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けだものの意味を知ったミシェル
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有言実行のフレデリクの素早い行動のおかげで、その二日後には二人の婚姻証明書が届き、正式にフレデリクとミシェルは夫夫として認められた。
いずれ結婚式をするつもりではあるが、まずは家族だけで祝賀パーティを開いた。
終始、難しい顔をしていたジルベールも
「お父様、婚姻を早めていただいてありがとうございます。それにこれからもお父様とお母様とずっと一緒に暮らせるのがとてもうれしい。これからは兄様を支えるために頑張りますのでご指導お願いします」
という、ミシェルに目を潤ませて頷いた。
エリーナも満面の笑みを浮かべて二人を祝福した。
「まあ、フレデリクもミシェルも本当に素敵な笑顔ね。幸せになるのよ」
「「はい」」
二人の返事がそろう。
「今日からしばらく離れで過ごしなさい。用意はさせてあるから」
エリーナもこの家に嫁いできたときに一カ月ほど離れで新婚生活を送ったらしい。
「はい!」
二人は顔を見合わせて、二人だけの新婚生活を思い描いて微笑んだ。
「兄様、僕ドキドキして死んじゃいそう。今日から兄様と夫夫だなんて」
「はは、僕も緊張しているよ。でもまず、もう兄様はやめようか。名前で呼んでくれ」
「フ、フレデリク……ちょっと恥ずかしい」
「フレディでもいいよ」
「フレディ……。フレディ」
ミシェルはその名を大切そうに繰り返す。
「必ずミシェルを幸せにする。不安があればなんでも相談してほしい。僕もそうする。二人で何でも話しあおう」
「うん」
フレデリクはミシェルの頬を両手で包むと優しく口づけした。
二人の初夜はつつがなく行われたが、空が明るくなり始めたころにようやくミシェルは解放された。
ミシェルは以前父が言った、けだものの正体が分かった気がしたのだった。
ともあれミシェルの心の傷はフレデリクの過剰すぎる愛で回復し、かさぶたに過ぎない過去の物となっていった。それもいずれ剥がれ落ちて綺麗に戻っていくだろう。
そうして数年後、ジルベールの妹の子供——ミシェルのいとこが産んだ子供をラフォン家の跡取りとして養子に迎えた。
ミシェルとフレデリクは言うまでもなく、ジルベールとエリーナも孫にメロメロとなりラフォン家は幸せに包まれた。
ミシェルは庭で走りまわる息子を追いかけるフレデリクを見て胸がぎゅうっと切なくなるほどの幸せを感じていた。自分を幸せにしてくれたフレデリクと子供を何に代えても守りたい。
あの時、流れる星に自分の幸せを願ってくれたフレデリクに感謝しかない。
時々瞼に浮かぶあの町の流れる星。
あの時は絶望しかなかったけれど、こんな幸せが待っているとは思いもしなかった。
ミシェルはこちらに向かって手を振るフレデリクと息子のために、この幸せを守っていこうと心に誓ったのだった。
終わり
*このあと番外編3話で完結となります
本日中に投稿予定です
いずれ結婚式をするつもりではあるが、まずは家族だけで祝賀パーティを開いた。
終始、難しい顔をしていたジルベールも
「お父様、婚姻を早めていただいてありがとうございます。それにこれからもお父様とお母様とずっと一緒に暮らせるのがとてもうれしい。これからは兄様を支えるために頑張りますのでご指導お願いします」
という、ミシェルに目を潤ませて頷いた。
エリーナも満面の笑みを浮かべて二人を祝福した。
「まあ、フレデリクもミシェルも本当に素敵な笑顔ね。幸せになるのよ」
「「はい」」
二人の返事がそろう。
「今日からしばらく離れで過ごしなさい。用意はさせてあるから」
エリーナもこの家に嫁いできたときに一カ月ほど離れで新婚生活を送ったらしい。
「はい!」
二人は顔を見合わせて、二人だけの新婚生活を思い描いて微笑んだ。
「兄様、僕ドキドキして死んじゃいそう。今日から兄様と夫夫だなんて」
「はは、僕も緊張しているよ。でもまず、もう兄様はやめようか。名前で呼んでくれ」
「フ、フレデリク……ちょっと恥ずかしい」
「フレディでもいいよ」
「フレディ……。フレディ」
ミシェルはその名を大切そうに繰り返す。
「必ずミシェルを幸せにする。不安があればなんでも相談してほしい。僕もそうする。二人で何でも話しあおう」
「うん」
フレデリクはミシェルの頬を両手で包むと優しく口づけした。
二人の初夜はつつがなく行われたが、空が明るくなり始めたころにようやくミシェルは解放された。
ミシェルは以前父が言った、けだものの正体が分かった気がしたのだった。
ともあれミシェルの心の傷はフレデリクの過剰すぎる愛で回復し、かさぶたに過ぎない過去の物となっていった。それもいずれ剥がれ落ちて綺麗に戻っていくだろう。
そうして数年後、ジルベールの妹の子供——ミシェルのいとこが産んだ子供をラフォン家の跡取りとして養子に迎えた。
ミシェルとフレデリクは言うまでもなく、ジルベールとエリーナも孫にメロメロとなりラフォン家は幸せに包まれた。
ミシェルは庭で走りまわる息子を追いかけるフレデリクを見て胸がぎゅうっと切なくなるほどの幸せを感じていた。自分を幸せにしてくれたフレデリクと子供を何に代えても守りたい。
あの時、流れる星に自分の幸せを願ってくれたフレデリクに感謝しかない。
時々瞼に浮かぶあの町の流れる星。
あの時は絶望しかなかったけれど、こんな幸せが待っているとは思いもしなかった。
ミシェルはこちらに向かって手を振るフレデリクと息子のために、この幸せを守っていこうと心に誓ったのだった。
終わり
*このあと番外編3話で完結となります
本日中に投稿予定です
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