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はじまりの出会い
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闇の大地…魔王軍が占拠している大陸を人々はそう呼んでいる。
他種族の侵入を拒むように護りは強固であり、力の無い者は瘴気に蝕まれ進むことすら許されぬ禁忌の大地。
人族と同じ様な姿をした魔王が支配する闇の大地に、勇者一行は苦闘の末、遂にそこに辿り着いた。
「ほう?勇者共が我の大地に攻め込んできている…と?」
伝令兵の言葉を聞き、魔王の顔に小さく笑みを浮かぶ。
魔王には絶対の自信がある。だからこそ勇者一行を嗤う余裕があった。
「くふふ……よし、下がって良いぞ。我は少し出る。」
魔王は勇者の姿を見た事がない。やることも無い魔王は退屈しのぎに視察、という名目で勇者の姿を眼に映そうと思った。考えはともかく、その姿は魔王軍なら誰しもが跪く貫禄のある姿。ゆっくりと腰を上げ、大きな黒翼を広げて蒼空へと飛び立つ。その御姿を見た兵達は跪き、魔王を見送った。
この世界の者は、誰しも魔力を持っている。魔王は強い闇の魔力を、対する勇者は強い光の魔力を有する。
魔王はその身で魔力を探知することが出来る、唯一の存在である。本来なら時間と膨大な魔力を用いて、その者の現在の方向を知る程度しか出来ないのだが、魔王は例外として魔力をほぼ使う事無く魔力探知を行うことが出来る。
「そちら、だな?くはは!少しくらいは楽しませてくれるかのう……?」
黒翼を羽ばたかせ、勇者の魔力の方へと尋常でない速度で風を切り、音を置き去りにして向かっていく。殺気と狂気に満ちた赤い眼を見開き、笑みを零しながら。
…時間はそれ程かからなかった。元々あまり闇の大地は広くはなく、魔王なら一周するのに十分とかからない。位置の分かっている者へ向かうなど、造作もなかった。
勇者の力が近い。魔力は確かに強いが、魔王を凌ぐほどではない。今なら倒す事など赤子の手をひねる様なものだが、それでは面白くない。今日はあくまで視察だ。魔力を瞳に通し、望遠鏡のように視力を上昇させる。その眼は遂に勇者共の姿を捉えた。
勇者一行は四人。
一人は赤髪の戦士。魔力は弱いが、大剣を振り回す程の隆々とした筋肉を有する屈強な若者。
後ろの二人は魔力を読むに…女僧侶と女賢者だ。銀髪の女僧侶は、勇者には劣るが強い光の魔力が宿っている。黒髪の女賢者は強い炎、水、自然の魔力を感じる。三属性を扱うこの世界でも珍しい者のようだ。
そして、先頭に勇者。金色の髪をしており、剣と盾を構えて慎重に進む。そして…背が小さく、童顔の可愛らしい容姿。
その姿を捉え、初めて魔王は震えた。あぁ、なんということだ。こんなことは初めてだ。
身体を震わせながらもを言葉に吐き出そうと唸る。一番最初に出した言葉は………
「ショタだああああぁぁぁ!!?!??!!!!」
魔王故の魔力と能力を持ち。容姿端麗で完全無欠の魔王には、光の魔力に弱いこと以外に一つだけ弱点があった。
残念ながら魔王様…彼女は極度のショタコンであるのだった。
勇者の姿を一目見て、殺戮に染まった赤い眼は消え去り、思わず感情が昂る。
そして殺すべき相手に対し、こう思ってしまった。
叩きのめすより、幾度も挑む勇者を甘やかしてしまいたい、と。
誰にも見られていないそのときの魔王の顔は、ショタ勇者に見惚れた、恍惚の顔だった。
他種族の侵入を拒むように護りは強固であり、力の無い者は瘴気に蝕まれ進むことすら許されぬ禁忌の大地。
人族と同じ様な姿をした魔王が支配する闇の大地に、勇者一行は苦闘の末、遂にそこに辿り着いた。
「ほう?勇者共が我の大地に攻め込んできている…と?」
伝令兵の言葉を聞き、魔王の顔に小さく笑みを浮かぶ。
魔王には絶対の自信がある。だからこそ勇者一行を嗤う余裕があった。
「くふふ……よし、下がって良いぞ。我は少し出る。」
魔王は勇者の姿を見た事がない。やることも無い魔王は退屈しのぎに視察、という名目で勇者の姿を眼に映そうと思った。考えはともかく、その姿は魔王軍なら誰しもが跪く貫禄のある姿。ゆっくりと腰を上げ、大きな黒翼を広げて蒼空へと飛び立つ。その御姿を見た兵達は跪き、魔王を見送った。
この世界の者は、誰しも魔力を持っている。魔王は強い闇の魔力を、対する勇者は強い光の魔力を有する。
魔王はその身で魔力を探知することが出来る、唯一の存在である。本来なら時間と膨大な魔力を用いて、その者の現在の方向を知る程度しか出来ないのだが、魔王は例外として魔力をほぼ使う事無く魔力探知を行うことが出来る。
「そちら、だな?くはは!少しくらいは楽しませてくれるかのう……?」
黒翼を羽ばたかせ、勇者の魔力の方へと尋常でない速度で風を切り、音を置き去りにして向かっていく。殺気と狂気に満ちた赤い眼を見開き、笑みを零しながら。
…時間はそれ程かからなかった。元々あまり闇の大地は広くはなく、魔王なら一周するのに十分とかからない。位置の分かっている者へ向かうなど、造作もなかった。
勇者の力が近い。魔力は確かに強いが、魔王を凌ぐほどではない。今なら倒す事など赤子の手をひねる様なものだが、それでは面白くない。今日はあくまで視察だ。魔力を瞳に通し、望遠鏡のように視力を上昇させる。その眼は遂に勇者共の姿を捉えた。
勇者一行は四人。
一人は赤髪の戦士。魔力は弱いが、大剣を振り回す程の隆々とした筋肉を有する屈強な若者。
後ろの二人は魔力を読むに…女僧侶と女賢者だ。銀髪の女僧侶は、勇者には劣るが強い光の魔力が宿っている。黒髪の女賢者は強い炎、水、自然の魔力を感じる。三属性を扱うこの世界でも珍しい者のようだ。
そして、先頭に勇者。金色の髪をしており、剣と盾を構えて慎重に進む。そして…背が小さく、童顔の可愛らしい容姿。
その姿を捉え、初めて魔王は震えた。あぁ、なんということだ。こんなことは初めてだ。
身体を震わせながらもを言葉に吐き出そうと唸る。一番最初に出した言葉は………
「ショタだああああぁぁぁ!!?!??!!!!」
魔王故の魔力と能力を持ち。容姿端麗で完全無欠の魔王には、光の魔力に弱いこと以外に一つだけ弱点があった。
残念ながら魔王様…彼女は極度のショタコンであるのだった。
勇者の姿を一目見て、殺戮に染まった赤い眼は消え去り、思わず感情が昂る。
そして殺すべき相手に対し、こう思ってしまった。
叩きのめすより、幾度も挑む勇者を甘やかしてしまいたい、と。
誰にも見られていないそのときの魔王の顔は、ショタ勇者に見惚れた、恍惚の顔だった。
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