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第12話 やってないけど?

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ようやく我が家に帰って来れた。さっちゃんの家から走って帰ってきたので、また汗だくになってしまった。家に入ると、さっき食べていたラーメンの香りがした。
さっちゃんとこの家で過ごしていたのが随分前のような感覚になっている。さっきの緊張感のせいかもしれない。

部屋に入り、ふとテーブルに置いてある箱が目に入った。
箱は、おしゃれにラッピングされており、見ただけでこれがプレゼントということが分かる。
これは、彩花へのプレゼントだったものだ。以前デートをした時、アクセサリーショップでこのネックレスが欲しいとおねだりされたが、その場で買ってあげられなかった。なので俺はバイトを頑張って、お金を貯めてようやく買うことができたものだ。

まぁ今となっては、もう要らないもの・・・なのかもしれないな。
ここにあっても無駄だし、別れる前に渡しておくか。

ブー、ブー、ブー

ん?

ポケットに入っていたスマホのバイブで震えているようだ。
スマホを手に撮ってディスプレイを見てみると、菊池彩花と表示されていた。
さっき、あの公園にいたのを思い出して少しドキッとした。

あ~そっか、この時間ってことはあの電話かな?
彩花は、俺にクラスの仕事を頼んだ時は、夜にちゃんとやったかどうかを確認するために電話をしてくるのだ。ほんとマメだよな。確認をするくらい慎重なのに、なんでさっきはあんなに大胆だったのか分からないな。
出たくないけど、出るか。

『はい、もしもし』

『もしもし?あ、昇。起きてる?』

『ああ、起きてるけどなにかあった?あっ、もしかして、久しぶりにデートのお誘いか?』

俺は彩花を揺さぶるために冗談を言ってみる。どういう反応するかな?

『そそれは後でにしましょ。ま、まぁ?確かに久しぶりにどこか行きたい・・・わね。前デートした時はアクセサリー買ってくれなかったから、次こそはなにか買って欲しいな~』

分かりやすく動揺してるな。一息でしかも早口で話を始めた。緊張すると早口になるって言うよな。あながち間違えではないのかもしれないな。
それと、本当に俺と遊びに行きたいと思ってるのか?

『そうだな。あとでデートプラン考えておくよ』

そんなプランは一生考えないけどな。
付き合い始めは、彩花に楽しんでもらいたと思って、雑誌を買ってデートスポットについて調べていた。そういう色々なスポットを調べているせいで、最近だとどこどこ行ってみたいと思うようになっていた。まずはゆっくり温泉に行きたいな。

『ええ、宜しくね。そういえば、この前頼んでおいたクラスの仕事はしてくれた?』

まぁ、あの面倒な集計作業のことかな?今日やろうと思ってたけど、お前が浮気してたから、やる気無くなってやってないな。

『ん?なんか頼まれてたっけ?なにもやってないけど』

なにも知りませんという体でとぼける。

『え、なんでよ!!やっておいてって言ったじゃん!!」

これこれ、これね。
急に彩花は怒鳴りだした。電話の最初は普通の彼女との会話だと思ったと思うが、なにか自分の都合が悪い状態になると怒る。っていうかキレる。

『はぁ~。もう使えないわね。私の評価が落ちたらどうするのよ』

今までの俺だと。
あ~彼女を怒らせちゃった。どうしよう。別れるとか言わないよな。次から気をつけないと
って感じでおどおどしてたけど、今日の俺はそんなことは思わない。

『うん?そんなことは知らないな。ていうかクラス委員は誰だよ!』

ちょっと、怒り気味に言ってみる。

『え・・・』

今まで彩花とは喧嘩一つしたことが無かった。今まで反論なんてしたことが無い俺が急に反論したから驚いているようだ。普段静かなやつが急にキレたら怖いみたいな感じだ。

『ののぼる!なに言ってんのよ!私のこと好きなんでしょ。だったら私のためにやりなさいよ!!』

『いや、自分の仕事なんだから自分でやりなよ。大変そうなら手伝うからさ』

好きなんでしょ?に対してはなにも言わない。好きでは無くなってしまったからだ。
ただ俺は甘いようで、譲歩して手伝うって言っちゃったけど。

『手伝うってなによ。来週月曜日朝早く来てやっておいてね!!絶対ね!!』

ガチャ、プー、プー、プー

あ、電話切れちゃった。
前の俺ならあたふたして、ごめんってメッセージを送って、返信が返ってくるまで不安がってたけど、今は全然なんとも思ってない。
まぁ、月曜日もやらないけどね。

しかし、これで俺達の関係に少しばかりの亀裂が入ったな。俺が彩花の浮気を見逃せが、なにも無かったことにして、もとの関係に戻ることができるが、それをする気は毛頭ない。
俺は浮気を許せるほど、お人好しでは無いからな。

====================
ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話、明日の12時頃、更新します。

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