44 / 51
緑川、人類の運命を背負う
しゃちょう~
しおりを挟む
「ハイハイハイハイーー!」
「わはははは、ミドリカーワ、いいぞーー」
VIPルームは盛り上がり絶好調。ポセイドン、ゼウスの傍には取り巻きの美女がずらり。
ハデスはさっさと退散していない。
さっきスマホで見せた動画のゆるキャラのように音量スピーカーにしてダンスやオタ芸を踊る。
緑川社長、ただ一人。
かたや両脇に花、キャバクラや高級クラブに通うお偉いさんのように陣取る神々。
時と場所は違えど、やることは同じ…。
家電メーカー社長とはいえ、市場規模はまだまだペーぺー。元の世界でも、酒の席で踏ん反り返ってもてなしを受ける…なんてことは決してない。
「さあ、どうぞみなさんもご一緒に!」などと誘い出せないのがキツイところである。
たったひとり舞台に放り出されたこの気持ち、だれがわかろうか。
日はやっと落ちかけて、えらく長い1日に感じた。
「ご視聴ありがとうございます! さ、記念に一枚!」
キリのいいところで威勢良く叫ぶとスマホを構えた。
神らは何をされているか分からずキョトンとミドリカワを見つめた。
「えーと、そうですねえ、みなさん、寄り添ってニコッと笑ってもらえますか…。そうそう」
カシャカシャ……。
社長の身の上ながら、慣れた段取りでカメラに収める。
社会人たるもの、媚びへつらいは誰しも通る道だ。カメラマンになりきって何枚もシャッターを切った。
「もっと笑って笑ってーー」
……コイツ何をしているんだ? といぶかしむも言葉につられてニコッ、そこをパシャ。
画像を見せてやると、神は目を丸めて叫んだ。
「おお、なんだ、これは」
「面白いではないか。なんぞ、この石版は不思議な道具じゃ」
……こんなもんで驚くか。
なんかこの世界、進んでいるのか退化しているのか掴めねー。
見渡すと宮殿内部は豪華だが装飾品の類が一切なく。
絵画も銅像も書物すら見当たらない。
開けっぴろげな神殿造の建物はどれくらい巨大なのか見当もつかない。
「ふうむ、ワシらの姿を捉えるとはふとどきながら、興味深いのう。のう、これをヘパイストスに作らせてみてはどうじゃ」
ゼウスはとなりのポセイドンに持ちかけた。
ーーん?
「またお前はそのようなことを……」
「よいではないか。作り方はこの者に説明させればよい」
見た目よく似た神だ。ヒゲ生やして貫禄あるどっしりした体型。
きっとハデスだけ母親が違うか、やっぱドリームワールドなんだろうな、うん!
でもそんなのどうでもいいことだ。
時間稼ぎしてなんとか明日に命を持たせれば元の世界に帰れるはずなのだから。
時間稼ぎ、時間稼ぎ…。
半分夢だと思いつつ時を待つ。中々しんどい。夢なら早く覚めろ。
「のう、これはどのような使い道があるのじゃ。ヘパイストスに教えてやってくれぬか」
さすが最高神、話はあっという間に進み、ミドリカワは侍女に付き添われ別の神の館に連れていかれた。
「わはははは、ミドリカーワ、いいぞーー」
VIPルームは盛り上がり絶好調。ポセイドン、ゼウスの傍には取り巻きの美女がずらり。
ハデスはさっさと退散していない。
さっきスマホで見せた動画のゆるキャラのように音量スピーカーにしてダンスやオタ芸を踊る。
緑川社長、ただ一人。
かたや両脇に花、キャバクラや高級クラブに通うお偉いさんのように陣取る神々。
時と場所は違えど、やることは同じ…。
家電メーカー社長とはいえ、市場規模はまだまだペーぺー。元の世界でも、酒の席で踏ん反り返ってもてなしを受ける…なんてことは決してない。
「さあ、どうぞみなさんもご一緒に!」などと誘い出せないのがキツイところである。
たったひとり舞台に放り出されたこの気持ち、だれがわかろうか。
日はやっと落ちかけて、えらく長い1日に感じた。
「ご視聴ありがとうございます! さ、記念に一枚!」
キリのいいところで威勢良く叫ぶとスマホを構えた。
神らは何をされているか分からずキョトンとミドリカワを見つめた。
「えーと、そうですねえ、みなさん、寄り添ってニコッと笑ってもらえますか…。そうそう」
カシャカシャ……。
社長の身の上ながら、慣れた段取りでカメラに収める。
社会人たるもの、媚びへつらいは誰しも通る道だ。カメラマンになりきって何枚もシャッターを切った。
「もっと笑って笑ってーー」
……コイツ何をしているんだ? といぶかしむも言葉につられてニコッ、そこをパシャ。
画像を見せてやると、神は目を丸めて叫んだ。
「おお、なんだ、これは」
「面白いではないか。なんぞ、この石版は不思議な道具じゃ」
……こんなもんで驚くか。
なんかこの世界、進んでいるのか退化しているのか掴めねー。
見渡すと宮殿内部は豪華だが装飾品の類が一切なく。
絵画も銅像も書物すら見当たらない。
開けっぴろげな神殿造の建物はどれくらい巨大なのか見当もつかない。
「ふうむ、ワシらの姿を捉えるとはふとどきながら、興味深いのう。のう、これをヘパイストスに作らせてみてはどうじゃ」
ゼウスはとなりのポセイドンに持ちかけた。
ーーん?
「またお前はそのようなことを……」
「よいではないか。作り方はこの者に説明させればよい」
見た目よく似た神だ。ヒゲ生やして貫禄あるどっしりした体型。
きっとハデスだけ母親が違うか、やっぱドリームワールドなんだろうな、うん!
でもそんなのどうでもいいことだ。
時間稼ぎしてなんとか明日に命を持たせれば元の世界に帰れるはずなのだから。
時間稼ぎ、時間稼ぎ…。
半分夢だと思いつつ時を待つ。中々しんどい。夢なら早く覚めろ。
「のう、これはどのような使い道があるのじゃ。ヘパイストスに教えてやってくれぬか」
さすが最高神、話はあっという間に進み、ミドリカワは侍女に付き添われ別の神の館に連れていかれた。
0
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

不倫するクズ夫の末路 ~日本で許されるあらゆる手段を用いて後悔させる。全力で謝ってくるがもう遅い~
ネコ
恋愛
結婚してもうじき10年というある日、夫に不倫が発覚した。
夫は不倫をあっさり認め、「裁判でも何でも好きにしろよ」と開き直る。
どうやらこの男、分かっていないようだ。
お金を払ったら許されるという浅はかな誤解。
それを正し、後悔させ、絶望させて、破滅させる必要がある。
私は法律・不動産・経営・その他、あらゆる知識を総動員して、夫を破滅に追い込む。
夫が徐々にやつれ、痩せ細り、医者から健康状態を心配されようと関係ない。
これは、一切の慈悲なく延々と夫をぶっ潰しにかかる女の物語。
最初は調子に乗って反撃を試みる夫も、最後には抵抗を諦める。
それでも私は攻撃の手を緩めず、周囲がドン引きしようと関係ない。
現代日本で不倫がどれほどの行為なのか、その身をもって思い知れ!


誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく
矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。
髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。
いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。
『私はただの身代わりだったのね…』
彼は変わらない。
いつも優しい言葉を紡いでくれる。
でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。

甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる