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2章 ドラゴンステーキを求めて

2章ー7.0 幼女のお仕置きはおあついのですよ?

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 クロノとハルカが漫才にも似たやりとりをしているころ。

 「お嬢ちゃん、1人でこんなとこにいるなんてどうしたの?」

 と、ヤクザな見た目に反してエレナに優しく声をかける男。彼の周りには数人の男がたっており、仲間とみて間違いない。

 みな見た目は強面で、身にまとった装備もどこか薄汚れており、お世辞にも一緒に旅をしたいと思えるような人達ではなかった。

 そんな男たちに話しかけられたエレナは、完全に無視を決め込む。

 「お嬢ちゃん、1人でこんなところでいたら危ないよね、おじさんたちといっしょに行こうか。怖くないからね。さぁ、いこう、はやくいこう」

 優しい言葉であるが、どこか含みを感じるセリフ。

 エレナもそう思ったからか、ただ単にむさいおっさんと関わりたくなかっただけなのかはわからないが無言を貫く。

 「・・・・・・」

 「お嬢ちゃん、いい加減にしないと優しいおじさんたちも怒っちゃうよ!?」

 額に筋を浮かべながらそういう男。

 「お頭、まどろっこしいことしてないでさっさとさらって売っちまいましょうよ。エルフは高くうれれんでしょう? 俺、うまい酒が飲みたいっすよ」

 「ば、ばか。警戒させたらめんどいだろ、これだから・・・」

 どうやら男たちは見た目強面だけど実は優しいというパターンではなく、単純に見た目通りの悪人だったみたいだ。
 
 「まぁ、嬢ちゃんそういうことだ。おとなしく俺らの為に売られてくれ。もしかしたらいいご主人様に遭えるかもしれないぞ? ハハハハァー」

 男たちが好き勝手話す間もエレナは無言を貫き通しているように見えた。

 男たちの一人がエレナの腕を掴もうと接近する。

 「こ、こいつぶつぶつと何言ってやがる!」

 「かお、こわい。ふく、きたにゃい。さらう・・・。うぅ~ん」

 「おいかまうな、とっ捕まえてはやく売りにいくぞ」

 なにやらぶつぶつ小声でつぶやくエレナにしびれを切らした男たちが襲い掛かかろうとする。

 しかし、エレナは特に気にした様子を見せずに

 「おじさんたち、わりゅいひと?」

 「あぁ、悪い人たちだよ」

 お頭と呼ばれていた男がエレナに答える。

 もし、この時悪い人ではなく、いい人と言っていたらこの男たちの運命は変わっていたのかもしれない。が、言ってしまったものは遅い。

 「わりゅいひとは、メッ。だお。じゃ、『ふぁいあ~』」

 悪い人かどうかの確認が終わるとエレナはクロノに日ごろ言われていた通り、魔法を使って撃退する。自衛は大切なことなのだが、クロノはどのぐらいの威力で、という大事な部分を伝えていなかったみたいだ。

 ふぁいあ~、というかわいらしい響きには反して、巨大な炎の渦が男たちを包み込む。

 ドゴォーン、ドゴォーン。ゴォォォ。熱い、熱い、死ぬ、た、たすけてーーーー。

 炎の嵐があたりを包み、爆音が鳴り響く中かすかに聞こえる男と達の悲鳴と助けを求める声。

 「ちゅぎは、ちゅめたいの。『ふり~ず・あろ~』」

 熱い攻撃のあとは冷たい攻撃を。これもクロノの教えなのだが、彼は相手が金属系の魔物であればと教えていたのでまさか人間相手にやるとは思っていなかっただろう。

 子どもの発送は柔軟である(?)

 ズゴォーン、ズゴォーン、キィィィン。うぅぅぅ、さぁさぁさぁむい・・・・。

 先までは魔法の熱で夏もびっくりなほどの暑さだったが、今度は真冬も逃げ出す寒さに急変わり。

 すべての氷の矢が地面に刺さり終わる頃にあたりに立っているのはエレナだけであった。

 また、幸か不幸か炎の魔法が最大火力になる前にエレナが氷系統の魔法を使ったことと、男たちが悪人ではあるがみな実力者であったことがプラスに働き誰一人死ぬことはなかった。もちろん、ずたぼろであることにはかわりないのだが。


 エレナちゃんの手はきれなままだ。


 クロノの助言も別の方向で役にたったのだった。

 「うぅ~ん、かえるのぉ」

 横たわる男たちはすでに関心の外になっており、エレナはそこで飽きてしまったのかクロノたちのもとへ帰ることにしたのであった。 




 *ポチのひとりごと*

「あのバカたちがあそこでいい人って答えたらきっとお嬢は迷ったはず。そしてら私が助けに出て、見せ場があったのに。まったく使えない連中だ」

 ポチはさくっと男たちにとどめを刺し、エレナの後をばれないようについていく。

 こうしてポチはまた表舞台(本文)にでれないのでした。

 がんばれポチ、負けるなポチ!!
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