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北へ
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ベルザイオ王国の北側に位置する国へ向かう馬車にはレイモンドとアンジェル、アプソが乗り込んでいた。
「暇ねぇ…ねぇアプソ…ソニーは追いつくかしら?」
「こちらは荷馬車がいますから、旦那様のほうが速いでしょう」
心身が不安定なアンジェルはレイモンドの婿入りに便乗し北の静養地で過ごさせるとソロモンが手配した。
「王配なんて…レイモンド、よかったわね。王宮で暮らせるのよ。皆が傅くわね」
アンジェルに声をかけられてもレイモンドは馬車窓から外を眺めていた。
トマークタスから渡された仕度金のおかげで隣国に渡っても恥はかかないほどの衣装をあつらえ荷馬車に積み、護衛騎士が馬車を囲んで駆けている。
「聞いているの?レイモンド。なんなのかしらね、王配よ?なにが不満なのよ…アプソ、ランド男爵領地を通過するのよね?」
「はい」
「わたくしの静養地はその先…美しい湖があるってソニーが言っていたわ…んふ…」
「静かな場所です。穏やかに過ごせます」
「ええ。田舎は嫌いだったけど昔はソニーがウィル・ランドに会うために何度も訪れたわ…質素な邸と領地…娯楽はなにもないのよね…わたくしは行きたくなかったけれどソニーと離れたくなくて…耐えたわ…本当に死んでくれてよかった…あの夫婦はソニーに馴れ馴れしくて嫌いだったのよ」
アンジェルの言葉にレイモンドは振り返りアプソは息を止めた。
「なに?レイモンド…変な顔して…」
「なんてことを言うんだ…」
「…ウィルたちのことね…ソニーには秘密よ…ふふ…本当に邪魔な二人だったわ」
「まさか…馬車事故は…」
レイモンドの青ざめた顔にアンジェルは笑う。
「ほほっ、わたくしにそんな力は無いわよ。誰かを雇って…それをソニーに知られたら?嫌われるじゃない。わたくしはただ神に祈っただけよ…私の願いは何でも叶った…あなたがシモンズの令嬢と結婚するまで幸せだったわ…なにもかも思い通り!思い出したら腹が立つわね!子爵令嬢もフェリシアもお父様も…レイモンド…あなたも憎いわ!この愚息!」
アンジェルは持っていた扇をレイモンドに向かって投げた。
「フェリシアなんて第二夫人でよかったでしょう!時期をみることもできないなんて!愚かなくせに!」
アンジェルは豪華なドレスを売り宝飾品も手放し、世話をする上級使用人は一人だけになり他家へ行くことも劇場へ行くこともできなくなった。ソロモンはアンジェルを避け食堂に顔を出さず、部屋にも訪れない。アンジェルが執務室やソロモンの自室に向かえば顔を見ることもできずに追い返された。そんな日々に鬱憤は溜まり限界が近くなったとき、やっとソロモンがアンジェルに会いに来た。そして静養地へ行こうと久しぶりに微笑みを見せて誘ってくれた。
「くだらないわ…愛だ愛だと騒いだくせに頭を使わないからこうなるのよ!なによ!睨んでも怖くないわ!」
「奥様、落ち着いてください。さぁ…紅茶を飲んでください」
アプソは水筒とコップを鞄から取り出しアンジェルに差し出す。険しい顔をしながらコップを受け取ったアンジェルは興奮のまま一気に飲み干す。
「…冷たい…氷?美味しいわ」
「旦那様の指示です。奥様に窮屈な思いをさせるので少しでもと」
「ソニーが?んふ」
アプソの言葉で機嫌のよくなったアンジェルは遠のく意識に目蓋が落ち、傾く体は座面に倒れた。
「おっと…」
アプソはアンジェルの手から落ちたコップを咄嗟に掴んだ。
「…アプソ…殺したのか?」
「物騒なことを言わないでください。眠らせただけですよ。まさか一気に飲むとは…」
「父上は来ない…だろう?」
「はい。直接ランド領地へ向かうそうです」
「フェリシアの結婚式か」
「旦那様はランド領地の負債を肩代わりしました。ランディ・ランドは旦那様に逆らえません。あちらはフェリシア様の不義も許しましたし…婚約者も納得の上と」
アプソの言葉にレイモンドは視線を外へ戻す。
「…よく辞めないな」
レイモンドの呟きにアプソは微笑む。
「旦那様に好きにしろと言われましたし、次の勤め先に困るわけではありませんし飽きるまで仕えようかと」
「自由な奴だな」
「はは、ですね。末っ子ってのは案外動きやすいですよ」
アプソの告白にレイモンドは視線を移す。
「どこの男爵だったか?」
「…養子ですが…」
「養子…?」
アプソは眼鏡の奥にある細い瞳を弧にしたまま頷く。
「高貴な血筋を受け継いだ厄介な体でして…それはよくある話ですが私は運がよくて…陛下の目に止まりました。生まれてすぐに殺されてもおかしくない身を田舎の男爵に預けてくれたのが陛下です」
「まさか…陛下の…」
レイモンドはあり得る話にアプソを見つめる。
「はは、まさか…不穏な種なら生かさず殺されていますよ。レイモンド様、国中が隣国への婿入りを知っています」
「…ああ、陛下がふれを出したからな」
「ランド領地では泊まらない日程にしてあります」
アプソは微笑みを崩さずレイモンドを見る。
「…会おうなんて思ってない…逃げ出すつもりもない…そんな素振りを見せたら殺せとでも命令を受けたか?」
「そんな素振りを見せたら事故を装い怪我をさせろが正しい命令です。レイモンド様は五番目の王配といえベルザイオ王国を祖国とするのです。火種になるなら死んでしまったほうがいいです」
「…理解している」
「…味方のいない他国へ一人で入るのです…不安でしょうが」
「理解していると言ったろう」
レイモンドの真剣な表情にアプソは頷く。
「母上は狂うかもしれないぞ」
レイモンドは座面に横たわるアンジェルを見る。
「目が覚めたら場所もわからない修道院ですからね。ですが、陛下は院長に手加減無用と伝えています。逃げようにも人里離れた過酷な修道院です。狂う…そうかもしれませんね」
「父上は思い切ったな」
「陛下の了承を得たのです…迷うことはなかったのでしょう。旦那様はこの数ヶ月で痩せました。もうジェイコブ様と穏やかに生きていけばいいのです」
「アプソ…俺はこんな未来は想像もしていなかった。フェリシアと共にいれば幸せだった」
「しかしその幸せは欲深い嘘の上にありました。フェリシア様は見目も麗しく人目を引きますが…私には滑稽に見えることもありました…」
アプソは視線をアンジェルに向ける。
「この奥様の機嫌をとり、茶会では悲劇の少女を演じて涙を流し、使用人には愛想を振り撒く…いくら頑張って旦那様に可愛がられても…男爵位…なぜ侯爵夫人になれると思ったか…」
「俺が…言ったからだろうな…少年の頃からフェリシアと結婚したいと…守りたいと…守れる…と…」
レイモンドの濃緑の瞳から涙が落ちる。
「叔父が怖い…男が怖い…でもレイは怖くない…レイしかいない…そう言われ続けた…」
「…やはりフェリシア様は質が悪い。レイモンド様の意識…男心を向けさせた…長い付き合いのせいで忘れることは容易くないでしょう…記憶や後悔から逃れることはできません…ですが人は成長します…悔いて…そして二度と愚かな様は見せないよう…」
「ああ」
「それにはエルマリア様も含んでいます。忘れることは無理でも考えることはやめてください」
「…エルマリアは…シモンズを離れたがっていたと…離れた先に希望を…俺がエルマリアの希望だった…が…初日でそれを絶望に変えた…だから貴族を捨ててまであの男に付いていった…俺は阿呆だ」
長い馬車旅の間、アプソには考えるなと言われてもレイモンドの頭にはフェリシアとエルマリアのことで占められるのは仕方がないことだった。
ランド領地手前でアンジェルは別の馬車に乗せられレイモンドと別れた。
ランド領地の街道には豪華な馬車を一目見ようと民が集まり人だかりを作るが、甲冑を着た護衛騎士の物々しさに自然と道は作られ止まることなく進んだ。
両国の友好を深める結婚に民たちは一時盛り上がり馬車に手を振る。
「レ…レ…イ…レ…」
レイモンドは群衆の中から聞き慣れた声を拾った。人らの合間に桃色の髪を見つけても走る馬車のおかげですぐに視界から消えた。
重苦しい感情がレイモンドを襲うがその後に訪れた憎しみに悲しくなり、カーテンを閉めきつく目蓋を閉じて速く過ぎ去れと願った。
「暇ねぇ…ねぇアプソ…ソニーは追いつくかしら?」
「こちらは荷馬車がいますから、旦那様のほうが速いでしょう」
心身が不安定なアンジェルはレイモンドの婿入りに便乗し北の静養地で過ごさせるとソロモンが手配した。
「王配なんて…レイモンド、よかったわね。王宮で暮らせるのよ。皆が傅くわね」
アンジェルに声をかけられてもレイモンドは馬車窓から外を眺めていた。
トマークタスから渡された仕度金のおかげで隣国に渡っても恥はかかないほどの衣装をあつらえ荷馬車に積み、護衛騎士が馬車を囲んで駆けている。
「聞いているの?レイモンド。なんなのかしらね、王配よ?なにが不満なのよ…アプソ、ランド男爵領地を通過するのよね?」
「はい」
「わたくしの静養地はその先…美しい湖があるってソニーが言っていたわ…んふ…」
「静かな場所です。穏やかに過ごせます」
「ええ。田舎は嫌いだったけど昔はソニーがウィル・ランドに会うために何度も訪れたわ…質素な邸と領地…娯楽はなにもないのよね…わたくしは行きたくなかったけれどソニーと離れたくなくて…耐えたわ…本当に死んでくれてよかった…あの夫婦はソニーに馴れ馴れしくて嫌いだったのよ」
アンジェルの言葉にレイモンドは振り返りアプソは息を止めた。
「なに?レイモンド…変な顔して…」
「なんてことを言うんだ…」
「…ウィルたちのことね…ソニーには秘密よ…ふふ…本当に邪魔な二人だったわ」
「まさか…馬車事故は…」
レイモンドの青ざめた顔にアンジェルは笑う。
「ほほっ、わたくしにそんな力は無いわよ。誰かを雇って…それをソニーに知られたら?嫌われるじゃない。わたくしはただ神に祈っただけよ…私の願いは何でも叶った…あなたがシモンズの令嬢と結婚するまで幸せだったわ…なにもかも思い通り!思い出したら腹が立つわね!子爵令嬢もフェリシアもお父様も…レイモンド…あなたも憎いわ!この愚息!」
アンジェルは持っていた扇をレイモンドに向かって投げた。
「フェリシアなんて第二夫人でよかったでしょう!時期をみることもできないなんて!愚かなくせに!」
アンジェルは豪華なドレスを売り宝飾品も手放し、世話をする上級使用人は一人だけになり他家へ行くことも劇場へ行くこともできなくなった。ソロモンはアンジェルを避け食堂に顔を出さず、部屋にも訪れない。アンジェルが執務室やソロモンの自室に向かえば顔を見ることもできずに追い返された。そんな日々に鬱憤は溜まり限界が近くなったとき、やっとソロモンがアンジェルに会いに来た。そして静養地へ行こうと久しぶりに微笑みを見せて誘ってくれた。
「くだらないわ…愛だ愛だと騒いだくせに頭を使わないからこうなるのよ!なによ!睨んでも怖くないわ!」
「奥様、落ち着いてください。さぁ…紅茶を飲んでください」
アプソは水筒とコップを鞄から取り出しアンジェルに差し出す。険しい顔をしながらコップを受け取ったアンジェルは興奮のまま一気に飲み干す。
「…冷たい…氷?美味しいわ」
「旦那様の指示です。奥様に窮屈な思いをさせるので少しでもと」
「ソニーが?んふ」
アプソの言葉で機嫌のよくなったアンジェルは遠のく意識に目蓋が落ち、傾く体は座面に倒れた。
「おっと…」
アプソはアンジェルの手から落ちたコップを咄嗟に掴んだ。
「…アプソ…殺したのか?」
「物騒なことを言わないでください。眠らせただけですよ。まさか一気に飲むとは…」
「父上は来ない…だろう?」
「はい。直接ランド領地へ向かうそうです」
「フェリシアの結婚式か」
「旦那様はランド領地の負債を肩代わりしました。ランディ・ランドは旦那様に逆らえません。あちらはフェリシア様の不義も許しましたし…婚約者も納得の上と」
アプソの言葉にレイモンドは視線を外へ戻す。
「…よく辞めないな」
レイモンドの呟きにアプソは微笑む。
「旦那様に好きにしろと言われましたし、次の勤め先に困るわけではありませんし飽きるまで仕えようかと」
「自由な奴だな」
「はは、ですね。末っ子ってのは案外動きやすいですよ」
アプソの告白にレイモンドは視線を移す。
「どこの男爵だったか?」
「…養子ですが…」
「養子…?」
アプソは眼鏡の奥にある細い瞳を弧にしたまま頷く。
「高貴な血筋を受け継いだ厄介な体でして…それはよくある話ですが私は運がよくて…陛下の目に止まりました。生まれてすぐに殺されてもおかしくない身を田舎の男爵に預けてくれたのが陛下です」
「まさか…陛下の…」
レイモンドはあり得る話にアプソを見つめる。
「はは、まさか…不穏な種なら生かさず殺されていますよ。レイモンド様、国中が隣国への婿入りを知っています」
「…ああ、陛下がふれを出したからな」
「ランド領地では泊まらない日程にしてあります」
アプソは微笑みを崩さずレイモンドを見る。
「…会おうなんて思ってない…逃げ出すつもりもない…そんな素振りを見せたら殺せとでも命令を受けたか?」
「そんな素振りを見せたら事故を装い怪我をさせろが正しい命令です。レイモンド様は五番目の王配といえベルザイオ王国を祖国とするのです。火種になるなら死んでしまったほうがいいです」
「…理解している」
「…味方のいない他国へ一人で入るのです…不安でしょうが」
「理解していると言ったろう」
レイモンドの真剣な表情にアプソは頷く。
「母上は狂うかもしれないぞ」
レイモンドは座面に横たわるアンジェルを見る。
「目が覚めたら場所もわからない修道院ですからね。ですが、陛下は院長に手加減無用と伝えています。逃げようにも人里離れた過酷な修道院です。狂う…そうかもしれませんね」
「父上は思い切ったな」
「陛下の了承を得たのです…迷うことはなかったのでしょう。旦那様はこの数ヶ月で痩せました。もうジェイコブ様と穏やかに生きていけばいいのです」
「アプソ…俺はこんな未来は想像もしていなかった。フェリシアと共にいれば幸せだった」
「しかしその幸せは欲深い嘘の上にありました。フェリシア様は見目も麗しく人目を引きますが…私には滑稽に見えることもありました…」
アプソは視線をアンジェルに向ける。
「この奥様の機嫌をとり、茶会では悲劇の少女を演じて涙を流し、使用人には愛想を振り撒く…いくら頑張って旦那様に可愛がられても…男爵位…なぜ侯爵夫人になれると思ったか…」
「俺が…言ったからだろうな…少年の頃からフェリシアと結婚したいと…守りたいと…守れる…と…」
レイモンドの濃緑の瞳から涙が落ちる。
「叔父が怖い…男が怖い…でもレイは怖くない…レイしかいない…そう言われ続けた…」
「…やはりフェリシア様は質が悪い。レイモンド様の意識…男心を向けさせた…長い付き合いのせいで忘れることは容易くないでしょう…記憶や後悔から逃れることはできません…ですが人は成長します…悔いて…そして二度と愚かな様は見せないよう…」
「ああ」
「それにはエルマリア様も含んでいます。忘れることは無理でも考えることはやめてください」
「…エルマリアは…シモンズを離れたがっていたと…離れた先に希望を…俺がエルマリアの希望だった…が…初日でそれを絶望に変えた…だから貴族を捨ててまであの男に付いていった…俺は阿呆だ」
長い馬車旅の間、アプソには考えるなと言われてもレイモンドの頭にはフェリシアとエルマリアのことで占められるのは仕方がないことだった。
ランド領地手前でアンジェルは別の馬車に乗せられレイモンドと別れた。
ランド領地の街道には豪華な馬車を一目見ようと民が集まり人だかりを作るが、甲冑を着た護衛騎士の物々しさに自然と道は作られ止まることなく進んだ。
両国の友好を深める結婚に民たちは一時盛り上がり馬車に手を振る。
「レ…レ…イ…レ…」
レイモンドは群衆の中から聞き慣れた声を拾った。人らの合間に桃色の髪を見つけても走る馬車のおかげですぐに視界から消えた。
重苦しい感情がレイモンドを襲うがその後に訪れた憎しみに悲しくなり、カーテンを閉めきつく目蓋を閉じて速く過ぎ去れと願った。
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