23 / 30
第22話 ちーちゃん、久しぶり
しおりを挟む
「さっちゃん? 恥ずかしがってないで、そろそろ行くわよ」
「え~。本当にこの格好で行くの?」
「ええ、そうよ。昇くんも似合うって言ってたんだからいいじゃない」
「そ、それは・・・そうだけど~」
「だったら恥ずかしがることないわよ、行くよ~。イベントに間に合わなくなっちゃうわ」
さっちゃんはお母さんには勝てないみたいだ。俺も口ではさっちゃんママに勝てる気がしない。まず勢いに圧倒されてしまうな。さっちゃんにはあきらめてもらおう。
「さっちゃん」
俺はさっちゃんの肩に手を乗せた。
「な、なにかな?」
なにか期待したような目で俺を見ているが・・・俺にはどうすることもできないんだよなぁ~ってことで。
「あきらめよっか笑」
「昇くんのうらぎりもの~~!」
「昇くん、流石!!じゃあ、行くわよ~」
「お、お母さん、自分で歩けるから~、引っ張らないで~~」
さっちゃんの声が外に響き渡った・・・
元気な家族だなぁ~。
・
・
・
さっちゃん家から会場までは車で一時間くらい掛かるそうだ。
着くまで寝ててもいいよって言われたけど、運転してもらってるので、寝るのは申し訳ない・・・運転中、知沙さんが退屈しないように話でもしてようか。
「知沙さん、イベントの主催者と友達って凄いですね」
「私は凄くないけど、その友達は凄いわよ。大学時代の友達で、京子《きょうこ》っ言うんだけど、大学にコスプレサークルが無いことが分かると、すぐにメンバーを集めてサークルを作ってたわね」
「行動力が凄いですね」
「行動力もあるんだけど、人望もあるのよね~。私も実はサークルに誘われてたんだけど、恥ずかしいから断っちゃった☆」
「お母さんだって恥ずかしがってるじゃん!」
「私のことは良いのよっ」
「良くないよ。まったく!」
「でね。サークルを作って初めて出たコスプレの大会で、いきなり最優秀賞を取っちゃったのよ。その時、私も会場にいたけど、私から見ても一番輝いてたのは彼女だったわ」
「いきなり賞を取るなんて凄いですね。どんな人なのか会うのが楽しみです」
「怖い人じゃなければいいけど・・・」
さっちゃんは人見知りが発動してそうだ。
「全然、怖くないわよ。今ではイベント関係の会社を作って、コスプレ業界を盛り上げてるみたいよ」
「聞けば聞くほど凄いですね」
「会うのは久しぶりだから楽しみだわ~」
* * *
話をしていたら、思ったより着くのが早く感じた。さっちゃんは、30分くらいは頑張っていたが、眠気に勝てず、ぐぅ~ぐぅ~と可愛い寝息を立てて寝ていた。
「着きましたね~運転お疲れさまです」
「いいえ~。こちらこそ。ほら、さっちゃん?起きて。会場に着いたわよ~」
「うん~~~」
俺達は早く来たつもりだったが、すでに長い長い行列が出来ていた。周りを見渡してみると、人、人、人だ。コスプレしている人もちらほらいるようだ。初めてコスプレイヤーを見たけど、凄く輝いてる、キラキラしている。楽しんでコスプレをしているというのが分かる。見ているだけで、テンションが上がるな。
「それにしても人がいっぱいですね」
「わぁ~。人がいっぱいだ~」
「俺達もこの行列に並ぶ感じですか?」
「ここは参加者が並ぶ列だから、私達は、裏口から会場に入るよ」
「分かりました~」
チラチラ、チラチラ
「ねぇ、あの人達もレイヤーさんかな?」
「姉妹なのかな?」
「女の子のメイド風の格好も良いよね」
「男の人はどんなコスプレをするのか気になるね!かっこいい感じのキャラクターが似合うんじゃない?」
ヒソヒソ、ヒソヒソ
裏口に向かっている最中、さっちゃんは周りの人の視線を奪っていた。
「私達、見られてない?恥ずかしい・・・」
「うん。見られてる。やっぱりさっちゃんの格好が似合ってるからだな」
「昇くんもだよ(小声)」
「さっちゃんも昇くんも注目されてるわね」
「俺じゃなくてさっちゃんですよ」
俺はコスプレとか似合わないと思うよ。
・
・
・
「ちーちゃん、久しぶり!!」
「京子も久しぶりね!!」
知沙さんと京子さんが抱き合って久しぶりの再会を喜んでいるようだ。知沙さんは、友達からはちーちゃんって呼ばれてるみたいだ。さっちゃん、ちーちゃんだね。
京子さんは、スカート丈の長いロングスカートスーツを着ており、上品で仕事が出来る女性という雰囲気だ。
「ちーちゃんが元気そうで良かった。そっちの二人はちーちゃんの子供?」
「こっちは私の娘でさっちゃん、でその隣が幼馴染の昇くんよ」
「お、おはようございます。中条幸です」
「堂道昇です。今日は宜しくお願いします」
「丁寧な挨拶ありがとう。私は猪本京子《いのもときょうこ》と言います。今日のイベントの主催者やってます~。よろしくね~」
気軽な感じで挨拶をしてくれたので、少し緊張が和らいだ。
京子さんは、俺とさっちゃんを交互に見て手を顎に当てている。嫌な予感がするけど。
「・・・なんか、2人ともコスプレが似合いそうな気がするなぁ~。どう?スタッフじゃなくて、コスプレイヤーとして参加してく?」
「いいいえ、結構です。あ、アルバイトがしたいです」
さっちゃんは食い気味に断ってる。目立つの苦手だもんね。今の格好でも頑張ってると思うよ・・・
「似合うって言ってもらえて嬉しいですが、俺達はアルバイトがしたくて来たので、すみません。コスプレの方は大丈夫です」
「あれ、振られちゃった。でもしたくなったら言ってね。アドバイスするから。2人ならどんな大会も賞を取れるよ!」
「ありがとうございます。その時は相談させてください」
コスプレをするときはこないと思うけど・・・
「京子また暴走してるわね。大学の頃からそういう所は変わってないんだから~」
「ごめん、ごめん。スカウトしたくなっちゃった」
周りにいたスタッフさん達が笑っている。みんな京子さんにスカウトされた人なのかもしれないな。俺もこういう雰囲気の良いところで働きたいな。
「私は少し経ったら家に帰るから、仕事終わりに迎えに来るわね」
「分かった。お母さん」
「帰りも宜しくお願いします」
知沙さんも忙しいみたいだ。
・
・
・
「じゃあ、幸さんは、受付の仕事をお願いします」
「はい、分かりました」
さっちゃんは、受付担当のスタッフさんに説明を受けている。聞いた内容を必死にメモしてる。さっちゃんガンバ!
「で、昇くんは、混雑対応と会場の見回りをしてもらおうかな」
「混雑対応は、行列の整理とかですよね。で、見回りはなにをすればいいですか?」
「レイヤーさんに危険な行為をしてる人だったり、不審な人がいたら、事務所に連絡してほしいのよ。で、会場内に警備員がいるから呼んで対応してください」
「了解しました。じゃあ、見回り行ってきます」
「よろしくね~」
よし!アルバイト頑張るぞ!
====================
ここまで読んで頂きありがとうございます。
良かったら「お気に入り登録」「感想」を頂ければ、書くモチベーションが上がりますので、宜しくお願いします。
コメントも頂けると嬉しいです。できるだけ返信しようかと思ってます。
ただし、あまり強い言葉ですと、コメントを消すかもですのでご了承ください。
「え~。本当にこの格好で行くの?」
「ええ、そうよ。昇くんも似合うって言ってたんだからいいじゃない」
「そ、それは・・・そうだけど~」
「だったら恥ずかしがることないわよ、行くよ~。イベントに間に合わなくなっちゃうわ」
さっちゃんはお母さんには勝てないみたいだ。俺も口ではさっちゃんママに勝てる気がしない。まず勢いに圧倒されてしまうな。さっちゃんにはあきらめてもらおう。
「さっちゃん」
俺はさっちゃんの肩に手を乗せた。
「な、なにかな?」
なにか期待したような目で俺を見ているが・・・俺にはどうすることもできないんだよなぁ~ってことで。
「あきらめよっか笑」
「昇くんのうらぎりもの~~!」
「昇くん、流石!!じゃあ、行くわよ~」
「お、お母さん、自分で歩けるから~、引っ張らないで~~」
さっちゃんの声が外に響き渡った・・・
元気な家族だなぁ~。
・
・
・
さっちゃん家から会場までは車で一時間くらい掛かるそうだ。
着くまで寝ててもいいよって言われたけど、運転してもらってるので、寝るのは申し訳ない・・・運転中、知沙さんが退屈しないように話でもしてようか。
「知沙さん、イベントの主催者と友達って凄いですね」
「私は凄くないけど、その友達は凄いわよ。大学時代の友達で、京子《きょうこ》っ言うんだけど、大学にコスプレサークルが無いことが分かると、すぐにメンバーを集めてサークルを作ってたわね」
「行動力が凄いですね」
「行動力もあるんだけど、人望もあるのよね~。私も実はサークルに誘われてたんだけど、恥ずかしいから断っちゃった☆」
「お母さんだって恥ずかしがってるじゃん!」
「私のことは良いのよっ」
「良くないよ。まったく!」
「でね。サークルを作って初めて出たコスプレの大会で、いきなり最優秀賞を取っちゃったのよ。その時、私も会場にいたけど、私から見ても一番輝いてたのは彼女だったわ」
「いきなり賞を取るなんて凄いですね。どんな人なのか会うのが楽しみです」
「怖い人じゃなければいいけど・・・」
さっちゃんは人見知りが発動してそうだ。
「全然、怖くないわよ。今ではイベント関係の会社を作って、コスプレ業界を盛り上げてるみたいよ」
「聞けば聞くほど凄いですね」
「会うのは久しぶりだから楽しみだわ~」
* * *
話をしていたら、思ったより着くのが早く感じた。さっちゃんは、30分くらいは頑張っていたが、眠気に勝てず、ぐぅ~ぐぅ~と可愛い寝息を立てて寝ていた。
「着きましたね~運転お疲れさまです」
「いいえ~。こちらこそ。ほら、さっちゃん?起きて。会場に着いたわよ~」
「うん~~~」
俺達は早く来たつもりだったが、すでに長い長い行列が出来ていた。周りを見渡してみると、人、人、人だ。コスプレしている人もちらほらいるようだ。初めてコスプレイヤーを見たけど、凄く輝いてる、キラキラしている。楽しんでコスプレをしているというのが分かる。見ているだけで、テンションが上がるな。
「それにしても人がいっぱいですね」
「わぁ~。人がいっぱいだ~」
「俺達もこの行列に並ぶ感じですか?」
「ここは参加者が並ぶ列だから、私達は、裏口から会場に入るよ」
「分かりました~」
チラチラ、チラチラ
「ねぇ、あの人達もレイヤーさんかな?」
「姉妹なのかな?」
「女の子のメイド風の格好も良いよね」
「男の人はどんなコスプレをするのか気になるね!かっこいい感じのキャラクターが似合うんじゃない?」
ヒソヒソ、ヒソヒソ
裏口に向かっている最中、さっちゃんは周りの人の視線を奪っていた。
「私達、見られてない?恥ずかしい・・・」
「うん。見られてる。やっぱりさっちゃんの格好が似合ってるからだな」
「昇くんもだよ(小声)」
「さっちゃんも昇くんも注目されてるわね」
「俺じゃなくてさっちゃんですよ」
俺はコスプレとか似合わないと思うよ。
・
・
・
「ちーちゃん、久しぶり!!」
「京子も久しぶりね!!」
知沙さんと京子さんが抱き合って久しぶりの再会を喜んでいるようだ。知沙さんは、友達からはちーちゃんって呼ばれてるみたいだ。さっちゃん、ちーちゃんだね。
京子さんは、スカート丈の長いロングスカートスーツを着ており、上品で仕事が出来る女性という雰囲気だ。
「ちーちゃんが元気そうで良かった。そっちの二人はちーちゃんの子供?」
「こっちは私の娘でさっちゃん、でその隣が幼馴染の昇くんよ」
「お、おはようございます。中条幸です」
「堂道昇です。今日は宜しくお願いします」
「丁寧な挨拶ありがとう。私は猪本京子《いのもときょうこ》と言います。今日のイベントの主催者やってます~。よろしくね~」
気軽な感じで挨拶をしてくれたので、少し緊張が和らいだ。
京子さんは、俺とさっちゃんを交互に見て手を顎に当てている。嫌な予感がするけど。
「・・・なんか、2人ともコスプレが似合いそうな気がするなぁ~。どう?スタッフじゃなくて、コスプレイヤーとして参加してく?」
「いいいえ、結構です。あ、アルバイトがしたいです」
さっちゃんは食い気味に断ってる。目立つの苦手だもんね。今の格好でも頑張ってると思うよ・・・
「似合うって言ってもらえて嬉しいですが、俺達はアルバイトがしたくて来たので、すみません。コスプレの方は大丈夫です」
「あれ、振られちゃった。でもしたくなったら言ってね。アドバイスするから。2人ならどんな大会も賞を取れるよ!」
「ありがとうございます。その時は相談させてください」
コスプレをするときはこないと思うけど・・・
「京子また暴走してるわね。大学の頃からそういう所は変わってないんだから~」
「ごめん、ごめん。スカウトしたくなっちゃった」
周りにいたスタッフさん達が笑っている。みんな京子さんにスカウトされた人なのかもしれないな。俺もこういう雰囲気の良いところで働きたいな。
「私は少し経ったら家に帰るから、仕事終わりに迎えに来るわね」
「分かった。お母さん」
「帰りも宜しくお願いします」
知沙さんも忙しいみたいだ。
・
・
・
「じゃあ、幸さんは、受付の仕事をお願いします」
「はい、分かりました」
さっちゃんは、受付担当のスタッフさんに説明を受けている。聞いた内容を必死にメモしてる。さっちゃんガンバ!
「で、昇くんは、混雑対応と会場の見回りをしてもらおうかな」
「混雑対応は、行列の整理とかですよね。で、見回りはなにをすればいいですか?」
「レイヤーさんに危険な行為をしてる人だったり、不審な人がいたら、事務所に連絡してほしいのよ。で、会場内に警備員がいるから呼んで対応してください」
「了解しました。じゃあ、見回り行ってきます」
「よろしくね~」
よし!アルバイト頑張るぞ!
====================
ここまで読んで頂きありがとうございます。
良かったら「お気に入り登録」「感想」を頂ければ、書くモチベーションが上がりますので、宜しくお願いします。
コメントも頂けると嬉しいです。できるだけ返信しようかと思ってます。
ただし、あまり強い言葉ですと、コメントを消すかもですのでご了承ください。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。
バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。
全123話
※小説家になろう様にも掲載しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる