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シバの村1

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翌朝軽い朝食を済ませると、一同は早々に野営地を発った。

「なるべく早くこの森から離れよう。馬には負担をかけるけど、今日はちょっとスピードをあげよう。そうすれば夜には目的の村に着くかな。」

サイモンの指示で、馬車はいつもより速いスピードで平原を駆け抜けた。途中馬の休憩を挟み、昼も簡単に済ませる。
昨夜の見張りの際、暇だからとせっせと握った具入りおにぎりが早速役立った。調理場を作る必要がなく、おにぎりを配るだけなので、食事の時間は準備も含めて10分ほどで済んでしまった。

出発前に、ミドは馬が飲んでいる水桶にポーションを流し込んだ。

「馬にポーションをあげるんですか?」
「はい。長く走らせると足を痛める事もありますから。疲れも取れますし。常用は馬によくないんですけど、非常時なので。」
「へえ。」

真っ直ぐの道を突き進み、森をもう一つ抜けたところで村が見えてくる。強行のかいもあり、日が沈みきる前に一同は目的地にたどり着くことができた。

「明日の昼に着く予定だったけど、なんとか今日中に着いたね。」
「もう門が閉まってるぞ。」
「今夜は村の前で野営をして明日の朝入ろう。」

日中は慌ただしかった分、夜は手をかけて食事を作りたい。香織は昨日の昼にアレクシスが狩ったホーンラビットを取り出した。

「なに作ろうかなあ…誰か何かリクエストありますか?」
「そうだね…今日は珍しく冷えるから、体が温まるものが食べたいな。」
「ならシチューですかね?分かりました!」

ホーンラビットの肉を大鍋に入れ、焼き目をつける。野菜を入れてホーンラビットから出た脂を絡めたらブイヨンのポーションと水を鍋の半分くらい入れる。具材が柔らかくなったら牛乳と、煮込んでいる間に準備したブールマニエを入れてトロミがつくまで煮込んでいく。

次に厚切りにしたレッドオークのロース肉を取り出し、フライパンで焼いていく。シンプルな塩胡椒、ニンニクたっぷり、醤油で甘辛く。色々な味付けで何枚か焼き、それぞれ大皿に盛れば完成だ。

「ああ~腹が減る匂いだ。カオリ、まだか?」

ニンニクや焦げた醤油の香ばしい匂いが皆の腹を刺激する。香織は最後の肉を皿に乗せると、今にも涎を垂らしそうなエドワードにシチューの入った器を渡した。

「はい、完成です!シチューとステーキ。今日はパンが合うと思います。」
「うまそうだ!」

香織は給食当番のようにシチューを配っていく。初めはセルフサービスにしていたのだが、どうしても取りすぎる者が出てきて平等に行き渡らなかったので、最終的にこのスタイルに落ち着いた。『ビースト』は相変わらず遠慮して鍋に近寄らないので彼らの取り分が少なくなってしまうのだ。

獣人の彼らにも同じ量のシチューを配り、香織は自分の食事を持って『夜明けの星』に合流した。

「冒険者の皆さんは村の中には入れないんでしたっけ。」
「そうだな。」
「食事は村の人からもらえるんですか?」
「いや、この村はそれもないな。あまり裕福な村ではないから…サイモン達をもてなしてギリギリじゃないか?」
「そうなんですか。」
「それにこの村はロドルグの街とトルソンの街の間にあるからな。商人もよく立ち寄るし、だから行商に来てもそこまでありがたみはないんだ。前の村は辺境にあって商人の移動ルートから外れていたから歓迎されたが。」
「へえ、そういうものなんですね。」
「ま、村の奴らにとっちゃ俺たち冒険者なんて皆乱暴者だからな、積極的に関わり合いになんてなりたくねえんだろ。」
「乱暴者なんかじゃないのに…」
「気にすんなよ、これが普通なんだから。それにカオリは村に入れるだろ。遠慮せずにベッドで休めよ。」
「じゃあ、食事だけ作りにきますね。」
「おう!」


ーーーーーーーーー


「おお、クレール商会の皆さん、よくいらっしゃいました。」
「朝早くに申し訳ありません。昨晩門が閉まった後に着いたものですから。」
「いえいえ、とんでもない!また広場をお使いになりますか?」
「はい、お願いします。」
「サイモンさんはいつものように私の家に。あの、その女の子は…」
「ああ。この子もうちの見習いなんですよ。村の中に滞在しても?」
「ええもちろん!こんな小さな子供を冒険者達と野宿させるわけにはいきませんからな。」
「助かります。」
「あ、ありがとうございます。」

サイモン達を出迎えたのは、シバの村の村長と名乗る男だった。彼と数人の役人が手早く香織達の滞在先を決めていく。

「まだ朝も早いですし、露店の準備をしてから滞在させていただける家に伺います。」
「分かりました。家の者にも伝えておきますので。それでは私はこれで。何かあれば村役場に来てください。」
「ありがとうございます。」

王子様風の営業スマイル全開なサイモンは村長達を見送ると、馬を引いて村の広場に向かった。そこで3台の馬車を並べ、馬達は馬屋に連れていく。荷台の側面は大きく開くように出来ていて、そこを開いて店として使うのだ。

「カオリ、薬はできたかい?昨日は慌ただしくて薬草採取もできなかっただろう?」
「はい、予定よりは少ないんですけど、一応これだけ作れました。」
「うん、とりあえず初日はこれで充分だよ。ここには三日滞在する予定だから、なくなりそうならまた作ってくれるかな?薬草採取は外にいるアレク達に頼んでさ。」
「分かりました。」
「あ、勿論、売り上げは君の物だよ!」
「でも場所代とかは…」
「あはは、ないない。質の高い薬を売ればうちの信用も上がるしね。僕から提案したことなんだし。」
「いいんでしょうか…」
「いいのいいの。若いうちは沢山甘えなきゃ。人生損するよ。」
「ふふ、そうですね。じゃあお言葉に甘えて。ありがとうございます。」
「うん!それじゃあここが薬屋コーナーね。一応外から仕入れてきたって事にしておいてね。今の君は本当にまるきり子供だから…」
「確かに、子供が薬師を名乗ってたら怪しくて誰も買いませんね…分かりました。」
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