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4話
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「すみません、僕、ショッピングモールが大好きなんです~。朝から晩までいたいくらいなんです~。ふるーい家が嫌いだったんで。ごめんなさいっ、ブログタイトル変えますっっ」
突然、柚木さんは叫んだ。
失笑の波が起こる。
御堂さん、口押さえて肩を揺らして笑いをこらえてる。
私も吹きそうになった。
「僕が変わります」
もう一人の社員さんがさっと彼と位置を変わった。
柚木さん、端っこに引っ込んじゃって。気の毒に…。
会長は腕組んだままだ。
なんなんだろう、真剣な顔…
会の間中ずっと前を見つめて。
なんだかな~、ちょっと勿体無い、もっと砕けた面白い展開になったかもしれないのに。
「柚木くん、君のブログ引き続き参考にさせてもらう。この数の統計はかなり信憑性がある」
会長の低い落ち着いた声でお開きとなった。
「いただきまーす」
皆が退室した後、進行役の三人の労をねぎらって先ほどのメニューをいつものダイニングテーブルにセットした。
「あーー、美味しい」
「いい匂いが充満してたまらなかったですよねー」
「お腹鳴るの耐えてましたよ」
お三方お疲れ様でした。
どうぞ召し上がれ。
柚木さんの顔に笑みが戻って、よかったわ。
「嬉しいですー。ケン◯のチキン食べるの何年振りかなー」
「大げさですね、柚木さん」
御堂さんは苦笑いした。
「いえいえ、大げさじゃないですよ。僕には贅沢な食べ物です~」
正確に言えばケン◯ッキーのチキンではないのですが。まあそれは置いといて。
「僕、ドーナツが主食がわりなんです」
「ええー、子供じゃないんですから」
「キン◯ドーナツってあるでしょ、イオ◯で158円で売ってるやっすいドーナツ。あれが大好きなんですよー」
「柚木さん、それは栄養が偏りすぎですよ。ちゃんと食べないと」
「大丈夫ですよ。青汁で調整してます」
「えーー」
御堂さんの顔。心底呆れ顔。私も呆れるわ。ひどくない?
「そういう問題じゃ…」
「親戚が青汁農家やってるんですよ~。うちに多量にストックあります」
ドヤ顔で答える。
「体壊しますよ、柚木さん」
「平気ですよ。むしろ贅沢な食事が続くと体調崩します」
「それは極端だから…」
「そういう時はしばらく青汁で調整するんです。もしくは豆腐か。アミノ酸を取るとなんとかなるんですよ。僕の回復食はほうれん草の白和えです。豆腐とほうれん草とこんにゃく、完璧です」
ってまたドヤ顔。
思わぬ料理話に私はつい反応してしまった。
「ああ、わかります、それ。私も財布がピンチの時お豆腐がお助け食材でした。モヤシと炒めたりスープにしたり」
「でしょー? 豆腐はいいんですよ、全国どこでもありますし。あちこち車で周ってた時は色んな店の白和え食べたなあ」
彼は嬉しそうに語り出した。
突然、柚木さんは叫んだ。
失笑の波が起こる。
御堂さん、口押さえて肩を揺らして笑いをこらえてる。
私も吹きそうになった。
「僕が変わります」
もう一人の社員さんがさっと彼と位置を変わった。
柚木さん、端っこに引っ込んじゃって。気の毒に…。
会長は腕組んだままだ。
なんなんだろう、真剣な顔…
会の間中ずっと前を見つめて。
なんだかな~、ちょっと勿体無い、もっと砕けた面白い展開になったかもしれないのに。
「柚木くん、君のブログ引き続き参考にさせてもらう。この数の統計はかなり信憑性がある」
会長の低い落ち着いた声でお開きとなった。
「いただきまーす」
皆が退室した後、進行役の三人の労をねぎらって先ほどのメニューをいつものダイニングテーブルにセットした。
「あーー、美味しい」
「いい匂いが充満してたまらなかったですよねー」
「お腹鳴るの耐えてましたよ」
お三方お疲れ様でした。
どうぞ召し上がれ。
柚木さんの顔に笑みが戻って、よかったわ。
「嬉しいですー。ケン◯のチキン食べるの何年振りかなー」
「大げさですね、柚木さん」
御堂さんは苦笑いした。
「いえいえ、大げさじゃないですよ。僕には贅沢な食べ物です~」
正確に言えばケン◯ッキーのチキンではないのですが。まあそれは置いといて。
「僕、ドーナツが主食がわりなんです」
「ええー、子供じゃないんですから」
「キン◯ドーナツってあるでしょ、イオ◯で158円で売ってるやっすいドーナツ。あれが大好きなんですよー」
「柚木さん、それは栄養が偏りすぎですよ。ちゃんと食べないと」
「大丈夫ですよ。青汁で調整してます」
「えーー」
御堂さんの顔。心底呆れ顔。私も呆れるわ。ひどくない?
「そういう問題じゃ…」
「親戚が青汁農家やってるんですよ~。うちに多量にストックあります」
ドヤ顔で答える。
「体壊しますよ、柚木さん」
「平気ですよ。むしろ贅沢な食事が続くと体調崩します」
「それは極端だから…」
「そういう時はしばらく青汁で調整するんです。もしくは豆腐か。アミノ酸を取るとなんとかなるんですよ。僕の回復食はほうれん草の白和えです。豆腐とほうれん草とこんにゃく、完璧です」
ってまたドヤ顔。
思わぬ料理話に私はつい反応してしまった。
「ああ、わかります、それ。私も財布がピンチの時お豆腐がお助け食材でした。モヤシと炒めたりスープにしたり」
「でしょー? 豆腐はいいんですよ、全国どこでもありますし。あちこち車で周ってた時は色んな店の白和え食べたなあ」
彼は嬉しそうに語り出した。
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