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4話
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「お待たせしました」
私は跪きコーヒーをセンターテーブルに置いた。天井高の書棚が囲む部屋の一角にあるソファコーナー。アートな観葉植物と淡い色合いのマカロンのようなオットマンがポンポンと置いてあって、相変わらずインテリアのお店みたいなオサレ空間だ。
「どうぞ、温かいうちにお召し上がりください」
もう一品。個別のケーキ皿を差し出した。
「おっ、ケン◯のビスケットだぁ。うまそーー」
・・・・・・私が言う前に緑川さん叫ぶ。
じゃーん、某有名フライドチキンチェーン、『ケン◯ッキー風ビスケット』。特製ハニーメイプルも添えて。
「悪かったね。急に無理言って」
今更会長そんな。
「いえ。明日の会議の…」
あなたがお帰りになったら出そうかなと思っていたものですよ。
「…試作品なんですが。どうぞ」
「へー会議用? いただきま~す」
緑川さん、ハフハフしてパクリ。
「これ手作りなんだ? ええな~、会議でこういうの出てくるんだ。うちなんてポテチっすよ。よくてクッキーかな」
ってシロップもう追加。ホカホカのビスケットの上にとろーんとろろ……かけすぎだゾ。
「うんま~。これってホカホカがいいんだよねえ」
ええ。ちゃんとリベイクしてますから。
会長もフォークで少しずつ口に運んで。熱いのを少し冷まして口に入れるのはさすが。ホカホカをあっつーとか言いながら頬張るなんて絶対しない。いつもながら綺麗な食し方。…たまにはハフついてよ
「店に行かずしてビスケット食えるんだねー」
「こういうのネットでレシピ見れますからね」
研究は重ねたけど……。ほぼネットのレシピだ。
「俺もね、レシピサイト見てるんだ、気分は奥さまよ。ヘーイ、ママ友仲間ヨロシクね♪」緑川さんハイタッチしてきた。
「あははは…。ねー♪」
つられてタッチ。
「なるの嫁さん仲間だもんねー♪」
「ねー♪」
・・・・・・? 時々よくわからないことをおっしゃる。
「…消費者動向っての? 料理好きかどうかで商品コンセプト違うんだよね。メシマズ…ウ、ウホン、…料理しない子はとことん手間を省きたがんのよ。ハイ、そうです、ウチの社員のことっすわ、今自動調理鍋開発中なんだ、完成したら持ってくるね♪」
「え、ありがとうございます」
「煮物におすすめっす。ライバル多いけど是非ウチの商品使ってやってください! 」
「はい! 助かります♪」
「最近ね、どこもラインナップ揃えてきて競争激しいわー。毎週ミーティングよ。アイディアは出るんだけどね」緑川さんソファにもたれて「やっぱ3Dプリンター料理版よ。絶対くるっしょ」大真面目に。
えええ。魔法の箱じゃないですか、それ。レシピ入れたら完成品が出てくるとか? そんなの普及しちゃったら私職を奪われてしまいますわ。反対!
「てか3Dプリンター自体夢の道具だよねえ。もうね、ドラ◯もんの時代なのよ。ペッ◯ーくんにセグウェイに…ドローンだろ、スマホだってそうだし…。あ~、、うかうかしてらんねえ、俺も頑張んなきゃなーって思うわけっすよ」
ドラ◯もんて緑川さん…。国民的アニメの夢みたいなロボット。そんなこと考えてるから脳が糖分欲してるのではありませんか。そろそろ気にしなきゃ危ないですぞ、血糖値。
子どもみたいに目を輝かせて未来の道具を語る語る……。
「・・・・・・ボチボチ本題いきますか。なあ、なる、『大きなゴミ箱』っての、コラボらせてよ」
「家電に? 既にオファーが殺到しててね。ついさっきもサインしたところだ」
「え、マジ。のりおくれたぁーー」
「紹介してやろうか? 考案者を明日ここに呼んでるが」
「明日は俺大阪だわ」
「そうか」
「ドラえ◯ん臭がするのよ…。四次元くずかごのオマージュっぽくね?」
「さあどうだろう。気はあうかもしれんな」
「専攻はバイオ?」
「いや、工学系だったかな。就職して興味を持ったらしい。前の会社では技師兼研究員だった」
「へえ」
話があるってこれ? 会長にドラ◯もんとか…。やめときなさいって。
大きなゴミ箱ーー…
とはなんぞや?
うちの会社が最近世に送り出した新製品で、
まさにドラ◯もん的? 未来の道具??ーーそういう代物らしい。
ゴミを無害化するバケツ……。
ついにきた。さすが最先端を行く企業様ですわ。
「あー美味かった! 香苗ちゃんならなるの嫁さんの座譲れるわー♪ よろしくたのんます!」
「はい!」
…え? 勢いで答えちゃったけど、、何?
「幸せ~。俺も早くこんな生活したい!」
るんって頰に手を当てて。…乙女か。やっぱ糖分取りすぎでは?
褒めてくれるのは嬉しいのですが…仮にも専属で料理を出してる身としてはちょっと不満…。
会長!
あのう…来客なら言ってくださいませんか?
『アレアレ』は何だったんですか。言ってくだされば色々買ってこれたのですよ。パクリじゃなくてもっとちゃんとしたもの作って待ってたのに…。
パクリだけどーーパクリじゃない。これには訳があるー泣。
心残りを抱きつつ私は一度キッチンに下がった。
楕円のお皿を出して貰い物のビスケット一個一個並べてく。
女子会ならこの袋ごと出すんだけど。
ビスケット重なっちゃった…。
会長しる◯サンド食べるのかな。
山盛りじゃなく上品に並べよう。余っちゃうと勿体無いし…。
貧乏性…泣
私は跪きコーヒーをセンターテーブルに置いた。天井高の書棚が囲む部屋の一角にあるソファコーナー。アートな観葉植物と淡い色合いのマカロンのようなオットマンがポンポンと置いてあって、相変わらずインテリアのお店みたいなオサレ空間だ。
「どうぞ、温かいうちにお召し上がりください」
もう一品。個別のケーキ皿を差し出した。
「おっ、ケン◯のビスケットだぁ。うまそーー」
・・・・・・私が言う前に緑川さん叫ぶ。
じゃーん、某有名フライドチキンチェーン、『ケン◯ッキー風ビスケット』。特製ハニーメイプルも添えて。
「悪かったね。急に無理言って」
今更会長そんな。
「いえ。明日の会議の…」
あなたがお帰りになったら出そうかなと思っていたものですよ。
「…試作品なんですが。どうぞ」
「へー会議用? いただきま~す」
緑川さん、ハフハフしてパクリ。
「これ手作りなんだ? ええな~、会議でこういうの出てくるんだ。うちなんてポテチっすよ。よくてクッキーかな」
ってシロップもう追加。ホカホカのビスケットの上にとろーんとろろ……かけすぎだゾ。
「うんま~。これってホカホカがいいんだよねえ」
ええ。ちゃんとリベイクしてますから。
会長もフォークで少しずつ口に運んで。熱いのを少し冷まして口に入れるのはさすが。ホカホカをあっつーとか言いながら頬張るなんて絶対しない。いつもながら綺麗な食し方。…たまにはハフついてよ
「店に行かずしてビスケット食えるんだねー」
「こういうのネットでレシピ見れますからね」
研究は重ねたけど……。ほぼネットのレシピだ。
「俺もね、レシピサイト見てるんだ、気分は奥さまよ。ヘーイ、ママ友仲間ヨロシクね♪」緑川さんハイタッチしてきた。
「あははは…。ねー♪」
つられてタッチ。
「なるの嫁さん仲間だもんねー♪」
「ねー♪」
・・・・・・? 時々よくわからないことをおっしゃる。
「…消費者動向っての? 料理好きかどうかで商品コンセプト違うんだよね。メシマズ…ウ、ウホン、…料理しない子はとことん手間を省きたがんのよ。ハイ、そうです、ウチの社員のことっすわ、今自動調理鍋開発中なんだ、完成したら持ってくるね♪」
「え、ありがとうございます」
「煮物におすすめっす。ライバル多いけど是非ウチの商品使ってやってください! 」
「はい! 助かります♪」
「最近ね、どこもラインナップ揃えてきて競争激しいわー。毎週ミーティングよ。アイディアは出るんだけどね」緑川さんソファにもたれて「やっぱ3Dプリンター料理版よ。絶対くるっしょ」大真面目に。
えええ。魔法の箱じゃないですか、それ。レシピ入れたら完成品が出てくるとか? そんなの普及しちゃったら私職を奪われてしまいますわ。反対!
「てか3Dプリンター自体夢の道具だよねえ。もうね、ドラ◯もんの時代なのよ。ペッ◯ーくんにセグウェイに…ドローンだろ、スマホだってそうだし…。あ~、、うかうかしてらんねえ、俺も頑張んなきゃなーって思うわけっすよ」
ドラ◯もんて緑川さん…。国民的アニメの夢みたいなロボット。そんなこと考えてるから脳が糖分欲してるのではありませんか。そろそろ気にしなきゃ危ないですぞ、血糖値。
子どもみたいに目を輝かせて未来の道具を語る語る……。
「・・・・・・ボチボチ本題いきますか。なあ、なる、『大きなゴミ箱』っての、コラボらせてよ」
「家電に? 既にオファーが殺到しててね。ついさっきもサインしたところだ」
「え、マジ。のりおくれたぁーー」
「紹介してやろうか? 考案者を明日ここに呼んでるが」
「明日は俺大阪だわ」
「そうか」
「ドラえ◯ん臭がするのよ…。四次元くずかごのオマージュっぽくね?」
「さあどうだろう。気はあうかもしれんな」
「専攻はバイオ?」
「いや、工学系だったかな。就職して興味を持ったらしい。前の会社では技師兼研究員だった」
「へえ」
話があるってこれ? 会長にドラ◯もんとか…。やめときなさいって。
大きなゴミ箱ーー…
とはなんぞや?
うちの会社が最近世に送り出した新製品で、
まさにドラ◯もん的? 未来の道具??ーーそういう代物らしい。
ゴミを無害化するバケツ……。
ついにきた。さすが最先端を行く企業様ですわ。
「あー美味かった! 香苗ちゃんならなるの嫁さんの座譲れるわー♪ よろしくたのんます!」
「はい!」
…え? 勢いで答えちゃったけど、、何?
「幸せ~。俺も早くこんな生活したい!」
るんって頰に手を当てて。…乙女か。やっぱ糖分取りすぎでは?
褒めてくれるのは嬉しいのですが…仮にも専属で料理を出してる身としてはちょっと不満…。
会長!
あのう…来客なら言ってくださいませんか?
『アレアレ』は何だったんですか。言ってくだされば色々買ってこれたのですよ。パクリじゃなくてもっとちゃんとしたもの作って待ってたのに…。
パクリだけどーーパクリじゃない。これには訳があるー泣。
心残りを抱きつつ私は一度キッチンに下がった。
楕円のお皿を出して貰い物のビスケット一個一個並べてく。
女子会ならこの袋ごと出すんだけど。
ビスケット重なっちゃった…。
会長しる◯サンド食べるのかな。
山盛りじゃなく上品に並べよう。余っちゃうと勿体無いし…。
貧乏性…泣
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