34 / 54
1章 異世界トラバース
1章ーE 幼女は再び冒険する②
しおりを挟む
意気揚々と街へ繰り出す幼女と犬。
彼らを妨げるものはもはや何もない。
目指すは以前行ったことのある広場。
そこには美味しいものがたくさんあるとエレナは知っている。
あの時は銅貨数枚しかなく、さらには男の子に分けてあげたために満足いくまで食べられなかった。
けれど今回は違う。彼女の手には銀色に輝く硬貨があるのだ。
そして、その歩きたるや威厳をも感じるかのようだ。
幸か不幸かはわからないが以前少年とした買い物の時に探していたアイスだが、広場についた後もエレナは見つけることができなかった。
アイスはお兄ちゃんといっしょに食べましょうってことだろう。
「ぽちぃ~、どれにすりゅ? エレナはねぇ」
とポチに話しかけるエレナ。しかしその眼はしっかりと美味しいそうなにおいをかもし出す屋台へと向いている。
『私はたこ焼きで、お嬢頼む』
「うんっ」
ポチの念話にそう応えるエレナ。しかし、繰り返し言おう、彼女の顔はポチを見ていない。彼女がロックオンしたのはステーキのお店だ。
分厚い肉を鉄板で焼く。素材その物の味を楽しむ料理。味付けは塩コショウで十分。が、そのお店には専用のソースもあり、鉄板に垂らされたソースが熱で湯気を上げて蒸発する。すると辺りには美味しそうなにおいが漂い、エレナのみならず多くの人の食指を動かす。
『お、お嬢!?』
「うんっ」
自分の方を見ないエレナを不審に思ったポチは再びエレナを呼ぶがエレナの反応は先と同じ。いや、今回は先よりも軽くあしらわれてしまった・・・。
『わかった、先にそのお店に行こう。たこ焼きはその――』
ポチの声が終わるのを待たずエレナはステーキ屋さんへと駆けよる。それを追いかけるポチ。やれやれ、的なことをいうポチだがその口元には輝く液体が見えている。
「おじちゃん、ひとちゅ」
「おぉ、嬢ちゃんお金はあるんか?」
「あい」
エレナは屋台を回り込み店主のもとに行き銀貨を1枚ポシェットから取り出して手渡す。
「おぉ、嬢ちゃんはお金持ちだな。だが、うちのドラゴンステーキはちょっと値が張るぞ。もう一枚これが必要だがあるか?」
「あい」
2枚目の銀貨を取り出して、店主に再び渡す。
「よし、来た。そしたらちょっと待てな。因みに言っておくがうちのドラゴンステーキはドラゴンの肉じゃなくてそれぐらいうまいってことだからな」
「ん?」
「まぁ、いいか。」
店主の説明はエレナには届かなった。けれど、彼女にとってそれは問題ではない。ただ美味しいものが食べれたらそれでいいのだ。
ちなみにこのことが後にクロノを悩ますことになろうとは誰にもわからなかったのである。
店主がエレナの分のステーキの準備を始める。店主が肉を鉄板の上に置くとジュゥと音が鳴る。それを聞くエレナとポチの口にはすでに唾液がいっぱいだ。
肉が焼けるにおいが二人の鼻に届くと二人の我慢は限界を迎える。そこに、
「嬢ちゃん、味はどうする? 塩コショウだけ、オリジナルソースの2種類あるけど」
「ん~、ソースなの? いいにおいの」
両手を大きく振り回し先ほどみたソースの湯気を表現する。
「あいよ」
店主の声と共に注がれるオリジナルのソース。熱せられた鉄板にソースが触れると、すぐにグツグツと煮立ち煙を上げる。辺りには肉の匂いとソースの香りが混ざり合ってどうにも食欲をそそる。
「ごくっ」
エレナの唾を飲み込む音が聞こえる。ポチは・・・・・・。
彼の名誉の為にも言わないでおこう、涎を垂らしていたなんて。
「お待たせって、本当に待たせまったみたいだな。そんなに楽しみにしてくれておじさんうれしいよ、サービスで塩コショウのやつも少しのせてやるか」
「わーい、あいがとー。おじちゃん」
「わん」
ステーキを受け取ると二人は近くにあるベンチに腰を掛けて貪るように食べ始める。
「んー、おいちー、うまー」
「わん」
しばらくの間エレナから聞こえた音は、おいちー、うまー、もぐもぐ、の3種類だけであった。
大人用サイズだがポチとの2人分としては少し足りないものがある。なので2人は再び屋台の集まる場所へと戻っていく。
遠くの方に2人に馴染みのある顔がいたが、二人はこの時お肉の話に夢中で気づかなかった。
「ぽち、ドラオンのおにきゅおいちーね」
「わん」
「またこよーね?」
「わん」
広場をてくてくと歩きながらこんなことをいうエレナ。これはまた彼女はすぐに脱走をしそうだ。
彼らを妨げるものはもはや何もない。
目指すは以前行ったことのある広場。
そこには美味しいものがたくさんあるとエレナは知っている。
あの時は銅貨数枚しかなく、さらには男の子に分けてあげたために満足いくまで食べられなかった。
けれど今回は違う。彼女の手には銀色に輝く硬貨があるのだ。
そして、その歩きたるや威厳をも感じるかのようだ。
幸か不幸かはわからないが以前少年とした買い物の時に探していたアイスだが、広場についた後もエレナは見つけることができなかった。
アイスはお兄ちゃんといっしょに食べましょうってことだろう。
「ぽちぃ~、どれにすりゅ? エレナはねぇ」
とポチに話しかけるエレナ。しかしその眼はしっかりと美味しいそうなにおいをかもし出す屋台へと向いている。
『私はたこ焼きで、お嬢頼む』
「うんっ」
ポチの念話にそう応えるエレナ。しかし、繰り返し言おう、彼女の顔はポチを見ていない。彼女がロックオンしたのはステーキのお店だ。
分厚い肉を鉄板で焼く。素材その物の味を楽しむ料理。味付けは塩コショウで十分。が、そのお店には専用のソースもあり、鉄板に垂らされたソースが熱で湯気を上げて蒸発する。すると辺りには美味しそうなにおいが漂い、エレナのみならず多くの人の食指を動かす。
『お、お嬢!?』
「うんっ」
自分の方を見ないエレナを不審に思ったポチは再びエレナを呼ぶがエレナの反応は先と同じ。いや、今回は先よりも軽くあしらわれてしまった・・・。
『わかった、先にそのお店に行こう。たこ焼きはその――』
ポチの声が終わるのを待たずエレナはステーキ屋さんへと駆けよる。それを追いかけるポチ。やれやれ、的なことをいうポチだがその口元には輝く液体が見えている。
「おじちゃん、ひとちゅ」
「おぉ、嬢ちゃんお金はあるんか?」
「あい」
エレナは屋台を回り込み店主のもとに行き銀貨を1枚ポシェットから取り出して手渡す。
「おぉ、嬢ちゃんはお金持ちだな。だが、うちのドラゴンステーキはちょっと値が張るぞ。もう一枚これが必要だがあるか?」
「あい」
2枚目の銀貨を取り出して、店主に再び渡す。
「よし、来た。そしたらちょっと待てな。因みに言っておくがうちのドラゴンステーキはドラゴンの肉じゃなくてそれぐらいうまいってことだからな」
「ん?」
「まぁ、いいか。」
店主の説明はエレナには届かなった。けれど、彼女にとってそれは問題ではない。ただ美味しいものが食べれたらそれでいいのだ。
ちなみにこのことが後にクロノを悩ますことになろうとは誰にもわからなかったのである。
店主がエレナの分のステーキの準備を始める。店主が肉を鉄板の上に置くとジュゥと音が鳴る。それを聞くエレナとポチの口にはすでに唾液がいっぱいだ。
肉が焼けるにおいが二人の鼻に届くと二人の我慢は限界を迎える。そこに、
「嬢ちゃん、味はどうする? 塩コショウだけ、オリジナルソースの2種類あるけど」
「ん~、ソースなの? いいにおいの」
両手を大きく振り回し先ほどみたソースの湯気を表現する。
「あいよ」
店主の声と共に注がれるオリジナルのソース。熱せられた鉄板にソースが触れると、すぐにグツグツと煮立ち煙を上げる。辺りには肉の匂いとソースの香りが混ざり合ってどうにも食欲をそそる。
「ごくっ」
エレナの唾を飲み込む音が聞こえる。ポチは・・・・・・。
彼の名誉の為にも言わないでおこう、涎を垂らしていたなんて。
「お待たせって、本当に待たせまったみたいだな。そんなに楽しみにしてくれておじさんうれしいよ、サービスで塩コショウのやつも少しのせてやるか」
「わーい、あいがとー。おじちゃん」
「わん」
ステーキを受け取ると二人は近くにあるベンチに腰を掛けて貪るように食べ始める。
「んー、おいちー、うまー」
「わん」
しばらくの間エレナから聞こえた音は、おいちー、うまー、もぐもぐ、の3種類だけであった。
大人用サイズだがポチとの2人分としては少し足りないものがある。なので2人は再び屋台の集まる場所へと戻っていく。
遠くの方に2人に馴染みのある顔がいたが、二人はこの時お肉の話に夢中で気づかなかった。
「ぽち、ドラオンのおにきゅおいちーね」
「わん」
「またこよーね?」
「わん」
広場をてくてくと歩きながらこんなことをいうエレナ。これはまた彼女はすぐに脱走をしそうだ。
0
美少女戦士な幼馴染と行く異世界←新作 短編→僕の幼馴染はちょっとお転婆がすぎる良ければ一度読んでみてください!!
お気に入りに追加
1,015
あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜
ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。
同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。
そこでウィルが悩みに悩んだ結果――
自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。
この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。
【一話1000文字ほどで読めるようにしています】
召喚する話には、タイトルに☆が入っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる