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第17話 声が大きいって!!

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俺は彩花と別れた後、すぐに教室に戻り、うつ伏せになって目を瞑っていた。恋人と別れるというのは、思っていたよりも精神的にきたようで、どっと疲れが出ていた。
1年以上も付き合った彼女と別れたわけだもんな。でもずるずると付き合っていても良いことは無かったかもしれないから、別れて良かったと考えよう。

あとはクラスメイトに別れたことが伝わるのは時間の問題だよな。彩花は自分から別れたって言いふらさないと思うが・・・。さてどうなるのやら。

す~~は~、~す~~は~~。

俺は深呼吸をする。
お腹は空いているような、空いてないような。変な感じだ。

今から購買に行ってもどうせ良いパンしか売ってないだろう。多分ネタみたいなパンしか残ってないと思う。不味くは無いのだが、聞いたことが無いパンが並ぶことが多い。
せんべいパン、ご飯パン、餅パンってのがあった気がする・・・
主食と主食みたいなパンだったが、悔しいが美味しかった。しかもお腹がいっぱいになる。
このパンを作っている人は学生の味方なのかもしれないな。
他にも変なパンがあった気がするが思い出せない。

俺が一番当たりだと思ったパンは、カルボナーラパンだ。大きめの食パンの上にカルボナーラ、チーズ、玉子がのっていて、胡椒がふりかかっている。見た目からも美味しいということが分かる、そして絶対にカロリーがヤバい。ヤバいが美味しい。もう一度食べてみたいと思っているが、今では幻のパンと言われ入手困難だ。

うん。ご飯の事を考えてもお腹が空かないな。今日のお昼は食べないで良いかな・・・

「よう!元気かっ!」

俺の肩を叩いてきた。俺の肩をこんなに強く叩くやつは1人しかいない。
テンション高いな。

「ああ、たけか」

「なんかテンション低めだな。菊池との話はもう終わったのか?」

「まぁな。たけちょっといいか?」

俺はたけに耳を貸すように合図する。

「うん。なんだ、なんだ?」

「えっと、彩花と別れた」

俺は小声でたけに耳打ちする。

「えええええええっ!!」

教室がシーンとなり、クラスメイト達が一斉にこちらを向いてきた。
なんでそんな驚くんだよ!!別れるって知ってただろ!!

「おま、声が大きいって!!みんな悪い!!最近幻のパン食べたって言ったら、たけのやつが驚いちゃって。気にしないでくれ」

「んだよ。騒がしいやつだな」
「で、ね~」
「そうだよね」

たけの口を塞ぎながら、俺がそう言うと興味を失ったように自分たちの話に戻っていた。
自分で言っててなんだけど、そんなに幻のパンに興味無いの?俺だけがあれを好きなのか?

「んん~ん(苦しい~)」

「あ、悪い」

俺がたけの口を塞いでいたことで息がしづらかったようだ。

「ぶぁは~~。死ぬかと思った。で、さっきの話詳しく聞かせてくれないか」

たけは真剣な顔になった。たけは空気が読めるやつだ。

「今はちょっと。放課後でいいか?」

「いや、今聞かせてくれ。勿体ぶらなくてもいいじゃないか」

「後で話すから」

やけに凄く食いついてくるな。そんなに気になっていたのか。でもここで話す内容では無い。

「後じゃ遅いんだよ!まじで教えてくれよ!」

「なんでそんなに気になってんだよ。しつこいな」

「良いから教えてくれよ!食べたいんだよ!!」

「嫌だって!!って食べたい?ああ、カルボナーラパンのことか!たけ!!お前もあれが好きだったの!?」

「いや、まだ食べたことない」

「あれはほんと美味しいぞ!!もしかしたら今から行けば売ってるかもしれないぞ。変な時間帯だし・・・」

「なに!じゃあ、行ってくる!!絶対に食べてやる・・・」

「頑張れ・・・」

目が血走ってるな。あれは美味しいがそこまでかと聞かれると・・・。





ふと思ったけど、彩花って俺が手伝う前は、本当に1人でクラス委員の仕事をしていたのだろうか。俺から見ると彩花が1人で仕事を頑張っているように見えた。けど蓋を開けてみると俺に頼りっきりになっていた。だから1人でやれてたとは到底思えないんだよな。
となると、協力者というか、俺以外にも裏の彩花を知っているやつがいそうな気がするけど。誰だろう?

彩花は、やればできるタイプだ。やればというところが曲者で、他の人に言われないとやらない。自分からはやらない。詳しく言うと他人からの評価が関わるときしかやらない。評価が関わる時は頑張る。それ以外の場合は、なにか言われても微笑んで誤魔化していた。
外しちゃいけない部分はしっかりやる。要領が良いタイプとも言えるが・・・

以前あったのは、彩花は、クラスメイト数人から勉強を教えてほしいという話になった。
本人は即答で快諾していた。その日の晩に勉強を教えなさいという連絡がきた。
俺は、張り切って、各教科の要点をまとめた資料を作り彩花に渡した。
その後、彩花が作ったものとして、クラスメイトの手に渡り、その月のテストでは、クラスの平均点が上がった。そういうこともあってクラスメイトからの信頼度は高い。
その時は彩花は神様みたいに崇められていたな。その時の俺は彼氏として鼻が高かったことを覚えている・・・ってなんでやねん。

まぁポジティブに考えると、勉強が出来るようになったのは彩花のお陰かな。人に教えるためには、原理を理解してないと出来ないしな。
ただ、もう要点とか教えないから1人で勉強をやるんだな。もう知らんから。

ガラガラガラ

教室のドアが開いたので、視線を向けると彩花だった。顔を見てみると特になにも無かったかのような顔をしている。自分の感情を隠すのが得意なんだろうけど、俺は裏の彩花を知っているので、分かる。あれは相当イライラしている顔だ。多分俺くらいしか分からないと思う。

彩花は自分の席に戻るのではなく、ある男子生徒の机に向かって歩いているようだった。

「只野君、ちょっと放課後いい?」

「え、えっと・・・ななにかな?」

只野は困惑した顔をしている。
教室が少し静かになった。

あいつは、只野学《ただのまなぶ》だったっけか。
メガネを掛けており、勉強が得意という印象がある。あまりクラスメイトと話しているところを見たことがない。そういう理由もあって、クラスメイトは彩花と只野が話しているのを気になっているみたいだ。

「な、なにかな?」

「ちょっと、勉強のことを聞きたくて・・・じゃあ放課後に」

「ちょっと・・・」

いつも猫を被っている彩花らしくなく、只野に対して態度が冷たいように見えた。
気になるが、考えてもしょうがない。

ピンポンパンポーン

チャイムが鳴ったがたけは帰って来なかった・・・
あいつはなにやってるんだ。帰って来なかったってことは買えたのかな?

====================
ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話、明日の12時頃、更新します。

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