互に見つめている。
「いやいや! 200体なんて多すぎですよ! 50体ほどで十分御釣りが来ますって!」
「そうか? ではとりあえず100体ほどミスリルゴーレムを出しておこう。余った金は冒険者を雇うのに使うのだ。もちろん腕が立って信用できる冒険者となると限られてくるから、当然雇用するのに金はかかるだろう。
それが長期間となると尚更だ。だから倍の数のゴーレムを出しておく。とはいえ…ミスリルとはいえ、これほど多くのゴーレムを出すと希少価値が下がりそうだな。
ならばジャイアント・レッド・ヴァイパーの肉はどうだ?」
今度は東の山脈のダークエルフの洞窟内で倒した全長30メートルはあろうかという赤い蛇を、闇の中の空間から出してやる。
もちろん頭の部分だけだが、そのでかさに患者達や商人達が悲鳴を上げた。それでも逃げ出さないのは俺への信仰心があるからだろう。大したもんだな。
「あ、あ、あの、漆黒の獣聖人様…この蛇はどこで倒したのですか?」
あご髭男の質問に俺は東の山脈にあるダークエルフの洞窟にいたので即死させたと答えた。
「だから遺体は傷一つ付いてないぞ? やはりこれだとでかすぎるか? ならグリフォンでどうかな? 10体ほど出せるぞ? それともキマイラの肉がいいか? あとゴールドドラゴンもあるぞ?」
そう言いながら、蛇の遺体を収納すると代わりにグリフォン、キマイラの遺体を取り出して後ろに素早く下がった群衆の前に置いていく。
そして黄金竜の上半身だけを出した状態でいるか? と闇商人達に聞いてみると、また壊れた人形みたいに首をカクカクと縦に振る。
「すげぇ…本物のゴールドドラゴンだ。俺、初めて見た…」
「あたしも…見てよこれ。傷一つ付いてないわ。まるで眠っているみたいね」
「こりゃ捨て値で捌いても金貨5000枚はするぞ? 黄金竜といったらその鱗の美しさだけじゃなくて肉も爪もドラゴンの中では一級品だからなあ。うまく交渉すれば金貨2万枚の価値はあるぜ?」
と、あご髭男が出された黄金竜の遺体を撫でながら、笑顔で配下の闇商人達に価値を説明している。
「どれも即死させて傷はつけていないから、価値が下がるということはないはずだが…。どうだお前達。これだけで足りるか?」
「足りるも何も、十分過ぎますって! それに聖人様。無理して出さなくてもいいですぜ? ダイヤモンドを五つも出して、おまけに黄金竜にグリフォン10体に、キマイラまで出してくれて…もう打ち止めなのに、ここまでしてくれなくてもこれだけあれば国内はおろか、隣国のエルモーラ王国の使われなくなった宗教施設の使用許可の料金および修復と人員の手配にまで使っても十分に御釣りがきますよ!」
興奮したあご髭男に俺は呆れた声を出してしまった。
「打ち止め? この程度の量でムリして出しただと? そんなわけないだろう。なんなら宝石竜の遺体でも出してみるか? これが水晶竜で、これが…」
闇の中の空間から、頭部だけ出した水晶竜やその他の宝石竜を見て、商人達が腰を抜かして座り込む。
もはや悲鳴も上がらないほど仰天しているようだった。
そしてブルーダイヤモンド・ドラゴンや三つ首のダイヤモンド・ドラゴンの頭部を出した時に、彼等はうつろな顔をして力なく笑い始めた。
最初は数人だったのに、あっという間に闇商人全員が笑い始めた。
「あははははは…伝説といわれた…宝石竜を…こんなに…しかもダイヤモンドでできたドラゴン…あは、あはははははははは…」
何かまずかったかな? 壊れた笑顔としか表現できない商人達を見ながら俺は彼等が心配になって、超・修復のアビリティを起動してやった。
たちまち地面から湧き上がった光のもやに商人達が包まれる。
それが収まると、頭領のあご髭男が俺の足元にものすごい速度で駆け寄ってヤモリのように這いつくばった。他の連中も彼の背後に続いて同じ姿勢をとる。
「漆黒の獣聖人、ラフィアス様! 我々、闇商人は改めてここに絶対にして永遠の忠誠を誓います! 全員あなたさまの下僕にして奴隷です! どうか珍しい商品やモンスターを倒して綺麗な死体を手に入れた時は、どうか我々に一声かけてください! 絶対にあなたさまを失望させるようなことはいたしません!」
そう言って額に謎の紋章をハンコで押す頭領。それに続いて次々に同じ動作をする配下の26名の闇商人達。
あれってもしかして蛇の紋章? 確かアンネリーザが使っていた誓約の儀式にも蛇が使われていたような…。
俺の疑惑を裏付けるかのように、彼等は指先を持っていたナイフで傷つけて、その血を額の紋章になすりつけた。
「我々はラフィアス様に絶対にして永遠の忠誠をここにアナントス様の名において誓う! もしも誓いを破りし者は身も心も永遠に苦しむ罰を受けると知れ!」
その声と同時に白い紐? いや大蛇が闇商人達に突撃して…光の粒になって消えた。
元・病人達は困惑した顔をして商人達を見つめている。俺もこんな態度に出るとは思わなかったので、どうすればいいのか、わからない。とりあえずナイフで指を切って痛いだろうからパーフェクト・ヒールを全員にかけてやる。
「あー…うん。わかった。お前ら俺の下僕にして奴隷ね。うんわかったから少し落ち着け」
そう言ったら嬉しかったのか、額を何度も地面にゴンゴンぶつけはじめる頭領。当然ながら背後の商人達もおなじ行動をとりはじめる。
えぇー。何だこれ。どうしたらいいんだろう…。宝石竜って珍しいけど、そこまでのリアクションをとるとは思わなかったわ。相変わらず額を地面にぶつけ続ける商人達を見て、俺はどうすればいいのかわからず、彼等の珍妙な行動を見ていることしかできなかった。
それでもこの場を支配する俺がオロオロしている姿なんぞ見せられるわけがない。偉そうに腕を組んでいるのはその為だ。
そして俺はまた拡声の魔法で「顔を上げよ」と短く命じた。
すると這いつくばった姿勢から即座に顔を上げた商人達を前に俺は周囲を見回してみた。
その目は尊敬、畏敬、畏怖、と微妙に違いはあったが俺に対する絶対の信頼が込められている。
「みんな。よく聞いてくれ。俺がダンジョン内で倒したモンスターを倒し、その遺体を出したのはお前達に幸せになってほしいからだ。人並みの生活を送り、衣、食、住に満ちた生活を送り、文字の読み書きができるようになり、愛する者と結ばれて天寿を全うする。
それが今の世の中、どれほど難しいことか。それはお前達が一番よくわかっているはずだ。
例え俺が金を出してお前達の生活を支えたとしても、商人達の支えがあったとしてもだ」
俺の指摘に顔を曇らせる一同。まさに正鵠を射る、という言葉通りに俺の言ったことは間違ってはおらず、全て事実だったからだ。
「そこでお前達に命じる。今から病気や怪我で苦しんでいた者、心の病で苦しんでいた者、これらの二つの条件にあう者達を支えてきた者達。そして黒服の者達と商人達は互いに協力して支え合いながら生活するのだ。
世界は邪神達によって荒らされ、多くの神々は邪神達との戦いで力の大半を失い、眠りにつかざるを得なくなったのは伝説や神話を少し調べればわかるだろう。
だからこそ、お前達は互いに支え合い、助け合わなければいけないのだ」
俺の言葉にまた全員、両手を組んで何度も頷いている。うんそうだよね。俺、間違ったことは言ってないよね。
「だから今、改めて誓約をしてもらう! この場にいる者達全員で嘘や騙し合いはしない、罵らない、愚痴や不平不満も心を腐らせるだけなので言わない。暴力は振るわない、富を手にしたら独り占めしない、力の及ぶ限り互いに助け合い、支え合うといった事をだ。その為に俺は今一度、誓約の鎖を行使する」
最初は誓約の鎖を知って恐れる表情や素振りをしていたが、今では全員が俺の忠実な信者になっているようで、誓約の鎖を使うと知っても、顔色一つ変える者はいなかった。
「「「「はい! 我々は嘘や騙し合いはしません。罵らないし愚痴も言いません。暴力は振るわず、富を手にしても独り占めはしません。互いに助け合い、支え合うといった事を誓います!」」」
…おー。別に復唱しろとは言わなかったのに、小さな子供以外全員ほとんど声を合わせて誓ってくれたよ。
俺は再度、誓約の鎖を使った。また半透明の鎖が元・患者達とその家族や友人。そして商人達と黒服の男達へと伸びていって巻き付いていく。
それが終わったら、俺はあご髭男を手招きした。早足で俺の前にきて跪いたこの男に名前を聞く…のは面白くないので、念話のアビリティを使ってこいつの心の中を覗いてみた。
すると俺に関しては畏怖の感情が一番強かった。
で、こいつの名前はセルロン・リーテゲルト。元貴族。男爵家の三男坊だが実家がどうしようもないクズだったので、実家を見限って商人として成功。ある程度までは毒薬や暗殺の知識と技術をもっているようだった。
「お前の名前はセルロン・リーテゲルトだな? お前にリアーナの世話を中心にやってもらう。彼女の名前はリアーナ・イルファシア。彼女は俺に助けられたせいか、俺に執着している節があり、俺から離れようとしない。返さなければいけない借金を背負っているにもかかわらずだ。
今の俺は国賓で城で悪魔から王族達を守らなければいけないということ。リアーナの両親はお前の親ほどではないが、浪費癖が激しいので、同じ悩みをもつ元・貴族のお前なら彼女も素直に言う事を聞いてくれるだろう。
そして借金を返済した後は各地の使われなくなった宗教施設の調査の為の護衛として働いてほしいということを説明するのだ。同行する他の六人の商人の選抜はお前に任せる。いいな?」
名乗ってもいないのに、いきなりセルロンという名前を言い当てられたこと。そして親のことまで言われたことで度肝を抜かれた顔をしており、汗をダラダラと流し始めた。
「承知しました。リアーナ様は俺、いや私が命をかけてでも守ります。そしてあなた様へ不必要に近寄らないようにも言い含めます。そして各地の使われなくなった宗教施設への調査の為の護衛をしてもらう事が、あなた様を喜ばせる事だということも伝えて一緒に働いてもらいます」
「それでいい。手がかかるようなら、他の6人の商人にも協力を求めろ。他の奴らもセルロンに従うように」
俺が相変わらず腕を組んで指示すると、全員が敬意のこもった眼で同時に頷いた。
それを確認した俺は時間を停止させて、商人達や黒服の男達。あと元・怪我人達全員をマーキングしていった。
「刻印永久付与」。これもアビリティの一つだ。数が多すぎて紹介しきれなかったが、状態把握に近い。いわゆるマーキングで、これさえ付けておけば相手の位置がわかるだけでなく、どういう場所にいるのかが頭の中に情景として流れ込んでくる。状態把握と違うのは、あくまで位置とその情報がわかるだけであって、健康状態などはわからないということ。
ただしその代わりといってはなんだが、物質やモンスター、邪神、魔族、霊体、場所にもマーキングできるという利点が挙げられる。しかも効果は永久で術者が削除しないとまず消えない。例え術者を殺しても効果は永続する。
そして「永久不変」と同じように少なくとも30柱の神々が力を合わせないとこのマーキングの効果を消すことはできないそうだ。そりゃ邪神や悪魔みたいな大迷惑な連中の行方がわからなかったら、世界にとって大損失な事態を引き起こすに決まっているだろうからな。それにしても最初から100人までマーキングできるのはすごいな。
レベル10で1000人まで。レベル20で10000人。レベル30で無制限ときた。
このアビリティでさっそくこの場にいる全員にマーキングしていったら、途中でレベル2に上がった。
そりゃ100人以上付けていったらレべルアップするか。覇王竜の装備シリーズを身に着けているし。
全員にマーキングした俺は時間停止を解除して、セルロンと背後の商人達に「精気分与」というアビリティを使ってみた。
セルロンに一回かけると、顔を赤くして股間を抑えてモジモジしはじめた。鑑定してみると精気過剰による完全勃起と出た。
あれ。最初の一回でこんなに精気分与できちゃうの?
どうも鑑定してみたら、術者のLP(ライフポイント)の十分の一の生命力を対象に分け与えるらしい。その量は術者のLPに比例するらしい。今の俺って確かLPが30万くらいあるんだっけ。ってことは3万か。そんだけ膨大な生命力を分け与えたら完全勃起するか。
俺はサービスで他の商人達にも精気分与をかけてやった。全員にやったら、レベル10になった。
後はそうだな。黒服の連中にも精気分与かけておくか。レベル10になったので5人まで分与できるから、8回かけて40人全員に分与してやった。
するとほぼ全員が股間を抑えたり、荒い息を吐くという、やたらと落ち着きのない集団になったけど、まあ仕方ないな。これから働いてもらうんだし。
「今、お前達に俺の精気の一部を分けてやった。どうもお前達にとっては多すぎるようだが、これから働いてもらうのだから、徹夜や娼館巡りをして精気を漏らして疲労することがないようにしておけ。では俺は城に戻るので、後は先程俺が命じた通りに各々動くように」
モジモジしている商人達や黒服達は恥ずかしいやら嬉しいやらと悲喜こもごもの顔で頷いたのを確認して、俺は城の隠し部屋へと転移した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
というわけで後書きです。まず長くてごめんなさい。逆に5000文字程度じゃ短いよ! という人は
お待たせしました(何か変ですね)
そんな訳でラフィアスはリアーナを助けるついでに、多くの人を癒しました。
そのついでに地下で生活している、ある意味貧民街よりも貧乏で怪我や病気で苦しむ人々を救い、彼等がその後も幸せになるように商人達を雇うことになりましたが、彼等からは盲信ともいえる行き過ぎた忠誠心をもたれてしまったようです。
すでに長いので。ここまで。読んでくださりありがとうございます。
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