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ペットになります3

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10分もしないうちにメイドは戻ってきた。カートに乗っているのは様々な料理。ステーキ、サンドイッチ、サラダ、お菓子。どれも美味しそうだ。

「ペット様の好みが分かりませんでしたので色々と持って参りました。」
「うむ。食べさせろ。」
「かしこまりました。ペット様、こちらに。」

魔王の腕からメイドの腕に移動する。皆抱っこするのが当然のように抱っこしてくる。まあ、楽だし、全裸で歩くのも肌寒いし、いいか。

「どれにいたしますか?」
「うーん…サンドイッチ。」
「はいどうぞ。よく噛んで食べてくださいね。」
「ありがとう。」

メイドが取り分けてくれたサンドイッチは私の口のサイズに合わせて小さい四角に切られており、一つずつお洒落な爪楊枝が刺さっている。私はサンドイッチを一切れ口に入れた。
美味しい。レタス、ハム、きゅうり、マヨネーズ。普通の美味しいサンドイッチだ。斬新な異世界料理が出てこなくてよかった。パッとみた感じ、料理水準は現代日本と変わらないようだ。
サンドイッチを数切れとサラダを小盛り一皿。それだけで結構お腹いっぱいだ。流石幼女、胃も小さい。お菓子も食べたかったけど、それはまた今度にしよう。私は最後にオレンジジュースで喉を潤した。

「ごちそうさまでした。」
「もうよろしいのですか?」
「うん、お腹いっぱい。」
「ペット様は一日何食お召し上がりになるのですか?」
「いつもは一日二食かな。でも、もっと食べてもいいなら、朝昼晩の三食食べたい。」
「それでは今後はそのようにいたしますね。」
「ありがとう。あと私の名前はリナだよ。魔王様に付けてもらったの。」
「まあ、素敵なお名前ですね。ではリナ様と。」

メイドのふくよかなおっぱいを背もたれに食後の休憩を取る。メイドが頭を撫でてくれるのが凄く気持ちがいい。誰かにこんなに甘えたのっていつぶりだろう。母は小さい頃から仕事で忙しくてあまり家にいなかったし、私もそんな母を気遣って物心ついた時にはもう自分から甘えにいけなかった気がする。
誰かの腕の中がこんなに優しくて暖かかったなんて。知っていたら、母にももっと甘えられたのかな。

は、いかんいかん。しんみりしてしまった。もう会えないけど、私は異世界で元気にやってるよ。

「リナ。」
「はい。」
「食べ終わったのならこっちに来い。お前ももう戻っていいぞ。」
「かしこまりました。」

メイドは私を魔王に手渡すと、一礼して去っていった。
再び広い部屋に2人きりになると、魔王が私の頭を撫で始めた。力加減が強すぎて頭が揺れるが、不思議と心地良い。

「お前の飼い主はこの俺だ。」
「はい。」

これはあれかな。メイドとイチャイチャしすぎて嫉妬しちゃったかな。いかんいかん。愛されペット道その二。ご主人様が一番。
私は魔王の胸元にプニプニのほっぺを擦り付けた。ほら、私はあなたに一番懐いてますよ。これには魔王もにっこり顔…とまではいかないが、口角が微かに上がっているところを見ると、満更でもなさそう。

「それでいい。」

そう言うと、魔王は書類仕事に戻っていった。


ーーーーーーーーー


「…い、おい。起きろ。」
「むにゃ…」

どうやら寝てしまったようだ。カリカリとペンを走らせる音と魔王の腕から伝わる微かな振動が私を眠りの世界に引き摺り込んだようだ。

「お前の服が用意できたそうだ。」
「お待たせしました。」

サムエルの後ろから、先程のメイドが服を大量に持って現れた。
フリフリのブリブリ。これがこの世界の流行なのだろうか。精神年齢20歳のこの身としては、もう少しシンプルなものが着たい。

「どれにいたしますか?」
「ふむ…全て見せろ。」

あ、お前が選ぶんかい。そうだよね、飼い主だもん。仕方がないから魔王の趣味に合わせよう。

「これだな。」

魔王が選んだのは黒のワンピースに白いフリルがたくさんついた、所謂ゴスロリ服だった。へえ、あなたそう言う趣味してるんですねえ。
特に不満を示す事なく、私はメイドの手によって飾り付けられた。多少趣味じゃなかろうが、服なら何だっていい。全裸より下なんてない。

「似合うではないか。」
「ありがとうございます。」
「残りの服は俺の衣装部屋に。」
「かしこまりました。」

メイドは大量の服を抱えたまま退室していった。

魔王は私を上から下まで眺めて満足そうに頷いた。

「うむ。服も着たことだし、散歩でもするか。」
「はい。」

サムエルが私の首輪に鎖をつける。散歩ってこういう感じか。犬的なやつの方か。まあペットだしね、納得だよ。

「では行こう。」

魔王は鎖を持って歩き出した。私も魔王に付いて歩いてみたけど、魔王の歩調が速すぎてついていけない。ついに鎖がピンと張って、私はそれに引っ張られて転んだ。

「ぐえ」

魔王は特に気にすることなくズンズンと進む。私はズルズルと廊下の赤い絨毯を引きずられていく。

「魔王様、止まってください。」
「なんだ?」
「引きずっています。」
「それがどうした。」
「ゲホ…人間は弱いので転べば怪我をしますし首が締まれば死にます。」
「なんと。」

魔王は床に転がったままの私をひょいと拾い上げると再び歩き出した。

「これでは散歩の意味がないではないか。」
「散歩というのは飼い主がペットの歩調に合わせて行うものですよ。魔王様には難しいかもしれませんね。」
「む。それくらい簡単だ。」

サムエルの挑発に簡単に乗せられた魔王は私を再び床に下ろした。

「歩け。」
「はい。」

私は魔王の前に立ち、歩き出した。どこに向かっているかはわからないけど、長い一本道の廊下だ。迷うことはない。毛足の長い絨毯が少し歩きにくいけど、頑張って歩く。

「遅いな。これでは庭に着くまでに日が暮れるぞ。」
「庭まで抱き上げて運び、庭に着いてから散歩をすればよろしいのでは?」
「うむ。」

魔王は私を抱っこするとさっさと歩き出した。
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