上 下
3 / 30

第3話 そりゃ驚くよな

しおりを挟む
不良達が去っていった後、周りにいたお客さん達から拍手をされていた。

「兄ちゃんやるな」
「格好良かった・・・」
「お腹大丈夫か?」
「ウホ」

周りのお客さん達から色々声を掛けられた。なんか変なのもいるみたいだ。
これはちょっと目立ってて恥ずかしい。早くこの場を去りたい気分だ。

「いえいえ、俺は特には・・・これは店長さんのお陰ですよ」

あの怖い顔で怒られたら誰だって逃げると思う。
俺だったら悪い事をして無くても迫られたら逃げる自信がある。

「お兄さん方、先程はありがとうございました。たまにああいう連中が来るんですが、俺1人だと対応できないときがあるので大変助かりやした。次来たらただじゃ済ましません」

敬語で話されると凄い違和感があるし、やした?その筋の人かな?隠せて無いですよ。
・・・と余計な事を考えるのは止めておこう。

「いえいえ、店長さんも大変なんですね・・・程々にしてくださいね」

「今回のお詫びとして、これをもらってくだせい」

「スゥ~・・・ありがとうございます」

強面店長に大量のメダルを頂いてしまった。良いのかな?良いんだよな。
なんか袖の下みたいな感じでちょっと受け取りにくい。こっちは特に悪いことしてないけど。

「昇、なんか大変だったな~」

「あ~そうだな。メダルも大量にもらっちゃったしな」

「あれな。あれがあれば、ずっと遊べるぞ。ラッキーだな」

たけは親指を立てて、ニコニコしている。
ポジティブなのか能天気なのか。こいつの良いところだ。

「ラッキーか。そう思うことにしよう・・・今日はパンチングマシーンの勝負はお預けにしておこう」

「まぁ、そうだな。次までに鍛えておくぜ」

「じゃあ、カフェにいくか」

このまま遊ぶ気分になれなかったので、もらったメダルを預けて、店を出ようとするとさっきのおじいさんが声を掛けてきた。

「さっきは助かりました。ありがとうございます。お腹にパンチを受けていたみたいですけど大丈夫ですか?」

「あ、全然大丈夫ですよ。本当に全然痛くなかったので」

「なら良かった。君は鍛えてるようには見えなかったけど度胸があるな。関心、関心」

パシン、パシン

おじいさんに背中を叩かれた。
これは褒められてるんだよね。鍛えてるように見えないって俺ってそんなにひょろひょろに見えるのかな?中学まで合気道を習っていたから、周りよりは鍛えてる自信があったんだけど。
さっきの店長みたいにムキムキまでは要らないけど、少しは筋肉が欲しい。

「いえいえ、それにしてもおじいさんも災難でしたね。変なやつに絡まれて・・・」

「本当に・・・。久しぶりにゲームセンターに来てみれば変なやつに絡まれるし。最近孫が高校に入ってから中々一緒に出掛けられなくて寂しい・・・」

なんかおじいさんの悲しいスイッチが入っちゃった。
分からないけど、孫と遊べないのは寂しいよな。

「そうなんですね・・・次またアイツらに絡まれたら、すぐに店員に連絡が良いと思いますよ。それでは~」

「名前を聞いていいですか?今度お礼をしますから」

「堂道です。お礼は結構ですから~。それでは~。たけ行くぞ」

おじいさんはなにか言っていたみたいだが、聞こえないふりをして、店を出ていった。

「昇良かったのか?お礼するって言ってたけど」

「あのおじいさん、不良に絡まれて、お礼してって大変じゃん。俺は特になにも要らないから大丈夫だ」

「まぁお前ならそう言うって思ってたけどな」

俺達はカフェに向かった。

* * *

駅近くのおしゃれなカフェに着いた。男二人でカフェに入るのは少し悲しいが。
今日は金曜日なのにお客さんが少ないみたいで、待たずに座れたのはラッキーだ。

「で、俺に話したいことってなんだ?」

「早速だな」

「うだうだやっててもしょうがないじゃん。ちょっと気になってたし」

「まぁな、じゃあ結論から言うと、彼女に浮気された」

「え、マジ?」

たけは口を開けたまま固まってしまった。

「ああ、マジだ。証拠見るか?」

俺はスマホを取り出し、彩花と知らない男がキスしている動画をたけに見せた。

「な?本当だろ?」

「菊池がそんな事するようなやつに見えなかったけど、この動画があるなら本当なんだろうな。普通にこいつ嫌いになったわ。来週から態度に出そうで怖いわ」

「俺はちょっとなにかやるとは思ってたんだけどな」

「ん?なんで?」

「バレてると思うけど、ここ数ヶ月くらい俺疲れ気味だったろ?あれな。彩花の仕事を俺がやらされてたんだよ。クラスの仕事からその他諸々も。最近は、彩花が俺に向けてる感情って、便利なやつくらいだったのかなって」

自分で言って悲しくなってきたぞ。

「あ~。確かにお前疲れてたな。いつか言ってくれると思ってたから聞かなかったけど。そうだったんだな。それは辛かったな・・・もうあいつのイメージ最悪だわ」

「今思うと馬鹿だったと思うよ。初めて彼女が出来たから浮かれてたんだと思う。恋人が出来て分かったけど、結構俺は人に尽くすのが好きだったみたいだ」

「誰だって恋人が出来たら、浮かれるのはしょうがないよ。ていうか良く動画を残そうと思ったな。嫌じゃなかったのか?はっきり言って寝取られだぞ」

「そうなんだけど、彩花のことが嫌になりすぎて別になんとも思わないレベルまできてたな。逆にラッキーとまで思ってたよ」

「マジかぁ・・・そこまでキツかったんだな。で、これからどうするん?聞くまでも無いけど」

「まっ、当然別れようかなって。あとはゆっくりしたい」

「まぁそうだよな。とりあえずお疲れ様」

たけに話が出来たことで俺の気持ちもよりスッキリした。

====================
ここまで読んで頂きありがとうございます。

次話、明日の12時頃、更新します。

良かったら「お気に入り登録」「感想」を頂ければ、書くモチベーションが上がりますので、宜しくお願いします。
コメントも頂けると嬉しいです。できるだけ返信しようかと思ってます。
ただし、あまり強い言葉ですと、コメントを消すかもですのでご了承ください。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊
恋愛
如月陽太(きさらぎようた)は、地元を離れてごく普通に学園生活を送っていた。 そんなある日、公園で傘もささずに雨に濡れている同じ学校の生徒、柊渚咲(ひいらぎなぎさ)と出会う。 シャワーを貸そうと自宅へ行くと、なんとそこには黒煙が上がっていた。 「…貴方が住んでるアパートってあれですか?」 「…あぁ…絶賛燃えてる最中だな」 これは、そんな陽太の不幸から始まった、素直になれない2人の物語。

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

ハイスペックな彼が地味子の私を構ってきます

麻沙綺
恋愛
高校の入学式、新入生代表の声が自分好みのイケボで、惚れ込んでいたら同じクラスだと判明。美男子の上に成績優秀者でもある彼が、何故か冴えない地味子の私を構い出した。 ※小説家になろうにも掲載

異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。

佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ! 実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)

処理中です...