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第5話 闇の獣人、ドラゴンの遺体を局長と解体職人の前に出す

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 アンネとやりまくった俺は、彼女の浄化魔法で綺麗にしてもらうと、彼女に別れを告げてから調査局員の宿舎にある自室へと闇魔法で転移した。

 まだ時間はある。そこで全裸のままでいるのをいいことに、リングの効果を実験することにした。

 つまり闇の力を吸収すると、精子と精液が回復して陰嚢一杯に充満するほど大量に作成されるのは、以前説明した通りだ。

 それをこのリングはどこまで抑えられるのか、という実験だ。

 確かアンネは媚薬とか飲まされた時でも、陰嚢に二つリングを付けておけばそれだけ相乗効果が出て、勝手に射精しなくなると言ってたので、闇の力を吸収した後でも大丈夫なはずだ。

 ただし二つ付けて、二つとも壊したらアンネに何を言われるのかわからないので、付けるリングは一つだけにしておく。

 その結果、一度くらいなら半勃ち。二回目に吸収したら完全勃起。三回目に闇の力を吸収したら亀頭部から透明な雫が出続けて止まらなくなり、四回目だとさすがに射精してしまった。

 それも一度の射精の回数が14回ほどで、5回目にまた吸収した時も同じだった。

 闇の力を吸収さえしなければ結構いい感じなので、俺は次にどんなドラゴンを出せばいいのか考えてみることにした。

 やはりカッパードラゴンだろうか。結構、一般的に名前が知られているからな。

 リングの効果も出たので、後は闇の中に収納したアイテムの整理をしていると、いつの間にか時間が過ぎていたのか、ドアを強めにノックする音で我に返った。

 返事をすると、局長がドアを開けて入ってきた。まだ30分前なのに律儀な人だ。相変わらず真面目なのはいいのだが、ガチガチで女性らしさがあまり感じられない。良く言えば責任感がある。悪く言えば融通が利かないといった感じだろうか。

 「…ほう、アイテムの整理か? いいことだ。まだ時間には少し早いが解体職人達を待たせるよりかはマシだろうから、さっさと倉庫まで行くぞ」

 と、言うなり彼女は顎をしゃくって、付いてこいというジェスチャーをする。俺は彼女と一緒に倉庫の並んでいる区画へと移動する。

 倉庫に着くと、12人ほどの男女が待っていた。女子が二人で男が10人だろう。人間の中には見た目は女でも実際は男だというのも結構いるが、獣人である俺には匂いで男か女か大体判別できる。もっとも香水とか使われたらわからないんだけどな。

 まあそれは置いておくとして、俺は局長の早く出せ、というアイコンタクトに応じてカッパードラゴンの遺体を闇の中の空間から出してやった。
 
 すると予想通りに職人達がざわめきだした。すごい、とかでけぇ! とか子供みたいにでかい声出してやかましいことこの上ない。ま、彼等から見ればドラゴンなんて解体するのは滅多にないだろうから、仕方ないんだろうが。

 局長も少し興奮しているのか、遺体の周りを二週ほどしてからペタペタとカッパードラゴンの遺体を触ったりしている。

 「それにしても見事なものだな。傷一つつけないで倒すとは。一体どうやったのだ?」

 「あーそれはですね。俺、闇魔法使えますから、生命力吸収でひたすらこいつのエネルギー吸いまくってやったんですよ」

 実際には40階層で出会ったリッチから吸収したデスの魔法で即死させたんだけどな。それを言うと面倒なことになるから誤魔化しておけ、とアンネから忠告されたので闇魔法で生命力を吸収して倒したということにしておく。

 俺が闇魔法を使えるのはみんな知っているので納得してもらえたようだった。

 「しかし…これ、ドラゴン一頭だけでも目玉、皮膚、臓器、爪、牙 舌、血液とか全部が利用できるから、このドラゴンだけで最低でも金貨2万枚の価値はありますよ?」

 と、若い男性の解体担当が驚愕の表情をしたままドラゴンを見つめながら言う。

 「それだけの値打ちがあるのか。で、解体が終わるのに何週間ほどかかるのだ?」と局長。

 「そうですね。以前、ラフィアスさんが買ってくれたミスリルの解体用のナイフやメス、ノコギリとか一通り揃っていますんで、丁寧にやっても今の私達なら一週間~10日くらいで終わりますよ」

 と、年長の男が代表して答える。確かロットワール・マイヤースとか言ったか。

 「解体用の道具? それもミスリル製のものをか?」

 訝し気にロットワールに聞き返す局長。あれ、俺言ってなかったっけ?

 「ラフィアスさんから聞いていないのですか? 彼が魔物を解体するのに、普通の刃物じゃ解体しにくいだろうと気を遣ってくれまして。ドワーフの職人さん達に頼んで、一通り特別注文で私達、解体職人の為に買ミスリル製の道具を注文してくれたんですよ。おかげさまで解体スピードが2倍になりました。倍速の魔法を使えば、解体する魔物にもよりますが半分の納期で終わらせることができます。例えば4日の魔物なら2日で終わらせることが可能です」


 それは聞いてないぞ? と腕を組んでこちらを軽く睨む局長。それでも彼女の纏う雰囲気が思っていたよりも殺気立っていないのは、彼等の為に解体用の道具の料金を払ったからだろう。

 「すみません。俺、言ったと思ったんですが、言い忘れていたようで」

 素直に謝ることにした俺に、局長はひらひらと手を振る。

 「別に謝ることじゃないさ。彼等の為にやったんだろう? しかし…まさか一人でドラゴンを倒すとはな。普通は熟練の冒険者パーティ。それも少なくともBランククラスのパーティが二つは揃えないと、まず相手にならないほどの存在だ。それがドラゴンの中でもあまり強くないカッパードラゴンであってもな」

 「そうですな。まぐれや幸運によるものだとしても、ドラゴンを倒そうとは思わないことです」

 と、ロットワールが同意する。こいつら、俺がまぐれや幸運でたまたま運よくドラゴンを倒したと思っているらしい。どうにも腹が立って我慢できなくなってきたので、こう言ってやることにした。

 「あのー俺、他にもドラゴンの遺体もっているんだけど、それも解体できるかな? やっぱり2体同時ってきついかな?」

 「「「「「えっ?」」」」

 「実はレッドドラゴンの遺体も持っているんですよ。もちろん俺一人で倒しました。こういうのってパーティプレイで倒すのが定石というかセオリーなんでしょうけど、あいつら俺が闇魔法使うと硬直して、ろくに動かないんですよね。特にダンジョンの中で出会った時には、俺が姿隠して仮面とか付けているのを考慮しても、いきなりモンスター扱いで俺に攻撃してくる馬鹿な冒険者もいますからね」

 と、俺は倉庫の天井一杯に闇を広げてレッドドラゴンの頭部を引っ張り出す。

 「局長はドラゴンを倒すのなら、俺が他の冒険者と協力してやるべきだと思っているようですが、あいつらの大半は金と名誉、権力欲しさに平気で汚い事をするハイエナと同じです。自分に実力がないのに俺の戦法にケチをつけたりするし、こちらの言うことに素直に従わないで怪我したりするし。あいつらを守りながら戦うのは面倒でなりません。だから俺はよほどの事がない限り一人でモンスターと戦います。一人だと味方の放った攻撃魔法の巻き添えにならないし、倒したモンスターの取り分について議論を何十分もして時間をつぶすこともない。だから俺は一人でいいんです」

 静かに、だが今まで体験した冒険者達との諍いを話して聞かせる。局長も解体職人達も思い当たる所があるのだろう。誰も反論しようとしない。それだけ問題のある冒険者が多いのだろう。

 「というわけで、このレッドドラゴンも俺が一人で倒しました。幸い、マジックアイテムもありますし、研鑽を積めば闇の結界でドラゴンの動きを封じたり、ドラゴンの生体エネルギーを削る闇の球をいくつも撃ち出して倒すこともできるんですよ。説明するのが面倒だったのでしませんでしたがね。で、どうですか? ロットワールさん。二体同時に解体は無理ですか?」

 「い、いやレッドドラゴンとなると解体し甲斐があるからな。任せてください。それじゃみんな、お喋りはここまでだ。すぐに解体作業に入るぞ! まずは二つの班に分けるので私の指示に従うように! それでは――」

 俺は解体職人達が作業に取り掛かるのを邪魔しない為にも、そこを歩み去ろうとする。

 が、俺の横に並んだ局長が静かに語りかけてくる。

 「どういうことだね? ここでドラゴンの遺体を二頭も出せば、まず間違いなく王家が絡んでくる。そして君を取り込もうとするだろう。君の性格からして王家の連中とは関わり合いにはなりたくないのではないかね?」

 俺は静かに頷くと局長に手を差し伸べた。

 「とりあえず局長の執務室へ転移魔法で移動しましょう。ここだと誰に聞かれて面倒な事になるか、わかったものじゃないですからね」

 俺の言葉に局長は少し迷った感じで俺の顔と手を交互に見つめていたが、決心したのか俺の手をゆっくりと、だが
強く握ってくれた。

 やはり局長というだけあって鍛錬は欠かさないようだ。剣やその他の武器を握った者独特のタコができている感触が伝わってくる。

 次の瞬間、俺達は局長の執務室の中にいた。

 彼女は早速、いつもの机の向こう側に回り込み、静かに着席する。

 「で、話の続きだが…ドラゴンを二頭も倒したことを王家の連中が知れば、君にちょっかいをかけてくるだろう。それが勲章であれ、地位の昇進という形であってもな。今後も君を何度も王城に招こうとするだろう」

 「もちろんですよ。実は知り合いの錬金術師から聞いた話なんですがね。そいつは錬金術師の中でも名門と呼ばれる一族の出身で、先祖が邪竜退治のパーティメンバーに参加していたそうです。そのご先祖様も邪竜退治の時に特殊なポーションを使って大きな隙ができた所を騎士達がトドメを刺したとか。お陰でご先祖様も王家のお気に入りとなって、大出世したと聞きました」

 「成程。つまり君は知っているのだね? ドラゴンを退治した者にはある程度ではあるものの、王家の者達によって願いが叶うということが…」

 「そうです。更にドラゴンの数だけ願いが叶うと、錬金術師は言ってました。というわけで局長。俺は今から冒険者ギルドと商業ギルドに行って、ドラゴンを二体ずつ解体してもらいたいんで、出かけてきますね」

 バン! と机を叩いて慌てて立ち上がる局長。あれ、俺なにか変なこと言ったかな?

 「待て待て! ドラゴンを二体ずつと言ったが、それは他に4体も遺体を持っているということだな?」

 「そうです。冒険者ギルドにはカッパーとレッドを。商業ギルドにはシルバードラゴンの遺体を二体解体してもらう予定ですけど? これだけあれば王家の連中から6つまでお願い聞いてもらうことになりますからね」

 「そ、それなら私から手紙を書いておこう。騒ぎにならんように手を打っておく必要があるからな。…もっとも、いつかは王家の連中に知られるから、所詮は時間稼ぎにしかならんだろうが、何もしないよりかはマシだ。君も冒険者ギルドと商業ギルドで騒ぎに巻き込まれたくないだろう?」

 そういうや否や、ものすごい速度で手紙を書きだす局長。5分と経たない内に二通の手紙ができあがった。

 「ドラゴンは素材の宝庫だからな。これで我が国も存分に潤うことができるが…王家の連中はしつこいぞ? 敵に回すと厄介な連中だが、覚悟はできているのだろうな?」

 と、言いながら手紙を差し出す局長。

 「大丈夫ですよ。連中があまりにも理不尽な命令をするようであれば、俺はこの国から出ていきますから。そして新しい国で生きていくつもりです」

 最初はギョッとした顔をしていた局長だったが、すぐに笑い始めた。

 「確かに、な。これだけの数のドラゴンを倒した強者を追いかけて始末しようにも、返り討ちにされるのがオチだろうな。ならば私としてもできる限り、無茶な事はラフィアスには逆効果だと王家の使者が来たら伝えておこう」

 「お願いします。俺は二つのギルドで解体依頼を出したら、ダンジョンに潜ってモンスターの間引きと鍛錬をする予定です。何か俺宛ての依頼とかはありますか?」

 「今の所はないな。いや、あったとしても君の鍛錬の邪魔はさせないさ。王家の連中の大半は狡猾で腹黒く、粘着質の者達だからな。打てる手は全て打った方がいいだろう。あと私の勘としては王家の連中が知って、君を王城に呼び出すのに大体3日といったところだろうか。その間はダンジョンに潜って修行でもしていればいいさ。私もドラゴンスレイヤーの君がダンジョン内でそう簡単にくたばるとは思わないしな。心配するだけアホらしい」

 「あっ、ひどいですね。局長。いくら俺でもドラゴンが3体も同時に来たら苦戦しますよ? そりゃ2体までなら善戦できますけど」

 「ああそうか。うん…そうだな。ではさっさと行け。私にも仕事があるからな」

 と、言いながら書類に目を落として手を振って、さっさと行けというジェスチャーをする局長。そんな、ノラ犬でも追い払うみたいな仕草しなくても…


 だがこの後、冒険者ギルドも商業ギルドも事前に局長の書いた手紙を渡してギルドマスターに読んでもらったおかげか、ほとんど騒ぎになることもなくドラゴンの解体の依頼を無事に済ませることができた。

 やっぱり王都のギルドはそれだけ規模がでかいから、依頼して正解だった。それでも冒険者・商業の両方のギルドはドラゴンの解体で手一杯になってしまったそうだ。

 まあドラゴン2体も解体するんだもんな。そりゃそうなるだろうな。他に解体の仕事もあっただろうし。

 これも局長の手紙のおかげだろうな。ありがとう局長。あなたのお陰でギルドの連中から質問攻めに遭わずにすみました。

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