36 / 51
瀬尾くんの誰にも言えない秘密
6
しおりを挟む
はっと気づいた。
そうだ今日はバレンタインだ。
「仲根さん、ちょっと休んで行かない」
「え」
「公園にでも寄ろうか 」「うん」
まっすぐ進めば家だが、道を逸れ、少し離れた公園に向かう。
「瀬尾くん、神社のお祓いっていくらするの」
「え」
「知ってるんでしょ」
個人の場合は5000円から一万円かな。
お気持ちでということになってるけど。
それは相場だが、俺がやる場合は個人的にはもらいたくない。
特別な霊能力があるでもなし、
失敗したことはないけどお祓いって言うのは気が引けるんだ。
「内容によるんだけど…仲根さん」
「ん」
周囲には静寂が漂っていた。公共施設の敷地内にある緑地は、草木が静かに風に揺れ、今は少々さみしいが季節によって様々な花々が咲き誇っている。その日は穏やかな晴れた日で、木漏れ日が地面に穏やかな光を差し込んでいる。公園内にはほとんど人がおらず、まるで自分たちだけがこの場所に存在しているかのような静寂が広がっている。
公園の一角には小さな池があり、その水面には小鳥たちが羽を休めている。風にそよぐ木々の葉音や、遠くから聞こえる鳥のさえずりが、静かな空気を彩っている。公園の中心には大きな木が立ち、その下にはベンチやテーブルが置かれている。人目を気にせず静かに過ごすことができる、穏やかな時間の流れる場所だった。
そんなところで立ち止まって彼女の目を見つめた。
「あれ、私、何してたんだろう」
仲根さんが頭を上げたのは俺の家のすぐ近くで、神社の鳥居の横でチョコを手にする女子たちの姿が視界に飛び込んできた。彼女たちは明るく笑顔で、バレンタインデーの楽しい雰囲気でいっぱいだった。中には私服に着替えている女子もいて、気持ちが伝わってくる。
「仲根さん、抜け駆けはなしね」と一人の女子が早口で言った。その言葉に仲根さんは戸惑いながら、かすかに首を傾げた。
彼女の立場に立ってみれば、確かにそうだろう。公園から神社までの間に、時間が飛ぶような出来事があったのだ。
「何なの、だから一緒に帰っただけだから……」仲根さんはやっと正気に戻り、はっきり答えた。
「じゃあ、瀬尾くん、つきあってくれてありがとう」
その言葉を聞いて、微笑みながら「うん」と答える。仲根さんの顔には、悩みが消え去り、安堵の表情が浮かんでいるように見えた。この少しの距離を歩く間に、彼女の心の中で何かが変わったようだった。
距離にしたら200Mくらいのほんの少し歩く間の秘密の出来事。ついでに仲根さんは前後の記憶も飛んでいる。
そうだ今日はバレンタインだ。
「仲根さん、ちょっと休んで行かない」
「え」
「公園にでも寄ろうか 」「うん」
まっすぐ進めば家だが、道を逸れ、少し離れた公園に向かう。
「瀬尾くん、神社のお祓いっていくらするの」
「え」
「知ってるんでしょ」
個人の場合は5000円から一万円かな。
お気持ちでということになってるけど。
それは相場だが、俺がやる場合は個人的にはもらいたくない。
特別な霊能力があるでもなし、
失敗したことはないけどお祓いって言うのは気が引けるんだ。
「内容によるんだけど…仲根さん」
「ん」
周囲には静寂が漂っていた。公共施設の敷地内にある緑地は、草木が静かに風に揺れ、今は少々さみしいが季節によって様々な花々が咲き誇っている。その日は穏やかな晴れた日で、木漏れ日が地面に穏やかな光を差し込んでいる。公園内にはほとんど人がおらず、まるで自分たちだけがこの場所に存在しているかのような静寂が広がっている。
公園の一角には小さな池があり、その水面には小鳥たちが羽を休めている。風にそよぐ木々の葉音や、遠くから聞こえる鳥のさえずりが、静かな空気を彩っている。公園の中心には大きな木が立ち、その下にはベンチやテーブルが置かれている。人目を気にせず静かに過ごすことができる、穏やかな時間の流れる場所だった。
そんなところで立ち止まって彼女の目を見つめた。
「あれ、私、何してたんだろう」
仲根さんが頭を上げたのは俺の家のすぐ近くで、神社の鳥居の横でチョコを手にする女子たちの姿が視界に飛び込んできた。彼女たちは明るく笑顔で、バレンタインデーの楽しい雰囲気でいっぱいだった。中には私服に着替えている女子もいて、気持ちが伝わってくる。
「仲根さん、抜け駆けはなしね」と一人の女子が早口で言った。その言葉に仲根さんは戸惑いながら、かすかに首を傾げた。
彼女の立場に立ってみれば、確かにそうだろう。公園から神社までの間に、時間が飛ぶような出来事があったのだ。
「何なの、だから一緒に帰っただけだから……」仲根さんはやっと正気に戻り、はっきり答えた。
「じゃあ、瀬尾くん、つきあってくれてありがとう」
その言葉を聞いて、微笑みながら「うん」と答える。仲根さんの顔には、悩みが消え去り、安堵の表情が浮かんでいるように見えた。この少しの距離を歩く間に、彼女の心の中で何かが変わったようだった。
距離にしたら200Mくらいのほんの少し歩く間の秘密の出来事。ついでに仲根さんは前後の記憶も飛んでいる。
0
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる