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異世界召喚。異世界転移。
現実世界で冴えない人生を送っている者達の妄想から生まれた、ファンタジー。
ネットの海を探れば山と言うほど出てくるこの手の小説。自慢じゃないが、かなり精通している。異世界でチートを使ってハーレムを築いたり、悪役令嬢に転生して逆ざまあしたり。
控えめに言って大好きだ。
そんな私だから言える。池田君は異世界帰り。きっと、どこかの王国に勇者として召喚されたのだろう。なんか勇者然としているし。それに、時差なく帰還しているのが何よりの証拠。突然の異世界転移では、元の世界には帰れないっていう展開が一般的だし。
きっと、召喚魔法も帰還魔法もすでに解明されている世界に呼ばれたのだろう。まあ当然だよね。突然異世界に呼ばれて、家族とも友達とももう二度と会えなくて、帰れもしないけど命をかけてこの世界を救ってね、なんて勝手が許されてたまるか。
「はあ、やっと帰ってこれた…」
池田君たらまたそんな厨二病みたいなこと呟いて。私以外の人に聞かれたら笑われるよ?失笑ものだよ?
「ねえ池田君。」
「っ、な、なに?」
「眼鏡どうしたの?」
「ああ…なんか、最近目が良くなったんだよね。いらなくなったんだ。」
「へえ~いいね。」
「相楽さんも前は眼鏡してたよね?」
「ああ、今はコンタクトにしたんだ。」
「そ、そっか…」
良くなったって。よくなったってなに。眼鏡で目が豆粒みたいになってた奴が、裸眼でいけるほど視力改善したって。どう言うことよ。おかしいだろ。この世界の常識を思い出せ、池田君。
あ、今俺もコンタクトにしたって言えばよかったって顔してる。そうだよ。普通の人はど近眼は自然に治らないんだよ。異世界では治癒魔法があるから近視は存在しないのかもしれないけど。
でも大丈夫、私は何も言わないよ。突っ込まないよ。華麗にスルーしてみせるよ。池田君は久しぶりにこっちに帰ってきて、きっと疲れてるんだ。
池田君の突然の変化に誰も気がつかないのは、恐らく認識阻害魔法でも使っているのだろう。段階的に解いていけば、周りの人は徐々に池田君が変わっていったように認識するという仕組みかな。
何故私にその魔法が効いていないのかって?別に、この世界でも魔法耐性のある人間くらいいるんじゃない?
ーーーーーーーーー
はい、きました。体育の時間です。運動は苦手で体育大嫌いな私ですが、今日だけは違います。
異世界帰りあるある ~かなり手加減したつもりなのに身体能力凄すぎて目立っちゃう~ をこの目で見る時がきたんです。
今日の種目は陸上!絶好の異世界あるある日和ですねー。
かけっこレベルの私の順番は早々に終わり、次は男子のターン。来た、池田君だ。いつも体育の時間は憂鬱そうにしてるのに、今日は随分とご機嫌で。まあ、魔王討伐の旅(多分)に比べたらこんなの鼻ほじりながらでも余裕だよね。
スタートの合図のホイッスルが鳴る。横一列に並んだ男子6人が一斉に走り出す。右端にいる山口君は運動神経抜群。加えて顔も良いし、リアルサッカー部。ほら、今日も女子の声援は彼に向けられている。いつもなら山口君がダントツ一位で池田君はビリっけつなんだけど。
「池田!お前今日どうしたんだよ!?はえーな!俺久しぶりに負けたわ。」
「ははは…ちょっとね…練習して…」
「ちょっと練習したくらいでそんなんなるかよ!陸上部入れよ!」
「いやあ、今日はたまたまで…ははは」
池田どうしちゃったのとざわつくクラスメイト達だが、私には彼の考えていることが手に取るように分かる。
やっちゃったって顔してる。分かるよ、目立ちたくないんだよね。異世界帰りの男子はみんな目立たず平凡に生きたいって思ってるんでしょ?知ってる知ってる。陰キャだけど実は最強みたいなのに憧れるんでしょ?無気力系主人公だっけ。そっち系目指してるんだね。良いと思うよ。そのゴリゴリの筋肉さえなかったらね。
今は認識阻害魔法掛けてるから周りに気づかれてないだけで、最終的にはその筋肉、みんなに披露するんでしょ?大注目だよ、全ての体育会系部活が大注目だよ。帰宅部は即卒業だよ。目立つよ。何もしなくても目立つよ。異世界では普通だったのかも知らないけどこっちではどこの格闘家だよってくらい目立つよ。ヤンキー漫画によくいるお前絶対高校生じゃないだろって見た目の最強敵キャラみたいな身体してるよ。
あ、池田君戻ってきた。トボトボ歩いてる。筋肉ダルマがしゅんとしててなんか愛嬌がある。
「池田君、お疲れ様。すごかったよ。」
「え!?あ、いや、今日はたまたま調子良くって…」
「そうなんだ。まあそんな日もあるよね。」
「そう、そうなんだよ。ははは…」
その後池田君は認識阻害魔法を強めにかけたらしく、誰にも話しかけられることなく後ろの方で影を潜めて過ごしていた。
お疲れ様、池田君。
現実世界で冴えない人生を送っている者達の妄想から生まれた、ファンタジー。
ネットの海を探れば山と言うほど出てくるこの手の小説。自慢じゃないが、かなり精通している。異世界でチートを使ってハーレムを築いたり、悪役令嬢に転生して逆ざまあしたり。
控えめに言って大好きだ。
そんな私だから言える。池田君は異世界帰り。きっと、どこかの王国に勇者として召喚されたのだろう。なんか勇者然としているし。それに、時差なく帰還しているのが何よりの証拠。突然の異世界転移では、元の世界には帰れないっていう展開が一般的だし。
きっと、召喚魔法も帰還魔法もすでに解明されている世界に呼ばれたのだろう。まあ当然だよね。突然異世界に呼ばれて、家族とも友達とももう二度と会えなくて、帰れもしないけど命をかけてこの世界を救ってね、なんて勝手が許されてたまるか。
「はあ、やっと帰ってこれた…」
池田君たらまたそんな厨二病みたいなこと呟いて。私以外の人に聞かれたら笑われるよ?失笑ものだよ?
「ねえ池田君。」
「っ、な、なに?」
「眼鏡どうしたの?」
「ああ…なんか、最近目が良くなったんだよね。いらなくなったんだ。」
「へえ~いいね。」
「相楽さんも前は眼鏡してたよね?」
「ああ、今はコンタクトにしたんだ。」
「そ、そっか…」
良くなったって。よくなったってなに。眼鏡で目が豆粒みたいになってた奴が、裸眼でいけるほど視力改善したって。どう言うことよ。おかしいだろ。この世界の常識を思い出せ、池田君。
あ、今俺もコンタクトにしたって言えばよかったって顔してる。そうだよ。普通の人はど近眼は自然に治らないんだよ。異世界では治癒魔法があるから近視は存在しないのかもしれないけど。
でも大丈夫、私は何も言わないよ。突っ込まないよ。華麗にスルーしてみせるよ。池田君は久しぶりにこっちに帰ってきて、きっと疲れてるんだ。
池田君の突然の変化に誰も気がつかないのは、恐らく認識阻害魔法でも使っているのだろう。段階的に解いていけば、周りの人は徐々に池田君が変わっていったように認識するという仕組みかな。
何故私にその魔法が効いていないのかって?別に、この世界でも魔法耐性のある人間くらいいるんじゃない?
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はい、きました。体育の時間です。運動は苦手で体育大嫌いな私ですが、今日だけは違います。
異世界帰りあるある ~かなり手加減したつもりなのに身体能力凄すぎて目立っちゃう~ をこの目で見る時がきたんです。
今日の種目は陸上!絶好の異世界あるある日和ですねー。
かけっこレベルの私の順番は早々に終わり、次は男子のターン。来た、池田君だ。いつも体育の時間は憂鬱そうにしてるのに、今日は随分とご機嫌で。まあ、魔王討伐の旅(多分)に比べたらこんなの鼻ほじりながらでも余裕だよね。
スタートの合図のホイッスルが鳴る。横一列に並んだ男子6人が一斉に走り出す。右端にいる山口君は運動神経抜群。加えて顔も良いし、リアルサッカー部。ほら、今日も女子の声援は彼に向けられている。いつもなら山口君がダントツ一位で池田君はビリっけつなんだけど。
「池田!お前今日どうしたんだよ!?はえーな!俺久しぶりに負けたわ。」
「ははは…ちょっとね…練習して…」
「ちょっと練習したくらいでそんなんなるかよ!陸上部入れよ!」
「いやあ、今日はたまたまで…ははは」
池田どうしちゃったのとざわつくクラスメイト達だが、私には彼の考えていることが手に取るように分かる。
やっちゃったって顔してる。分かるよ、目立ちたくないんだよね。異世界帰りの男子はみんな目立たず平凡に生きたいって思ってるんでしょ?知ってる知ってる。陰キャだけど実は最強みたいなのに憧れるんでしょ?無気力系主人公だっけ。そっち系目指してるんだね。良いと思うよ。そのゴリゴリの筋肉さえなかったらね。
今は認識阻害魔法掛けてるから周りに気づかれてないだけで、最終的にはその筋肉、みんなに披露するんでしょ?大注目だよ、全ての体育会系部活が大注目だよ。帰宅部は即卒業だよ。目立つよ。何もしなくても目立つよ。異世界では普通だったのかも知らないけどこっちではどこの格闘家だよってくらい目立つよ。ヤンキー漫画によくいるお前絶対高校生じゃないだろって見た目の最強敵キャラみたいな身体してるよ。
あ、池田君戻ってきた。トボトボ歩いてる。筋肉ダルマがしゅんとしててなんか愛嬌がある。
「池田君、お疲れ様。すごかったよ。」
「え!?あ、いや、今日はたまたま調子良くって…」
「そうなんだ。まあそんな日もあるよね。」
「そう、そうなんだよ。ははは…」
その後池田君は認識阻害魔法を強めにかけたらしく、誰にも話しかけられることなく後ろの方で影を潜めて過ごしていた。
お疲れ様、池田君。
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