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「先に帰らず待つと言われまして」

困り顔のハロルドは横目で馬車を見る。奴と話している暇などない。俺は馬で戻る。

「馬を寄越せ」

馬車の扉が開き中から息子が飛び出してくる。

「父上!説明してくれ」

「あれは無事だ。明日にしろ」

護衛騎士の馬に乗り上げ、俺を先頭に護衛騎士を二名連れて駆ける。本来ならば真夜中の暗闇。城下でも街道は暗くなるが、松明は絶やさないようゾルダークの者に命じ道は明るい。宴の名残だと住民は思うだろう。待っていると言っていたがもう遅い、眠ったか。離れるのがこんなに苦痛とはな。人のいない城下を蹄の音がけたたましく鳴り響く。
冷たい風が頬を叩くが気にもならん。ベンジャミン、それほどガブリエルが大切か。本気で案じていたな。ベンジャミンが男色とは聞いたことはなかったが。まずはあれの元に戻らんとな。他は明日でいい。




「おかえりなさいませ」

「あれは?」

「寝室にいらっしゃいます」

コートを脱いでソーマに渡す。

「ガブリエルは?」

「騎士団の棟に部屋を用意しました」

「湯は?」

「できております」

手を振りソーマを下がらせる。静かに寝室の扉を開けると蝋燭の灯りの中、ソファに座り刺繍枠を手に眠る空色がいる。近づき首に触れ血脈を確かめる。よく寝ている。俺を待とうとしたんだろうな。額に口を落とし、起こさないように抱き上げたとき、手に持っていた刺繍枠が床に落ち、音をたてた。

「ん、ハンク…」

「すまん、起こしたな」

空色はすでに風呂上がりだ。俺も湯を浴びねば、汚してしまうな。

「おかえりなさい」

「ああ、湯を浴びてくる。寝ていろ」

お前が側にいることが俺を落ち着かせる。まだ寝惚けている空色を寝台に寝かせ掛け布をかける。頭を撫で浴室へ向かう。髪を洗い体を流す。湯には浸からず軽く体を拭いてガウンを羽織り寝室へ戻ると寝台に座る空色が俺を待っていた。

「まだ濡れてるわ。布を渡して」

空色の横に座り布を渡すと膝をついて俺の髪を拭いていく。細い体に腕を回し柔らかい胸に顔を押し付ける。拭きにくいと笑いながらぼやいている声が心地いい。すでに真夜中も過ぎている。眠らせたほうがいいのはわかっているが、俺は空色に関して堪え性がない。頬に当たる頂が悪い。口に含みたくなるだろ。頭の上で待てと言っているが待てん。夜着が濡れるほど吸い付き、口に入れ布越しに舌で頂を可愛がる。手のひらで愛しい体を全てなぞり、空色を感じる。抗議の声は喘ぎに変わり、俺の頭を抱え悦び始めた。

「遅くなった」

頂を口に含み空色を見上げる。俺の湿った髪を掴み愛しい瞳が見つめている。
細い腰を掴み持ち上げ、俺は寝台に倒れ空色を顔の上に跨がらせる。開いた脚の間には濡れた下着が見える。空色を支え、舌を伸ばして布越しに突起を転がす。俺を潰さないよう細い脚が震えながら耐えているがいつまでもつか。吸い付くと液が滴り口の周りを濡らす。下から快感に悦ぶ空色を見つめ、下着をずらして舌を秘所へ入れると俺の泥濘が待っていた。中は舌の侵入を悦び蠢いて締め付け、液は溢れ俺を濡らす。掴んだ細い腰が震えだし体を強ばらせ、舌を強く締め付け嬌声を上げて達し、俺の名前を呼んでいる。羽織ったガウンははだけて、滾った陰茎は泥濘を欲しがり先端から白濁を溢れさせる。震える体を持ち上げ秘所に陰茎をあてるが布が侵入を阻む。

「ハンクっ下着っ破って」

お前も早く欲しいよな。滾る陰茎に乗せると腰を揺らして自ら快感を得て喘いでいる。濡れた下着が白濁もつけてぬるついた。両手で布を掴み左右に裂いて取り除くと、空色が腰を上げ、泥濘へと導いていく。温かく濡れて包み、時折握る空色の中は俺に安堵を与えてくれる。

「空色、顔を見せろ」

快感に達して背を反らしていた空色が震えながら俺を見下ろす。

「空色、俺を呼べ」

「ハンク」

顔を掴み口を合わせる。互いの舌が縺れ合い、荒い呼吸が俺達を包む。腰に腕を巻き付け抱きしめる。

目蓋を閉じると俺の邸で空色に不安な顔をさせた阿呆が頭によぎる。
やはり許せん…俺に恐怖を与えたな…殺してやる。
意識は曇り我を忘れ、腰を回して奥を突く。寝台を激しく揺らして鳴らし、空色の体をきつく抱きしめ隙間を消して呼吸も喘ぎも俺に注がせる。

「ハンクっハン…ク…私を…見て」

きつく閉じていた目蓋を開くと、口を合わせていた空色の顔が目の前に見える。

「いるっわ、貴方の、側」

「空色…空色、奴は殺すぞ」

「ええ、いいわ」

小さな頭を掴み口に食らいつく。歯列も舐め頬の内側も舐め、喉の奥まで舌で触れる。
俺達に隙間などいらん。邪魔する奴は消えたらいい。頭の中に胸の中に怒りが満ちる。視界は暗くなり口の中には血の味が広がる。耳には高い悲鳴が流れ、陰茎は子種を撒き散らす。全てを出し終え、鼻からは荒い呼吸が吹き出し、自身の鼓動が内側から聞こえ、体は熱く汗が吹き出す。

「ハンク」

優しく髪を撫でられ、頭に口が落とされる感触に視界は光を取り戻す。腕の中には空色がいるが、俺は夜着の上から空色の肩に噛みつき歯を食い込ませていた。荒い呼吸のまま口を離すと夜着に血が滲み赤が広がる。唾液を飲み込むと血の味を感じた。顔を上げると微笑む空色が俺を見て頬を撫でてくれる。

「ハンク」

「ああ」

俺は怒りに支配されお前を傷つけ陰茎を抜くことすらできなかった。

「ハンク」

「キャスリン」

空色の夜着を掴んで左右に引き裂く。肩を晒すと愛しい肌に歯形がくっきりとついて、まだ血が滲んでいた。流れる血が止まるまで舐め続ける俺を空色は何も言わずただ抱きしめていた。

「空色」

「なあに」

「痛むか?」

「いいえ」

嘘をつくな。痛いはずだ。これは痕が消えんかもしれん。

「ライアンを呼ぶ」

「明日ね」

「今呼ぶ」

「前に貰った軟膏があるわ」

空色は俺の耳を引っ張る。優しい眼差しの空色が俺を見つめる。

「痛くないわ」

「嘘をつくな」

「ふふ、本当よ」

「子種も中に出した」

「ずっと出していたわ」

そうだな、お前が吐くまで腹に子がいるとは知らんからな、全て中に注いだがな、今は知ってる。

「ハンク、ハンク。私のハンク」

「ああ」

「ハンク」

「キャスリン」

俺が傷つけてどうする。この弱い体を細く小さい、子まで孕んだ愛しい空色を俺が傷つけてどうする。

「ハンク、痛くないわ。そんな顔しないで。貴方が何をしても許すと言ったわ。逃げたら脚の腱を切るのでしょう?そっちのほうが痛そうよ」

笑んでくれるか。口を開けると舌をくれる。俺に唾液を流してくれる。

「キャスリン、抱いてくれ」

「ええ」

細い腕が俺の体に巻き付く。俺の気に入りの髪が頬をくすぐる。細い首に吸い付き痕を残す。何度も満足するまで吸い舐める。

「このまま眠る、いいか?」

「ええ」

「腹の痛みは?」

「ないわ」

抱きしめたまま横に倒れると滾りを失った陰茎は抜けて溢れた子種が互いを濡らすが放っておく。少し膨らみのある下腹を腹に感じ、横たわる愛しい体の下へと動き、下腹に口を落として謝っておく。掛け布を手繰り寄せ二人の体を包み空色の胸に顔を埋め、吸い付き痕をいくつもつける。俺が満足するまで空色は頭を撫で、されるがまま側にいた。腕の中にいる空色を抱きしめ目蓋を閉じる。



目蓋を閉じたハンクは掛け布に入ったまま私の胸に頬をつけ、頭を撫でている間に寝息をたて始めた。
あんなハンクは初めて見る。何かに取って代わられたように黒い瞳が輝きを失くし、暗闇のように深くなって私の声も届かなくなった。私から瞳を隠すようにきつく閉じたまま不乱に体を揺さぶって、汗を流しながら呻くハンクは痛々しくてなんとか私を見て欲しかった。瞳を見せたハンクは私が見たこともないほど怖い顔をして瞳は血走り、体は震えて怒りの中にいるのだとわかるほど。いつも私を労り気にかけるハンクは消えて、きっと腹の子も忘れて荒れ狂ったまま肩に噛みついた。今もまだ肩は痛みを私に伝える。私の悲鳴は外に聞こえたかもしれない。それほどの痛みが走った。鼻息が聞こえるほど興奮したハンクは子種を中に注いで私にすがりつき、顎に力を込めて唸る様は獣のようだった。私の声に黒い瞳は輝きを戻し、噛みついた肩を見て眉尻は下がり酷く悲しげな顔をして私を見つめるハンクは後悔していると見てとれた。前にも言ったわ。ハンクだけは私を傷つけてもいいの。それに私を怖がらせた、失うかもしれない恐怖から我を忘れたとわかってる。二十も年上のこの人が可愛くて愛おしいの。これが愛なの?愛はこんなにも激しいの?


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