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ミシェルサイド
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王都から領地に戻った時、元に戻った僕を見て両親はそれはもう大泣きに泣いて喜んでくれた。
その両親と兄様のおかげで僕は少しづつ元気を取り戻した。
特に兄様はこれまで以上に気にかけてくれた。
「ほら、これが流行っているそうだ」
そういっては流行りのお菓子や、本などを買って来てくれる。
時には、服や帽子も買って来てくれるが、その色がまた兄様の色が入っていてあまりにものブラコンぶりに少し気恥ずかしくなるくらい。
レオンとのことで傷ついている僕を心配してくれているのだろうと兄様の思いやりに頭が下がる。兄様だって大変なのにもかかわらず休みの日には街や遠出に連れていってくれるのだ。
「仕事で忙しんだから休みの日はゆっくりとして」
そういっても兄様は、僕と出かけるのがうれしいんだと言って楽しそうに付き合ってくれる。
今日も天気がいいからと近くの公園に連れてきてくれた。
広い公園で、色とりどりの花壇もあれば森も池もある。池には小舟もあり家族や恋人たちが楽しめるようになっている。
昔はレオンともよく遊びに来た公園でもあったから少し胸がまだ痛む。
「ミシェル、船に乗ってみるかい?」
「え? それはちょっと怖いんだけど」
「大丈夫だよ。おいで」
そういって兄様は僕の手と取ると、指を絡めた恋人つなぎをしてきた。
「ちょ……」
「ほら、いこう」
僕を楽しませるというよりも兄様自身があまりにもうれしそうな笑顔だったから、僕はその手を握り返すとうんと頷いた。
すると兄様は、少し目を細めて本当に幸せそうな顔で僕を見た。その瞬間、なんだか僕の心臓が一度跳ね上がった気がしたんだけど、それはきっと僕のせいで兄様まで笑顔を忘れていたから、やっと笑顔がみれたからだったんだと思う。
レオンと座ったベンチで兄様と座って、食事をとる。レオンと歩いた森の散歩道を兄様と歩く。レオンとの思い出しかなかったこの公園に、兄様との楽しい思い出が重なっていく。
兄様のおかげで、この公園にまた来れそうな気がした。
そんなある日、僕宛に荷物が届いた。
差出人はレオン。中身はおしゃれなタイとお菓子、それに手紙が入っていた。
手紙には、ミシェルの誕生日プレゼントに王都で人気のタイとお菓子を送りますと記されていた。許されるのならば友人として交流をさせて欲しい。ミシェルに信頼してもらえるようにこれからも精進を続け、いつかまたミシェルと気持ちを通わせる日が来ることを願っている。というような内容だった。
僕はその手紙を見て固まってしまった。
毎日表に出てこようとする胸の痛みを、日々の生活の中何とか押し込めて忘れようとしているのに。今でもあの時の別れの判断が正しかったのかどうか葛藤しているというのに。
「どうした?」
傍にいた兄様が僕の様子がおかしいのに気が付いて声をかけてくれた。
「うん、レオンが誕生日プレゼントを送ってきた。なんか……復縁を願うような感じで」
「……そうか。あいつもなかなかあきらめが悪いな。騙されたという被害者意識があるから納得できないのだろうな」
「でも……選んだのはレオンだから。僕だって本当に誤解だったらって……そう聞いたときは本当はほっとしたし泣くほどうれしかった。でもあまりにも期間が長すぎた。復縁してもきっと信じられなくてずっと苦しい」
本当にレオンが騙されて匿っていただけなら、怒るのは間違っていると思う。レオンは被害者なんだと思おうとした。僕さえ、許したと言えば元に戻れるのかもしれない。
だけど、レオンはその暮らしを楽しんでいたからこそ僕を王都に呼んでくれなかったんじゃないか。僕のことなどその程度だったんだ、僕などレオンにとって価値がなかったんだと思うと、消えてしまいたいほど自分のことがみじめになった。
その思いが心の奥深くに染み込んでしまった僕は、レオンのそばにいることはもうできなかった。
それに、実は僕は知ってる。レオンがローズと関係してたって。
あの事件で捕まったローズの取り調べ内容を兄様は説明を受けていて、それを両親に話しているのを聞いてしまったから。
レオンが酔って前後不覚であったのに乗じたらしい。その後はきっぱりと拒否したと聞いたからその事は事故みたいなものだと、納得できないことはない。レオンも被害者だと思う。
それより情がわいたのか、責任を感じたのかは知らないがそのあとすぐに追い出さなかったことが一番僕は傷ついたのだ。そのことをきっとレオンはわかっていないと思う。
「ねえ、兄様の知り合いで働き手探してる人いない?」
「え? いきなりどうした?」
「……僕の婚姻相手がいなくなったわけだし、どこか住み込みで働くところを探そうと思って」
「なぜそんな話になるんだ。ミシェルはずっとここにいればいい」
「でもいずれ兄様も結婚して、ここを継ぐでしょう。それまでに独り立ちできるようにしたいんだ」
「馬鹿な。そもそもミシェルがこの家を出るから僕が養子に迎えられたんだ。結婚しないならミシェルが後を継ぐべきだ」
「無理だよ。僕は王都でレオンを支えられるような勉強してきただけで、領地の事とか執務の事なんてわからないし。ずっとその勉強してきた兄様が後継者にふさわしいし、僕には向いてない」
「じゃ、今度は僕を支えて欲しい。これまで通り家族四人で暮らせばいい」
「え?」
「レオンを支えようとしたように、僕を支えてくれればいいんだよ」
「うん、わかった。兄様が結婚するまで僕頑張るよ。兄様が結婚するときに仕事先を紹介してね」
「…… 」
兄を支えようと気合を入れているミシェルにはフレデリクの気持ちなど一ミリも伝わっていないのであった。
その両親と兄様のおかげで僕は少しづつ元気を取り戻した。
特に兄様はこれまで以上に気にかけてくれた。
「ほら、これが流行っているそうだ」
そういっては流行りのお菓子や、本などを買って来てくれる。
時には、服や帽子も買って来てくれるが、その色がまた兄様の色が入っていてあまりにものブラコンぶりに少し気恥ずかしくなるくらい。
レオンとのことで傷ついている僕を心配してくれているのだろうと兄様の思いやりに頭が下がる。兄様だって大変なのにもかかわらず休みの日には街や遠出に連れていってくれるのだ。
「仕事で忙しんだから休みの日はゆっくりとして」
そういっても兄様は、僕と出かけるのがうれしいんだと言って楽しそうに付き合ってくれる。
今日も天気がいいからと近くの公園に連れてきてくれた。
広い公園で、色とりどりの花壇もあれば森も池もある。池には小舟もあり家族や恋人たちが楽しめるようになっている。
昔はレオンともよく遊びに来た公園でもあったから少し胸がまだ痛む。
「ミシェル、船に乗ってみるかい?」
「え? それはちょっと怖いんだけど」
「大丈夫だよ。おいで」
そういって兄様は僕の手と取ると、指を絡めた恋人つなぎをしてきた。
「ちょ……」
「ほら、いこう」
僕を楽しませるというよりも兄様自身があまりにもうれしそうな笑顔だったから、僕はその手を握り返すとうんと頷いた。
すると兄様は、少し目を細めて本当に幸せそうな顔で僕を見た。その瞬間、なんだか僕の心臓が一度跳ね上がった気がしたんだけど、それはきっと僕のせいで兄様まで笑顔を忘れていたから、やっと笑顔がみれたからだったんだと思う。
レオンと座ったベンチで兄様と座って、食事をとる。レオンと歩いた森の散歩道を兄様と歩く。レオンとの思い出しかなかったこの公園に、兄様との楽しい思い出が重なっていく。
兄様のおかげで、この公園にまた来れそうな気がした。
そんなある日、僕宛に荷物が届いた。
差出人はレオン。中身はおしゃれなタイとお菓子、それに手紙が入っていた。
手紙には、ミシェルの誕生日プレゼントに王都で人気のタイとお菓子を送りますと記されていた。許されるのならば友人として交流をさせて欲しい。ミシェルに信頼してもらえるようにこれからも精進を続け、いつかまたミシェルと気持ちを通わせる日が来ることを願っている。というような内容だった。
僕はその手紙を見て固まってしまった。
毎日表に出てこようとする胸の痛みを、日々の生活の中何とか押し込めて忘れようとしているのに。今でもあの時の別れの判断が正しかったのかどうか葛藤しているというのに。
「どうした?」
傍にいた兄様が僕の様子がおかしいのに気が付いて声をかけてくれた。
「うん、レオンが誕生日プレゼントを送ってきた。なんか……復縁を願うような感じで」
「……そうか。あいつもなかなかあきらめが悪いな。騙されたという被害者意識があるから納得できないのだろうな」
「でも……選んだのはレオンだから。僕だって本当に誤解だったらって……そう聞いたときは本当はほっとしたし泣くほどうれしかった。でもあまりにも期間が長すぎた。復縁してもきっと信じられなくてずっと苦しい」
本当にレオンが騙されて匿っていただけなら、怒るのは間違っていると思う。レオンは被害者なんだと思おうとした。僕さえ、許したと言えば元に戻れるのかもしれない。
だけど、レオンはその暮らしを楽しんでいたからこそ僕を王都に呼んでくれなかったんじゃないか。僕のことなどその程度だったんだ、僕などレオンにとって価値がなかったんだと思うと、消えてしまいたいほど自分のことがみじめになった。
その思いが心の奥深くに染み込んでしまった僕は、レオンのそばにいることはもうできなかった。
それに、実は僕は知ってる。レオンがローズと関係してたって。
あの事件で捕まったローズの取り調べ内容を兄様は説明を受けていて、それを両親に話しているのを聞いてしまったから。
レオンが酔って前後不覚であったのに乗じたらしい。その後はきっぱりと拒否したと聞いたからその事は事故みたいなものだと、納得できないことはない。レオンも被害者だと思う。
それより情がわいたのか、責任を感じたのかは知らないがそのあとすぐに追い出さなかったことが一番僕は傷ついたのだ。そのことをきっとレオンはわかっていないと思う。
「ねえ、兄様の知り合いで働き手探してる人いない?」
「え? いきなりどうした?」
「……僕の婚姻相手がいなくなったわけだし、どこか住み込みで働くところを探そうと思って」
「なぜそんな話になるんだ。ミシェルはずっとここにいればいい」
「でもいずれ兄様も結婚して、ここを継ぐでしょう。それまでに独り立ちできるようにしたいんだ」
「馬鹿な。そもそもミシェルがこの家を出るから僕が養子に迎えられたんだ。結婚しないならミシェルが後を継ぐべきだ」
「無理だよ。僕は王都でレオンを支えられるような勉強してきただけで、領地の事とか執務の事なんてわからないし。ずっとその勉強してきた兄様が後継者にふさわしいし、僕には向いてない」
「じゃ、今度は僕を支えて欲しい。これまで通り家族四人で暮らせばいい」
「え?」
「レオンを支えようとしたように、僕を支えてくれればいいんだよ」
「うん、わかった。兄様が結婚するまで僕頑張るよ。兄様が結婚するときに仕事先を紹介してね」
「…… 」
兄を支えようと気合を入れているミシェルにはフレデリクの気持ちなど一ミリも伝わっていないのであった。
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