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第12話 闇の獣人、絡んできた親衛隊をぶちのめすがあまりのしつこさに辟易する
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王城から来た馬車の中で俺はメイド…ミシェルという金髪ボブカットの娘の中に3回ほど射精した。
とにかく立派な制服を着ているので、汚さないようにしないといけないのでなかなかセックスに集中できない。
浄化魔法を使えばいいのだろうが、王城の中では結界が貼られた場所とかも多いらしい。
つまり魔法とか使えない場所もあるから、そういう所では浄化魔法は使えないので、こうして気をつけながらセックスするという行為は大切だと思う。
さすがに3回もやれば十分だということで、彼女との情事は緊張感に満ちたままで終わった。
どうやら俺は男としては不能ではなく、男性機能が立派に機能していると認められたようだった。
そして俺が性病持ちだったら、ミシェルにも感染しているはずだからミシェルを調べればわかると。
何だか腹が立つな。そんな事しなくても俺を調べればいいのに。こういう回りくどい方法をとる奴って好きになれないな。もしも女王がそんな事を考えてミシェルを派遣したのなら、ちょっと失望したかも。いや、彼女が犯人とは決まったわけじゃないんだが。
おそらくいい女をあらかじめ派遣して性交させて俺のご機嫌をとろうという程度にしか考えていなかったんだろうけどな。それでも何だかいいように操られているような感じがする。まるで俺の両手両足に見えない糸でも付けられたような感じがして気分が悪くなってくるな。
ベルが鳴らされると30分もすれば王城につくという。
後は彼女とお喋りをする事になったが、どうも彼女はこういうのが苦手らしくてあまり進まない。
会話がもたないのだ。俺もおしゃべりは得意じゃないので俺が質問して彼女が答えるという形になる。
そしてミシェルが言うには、このまま素直にはお姫様や女王様には会わせてもらえず、親衛隊の連中とバトルを繰り広げて勝たない限り、無理だということを教えてくれた。
親衛隊の八割は俺と同じ獣人で構成された王城専門の軍隊で、その数は52名ほど。その上には近衛騎士団が存在する。こちらは王族を守る為に存在しているので、直接的には親衛隊とは関わらないが、両者の仲は極めて良好で、親衛隊にとって近衛騎士団は兄のような存在であり、王族の警護をする彼等を尊敬している。
また近衛騎士団も王城の警護をしている親衛隊を大切にしており、ミシェルによると近衛騎士団はその多くが貴族で構成されているにも関わらず、女王自らが選んだだけあって、貴族という地位の高さや家柄、身分をひけらかして威張り散らすような奴は一人もいないのだという。
そして王城に暮らす女官や大臣も色眼鏡で見る者はほとんどいないのだとか。
王政というと、見た目は王様や女王様が政治しているように見えても、実際には大臣や宰相が実権を握っていて、そういう臣下に踊らされている王様や女王様はただの人形でしかないのだ。確か傀儡政権というんだっけか。
だがこの国ではそういう事がないようで安心した。
もちろん国ならではの軍隊も存在する。ミシェルによると、地、水、風、火の四大将軍がいるそうだ。
だがこの国レナリアーラは南北から伸びる山脈のお陰で守られているし、西や北は海なので水軍と陸軍でも併せて2~300名。
風と火の軍隊は百数十人程度しかいないのだという。そんなに少なくて大丈夫なのかと聞いたら、少数精鋭で質が
いいから今までやってこれたということらしい。大丈夫なのかね、そんなに兵の数が少なくて。
どうも四代将軍の配下の兵士は誰でも最低ランクの攻撃魔法は扱えるほどの腕前の持ち主らしい。
量より質で、そこらの雑兵じゃないってわけか。ちなみに女だと生理があるので扱いにくいので、将軍は全員男だということだ。ま、確かに男だと女みたいに子供作るような複雑な体じゃないから、戦争にはもってこいだよな。
ただ、今は秋から冬になる時期。この時期に山越えする馬鹿はいないと思うのだが、外側から攻めても駄目なら内側から、という作戦をとる国がいた為、そうさせないためにも地の将軍以外の三人は他の街を回って、街に他国のスパイが紛れ込んでいないかといった調査に出るらしい。実際に調査するのは副官らしいが、これが街の住人を安心させるので毎年やっているらしい。
「そういえばこの城の名前ってなんだっけ? 確か王族が住む建物って必ず名前とか付けられるんだろ?」
「おっしゃる通りですわ。王城の名前はジスニーヴァイン。ジスニーヴァイン城とお呼びください」
「ジスニーヴァイン? 人の名前か? それとも初代王の名前から付けたとか?」
「ジスニーとはゼスニーシャという庶民の女性の名前をもじったものです。そしてヴァインとはあなたの推測通り、この国の初代の王の名前です。お二人は大変仲がよろしくて、この城が建った時もそれは大切にしてくださった上に庶民からの人気も高かったのです。ただ庶民の女性の名前をそのまま付けるのではまずいということで、少し手を加えて、ゼスニーシャからジスニーという名前になったのですわ」
「こうして話を聞くと俺がこれから行くジスニーヴァイン城はどこも問題ないように思えるんだが…それじゃ何で親衛隊が俺の邪魔をしにくるんだ?」
「その事なのですが…どうも彼等はラフィアス様の事を全てとはいいませんが、かなり調べたようで。あなたが孤児で暗殺者ギルドで教育を受けたという事も彼等は知っており…その、つまり、皆さま女王陛下を愛する余り、あまり出自のいいとは言えない者には露骨、かつ過剰に攻撃する一面がございます。ラフィアス様には非はないのですが
女王陛下をもしかしたら暗殺しに来たのではないか? とか他国の貴族や王族によって飼いならされているのではないかという疑いを持つ者が多いのです。この疑惑は特に近衛騎士団に属する騎士の方々に多くみられます」
親衛隊が王城全体の警護を司っているのに対し、近衛騎士団は女王と王族のみを守る上位の軍隊であるのはさっき知ったが、同時に貴族独特の腹黒さや疑い深さも近衛騎士団には存在するらしい。貴族のもついやらしさをもつ騎士団か。一気に不安になったな。モンスターじゃないんだからぶちのめすわけにもいかないし。
また俺が姫様と女王との情事に及ぶことはどこからか、漏れているらしい。
そのせいで親衛隊の隊長が熊の獣人で、俺と戦って俺が勝つか自分と引き分けるほどの実力者でない限り、お姫様と女王様には会わせることができないという。
これには女王様もお姫様もドラゴンスレイヤーが親衛隊に負けるはずがないので、やりたかったらどうぞ、と放置しているようだ。
要するに腕試しだな。だが城の警備を司る親衛隊がやられたら警備がずさんなものになるので、戦闘不能にするのはいいが、何日も寝込まないようにしておいた方が女王とお姫様の覚えが良くなると、ミシェルはアドバイスしてくれた。
しかしバトルか。考えてみれば俺は今まで魔法をメインにして戦っていたから、近接戦を長時間することはなかったな。何か使えるアビリティはないか、探してみる。
するといくつか良さそうなのがあった。確かドラゴンの取り巻きのドラゴニュートから吸収した「身体能力倍増」
や「苦痛半減」、「速度上昇」、「跳躍力上昇」などがあった。
というかこれ、全部パッシブアビリティじゃないか…。つまり身体能力も最初から倍増されている上に、苦痛半減の状態になっているということか。念のために鑑定で調べてみると、苦痛半減は単なる攻撃を受けた時の苦痛だけじゃなくて、病気や精神的苦痛も半減してくれるらしい。
もともと俺は暗殺者としての訓練を受けていて苦痛耐性というアビリティをもっていたが、それが勝手に苦痛半減にレベルアップしていたらしい。そういえばダンジョンに潜り始めた時は雑魚が相手だったこともあって、近接戦だったよな。単に魔力を無駄使いするのが嫌なだけだったんだが。
そして速度上昇。これも速度が2割ほど早くなるらしいが、これってレベルアップしたら速度が増してかえって扱いにくいスキルになりそうだな。スピード上がり過ぎて壁や岩に突っ込むという自爆シーンしか浮かばない。
跳躍力上昇も同様だ。これから行く所はダンジョンじゃなくて王城だから、これもレベルアップしたら高くジャンプしすぎてシャンデリアとかに激突しそうな感じがする。
何て考えていたら、馬車が止まった。どうやら王城に着いたらしい。
そして出迎えてくれたのは典型的な灰色熊の獣人を中心とした親衛隊の連中だった。身長も2メートルを超えている。
「はじめまして。元暗殺者の国家特別総合調査局員のラフィアス殿。我が名はズラドール。早速だが貴様がこの王城の客としてふさわしいか試させてもらおう。ついてこい!」
鑑定してみると名前はズラドール・フェンダール。何だかかつらみたいな名前だな。
そいつはいきなりいちゃもんつけてきて戦闘訓練をする場所に俺を連れていった。って闘技場みたいだな。
ここで闘って俺達を倒してみろということらしい。
もちろん遠慮なく倒させてもらいました。数が多くて50人ほどいたが、所詮は雑魚。
全員ぶちのめすのに10秒足らずで終わってしまった。
その日はそれで終わるかと思ったが、そいつらは夕方になったらまた再挑戦しにきた。
またぶちのめすが、翌日になったら今度は完全武装した状態で闘技場で待っていた。
今度は20秒ほどかかったが、ちょっとしぶとくなっただけで大して変わりなかった。
こんな感じで親衛隊はしつこく絡んでくるので鬱陶しかった。なんでも三日間までなら何度でも再挑戦できるんだとか。付き合っていられない。こいつらどうしてくれようかと俺はいいアビリティがないか、ステータス・ボードを見て考えることにした。
一番いいのは逃げることだ。この王城にも隠し通路や隠し部屋の一つくらいあるだろう。
俺はもともと獣人である上に、暗視のアビリティもある。夜中になったら夜陰にまぎれて、城のあちこちを透視のアビリティで調べはじめた。
すると隠し通路が俺が見つけだだけでも3つはあった。隠し部屋となると7つほどか。地下にあるものを含めると14部屋もあった。これって城と名のつく大型建築物には多いのか、少ないのかよくわからないが、透視のアビリティさえ使えたら、別に隠し扉なんて探さなくてもいいのだ。
俺には闇魔法の転移がある。そういえば時空魔法も中級まで使えるんだっけか。闇魔法が便利すぎて、すっかり忘れていたよ。だって俺がダンジョンのモンスターから吸収したアビリティだもんな。他にもいくつもアビリティを吸収しまくっていたんだから時空魔法の存在を忘れても仕方ない。
そこで時空魔法のアビリティを鑑定アビリティの竜王の叡智で調べてみると、いろいろできることがわかった。
やっぱり闇を使わなくても瞬間移動できたり、一分間だけとはいえ時間を止めたり、時間を進めたりもできるんだからな。
うん。決めた。隠し部屋で三日経つのを待つことにしよう。何度ぶちのめしても懲りずに挑戦する根性は認めるとして、延々、挑戦されるこちらとしてはたまったもんじゃないからな。
そこで俺は城の4階にある俺の自室として用意された部屋の机の上に、紙を置いて隠し部屋に転移した。
その紙にはこう書いておいた。「あまりにも親衛隊の皆さんがしつこく挑戦してくるので身がもちません。期限の三日が過ぎるまで姿を隠させてもらいます」
これで大丈夫。あいつらが血眼になって俺を探している間に俺は隠し部屋でゆっくりさせてもらいますよ。
もちろん俺が姿を隠したということは、隠し部屋も見つかる可能性が高い。
だが俺も伊達に暗殺者ギルドで訓練を受けたわけじゃない。つまり隠し扉とか見つけるのもアビリティなしで見つけることができるのだ。
ただしそれだと時間がかかるので、結局はアビリティの力を借りたけどな。何のアビリティかって?
そりゃもちろん竜王の叡智ですよ。これって隠し扉も見つけられるんだから本当に便利だよな。
そして隠し扉を見つけたら、モンスターから吸収したアビリティの一つ封印(シール)を使って扉が開かないように封印する。
このアビリティ、鑑定してみたら対象のアビリティを封印できるという物騒なものだった。
もっとも魔力が術者よりも強い場合は、一時的しか封印できないようだが、それでもこんなアビリティを使われたらたまったもんじゃないな。やっぱり王城での一件が終わったら魔力はもっと強化しよう。
さて、俺が隠し部屋に引きこもってからは親衛隊の皆さんは文字通り、血眼になって俺を探し始めた。
一応、あいつらをぶちのめした時に全員を鑑定してみたが、一人一人の戦闘能力はそれほど高くはない。
またあいつらのアビリティも大したことなかったし、生活魔法が少し使える程度の奴がいるだけで、攻撃魔法や防御・回復・支援はマジックアイテムを使ってかけられる程度だった。だが意外な事に楽器の演奏とか歌唱のアビリティを持っている奴が多いのには意外で少し驚いた。
そのマジックアイテムも大した効果はないので、封印された隠し部屋の扉を開ける術はあいつらにはない。
そして三日目。今日が俺がこの王城ジスニーヴァインに来てちょうど三日目になる。
これはつまり、あいつら親衛隊の挑戦権が今日で終わることを意味する。
さてさてどうするか、と思っていたらあいつらも後がないとわかったのか、親衛隊としてあるまじき行為に出やがった。
あいつら、俺を出迎えの馬車に乗っていたミシェルを人質にとったのだ。
とにかく立派な制服を着ているので、汚さないようにしないといけないのでなかなかセックスに集中できない。
浄化魔法を使えばいいのだろうが、王城の中では結界が貼られた場所とかも多いらしい。
つまり魔法とか使えない場所もあるから、そういう所では浄化魔法は使えないので、こうして気をつけながらセックスするという行為は大切だと思う。
さすがに3回もやれば十分だということで、彼女との情事は緊張感に満ちたままで終わった。
どうやら俺は男としては不能ではなく、男性機能が立派に機能していると認められたようだった。
そして俺が性病持ちだったら、ミシェルにも感染しているはずだからミシェルを調べればわかると。
何だか腹が立つな。そんな事しなくても俺を調べればいいのに。こういう回りくどい方法をとる奴って好きになれないな。もしも女王がそんな事を考えてミシェルを派遣したのなら、ちょっと失望したかも。いや、彼女が犯人とは決まったわけじゃないんだが。
おそらくいい女をあらかじめ派遣して性交させて俺のご機嫌をとろうという程度にしか考えていなかったんだろうけどな。それでも何だかいいように操られているような感じがする。まるで俺の両手両足に見えない糸でも付けられたような感じがして気分が悪くなってくるな。
ベルが鳴らされると30分もすれば王城につくという。
後は彼女とお喋りをする事になったが、どうも彼女はこういうのが苦手らしくてあまり進まない。
会話がもたないのだ。俺もおしゃべりは得意じゃないので俺が質問して彼女が答えるという形になる。
そしてミシェルが言うには、このまま素直にはお姫様や女王様には会わせてもらえず、親衛隊の連中とバトルを繰り広げて勝たない限り、無理だということを教えてくれた。
親衛隊の八割は俺と同じ獣人で構成された王城専門の軍隊で、その数は52名ほど。その上には近衛騎士団が存在する。こちらは王族を守る為に存在しているので、直接的には親衛隊とは関わらないが、両者の仲は極めて良好で、親衛隊にとって近衛騎士団は兄のような存在であり、王族の警護をする彼等を尊敬している。
また近衛騎士団も王城の警護をしている親衛隊を大切にしており、ミシェルによると近衛騎士団はその多くが貴族で構成されているにも関わらず、女王自らが選んだだけあって、貴族という地位の高さや家柄、身分をひけらかして威張り散らすような奴は一人もいないのだという。
そして王城に暮らす女官や大臣も色眼鏡で見る者はほとんどいないのだとか。
王政というと、見た目は王様や女王様が政治しているように見えても、実際には大臣や宰相が実権を握っていて、そういう臣下に踊らされている王様や女王様はただの人形でしかないのだ。確か傀儡政権というんだっけか。
だがこの国ではそういう事がないようで安心した。
もちろん国ならではの軍隊も存在する。ミシェルによると、地、水、風、火の四大将軍がいるそうだ。
だがこの国レナリアーラは南北から伸びる山脈のお陰で守られているし、西や北は海なので水軍と陸軍でも併せて2~300名。
風と火の軍隊は百数十人程度しかいないのだという。そんなに少なくて大丈夫なのかと聞いたら、少数精鋭で質が
いいから今までやってこれたということらしい。大丈夫なのかね、そんなに兵の数が少なくて。
どうも四代将軍の配下の兵士は誰でも最低ランクの攻撃魔法は扱えるほどの腕前の持ち主らしい。
量より質で、そこらの雑兵じゃないってわけか。ちなみに女だと生理があるので扱いにくいので、将軍は全員男だということだ。ま、確かに男だと女みたいに子供作るような複雑な体じゃないから、戦争にはもってこいだよな。
ただ、今は秋から冬になる時期。この時期に山越えする馬鹿はいないと思うのだが、外側から攻めても駄目なら内側から、という作戦をとる国がいた為、そうさせないためにも地の将軍以外の三人は他の街を回って、街に他国のスパイが紛れ込んでいないかといった調査に出るらしい。実際に調査するのは副官らしいが、これが街の住人を安心させるので毎年やっているらしい。
「そういえばこの城の名前ってなんだっけ? 確か王族が住む建物って必ず名前とか付けられるんだろ?」
「おっしゃる通りですわ。王城の名前はジスニーヴァイン。ジスニーヴァイン城とお呼びください」
「ジスニーヴァイン? 人の名前か? それとも初代王の名前から付けたとか?」
「ジスニーとはゼスニーシャという庶民の女性の名前をもじったものです。そしてヴァインとはあなたの推測通り、この国の初代の王の名前です。お二人は大変仲がよろしくて、この城が建った時もそれは大切にしてくださった上に庶民からの人気も高かったのです。ただ庶民の女性の名前をそのまま付けるのではまずいということで、少し手を加えて、ゼスニーシャからジスニーという名前になったのですわ」
「こうして話を聞くと俺がこれから行くジスニーヴァイン城はどこも問題ないように思えるんだが…それじゃ何で親衛隊が俺の邪魔をしにくるんだ?」
「その事なのですが…どうも彼等はラフィアス様の事を全てとはいいませんが、かなり調べたようで。あなたが孤児で暗殺者ギルドで教育を受けたという事も彼等は知っており…その、つまり、皆さま女王陛下を愛する余り、あまり出自のいいとは言えない者には露骨、かつ過剰に攻撃する一面がございます。ラフィアス様には非はないのですが
女王陛下をもしかしたら暗殺しに来たのではないか? とか他国の貴族や王族によって飼いならされているのではないかという疑いを持つ者が多いのです。この疑惑は特に近衛騎士団に属する騎士の方々に多くみられます」
親衛隊が王城全体の警護を司っているのに対し、近衛騎士団は女王と王族のみを守る上位の軍隊であるのはさっき知ったが、同時に貴族独特の腹黒さや疑い深さも近衛騎士団には存在するらしい。貴族のもついやらしさをもつ騎士団か。一気に不安になったな。モンスターじゃないんだからぶちのめすわけにもいかないし。
また俺が姫様と女王との情事に及ぶことはどこからか、漏れているらしい。
そのせいで親衛隊の隊長が熊の獣人で、俺と戦って俺が勝つか自分と引き分けるほどの実力者でない限り、お姫様と女王様には会わせることができないという。
これには女王様もお姫様もドラゴンスレイヤーが親衛隊に負けるはずがないので、やりたかったらどうぞ、と放置しているようだ。
要するに腕試しだな。だが城の警備を司る親衛隊がやられたら警備がずさんなものになるので、戦闘不能にするのはいいが、何日も寝込まないようにしておいた方が女王とお姫様の覚えが良くなると、ミシェルはアドバイスしてくれた。
しかしバトルか。考えてみれば俺は今まで魔法をメインにして戦っていたから、近接戦を長時間することはなかったな。何か使えるアビリティはないか、探してみる。
するといくつか良さそうなのがあった。確かドラゴンの取り巻きのドラゴニュートから吸収した「身体能力倍増」
や「苦痛半減」、「速度上昇」、「跳躍力上昇」などがあった。
というかこれ、全部パッシブアビリティじゃないか…。つまり身体能力も最初から倍増されている上に、苦痛半減の状態になっているということか。念のために鑑定で調べてみると、苦痛半減は単なる攻撃を受けた時の苦痛だけじゃなくて、病気や精神的苦痛も半減してくれるらしい。
もともと俺は暗殺者としての訓練を受けていて苦痛耐性というアビリティをもっていたが、それが勝手に苦痛半減にレベルアップしていたらしい。そういえばダンジョンに潜り始めた時は雑魚が相手だったこともあって、近接戦だったよな。単に魔力を無駄使いするのが嫌なだけだったんだが。
そして速度上昇。これも速度が2割ほど早くなるらしいが、これってレベルアップしたら速度が増してかえって扱いにくいスキルになりそうだな。スピード上がり過ぎて壁や岩に突っ込むという自爆シーンしか浮かばない。
跳躍力上昇も同様だ。これから行く所はダンジョンじゃなくて王城だから、これもレベルアップしたら高くジャンプしすぎてシャンデリアとかに激突しそうな感じがする。
何て考えていたら、馬車が止まった。どうやら王城に着いたらしい。
そして出迎えてくれたのは典型的な灰色熊の獣人を中心とした親衛隊の連中だった。身長も2メートルを超えている。
「はじめまして。元暗殺者の国家特別総合調査局員のラフィアス殿。我が名はズラドール。早速だが貴様がこの王城の客としてふさわしいか試させてもらおう。ついてこい!」
鑑定してみると名前はズラドール・フェンダール。何だかかつらみたいな名前だな。
そいつはいきなりいちゃもんつけてきて戦闘訓練をする場所に俺を連れていった。って闘技場みたいだな。
ここで闘って俺達を倒してみろということらしい。
もちろん遠慮なく倒させてもらいました。数が多くて50人ほどいたが、所詮は雑魚。
全員ぶちのめすのに10秒足らずで終わってしまった。
その日はそれで終わるかと思ったが、そいつらは夕方になったらまた再挑戦しにきた。
またぶちのめすが、翌日になったら今度は完全武装した状態で闘技場で待っていた。
今度は20秒ほどかかったが、ちょっとしぶとくなっただけで大して変わりなかった。
こんな感じで親衛隊はしつこく絡んでくるので鬱陶しかった。なんでも三日間までなら何度でも再挑戦できるんだとか。付き合っていられない。こいつらどうしてくれようかと俺はいいアビリティがないか、ステータス・ボードを見て考えることにした。
一番いいのは逃げることだ。この王城にも隠し通路や隠し部屋の一つくらいあるだろう。
俺はもともと獣人である上に、暗視のアビリティもある。夜中になったら夜陰にまぎれて、城のあちこちを透視のアビリティで調べはじめた。
すると隠し通路が俺が見つけだだけでも3つはあった。隠し部屋となると7つほどか。地下にあるものを含めると14部屋もあった。これって城と名のつく大型建築物には多いのか、少ないのかよくわからないが、透視のアビリティさえ使えたら、別に隠し扉なんて探さなくてもいいのだ。
俺には闇魔法の転移がある。そういえば時空魔法も中級まで使えるんだっけか。闇魔法が便利すぎて、すっかり忘れていたよ。だって俺がダンジョンのモンスターから吸収したアビリティだもんな。他にもいくつもアビリティを吸収しまくっていたんだから時空魔法の存在を忘れても仕方ない。
そこで時空魔法のアビリティを鑑定アビリティの竜王の叡智で調べてみると、いろいろできることがわかった。
やっぱり闇を使わなくても瞬間移動できたり、一分間だけとはいえ時間を止めたり、時間を進めたりもできるんだからな。
うん。決めた。隠し部屋で三日経つのを待つことにしよう。何度ぶちのめしても懲りずに挑戦する根性は認めるとして、延々、挑戦されるこちらとしてはたまったもんじゃないからな。
そこで俺は城の4階にある俺の自室として用意された部屋の机の上に、紙を置いて隠し部屋に転移した。
その紙にはこう書いておいた。「あまりにも親衛隊の皆さんがしつこく挑戦してくるので身がもちません。期限の三日が過ぎるまで姿を隠させてもらいます」
これで大丈夫。あいつらが血眼になって俺を探している間に俺は隠し部屋でゆっくりさせてもらいますよ。
もちろん俺が姿を隠したということは、隠し部屋も見つかる可能性が高い。
だが俺も伊達に暗殺者ギルドで訓練を受けたわけじゃない。つまり隠し扉とか見つけるのもアビリティなしで見つけることができるのだ。
ただしそれだと時間がかかるので、結局はアビリティの力を借りたけどな。何のアビリティかって?
そりゃもちろん竜王の叡智ですよ。これって隠し扉も見つけられるんだから本当に便利だよな。
そして隠し扉を見つけたら、モンスターから吸収したアビリティの一つ封印(シール)を使って扉が開かないように封印する。
このアビリティ、鑑定してみたら対象のアビリティを封印できるという物騒なものだった。
もっとも魔力が術者よりも強い場合は、一時的しか封印できないようだが、それでもこんなアビリティを使われたらたまったもんじゃないな。やっぱり王城での一件が終わったら魔力はもっと強化しよう。
さて、俺が隠し部屋に引きこもってからは親衛隊の皆さんは文字通り、血眼になって俺を探し始めた。
一応、あいつらをぶちのめした時に全員を鑑定してみたが、一人一人の戦闘能力はそれほど高くはない。
またあいつらのアビリティも大したことなかったし、生活魔法が少し使える程度の奴がいるだけで、攻撃魔法や防御・回復・支援はマジックアイテムを使ってかけられる程度だった。だが意外な事に楽器の演奏とか歌唱のアビリティを持っている奴が多いのには意外で少し驚いた。
そのマジックアイテムも大した効果はないので、封印された隠し部屋の扉を開ける術はあいつらにはない。
そして三日目。今日が俺がこの王城ジスニーヴァインに来てちょうど三日目になる。
これはつまり、あいつら親衛隊の挑戦権が今日で終わることを意味する。
さてさてどうするか、と思っていたらあいつらも後がないとわかったのか、親衛隊としてあるまじき行為に出やがった。
あいつら、俺を出迎えの馬車に乗っていたミシェルを人質にとったのだ。
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