上 下
61 / 237

学園

しおりを挟む


シャルマイノス王国の王宮から馬車で半時足らずの場所に貴族家の令息令嬢の通う学園がある。豊かな国は学園の門徒を増やし、地方貴族家、さらには貴族家から派生した家の子息も後見人を立てれば通えるようにしたのは数年前からだった。未来を担う者への教育を十分にと国王が決めたことだった。

「レオン様」

「いいぞ、力量を見せろ」

騎士科の鍛練場の空いた場所でレオンとガイルが木剣を持ち、対峙している。

「最年少の俺が騎士に勝ったらどうするんすか?全力なんて勝っちゃいますよ!」

「リードの名が上がる。辺境伯は喜ぶぞ。こい」

ガイルはレオンの言葉に足を踏み出し、肩を狙って剣を突く。レオンは僅かに身を反らして躱し木剣を素手で押し流れを変える。ガイルは流れに逆らわず木剣を回しレオンの足を狙う。レオンは素早く足を上げながら、握る木剣をガイルの胴へ進める。レオンがガイルの木剣を踏み、ガイルがレオンの振る木剣の側面を拳で叩き軌道を変え、柄を握るレオンの手を捕まえた。

「手は使えるんすよね?」

「ああ、実戦に近くなくては意味がないだろ。だが、これは木剣だ。拳で叩き落とすことはできるが対決では鋼の剣だぞ。軌道が少し下がるだけでお前の太股に当たる」

レオンの手を握り、止めたと思ったガイルは木剣の先端に視線を移す。レオンの持つ木剣の先が足首に触れていた。

「レオン様の手を強く押すわけにいかないっす。相手がそこらの騎士なら捻って剣を落とさせます」

「肩を突くとき視線に気を付けろよ。狙うと語っては意味がないだろ」

ガイルはレオンに踏まれた木剣から手を離し、直立する。

「瞬に見ただけっす!レオン様がおかしいんすよ…」

「ははっどうしても相手の表情や視線に注視するのは仕方ない。そうやって心を読む。感情っていうのは案外顔に出る…隠そうとする貴族でさえな」

ガイルの眉間を指で押して、場の端に置かれてある長椅子へ向かう。

「テオ様の顔は変わらんですよ」

「よく見てみろ。怒り、喜び、不快…僅かだが動いている。お前は隠そうともしない。探さなくても何を思うか…誰でもわかる」

「へへ、そこを気に入っている…すよね?」

ガイルの言葉は間違ってはいない。ガイルはガブリエル寄りの気質を持っている。

「お前は辺境伯の三男だ。俺が使い捨ててやる」

「ありがたき幸せ」

ガイルは胸に拳を当てて頭を下げる。レオンはその黒い頭に手のひらを乗せる。

「生涯俺を守れよ。その命を使ってな」

ガイルは潤む瞳を耐え、頭に触れる手に感謝を伝える。

「あー冷たい果実水が飲みたいが、ここには氷がない」

レオンは愚痴りながら長椅子に置いてある水筒を持ち栓を抜いて口に含む。水筒をガイルに渡し飲めと黒い瞳で伝える。察したガイルは水筒を受け取り喉を潤す。

「丸薬は持っているな?」

レオンの言葉に懐を叩き頷いた。

「さて、汗を拭うか」

「了解」

ガイルを従え、水場へ向かう。騎士科鍛練場の外れに井戸があり、鍛練終わりの生徒が汗を拭う場所だが、人がいなかった。レオンは井戸から水を掬い布を浸して絞り顔を拭い、上着の釦を外して隙間から体を拭う。ガイルも同じように拭い、腰紐を緩め股間まで拭い始めた。

「速効性か?」

「ははっぽいっすね。入れちゃっていいんすか?」

「言質を取れよ?」

「嫌って言われますよ。辺境伯の種なんて要らないわ!とか言われる。あー効いてきました」

「俺はふらつくからな、支えろ」

レオンは布を地面に落としガイルの体に倒れ込み呼吸を止めて頬を赤くする。

「レオン様!医務室に行かれますか?」

「いい…休憩室…」

ガイルはレオンを支え、騎士科の近くにある休憩室へ向かう。許された高位貴族が使用できる空間。個室が数部屋並ぶ建物には、高額の寄付をした貴族家の生徒だけが自由に使え、招待状を持つ高位貴族が入れる。ゾルダークが建てたものだった。入り口には門衛が一人立ち、使用許可を持つ貴族を選別している。

部屋は広くなく机と大きなソファが置いてあり、棚の上には水差しがある。

「飲みました?」

ソファに腰を下ろしたレオンをガイルが見下ろす。

「いや、口に含んで水筒に戻した」

「…それを俺に渡したんっすね…」

「よくある媚薬だ。滾っているぞ」

ガイルは自身の股間を見下ろし頭を掻いた。

「レオン様が飲めって」

その時、門衛から客の訪れを報せる合図が送られた。

「来たな。部屋に入れるなよ、廊下でやれ」

「一人っすかね。複数は相手にできませんよ…三人が限度」

「ははっ三人は複数だろ。下品な奴だ」

ガイルは扉の前に立ち耳を澄ませる。足音を聞き、指を一本立てレオンに報せる。ガイルの背を見ながら、開いた扉の隙間からドレスが見えた。直ぐに扉は閉まり、レオンはソファに足を投げ出し昼寝をするため瞳を閉じた。


ガイルは女が声を出す前に口を手で覆い、柱の陰に連れていく。女は驚きで体が固まりガイルの力強い腕に逆らうことができない。

「はぁ…信じらんねぇ…外れだよ。これはこれはブライ伯爵令嬢様」

ガイルはエリサ・ブライの片足を蹴り広げ、その狭間に身を入れ自身の腰を下ろして、滾る陰茎の上に乗せる。

「望み通りの陰茎だ。入れてやる」

硬く熱い陰茎はエリサ・ブライの秘所にあたる。恐慌するエリサは激しく首を振り、否やを伝えるがガイルは笑う。

「お前、紅を塗りすぎだろ。手がべとつく…これはわかるぞ…恐怖の顔だ。ははっ」

下着越しに秘所に陰茎を擦り付け存在を教える。

「お前は卒業が近いよなー焦る気持ちはわかるぜ」

よいしょっと呟いたガイルは腰紐を緩め陰茎を取り出し、エリサの下着を掴み破る。ガイルの手をエリサの悲鳴が涙と共に汚している。

「泣くなよなぁ…望んでたんだろ?これが陰茎だぞ?」

秘所の割れ目を熱く滾り、先端から出る子種が濡らしながら動く。

「処女?」

エリサは懸命に頷く。

「なら痛いぞ、頑張れ!」

「んー!」

「嫌なのか?ならどうするよ。俺の陰茎、こんなにしたのは盛ったお前のせいだろ?ああ…これだけでも果てる…あんま動くなよ…入っちゃうぞ?」

ガイルの言葉にエリサは動きを止める。ガイルは早々に終わらせるため、壁にエリサを押し付けたまま腰を動かし快楽を得る。

「小公爵に盛るとは…ああ…ブライ伯爵は死ぬなぁ。くっ出るぞ…そうだ、飲めたら俺がレオン様に許してやってくれと言ってやる。嫌は…無しだぞっ」

ガイルは持ち上げていたエリサを落とし、呆然とする顔の前で陰茎をしごき、紅が色づけた頬を掴んで口を開けさせ、子種を出す。何をされているのか理解したエリサが暴れる前に押さえつけ、噛まれないよう顔が歪むほど頬を掴み白濁を出しきり、エリサの顎を持って開いた口を閉ざす。

「ああ……辺境伯の子種は上手いか?」

残滓を頬に擦り付けながら吐き出さないように手のひらで口を覆う。

「飲み込めよ…罰だ。吐き出したら今度はぶちこんでブライ伯爵に警告する…俺の子種がお前の中を満たしたってな。俺は爵位がないから未来の平民だぞ、嫁ぐか?」

エリサは顔を青くしながら、生臭い子種を飲み込んだ。それしか選択肢はなかった。喉の動きを確認したガイルは汚れた陰茎をエリサのドレスで拭い、手に着いた紅も拭う。まだ滾る陰茎を仕舞い腰紐を結ぶ。エリサは床に座ったまま口を押さえ震えている。

「お前一人でやったのか?協力した奴がいたろ?騎士科に…ブライ伯爵の配下か?」

目を離したといえゾルダーク小公爵の水筒に媚薬を入れるにはドレスは目立つ。鍛練する生徒しかいない。

「口を開けな」

大人しく開いた口の中を見て、残りがないことを確認する。立たないエリサの前に屈み、乱れた髪を掴んで涙の溢れる瞳を見つめる。

「言えよ。そいつは二度と剣を握れなくしなきゃな」

青ざめるエリサに近親者かと見当をつけ尋ねる。

「お前…弟がいたな…騎士科に入ったのか…ふーん。終わったな」

「いや!おぇ…」

声を上げたエリサは自身の口から匂う生臭さにえずく。

「あー吐くなよ?辺境伯の三男の子種は腹に入れとけ。ははっ…ほら行けよ。二度とやんなよ…全部の穴を犯すぞ」

ガイルはエリサの腕を掴み立ち上がり、ふらつくエリサの背を押す。捲れたドレスに気づかず走り出すエリサにガイルは声を上げる。

「おい!情事の後って格好だぞ!整えろよ!」

ガイルは乱れた黒い髪をかきあげ、レオンの待つ部屋に向かう。静かに扉を開けるとソファに寝転ぶレオンが見えた。足音を忍ばせ近づく。濃い紺色の髪が乱れたまま、目蓋を閉じ動かないレオンを見つめる。ホールに飾られたハンク・ゾルダークに面差しは似ているが瞳を開けると垂れる様は周りが言うより似ていないとガイルは思う。

「誰だった?」

「ブライ伯爵令嬢っす。今回は外れっす。可愛い子がよかった」

「ふーん。手助けしたのは弟か…」

「入園したっすよね。騎士科に」

「純潔を散らしたのか?」

ガイルは上品な言い方をするレオンに笑いだしそうになる。

「散らしてないっす…飲んでいただきました」

「エリサ・ブライは頑なに婚約話を断っているそうだ。離れた地の男爵辺りに…死産薬を与えて嫁がせるか…修道院に幽閉か。あの血筋は…よくない」

「レオン様の婚約を聞いたんすかね」

あまりに無謀な計画を実行した訳は卒業と婚約かとガイルは予想した。

「ならば箝口令の意味がないな…五日後には知るけど…ガイル、ゾルダークの騎士服は届いた?」

ゾルダークの騎士服の漆黒は以前と変わらないが胸を彩る家紋の刺繍は空色の糸を使用している。

「柔らかく動きやすい、丈夫な生地でした」

「お前は髪が黒いから似合うだろうと思った」

閉じていた瞳が開かれ、黒がガイルを捉えた。

「他の部屋に使用者がいるだろ?誰かに見られたか?」

「素早く終わらせたんで…あっでも服が乱れてるぞって叫んだんで噂は上がるかと」

「辺境伯令息と伯爵令嬢が廊下でな…破廉恥だ」

廊下でやれと言ったのはレオ様なのにと心で悪付きガイルは微笑んだ。


しおりを挟む
感想 320

あなたにおすすめの小説

来世はあなたと結ばれませんように【再掲載】

倉世モナカ
恋愛
病弱だった私のために毎日昼夜問わず看病してくれた夫が過労により先に他界。私のせいで死んでしまった夫。来世は私なんかよりもっと素敵な女性と結ばれてほしい。それから私も後を追うようにこの世を去った。  時は来世に代わり、私は城に仕えるメイド、夫はそこに住んでいる王子へと転生していた。前世の記憶を持っている私は、夫だった王子と距離をとっていたが、あれよあれという間に彼が私に近づいてくる。それでも私はあなたとは結ばれませんから! 再投稿です。ご迷惑おかけします。 この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...