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翼をください
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奴が帰った後、お母さんと一緒にシンクに立って後片付けをした。
「どうしたの、真琴くんと喧嘩した?」
「え、うん、ちょっと」
「またあんたのことだからつまらないことでグジグジ言ったんでしょ。真琴くん血相変えてたわよ。かわいそうー。あんなかっこいい男子なかなかいないよ?」
かっこいいから困ってるんじゃない!
「ねえ、翼」
「ん」
「あんたの名前、どんな思いが込められてるか知ってる?」
「……キャプテン翼でしょ」
ブスッ。そんなん聞きたくないわ。
当時サッカー狂いだったお父さんに押されて名付けたって、死ぬほど聞かされた。男女どっちでもいけるしな、って。
ムッとしてる私にお母さんは苦笑いしながら、
「ふふ、そうだけど、お母さんはね、別の名前を推してたのよ。翼。女の子でもいけるって言ってもキャプテン翼のイメージ強すぎてかわいそうだって、それでね、なんて名前だと思う?」
? それは聞いたことないな。
「真琴。真琴くんの名前。漢字も一緒よ」
「ええーー。そうなの?」
私、驚いて皿を洗う手を止めた。
ゆっくり皿をシンクに置いて、お母さんを見る。
「あの頃ね、お母さん好きだった歌手がいて、名前が真琴って言うんだー。その字面がなんか妙にかっこよく見えてね、ギター片手に、可愛い歌詞で、ボーイッシュな女の子だった。今あんまりボーイッシュって聞かないわよね。でもね、どことなくあんたに似てるわ」
「え?え?」
お母さん、そんなCDとか持ってたっけ?? 初耳だ。
「なつかしーわー。青春だわー。夜こっそり動画見てるの。なんだかあんたたちのこと歌ってるように思えて」
ええー、なんて人? お母さん、気になるじゃない。
「真琴くんが初めてうちに来て自己紹介してくれた時、お母さんビビっと来ちゃった。王子様みたいな上に名前が真琴だなんてーー運命よねえ、はあ、素敵ーー青春よお」
オイ、おかあさん?? うっとりしてる?
「いい子じゃない、真っ直ぐで。嘘がなくて。好みなんて人それぞれよ。あんたもっと自信持っていきなさい、とは言わないけど…ーーね、真琴くんのこと、もう少し信じてあげれない?」
優しく諭されてるのかな。
「う、うん……」
何も反論できないじゃん……。
わかってる、わかってるんだけど……。
ボーイッシュて。
なんだ、それ。
笑えるんですけど。
月曜日。お母さんは張り切って早朝からキッチンで腕を振るってた。
「はい、これ。残さないでね」
「うん……」
デカイ。
豪華な三段弁当……。
「二人分一緒に入れといたから」
って。
花見弁当じゃないって。
こんなの毎日持っていくの?
「どうしたの、真琴くんと喧嘩した?」
「え、うん、ちょっと」
「またあんたのことだからつまらないことでグジグジ言ったんでしょ。真琴くん血相変えてたわよ。かわいそうー。あんなかっこいい男子なかなかいないよ?」
かっこいいから困ってるんじゃない!
「ねえ、翼」
「ん」
「あんたの名前、どんな思いが込められてるか知ってる?」
「……キャプテン翼でしょ」
ブスッ。そんなん聞きたくないわ。
当時サッカー狂いだったお父さんに押されて名付けたって、死ぬほど聞かされた。男女どっちでもいけるしな、って。
ムッとしてる私にお母さんは苦笑いしながら、
「ふふ、そうだけど、お母さんはね、別の名前を推してたのよ。翼。女の子でもいけるって言ってもキャプテン翼のイメージ強すぎてかわいそうだって、それでね、なんて名前だと思う?」
? それは聞いたことないな。
「真琴。真琴くんの名前。漢字も一緒よ」
「ええーー。そうなの?」
私、驚いて皿を洗う手を止めた。
ゆっくり皿をシンクに置いて、お母さんを見る。
「あの頃ね、お母さん好きだった歌手がいて、名前が真琴って言うんだー。その字面がなんか妙にかっこよく見えてね、ギター片手に、可愛い歌詞で、ボーイッシュな女の子だった。今あんまりボーイッシュって聞かないわよね。でもね、どことなくあんたに似てるわ」
「え?え?」
お母さん、そんなCDとか持ってたっけ?? 初耳だ。
「なつかしーわー。青春だわー。夜こっそり動画見てるの。なんだかあんたたちのこと歌ってるように思えて」
ええー、なんて人? お母さん、気になるじゃない。
「真琴くんが初めてうちに来て自己紹介してくれた時、お母さんビビっと来ちゃった。王子様みたいな上に名前が真琴だなんてーー運命よねえ、はあ、素敵ーー青春よお」
オイ、おかあさん?? うっとりしてる?
「いい子じゃない、真っ直ぐで。嘘がなくて。好みなんて人それぞれよ。あんたもっと自信持っていきなさい、とは言わないけど…ーーね、真琴くんのこと、もう少し信じてあげれない?」
優しく諭されてるのかな。
「う、うん……」
何も反論できないじゃん……。
わかってる、わかってるんだけど……。
ボーイッシュて。
なんだ、それ。
笑えるんですけど。
月曜日。お母さんは張り切って早朝からキッチンで腕を振るってた。
「はい、これ。残さないでね」
「うん……」
デカイ。
豪華な三段弁当……。
「二人分一緒に入れといたから」
って。
花見弁当じゃないって。
こんなの毎日持っていくの?
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