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緑川、人類の運命を背負う
謎の声
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「おめえすげえな、アポロンにあんなこと言うなんて」
窮屈そうに見えてヘスティアの小屋の天井にはまだ余裕がある。石のテーブルに並んで座ってハーブティのようなものを出されて飲んでるとキューが寄ってきた。
「どういうこと?」
「…アポロンは次の大神候補筆頭なのさ。お前は知らないんだな」
……そうなのか。さっきはどうにかこうにか帰って行ったけど、次はないだろうなあ…。
「アポロンやゼウスにたてつくなんてまずできねえからよ」
「・・・知らないからだよ。知ってたら逆に媚び売ってるわ」
「媚?」
あ、わかんねーか。
へこへこ上級の機嫌うかがって仕事もらうんだよ。元の世界じゃ俺も大して変わんねーわ。
はあと息を漏らした。
かまどでパンの焼ける匂いが漂う。麦の香ばしい匂いだ。
「……ありがとよ、庇ってくれて。あんなことしてくれたのお前が初めてだぜ」
「いや、うん」
じんときて、でかい腕にコツンと頭をもたげた。
「お前こそすげえもん作るんだな。ゼウスの雷霆ってなんだ?」
「ゼウスが持ってる雷の武器さ。遠い昔、大戦争で使ったんだ」
「へえ」
「……俺の存在価値は物を作ることなのさ。それがなきゃとっくに消されてる」
「そんな奴を逆恨みごときで殺そうっていうんだからやっぱり間違ってるよな」
「ハハッ」
雷で武器を…。やっぱこいつらすげえわ。そんだけの技があるんだったら、タイムマシンだってできそうだ…電算機付きの器を用意して一万ボルトの電圧かければ……。バックトゥー◯フューチャーのパターンか。元の世界に戻れるかどうかわかんねえけど。
「なあ、タイムマシン作れねえかな」
「タイムマシン? なんだそりゃ」
ミドリカワは身振り手振り踏まえ彼らに説明した。
「時間を行ったり来たりする? なんでそんなことするんだ?」
不思議な顔された。こいつらにはタイムトラベルの概念がないんだな。そりゃそうか。
「……俺はずっと先の世界から来たんだよ。頼む、設計図見せるからタイムマシン作るの手伝ってくれーーー」
設計図はあるのだ。スマホにデータが残っている。
「……先の世界?」
未来だよ。ーー言っても分からないか。
「そう、あなた……全然違うところからきたの」
「ヘスティアさん」彼女は後ろを向きかまどの前で腰をかがめた。
「あら、いけない、焦げちゃった」
ポイーー。ヘスティアはかまどからピザピーラーみたいなものでパンを出すと傍に投げた。
「え、捨てちゃうの? もったいない!」ミドリカワはつい声を上げた。大して焦げてないのに。いい焼き色じゃん?
「もったいないってなんだ?」
一斉にキョトンとミドリカワを見る。
もったいないって通じないのかよーー、ええ?
こっちがキョトンだぜ。
「お前変わってるなあ……。人間がどうかするとお前みたいになるのか?」
元の世界に神がいるかどうか分からん。
逆なんだな。ここでは科学なんて領域も概念もないだろうし。
だがこいつらの力を借りれば─────……。
「師匠! お願いします、弟子入りさせてください!」
椅子から立って深く頭を下げるミドリカワをヘパイストスとキューは不思議な顔で見つめた。
「なんだ? 工房使いたけりゃ好きにしろよ。お前が何作るか面白そうだ。見せてもらうぜ」
「ありがとうございます!」
ーーよし。まずはタイムマシン作りに専念しよう。
リアルな夢だとしても何かしなくちゃ。またさっきみたいなこと起こるかもしれねえし。
「なんだか楽しいことになりそうね」
ヘスティアは微笑む。
その時、さわさわと何か動いた。
虫? ……いや、そういや虫とか見かけねえな…。なんかいたっけ?
ーーーゼウスの次王、アポロンに歯向かうとは大した奴じゃのーーー
ん?
ーーーお前、わしに力を貸さぬかーーー
なんだ、この声は。
キョロキョロ見渡す。何もない。部屋の中は普通だ。
ーーーゼウスを倒せーーー
は?
ーーーわしをここから出すのじゃーーー
窮屈そうに見えてヘスティアの小屋の天井にはまだ余裕がある。石のテーブルに並んで座ってハーブティのようなものを出されて飲んでるとキューが寄ってきた。
「どういうこと?」
「…アポロンは次の大神候補筆頭なのさ。お前は知らないんだな」
……そうなのか。さっきはどうにかこうにか帰って行ったけど、次はないだろうなあ…。
「アポロンやゼウスにたてつくなんてまずできねえからよ」
「・・・知らないからだよ。知ってたら逆に媚び売ってるわ」
「媚?」
あ、わかんねーか。
へこへこ上級の機嫌うかがって仕事もらうんだよ。元の世界じゃ俺も大して変わんねーわ。
はあと息を漏らした。
かまどでパンの焼ける匂いが漂う。麦の香ばしい匂いだ。
「……ありがとよ、庇ってくれて。あんなことしてくれたのお前が初めてだぜ」
「いや、うん」
じんときて、でかい腕にコツンと頭をもたげた。
「お前こそすげえもん作るんだな。ゼウスの雷霆ってなんだ?」
「ゼウスが持ってる雷の武器さ。遠い昔、大戦争で使ったんだ」
「へえ」
「……俺の存在価値は物を作ることなのさ。それがなきゃとっくに消されてる」
「そんな奴を逆恨みごときで殺そうっていうんだからやっぱり間違ってるよな」
「ハハッ」
雷で武器を…。やっぱこいつらすげえわ。そんだけの技があるんだったら、タイムマシンだってできそうだ…電算機付きの器を用意して一万ボルトの電圧かければ……。バックトゥー◯フューチャーのパターンか。元の世界に戻れるかどうかわかんねえけど。
「なあ、タイムマシン作れねえかな」
「タイムマシン? なんだそりゃ」
ミドリカワは身振り手振り踏まえ彼らに説明した。
「時間を行ったり来たりする? なんでそんなことするんだ?」
不思議な顔された。こいつらにはタイムトラベルの概念がないんだな。そりゃそうか。
「……俺はずっと先の世界から来たんだよ。頼む、設計図見せるからタイムマシン作るの手伝ってくれーーー」
設計図はあるのだ。スマホにデータが残っている。
「……先の世界?」
未来だよ。ーー言っても分からないか。
「そう、あなた……全然違うところからきたの」
「ヘスティアさん」彼女は後ろを向きかまどの前で腰をかがめた。
「あら、いけない、焦げちゃった」
ポイーー。ヘスティアはかまどからピザピーラーみたいなものでパンを出すと傍に投げた。
「え、捨てちゃうの? もったいない!」ミドリカワはつい声を上げた。大して焦げてないのに。いい焼き色じゃん?
「もったいないってなんだ?」
一斉にキョトンとミドリカワを見る。
もったいないって通じないのかよーー、ええ?
こっちがキョトンだぜ。
「お前変わってるなあ……。人間がどうかするとお前みたいになるのか?」
元の世界に神がいるかどうか分からん。
逆なんだな。ここでは科学なんて領域も概念もないだろうし。
だがこいつらの力を借りれば─────……。
「師匠! お願いします、弟子入りさせてください!」
椅子から立って深く頭を下げるミドリカワをヘパイストスとキューは不思議な顔で見つめた。
「なんだ? 工房使いたけりゃ好きにしろよ。お前が何作るか面白そうだ。見せてもらうぜ」
「ありがとうございます!」
ーーよし。まずはタイムマシン作りに専念しよう。
リアルな夢だとしても何かしなくちゃ。またさっきみたいなこと起こるかもしれねえし。
「なんだか楽しいことになりそうね」
ヘスティアは微笑む。
その時、さわさわと何か動いた。
虫? ……いや、そういや虫とか見かけねえな…。なんかいたっけ?
ーーーゼウスの次王、アポロンに歯向かうとは大した奴じゃのーーー
ん?
ーーーお前、わしに力を貸さぬかーーー
なんだ、この声は。
キョロキョロ見渡す。何もない。部屋の中は普通だ。
ーーーゼウスを倒せーーー
は?
ーーーわしをここから出すのじゃーーー
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