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第22話 ちーちゃん、久しぶり

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「さっちゃん? 恥ずかしがってないで、そろそろ行くわよ」

「え~。本当にこの格好で行くの?」

「ええ、そうよ。昇くんも似合うって言ってたんだからいいじゃない」

「そ、それは・・・そうだけど~」

「だったら恥ずかしがることないわよ、行くよ~。イベントに間に合わなくなっちゃうわ」

さっちゃんはお母さんには勝てないみたいだ。俺も口ではさっちゃんママに勝てる気がしない。まず勢いに圧倒されてしまうな。さっちゃんにはあきらめてもらおう。

「さっちゃん」

俺はさっちゃんの肩に手を乗せた。

「な、なにかな?」

なにか期待したような目で俺を見ているが・・・俺にはどうすることもできないんだよなぁ~ってことで。

「あきらめよっか笑」

「昇くんのうらぎりもの~~!」

「昇くん、流石!!じゃあ、行くわよ~」

「お、お母さん、自分で歩けるから~、引っ張らないで~~」

さっちゃんの声が外に響き渡った・・・
元気な家族だなぁ~。





さっちゃん家から会場までは車で一時間くらい掛かるそうだ。
着くまで寝ててもいいよって言われたけど、運転してもらってるので、寝るのは申し訳ない・・・運転中、知沙さんが退屈しないように話でもしてようか。

「知沙さん、イベントの主催者と友達って凄いですね」

「私は凄くないけど、その友達は凄いわよ。大学時代の友達で、京子《きょうこ》っ言うんだけど、大学にコスプレサークルが無いことが分かると、すぐにメンバーを集めてサークルを作ってたわね」

「行動力が凄いですね」

「行動力もあるんだけど、人望もあるのよね~。私も実はサークルに誘われてたんだけど、恥ずかしいから断っちゃった☆」

「お母さんだって恥ずかしがってるじゃん!」

「私のことは良いのよっ」

「良くないよ。まったく!」

「でね。サークルを作って初めて出たコスプレの大会で、いきなり最優秀賞を取っちゃったのよ。その時、私も会場にいたけど、私から見ても一番輝いてたのは彼女だったわ」

「いきなり賞を取るなんて凄いですね。どんな人なのか会うのが楽しみです」

「怖い人じゃなければいいけど・・・」

さっちゃんは人見知りが発動してそうだ。

「全然、怖くないわよ。今ではイベント関係の会社を作って、コスプレ業界を盛り上げてるみたいよ」

「聞けば聞くほど凄いですね」

「会うのは久しぶりだから楽しみだわ~」

* * *

話をしていたら、思ったより着くのが早く感じた。さっちゃんは、30分くらいは頑張っていたが、眠気に勝てず、ぐぅ~ぐぅ~と可愛い寝息を立てて寝ていた。

「着きましたね~運転お疲れさまです」

「いいえ~。こちらこそ。ほら、さっちゃん?起きて。会場に着いたわよ~」

「うん~~~」

俺達は早く来たつもりだったが、すでに長い長い行列が出来ていた。周りを見渡してみると、人、人、人だ。コスプレしている人もちらほらいるようだ。初めてコスプレイヤーを見たけど、凄く輝いてる、キラキラしている。楽しんでコスプレをしているというのが分かる。見ているだけで、テンションが上がるな。

「それにしても人がいっぱいですね」

「わぁ~。人がいっぱいだ~」

「俺達もこの行列に並ぶ感じですか?」

「ここは参加者が並ぶ列だから、私達は、裏口から会場に入るよ」

「分かりました~」

チラチラ、チラチラ

「ねぇ、あの人達もレイヤーさんかな?」
「姉妹なのかな?」
「女の子のメイド風の格好も良いよね」
「男の人はどんなコスプレをするのか気になるね!かっこいい感じのキャラクターが似合うんじゃない?」

ヒソヒソ、ヒソヒソ

裏口に向かっている最中、さっちゃんは周りの人の視線を奪っていた。

「私達、見られてない?恥ずかしい・・・」

「うん。見られてる。やっぱりさっちゃんの格好が似合ってるからだな」

「昇くんもだよ(小声)」

「さっちゃんも昇くんも注目されてるわね」

「俺じゃなくてさっちゃんですよ」

俺はコスプレとか似合わないと思うよ。





「ちーちゃん、久しぶり!!」

「京子も久しぶりね!!」

知沙さんと京子さんが抱き合って久しぶりの再会を喜んでいるようだ。知沙さんは、友達からはちーちゃんって呼ばれてるみたいだ。さっちゃん、ちーちゃんだね。
京子さんは、スカート丈の長いロングスカートスーツを着ており、上品で仕事が出来る女性という雰囲気だ。

「ちーちゃんが元気そうで良かった。そっちの二人はちーちゃんの子供?」

「こっちは私の娘でさっちゃん、でその隣が幼馴染の昇くんよ」

「お、おはようございます。中条幸です」

「堂道昇です。今日は宜しくお願いします」

「丁寧な挨拶ありがとう。私は猪本京子《いのもときょうこ》と言います。今日のイベントの主催者やってます~。よろしくね~」

気軽な感じで挨拶をしてくれたので、少し緊張が和らいだ。
京子さんは、俺とさっちゃんを交互に見て手を顎に当てている。嫌な予感がするけど。

「・・・なんか、2人ともコスプレが似合いそうな気がするなぁ~。どう?スタッフじゃなくて、コスプレイヤーとして参加してく?」

「いいいえ、結構です。あ、アルバイトがしたいです」

さっちゃんは食い気味に断ってる。目立つの苦手だもんね。今の格好でも頑張ってると思うよ・・・

「似合うって言ってもらえて嬉しいですが、俺達はアルバイトがしたくて来たので、すみません。コスプレの方は大丈夫です」

「あれ、振られちゃった。でもしたくなったら言ってね。アドバイスするから。2人ならどんな大会も賞を取れるよ!」

「ありがとうございます。その時は相談させてください」

コスプレをするときはこないと思うけど・・・

「京子また暴走してるわね。大学の頃からそういう所は変わってないんだから~」

「ごめん、ごめん。スカウトしたくなっちゃった」

周りにいたスタッフさん達が笑っている。みんな京子さんにスカウトされた人なのかもしれないな。俺もこういう雰囲気の良いところで働きたいな。

「私は少し経ったら家に帰るから、仕事終わりに迎えに来るわね」

「分かった。お母さん」
「帰りも宜しくお願いします」

知沙さんも忙しいみたいだ。





「じゃあ、幸さんは、受付の仕事をお願いします」

「はい、分かりました」

さっちゃんは、受付担当のスタッフさんに説明を受けている。聞いた内容を必死にメモしてる。さっちゃんガンバ!

「で、昇くんは、混雑対応と会場の見回りをしてもらおうかな」

「混雑対応は、行列の整理とかですよね。で、見回りはなにをすればいいですか?」

「レイヤーさんに危険な行為をしてる人だったり、不審な人がいたら、事務所に連絡してほしいのよ。で、会場内に警備員がいるから呼んで対応してください」

「了解しました。じゃあ、見回り行ってきます」

「よろしくね~」

よし!アルバイト頑張るぞ!

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