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瀬尾くんの誰にも言えない秘密
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言いにくいなあ…面談の時にしようかなあ。
いきなり担任に相談ってのもなあ。
まずは親に言わないと…。
「瀬尾くーん。待ってや」
帰宅してると大牟田が寄ってきた。
「何だよ、また」
「珍しく一人だからさ。一緒に帰ろうや」
「珍しいってなんだよ。徒歩通学が少ないからだろ」
「そうだけど、部活してた時、女子の出待ちが多かったじゃん」
「そんな昔の話……」
えらく絡むな。進路のことで悩んでるのかな。
「朝聞きそびれたけど、お前こそどうなんだよ」
「何が」
「進路」
「おれぇ~? はっきり決めてないけど、大阪の大学ってのは変わらない」
「大阪か」
「俺は県外志望だぜ。東京もいいけど、親がそれなら大阪にしろって」
「親には言ったんだ?」
「まあな。…お前、言ってないの? もしかして学部に悩んでんの? 神学部とか?」
「それはない」
「神社の息子じゃん」
「俺が継ぐわけじゃないし」
「へー、そうなんだ。姉ちゃんが継ぐのか」
「そうだよ。実際継いでるし」
もう働いてるんだよ。
「俺とは10以上離れてるんだぜ」
「ああ、そっかぁ…。ねーちゃんと妹がいるんだっけ。どうなんよ、女に囲まれて暮らすのって。俺も妹がいるけど。全然違うんだろうなあ。風呂とか困らない?」
「別に。なんで?」
「長いじゃん、女の風呂って。入りそびれて炬燵で寝ちまうと悲惨なんだよなあ。起こしてくれねえし」
「……長風呂ってこと? それはないなあ。俺んち風呂が二つあるんだよ」
「えっ、そうなん?」
「ばあちゃんが住んでた家にな。そっちでシャワーで済ます手もある」
「ふうん、冬は寒そうだなあ」
「かえって離れの方が充実してるぜ。狭くて床暖してるしな」
「ほお。じゃあ、疑似ひとりぐらしできるなー」
「まあなあ、勉強ははかどるな」
「それで、お前、何学部だがや」
…いきなりか。それもあるんだよな。
「迷ってんだよ」
俺的には神学部より民俗学なんだよ。もしくは精神科か、臨床心理学…。どこがいいだろう。理系文系分かれるよなー…。
「おっ」
喋りつつ歩いてると大通りに通じる道の向こうで小さな女の子が泣きじゃくっていた。
「ママ―ママー…」
「迷子かよ。微妙な距離だなあ」
「こんな田舎でもね、手を離すと危ないよな」
目を離した隙に…って本当に多い。小さな子供って育児書に書いてる以上の存在なんだよ。一家総出で探し回るのなんて当たり前。
「しゃあないな、見て見ぬ振りするしか」
「そうは言ってもな」踏切もあるし。
突然、女の子はこちらへ向かってきた。
「やべえな、でも親もいないし…」大牟田はきょろきょろ見まわした。
「どうしたの?」
いよいよ接近してきたので、しゃがんで声をかけてみる。
「ままが……」
女の子は3歳くらいか。
「一緒に待ってようか。探してるかもしれないね」
「……うん」涙が止まった。
「どこから来たの?」
「ままとバスで…あっち…」
「うんうん」
「おいおい、瀬尾」
いきなり担任に相談ってのもなあ。
まずは親に言わないと…。
「瀬尾くーん。待ってや」
帰宅してると大牟田が寄ってきた。
「何だよ、また」
「珍しく一人だからさ。一緒に帰ろうや」
「珍しいってなんだよ。徒歩通学が少ないからだろ」
「そうだけど、部活してた時、女子の出待ちが多かったじゃん」
「そんな昔の話……」
えらく絡むな。進路のことで悩んでるのかな。
「朝聞きそびれたけど、お前こそどうなんだよ」
「何が」
「進路」
「おれぇ~? はっきり決めてないけど、大阪の大学ってのは変わらない」
「大阪か」
「俺は県外志望だぜ。東京もいいけど、親がそれなら大阪にしろって」
「親には言ったんだ?」
「まあな。…お前、言ってないの? もしかして学部に悩んでんの? 神学部とか?」
「それはない」
「神社の息子じゃん」
「俺が継ぐわけじゃないし」
「へー、そうなんだ。姉ちゃんが継ぐのか」
「そうだよ。実際継いでるし」
もう働いてるんだよ。
「俺とは10以上離れてるんだぜ」
「ああ、そっかぁ…。ねーちゃんと妹がいるんだっけ。どうなんよ、女に囲まれて暮らすのって。俺も妹がいるけど。全然違うんだろうなあ。風呂とか困らない?」
「別に。なんで?」
「長いじゃん、女の風呂って。入りそびれて炬燵で寝ちまうと悲惨なんだよなあ。起こしてくれねえし」
「……長風呂ってこと? それはないなあ。俺んち風呂が二つあるんだよ」
「えっ、そうなん?」
「ばあちゃんが住んでた家にな。そっちでシャワーで済ます手もある」
「ふうん、冬は寒そうだなあ」
「かえって離れの方が充実してるぜ。狭くて床暖してるしな」
「ほお。じゃあ、疑似ひとりぐらしできるなー」
「まあなあ、勉強ははかどるな」
「それで、お前、何学部だがや」
…いきなりか。それもあるんだよな。
「迷ってんだよ」
俺的には神学部より民俗学なんだよ。もしくは精神科か、臨床心理学…。どこがいいだろう。理系文系分かれるよなー…。
「おっ」
喋りつつ歩いてると大通りに通じる道の向こうで小さな女の子が泣きじゃくっていた。
「ママ―ママー…」
「迷子かよ。微妙な距離だなあ」
「こんな田舎でもね、手を離すと危ないよな」
目を離した隙に…って本当に多い。小さな子供って育児書に書いてる以上の存在なんだよ。一家総出で探し回るのなんて当たり前。
「しゃあないな、見て見ぬ振りするしか」
「そうは言ってもな」踏切もあるし。
突然、女の子はこちらへ向かってきた。
「やべえな、でも親もいないし…」大牟田はきょろきょろ見まわした。
「どうしたの?」
いよいよ接近してきたので、しゃがんで声をかけてみる。
「ままが……」
女の子は3歳くらいか。
「一緒に待ってようか。探してるかもしれないね」
「……うん」涙が止まった。
「どこから来たの?」
「ままとバスで…あっち…」
「うんうん」
「おいおい、瀬尾」
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