9 / 128
序章
8
しおりを挟む
僕は生まれた時から由緒ある貴族の家に生まれながら、家族から迫害を受け育ってきた。
何故なら、母は、貴族では考えられない小麦色の肌をした僕という子を産み婿養子に入った父の子ではないと判明したからだ。
父は怒って離婚し出て行った。
父が出て行ったのと同時に体の弱かった母は僕を産むことで体調を崩し亡くなってしまった。
残った乳幼児の僕は、運が悪いことに家系特有の魔法も母の魔力も受け継がれてはいなかった。
母はこの家系で一番の魔力の持ち主。
それを期待して、嫁にはやらず婿養子をもらったのにも関わらず、母は貴族の父の子ではなく違う人との、しかも愚民との子を宿し産み、そして亡くなってしまったのだ。
そこからは僕は生まれながらにして嫌われ、迫害され、存在しないもののように扱われた。
部屋に幽閉され、喋ることも許されず、汚いものを見るように蔑んだ瞳で見られ、何もしていなくても殴られ蹴られる。
魔力というのは遅く現れることもあるらしい。
遅くて20歳頃に現れた人もいる事もあり、殺されずに生かされた。
それ程に母の魔力は貴重なものだったらしい。
一応魔力が現れた時のためにと、最低限の教養だけは受けさせられた。
教養といっても喋ることも許されず、発言すれば怒られ殴られる。
なので勉強は僕にとっては恐怖部屋だった。
たまに義兄弟達と一緒になったが、その時は最悪だ。
たくさんの嫌がらせや暴力を振るわれた。
僕は喋ってもいけない、一緒に息をするだけでも怒られる、生まれてはいけない子だったとして迫害を受けても当然という扱いだった。
ただその場で見せられる教科書や資料は面白かった。
僕は一度見たモノは全て覚えられるので新しい教科書が来るのだけが楽しみだった。
幽閉された部屋は窓もなく真っ暗で、一日に一度運ばれる水と形も残っていない残飯が少し。
それを食べながら母が残してくれたお人形さんに語り掛けるだけの毎日。
そしてこの屋敷中の声を聞きながら送る毎日。
屋敷中の話声が聞こえるので少々うるさく感じる。
なので幽閉された部屋でも静かだと感じたことはあまりない。
お陰で母の事や父の事、この家の事情なども部屋に居ながらにして全て把握していた。
だから幼少の時に全てを諦めていた。
ただドアが開けば殴られるかもしれないと屋敷の人々の足音に怯える日々だった。
僕は生まれてはいけない子だったのだ。
本当は殺してほしい。
でも殺されることも許されない。
光のない部屋の中で、ただお人形さんを抱きしめる。
そうして12年が過ぎた。
魔力も現れるそぶりも見せない。
家族も諦め始めたのか教師が嫌がったのか教養時間も無くなり、ただ真っ暗な部屋に幽閉される日々。
たまにうっぷん晴らしに義兄弟がやってきて暴力をふるっては去っていく。
ただただ20歳になって殺されるのを迫害を受け恐怖しながら待つ日々。
とうに生きる希望も消えていた。
ただただ毎日を震え怯えるだけだった。
そんなある日、事件が起こった。
屋敷が騒がしい。
屋敷の人々の声が錯乱している。
でもすぐに意味は理解する。
どうやら戦が近くで起こり、こちらに迫ってきているらしい。
僕はもっと耳を澄ませた。
するとたくさんの馬と蹄の音と、何やらゴオオオという音がする。
その時何となくだが、『ここはアブナイ』と思った。
そして、何となく目に付いた場所『ここなら大丈夫』と思って、その場所に身を潜めた。
瞬間、家が燃え上がり、強い風が家を崩していった。
気づけば周りは焼け野原で、僕は呆然と立ち上がった。
そして僕の目についたのは家族の真っ黒こげになった遺体。
辛いとか悲しいとか怖いとかの感情はまるでない。
僕はそうじゃなくてただ一つ思ったのは『残念』だった。
どうしてそう思ったのかは解らない。
彼らを殺したのが自分でない事が残念だった。
力もないのに自分が殺される立場なのに、なぜそう思ったかは今でも解らない。
いつまでそんな事を考えながら突っ立っていただろう。
大人の人が来て色々と言い争ってる。
どうやら僕の次の引き取り手でもめているらしい。
僕はいらない子なのだから当然だろう。
魔力もないし貴族にあるまじき小麦色の肌の子供なのだから。
ということは、これで殺されるのかと思った。
だけど、どうやら僕が人目についたことで殺せなくなったらしい。
この街の宗教上、子供を殺すのはご法度の様だ。
そんな時、嫌らしい笑みを浮かべ近寄ってくる一人の男がいた。
それがリディアの義理の父であった。
何故なら、母は、貴族では考えられない小麦色の肌をした僕という子を産み婿養子に入った父の子ではないと判明したからだ。
父は怒って離婚し出て行った。
父が出て行ったのと同時に体の弱かった母は僕を産むことで体調を崩し亡くなってしまった。
残った乳幼児の僕は、運が悪いことに家系特有の魔法も母の魔力も受け継がれてはいなかった。
母はこの家系で一番の魔力の持ち主。
それを期待して、嫁にはやらず婿養子をもらったのにも関わらず、母は貴族の父の子ではなく違う人との、しかも愚民との子を宿し産み、そして亡くなってしまったのだ。
そこからは僕は生まれながらにして嫌われ、迫害され、存在しないもののように扱われた。
部屋に幽閉され、喋ることも許されず、汚いものを見るように蔑んだ瞳で見られ、何もしていなくても殴られ蹴られる。
魔力というのは遅く現れることもあるらしい。
遅くて20歳頃に現れた人もいる事もあり、殺されずに生かされた。
それ程に母の魔力は貴重なものだったらしい。
一応魔力が現れた時のためにと、最低限の教養だけは受けさせられた。
教養といっても喋ることも許されず、発言すれば怒られ殴られる。
なので勉強は僕にとっては恐怖部屋だった。
たまに義兄弟達と一緒になったが、その時は最悪だ。
たくさんの嫌がらせや暴力を振るわれた。
僕は喋ってもいけない、一緒に息をするだけでも怒られる、生まれてはいけない子だったとして迫害を受けても当然という扱いだった。
ただその場で見せられる教科書や資料は面白かった。
僕は一度見たモノは全て覚えられるので新しい教科書が来るのだけが楽しみだった。
幽閉された部屋は窓もなく真っ暗で、一日に一度運ばれる水と形も残っていない残飯が少し。
それを食べながら母が残してくれたお人形さんに語り掛けるだけの毎日。
そしてこの屋敷中の声を聞きながら送る毎日。
屋敷中の話声が聞こえるので少々うるさく感じる。
なので幽閉された部屋でも静かだと感じたことはあまりない。
お陰で母の事や父の事、この家の事情なども部屋に居ながらにして全て把握していた。
だから幼少の時に全てを諦めていた。
ただドアが開けば殴られるかもしれないと屋敷の人々の足音に怯える日々だった。
僕は生まれてはいけない子だったのだ。
本当は殺してほしい。
でも殺されることも許されない。
光のない部屋の中で、ただお人形さんを抱きしめる。
そうして12年が過ぎた。
魔力も現れるそぶりも見せない。
家族も諦め始めたのか教師が嫌がったのか教養時間も無くなり、ただ真っ暗な部屋に幽閉される日々。
たまにうっぷん晴らしに義兄弟がやってきて暴力をふるっては去っていく。
ただただ20歳になって殺されるのを迫害を受け恐怖しながら待つ日々。
とうに生きる希望も消えていた。
ただただ毎日を震え怯えるだけだった。
そんなある日、事件が起こった。
屋敷が騒がしい。
屋敷の人々の声が錯乱している。
でもすぐに意味は理解する。
どうやら戦が近くで起こり、こちらに迫ってきているらしい。
僕はもっと耳を澄ませた。
するとたくさんの馬と蹄の音と、何やらゴオオオという音がする。
その時何となくだが、『ここはアブナイ』と思った。
そして、何となく目に付いた場所『ここなら大丈夫』と思って、その場所に身を潜めた。
瞬間、家が燃え上がり、強い風が家を崩していった。
気づけば周りは焼け野原で、僕は呆然と立ち上がった。
そして僕の目についたのは家族の真っ黒こげになった遺体。
辛いとか悲しいとか怖いとかの感情はまるでない。
僕はそうじゃなくてただ一つ思ったのは『残念』だった。
どうしてそう思ったのかは解らない。
彼らを殺したのが自分でない事が残念だった。
力もないのに自分が殺される立場なのに、なぜそう思ったかは今でも解らない。
いつまでそんな事を考えながら突っ立っていただろう。
大人の人が来て色々と言い争ってる。
どうやら僕の次の引き取り手でもめているらしい。
僕はいらない子なのだから当然だろう。
魔力もないし貴族にあるまじき小麦色の肌の子供なのだから。
ということは、これで殺されるのかと思った。
だけど、どうやら僕が人目についたことで殺せなくなったらしい。
この街の宗教上、子供を殺すのはご法度の様だ。
そんな時、嫌らしい笑みを浮かべ近寄ってくる一人の男がいた。
それがリディアの義理の父であった。
0
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい
海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。
その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。
赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。
だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。
私のHPは限界です!!
なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。
しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ!
でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!!
そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ
だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような?
♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています
真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。
なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。
更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!
変態が大変だ! いや大変な変態だ!
お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~!
しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~!
身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。
操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~
紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ
恋愛
「それでは魔王様、勇者が攻めて来ますので我が軍を率いて何とかして下さい」「……え?」
気づけばそこは暗黒城の玉座で、目の前には金髪碧眼のイケメンが跪いている。
私が魔王の生まれ変わり?何かの間違いです勘弁して下さい。なんだか無駄に美形な人外達に囲まれるけど逆ハーとか求めてないんで家に帰して!
これは、渋々ながらもリーダーを務めることになった平凡OLが(主においしいゴハンを食べる為に)先代魔王の知識やら土魔法やらを駆使して、争いのない『優しい国』を目指して建国していく物語。
◆他サイトにも投稿
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる