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一章 ようこそ明咲探偵事務所へ
事件は突然に①
しおりを挟む事件は突然に
「…あー」
「…今回に関しては仕方ないですわね」
「どーしましょ」
三名が戻ってきた。
頭抱えてる杉田さん、あわあわしながらどうしようと呟いてる一条さん、そして…。
「緊急事態ですわ」
パンっと開いていた扇子を閉じリンとした声ではっきりと鏡花さんが続けた。
「ここにいる全員に特別指令を出させてもらいます」
ここにいる全員…待ってそれってオレもってことですよね?!
事件は突然に
「ちょっと待って鏡花さん、ここにいる全員?それって金子くんも込みってことですよね?だっダメですよ!」
水卜さんが流石に止めに入ってくれた、なんて優しい…じゃなくてなんでオレ頭数に入ってるんだ?まだあって数十分すら経ってませんよね?」
「…部外者じゃなくなったってことか?」
コジローさんがあーなるほどなーみたいな顔して何かを納得した。
何を納得した?説明プリーズ。
「話は長くなると思いますので」
席に座りませんこと?
と言う言葉により電話をしていたメンバーが先程のソファへ、スメラギは所長席のような場所鏡花さんの方に戻りその隣にまた立とうとする。
「篁、長くなるのでこちらに座りなさい」
「はい」
所長席の隣に置いてあった柔らかそうな丸椅子にちょこんと座った。
全員が全員座ったところを見た後、鏡花さんが説明しますねと話し始めた。
「まず初めに、先程の電話で話せる範囲を話しますわ」
よろしいですか?と全員に聞く。
警察の二人も頷き、待機してたこちら側もオッケーみたいな反応をする。
「先程の連絡は霊的依頼を受けたり連携をとってくれる組織ですわそうですね退魔会と通称呼ばれています」
「なんか…そのまんまな感じですね」
「そりゃ略称だしな」
「続けますわね、そちらから要請を受けました」
「珍しい、ライちゃん忙しいのか」
「小次郎?」
「すんませんどーぞ」
もしかしてじゃなくてもコジローさん集中力きれてる?
「先程名前が出てきましたが退魔会代表のライさんから直々に連絡をいただきました」
ライさん…また新しい名前。
「まぁ、とても簡単に申しますと金子くんを追ってたアレは危険対象として退魔会が捉えようとしているものらしく」
「それを捕獲の手伝いまたは場合によっては確実に討伐依頼をいろんなところに連絡しているそうだ」
杉田さんも説明に参加し始めた。
どうやら最初はその神道庁とやらに依頼が来たっぽいな。
ん?待て、最悪討伐ってことは…。
「え?オレを追っかけてたやつってそんなにヤバかったんですか?」
「えぇ、その通りですわ」
パサっと扇子を開く鏡花さん。
「残念ながらぶつかってきたのはあなただけでして、後ろの気配を追う前に逃げられてしまったのです」
「え?あんなでかいやつに?」
マジか足速かったのか…やっぱバケモノはオレで遊んでいたのか。
「くっそあん時深追いしとけばよかった」
「いや、コジローいなかったら運べなかったから」
「そうかもしれないけどヨォ」
コジローさんたちがこの事務所に連れてきてくれたのか…なるほど、治療優先ってやつか。
「あの、金子くん、貴方は正体は見なかったんですか?」
一条さんが恐る恐る質問してきた。
気を失う前の逃げてる時を思い出す。
目なんか合わせたくないぶつだったしなぁ…。
黒い蠢く気持ち悪いもの。
まるでその動きは多足でまるで。
『ムシ』
でも『ムシ』にしてはデカく動き方も不規則で、恐ろしさが勝つようなもの。
今思い出した、匂いもやばかった。
腐臭とはちがう何かもっと独特な。
「…あっあの金子くん?」
「はっ!すっすみません今頑張って思い出そうとしてました…気持ち悪いものだったのは覚えてます、はい!」
「…」
「そっそうですか?あんまり無理しちゃダメですよ、霊的ダメージは頭で平気でも心に傷が残ってる場合がありますから」
ね?と首を傾げながら柔らかく話しかけてくれる一条さん…これは怖い思いしたことあるからこそ言える言葉なのかな。
「…本来なら、金子くんは巻き込みたくありませんが、金子くんが特徴を知っています」
「あーあのぉオレが見つけるって感じになるんですかね?」
「すみません、大変なのはわかっております」
鏡花さんが申し訳なさそうに扇子を閉じ下ろしそして、その場で頭を下げた。
「この裏世界でまだ覚醒し切ってない子を連れ回すのはとても心苦しいですが、このまま行きますと表の世界に出てきてしまうかもしれません」
そうなってしまうと…と言い淀む。
「…あっあの頭あげてください、オレできることはほとんど…それこそあのバケモン見たくらいで何もできないんですよ」
視たり、なんとなく匂いを感じ取ったり…それしかできない。
不甲斐ないことを言うと役立たずというやつだ。
その一言で少し静かになった矢先。
「…あるじゃん!」
裏表ない声を発した人がいた。
「え?」
水卜さんだ。
彼女はニコッとこちらに微笑んでオレの手を取りこう続けた。
「視えるし、悪い奴の見た目覚えてるってすごい事じゃん!」
彼女の目はキラキラしていて。
嘘をついていない瞳だった。
続く
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