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第三章:クラスアート実行委員、始動!
【制作開始②】
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翌日も、放課後になると美術室に集まっていた。
二日目になると役割分担が各々明白になってきたことで、前日よりも作業が捗っていた。
構図の下書きから下地塗りのところまでは、画力の高い稔と木下の担当だ。彼らが描いた輪郭線に丁寧に色を重ねて、より力強い線と色彩に変えていくのが水瀬の役割。ともすると、二対一なので水瀬の作業が追いつかないように思えるが、彼女は兎角筆が早い。早いだけではなく、技術面でもしっかりしている。ペン画やラフ画からでも実力がうかがえる水瀬だったが、本気で色を塗っていく様はもはや圧巻。
一度色を塗った後で、筆を交換して更に別の色を載せていく。多めに盛った油絵の具を指先で慎重に引きながら、繊細なボカシを表現していく。複数の色を載せ、巧みに組み合わせ、題材となった写真の雰囲気にどんどん寄せていく。
徹は、油壺や筆の掃除。画材の移動や整理など、雑務全般をこなしていた。
一方で僕はというと……題材に選定した写真を大きく引き伸ばした後は、目立った仕事をしていない。いや、マジで。情けない話ではあるが、自分が一番戦力外なのは明々白々。
「ん~……」
悩んだ末に、作業を担当している三人より離れた視点から全体の構図を確認し、題材にした写真と対比させて指示を出していく任を申し出る。そこはもっと色を濃く。その部分は草地をもっと広く描いて、等々、アドバイスを出し続けた。
「考えたものだな」
という稔のいつもの皮肉に、苦い顔で親指を立てた。
そのうちに、キャンバスを立てたままでは描きづらい部分が出始める。段々と、床に置いての作業が増えていった。
頬のあたりに落ちた長い髪を左手で押さえ、水瀬が筆を走らせる。美しくも凛々しい彼女の横顔に見惚れていると、徹にわき腹を小突かれた。
なんだよ、と顔を向けると、彼はにやけた笑みをうかべている。なんてことだ。稔のみならず徹にまで僕の感情は筒抜けなのか。顔が赤くなってないかと心配しつつ抗議しようとしたその時、徹の肩越しにこちらを睨む木下の目が見えた。熱を帯び始めた頬が、急速に冷え込んでいく。
──殺される。
水瀬の方を見過ぎないようにしよう。このままでは、命が幾らあっても足りやしない。
それでも、すぐ視線は水瀬の方に引き寄せられる。彼女の顔は真剣そのもので、瞳には何かをやり遂げようとする強い意志の光が宿っていた。今までとは一風違った彼女の魅力に気づかされ、僕は益々水瀬が好きだと自覚してしまう。
「翔、細めの筆」
「はい」
突然かけられた声に、踵が浮いて背筋が伸びる。
「なんで敬語なんだよ、気持ち悪い」
ぼんやりしていた僕に稔が苦笑いをし、水瀬がきょとんとした顔で首を傾げた。
制作開始から約一ヶ月が経過し、七月も初旬。クラスアートの完成度はおよそ五割に達していた。
この段階に至ると、水瀬の色使いがいかに見事であるのか、明白な成果となって現れていた。離れた視点からキャンバスの全景に目を向けると、これは写真なのではないかと見紛うレベル。
「写真レベル? そいつは流石に褒めすぎだ」
僕の顔を見て肩をすくめた稔だったが、そんな彼とて上機嫌だ。稔なりに確かな手ごたえがあるのだろう。ここ最近、やたらと笑みが零れている。
なんだか薄気味悪いな、というのは徹の弁。
そいつは流石に失礼だ、と苦笑いをする僕も、彼にしちゃ珍しい反応だと内心で思う。
いったいどこから噂が広がったのか、次第に、他クラスの生徒が入れ替わり立ち代り見学に訪れるようになった。感嘆の声を漏らす見学者らの姿を見て、稔の鼻は高くなるばかりだった。
そう、全ては順調だった。
順調な──はずだった。
最初の綻びが見えたのは、クラスアートの作業を早めに切り上げ帰途についた日のこと。校門を出たところで、真横から声をかけられる。
「早坂くん」と。
立っていたのは一人の女子生徒。
校章から、同じ二年生だと直ぐにわかった。
だがわからないのは、彼女の表情と名前。
悪意はなさそうだと思ったが、意図が読めないので不安ばかりが募っていく。
「ちょっとだけ、時間いいかな?」と言われ、連れてこられたのは校舎裏。普段、あまり人が寄り付かない場所だった。
記憶の引き出しをひっくり返して、候補の名前を探している僕に、彼女は山本と名乗った。
「ああ、隣のクラスの」
幸いにも、予測はある程度当たった。けど、続いた言葉は予想外だった。
「ずっと前から好きだったの。付き合ってくれないかな?」
何故僕に? と驚くと同時に思った。もしかすると彼女は、たびたび僕の方を見ていたのかもしれない。
しかし女の子から向けられる視線に疎い僕は──木下くらいの熱視線ならまだしも──気付く可能性は薄いわけで。
結局、「ごめん」と頭を下げるほかなかった。
君の顔が見えないし、僕は水瀬のことが好きだから、とまでは言えるはずもなかったが。
かつて夢に見ていたかもしれない女の子からの告白だったが、それはただ、つまらないだけのイベントだった。
だが本当の問題は翌朝に起こった。
生徒用玄関をくぐり内履きに履き替えていたとき、僕は下足入れを挟んだ向こう側で囁かれる女子生徒二人の会話を耳にする。
「ねえ、聞いた? B組のクラスアートの話」
よく通る声で、一人の女子が言う。
「あ~、例の女のクラスね。なんか、凄いの描いてるみたいね」
もう一人が気の無い声で返す。
「それなんだけどさ~」とここで通る声の女子が、潜めた声で続けた。「描いてる作品がさ、夜にだけ香る花、なんだって」
「夜に香るって、何それ意味深……。つか、なんかやらしい」
「でしょ? でしょ?」
「ちょっと顔がいいと思ってさあ、調子に乗ってんじゃないの?」
「だよね? 私が聞いた噂じゃ、あの女の方から描きたいって申し出た題材らしいよ?」
「夜に香る花、ねぇ。引くわ」
「あの陰キャ。いつも澄ました顔してるけど、裏では男に色目使ってるんだよきっと」
「あははっ、マジウケるんだけど。あんなネクラ、誰も相手にしねえっつうの」
「そう言えばさあ、昨日告ったってマジ?」
「ああ、あの女が色目使ってる相手にね。マジの告白だと勘違いしたのか、緊張した顔しやがってさあ」
「へー。そんで?」
「ごめん、だって。何様のつもりだよ。マジ笑える」
キャハハという乾いた笑い声が、昇降口に複数響く。
下足入れの扉を閉める手に、力がこもりそうになるのを既の所でぐっと抑えた。そのうちの一人が、昨日の山本さんであるのは直ぐにわかった。同時に、誰の悪口なのかも。
──水瀬のこと、なんにも知らない癖に。
教室に向かう途中も足が震えていた。
大人しい性格である僕や水瀬に対する陰口は、中学に入ってからも何度か耳にしていた。これまでは些細なことだと僕も聞き流してきた。
だけど、今回ばかりは腹の虫がおさまらない。
僕の感情を踏みにじった山本さんの行為に腹が立ったのも事実だが、なによりクラスアートと水瀬のことをバカにされたのが許せない。
ただの悪口だ、と何度自分に言い聞かせても怒りの感情は引くことを知らず、そんな自分にまた苛々してしまうという悪循環。
教室に入り苛立ち混じりに鞄を机の上に叩き付けると、乱暴に椅子を引いて腰を下ろした。
とたんに流れてくる教室中の視線。幾らなんでもやりすぎたかと後悔する僕に、木下が声をかけてきた。
「……ちょっと、何に怒ってんのよ」
心配しているのだろう、こちらを覗き込んでくる木下。それなのに、
「大丈夫だよ怒ってなんかない。僕はいたって冷静だ!」
なんて怒鳴ってしまう僕。これっぽっちも冷静じゃなかった。
今は何を言っても聞き入れないと思ったのか、一旦引き下がっていった木下と入れ替わりに徹と稔が声がけをしてくるが、終始僕は気の無い返事を繰り返した。
放課後になりクラスアートの作業に入っても、依然として僕は上の空。「ここの構図どうだろう」と稔が訊ねてきても、「それでいいんじゃね?」とやはり気の無い返事をしてしまう。
「今日の翔は使い物にならん」
稔にも匙を投げられる始末。気持ちを上手く切り替えられない自分が情けない。
木下が何度かこちらを見ているのも、ちらちらと水瀬までもが様子を窺っているのも気付いてた。それなのに、僕の頭には気の利いた台詞はなにひとつ浮かばなくて。最後まで、水瀬と目を合わせることすらできなかった。
作業を終え学校を出ると、宵闇迫る空を見上げて僕は思う。
何をしているんだろうか、僕は。
どうしてこんなに苛立っているんだろうか、僕は。
本当に辛いのも、怒るべきなのも水瀬の方なのに。なぜ僕がこんなに苛立ち傷ついた気持ちになっているのか。こんな感情、何一つ水瀬の助けになんてならないのに。
こんなことではダメだ……気持ちを静めないと。これでは逆に、水瀬に気遣いをさせてしまう。僕が苛立っている理由を、彼女に悟られてしまうじゃないか、と不甲斐ない自分を戒め、夜更けと共に布団に潜りこんだ。
そして、翌日──。水瀬茉莉は、学校を休んだ。
二日目になると役割分担が各々明白になってきたことで、前日よりも作業が捗っていた。
構図の下書きから下地塗りのところまでは、画力の高い稔と木下の担当だ。彼らが描いた輪郭線に丁寧に色を重ねて、より力強い線と色彩に変えていくのが水瀬の役割。ともすると、二対一なので水瀬の作業が追いつかないように思えるが、彼女は兎角筆が早い。早いだけではなく、技術面でもしっかりしている。ペン画やラフ画からでも実力がうかがえる水瀬だったが、本気で色を塗っていく様はもはや圧巻。
一度色を塗った後で、筆を交換して更に別の色を載せていく。多めに盛った油絵の具を指先で慎重に引きながら、繊細なボカシを表現していく。複数の色を載せ、巧みに組み合わせ、題材となった写真の雰囲気にどんどん寄せていく。
徹は、油壺や筆の掃除。画材の移動や整理など、雑務全般をこなしていた。
一方で僕はというと……題材に選定した写真を大きく引き伸ばした後は、目立った仕事をしていない。いや、マジで。情けない話ではあるが、自分が一番戦力外なのは明々白々。
「ん~……」
悩んだ末に、作業を担当している三人より離れた視点から全体の構図を確認し、題材にした写真と対比させて指示を出していく任を申し出る。そこはもっと色を濃く。その部分は草地をもっと広く描いて、等々、アドバイスを出し続けた。
「考えたものだな」
という稔のいつもの皮肉に、苦い顔で親指を立てた。
そのうちに、キャンバスを立てたままでは描きづらい部分が出始める。段々と、床に置いての作業が増えていった。
頬のあたりに落ちた長い髪を左手で押さえ、水瀬が筆を走らせる。美しくも凛々しい彼女の横顔に見惚れていると、徹にわき腹を小突かれた。
なんだよ、と顔を向けると、彼はにやけた笑みをうかべている。なんてことだ。稔のみならず徹にまで僕の感情は筒抜けなのか。顔が赤くなってないかと心配しつつ抗議しようとしたその時、徹の肩越しにこちらを睨む木下の目が見えた。熱を帯び始めた頬が、急速に冷え込んでいく。
──殺される。
水瀬の方を見過ぎないようにしよう。このままでは、命が幾らあっても足りやしない。
それでも、すぐ視線は水瀬の方に引き寄せられる。彼女の顔は真剣そのもので、瞳には何かをやり遂げようとする強い意志の光が宿っていた。今までとは一風違った彼女の魅力に気づかされ、僕は益々水瀬が好きだと自覚してしまう。
「翔、細めの筆」
「はい」
突然かけられた声に、踵が浮いて背筋が伸びる。
「なんで敬語なんだよ、気持ち悪い」
ぼんやりしていた僕に稔が苦笑いをし、水瀬がきょとんとした顔で首を傾げた。
制作開始から約一ヶ月が経過し、七月も初旬。クラスアートの完成度はおよそ五割に達していた。
この段階に至ると、水瀬の色使いがいかに見事であるのか、明白な成果となって現れていた。離れた視点からキャンバスの全景に目を向けると、これは写真なのではないかと見紛うレベル。
「写真レベル? そいつは流石に褒めすぎだ」
僕の顔を見て肩をすくめた稔だったが、そんな彼とて上機嫌だ。稔なりに確かな手ごたえがあるのだろう。ここ最近、やたらと笑みが零れている。
なんだか薄気味悪いな、というのは徹の弁。
そいつは流石に失礼だ、と苦笑いをする僕も、彼にしちゃ珍しい反応だと内心で思う。
いったいどこから噂が広がったのか、次第に、他クラスの生徒が入れ替わり立ち代り見学に訪れるようになった。感嘆の声を漏らす見学者らの姿を見て、稔の鼻は高くなるばかりだった。
そう、全ては順調だった。
順調な──はずだった。
最初の綻びが見えたのは、クラスアートの作業を早めに切り上げ帰途についた日のこと。校門を出たところで、真横から声をかけられる。
「早坂くん」と。
立っていたのは一人の女子生徒。
校章から、同じ二年生だと直ぐにわかった。
だがわからないのは、彼女の表情と名前。
悪意はなさそうだと思ったが、意図が読めないので不安ばかりが募っていく。
「ちょっとだけ、時間いいかな?」と言われ、連れてこられたのは校舎裏。普段、あまり人が寄り付かない場所だった。
記憶の引き出しをひっくり返して、候補の名前を探している僕に、彼女は山本と名乗った。
「ああ、隣のクラスの」
幸いにも、予測はある程度当たった。けど、続いた言葉は予想外だった。
「ずっと前から好きだったの。付き合ってくれないかな?」
何故僕に? と驚くと同時に思った。もしかすると彼女は、たびたび僕の方を見ていたのかもしれない。
しかし女の子から向けられる視線に疎い僕は──木下くらいの熱視線ならまだしも──気付く可能性は薄いわけで。
結局、「ごめん」と頭を下げるほかなかった。
君の顔が見えないし、僕は水瀬のことが好きだから、とまでは言えるはずもなかったが。
かつて夢に見ていたかもしれない女の子からの告白だったが、それはただ、つまらないだけのイベントだった。
だが本当の問題は翌朝に起こった。
生徒用玄関をくぐり内履きに履き替えていたとき、僕は下足入れを挟んだ向こう側で囁かれる女子生徒二人の会話を耳にする。
「ねえ、聞いた? B組のクラスアートの話」
よく通る声で、一人の女子が言う。
「あ~、例の女のクラスね。なんか、凄いの描いてるみたいね」
もう一人が気の無い声で返す。
「それなんだけどさ~」とここで通る声の女子が、潜めた声で続けた。「描いてる作品がさ、夜にだけ香る花、なんだって」
「夜に香るって、何それ意味深……。つか、なんかやらしい」
「でしょ? でしょ?」
「ちょっと顔がいいと思ってさあ、調子に乗ってんじゃないの?」
「だよね? 私が聞いた噂じゃ、あの女の方から描きたいって申し出た題材らしいよ?」
「夜に香る花、ねぇ。引くわ」
「あの陰キャ。いつも澄ました顔してるけど、裏では男に色目使ってるんだよきっと」
「あははっ、マジウケるんだけど。あんなネクラ、誰も相手にしねえっつうの」
「そう言えばさあ、昨日告ったってマジ?」
「ああ、あの女が色目使ってる相手にね。マジの告白だと勘違いしたのか、緊張した顔しやがってさあ」
「へー。そんで?」
「ごめん、だって。何様のつもりだよ。マジ笑える」
キャハハという乾いた笑い声が、昇降口に複数響く。
下足入れの扉を閉める手に、力がこもりそうになるのを既の所でぐっと抑えた。そのうちの一人が、昨日の山本さんであるのは直ぐにわかった。同時に、誰の悪口なのかも。
──水瀬のこと、なんにも知らない癖に。
教室に向かう途中も足が震えていた。
大人しい性格である僕や水瀬に対する陰口は、中学に入ってからも何度か耳にしていた。これまでは些細なことだと僕も聞き流してきた。
だけど、今回ばかりは腹の虫がおさまらない。
僕の感情を踏みにじった山本さんの行為に腹が立ったのも事実だが、なによりクラスアートと水瀬のことをバカにされたのが許せない。
ただの悪口だ、と何度自分に言い聞かせても怒りの感情は引くことを知らず、そんな自分にまた苛々してしまうという悪循環。
教室に入り苛立ち混じりに鞄を机の上に叩き付けると、乱暴に椅子を引いて腰を下ろした。
とたんに流れてくる教室中の視線。幾らなんでもやりすぎたかと後悔する僕に、木下が声をかけてきた。
「……ちょっと、何に怒ってんのよ」
心配しているのだろう、こちらを覗き込んでくる木下。それなのに、
「大丈夫だよ怒ってなんかない。僕はいたって冷静だ!」
なんて怒鳴ってしまう僕。これっぽっちも冷静じゃなかった。
今は何を言っても聞き入れないと思ったのか、一旦引き下がっていった木下と入れ替わりに徹と稔が声がけをしてくるが、終始僕は気の無い返事を繰り返した。
放課後になりクラスアートの作業に入っても、依然として僕は上の空。「ここの構図どうだろう」と稔が訊ねてきても、「それでいいんじゃね?」とやはり気の無い返事をしてしまう。
「今日の翔は使い物にならん」
稔にも匙を投げられる始末。気持ちを上手く切り替えられない自分が情けない。
木下が何度かこちらを見ているのも、ちらちらと水瀬までもが様子を窺っているのも気付いてた。それなのに、僕の頭には気の利いた台詞はなにひとつ浮かばなくて。最後まで、水瀬と目を合わせることすらできなかった。
作業を終え学校を出ると、宵闇迫る空を見上げて僕は思う。
何をしているんだろうか、僕は。
どうしてこんなに苛立っているんだろうか、僕は。
本当に辛いのも、怒るべきなのも水瀬の方なのに。なぜ僕がこんなに苛立ち傷ついた気持ちになっているのか。こんな感情、何一つ水瀬の助けになんてならないのに。
こんなことではダメだ……気持ちを静めないと。これでは逆に、水瀬に気遣いをさせてしまう。僕が苛立っている理由を、彼女に悟られてしまうじゃないか、と不甲斐ない自分を戒め、夜更けと共に布団に潜りこんだ。
そして、翌日──。水瀬茉莉は、学校を休んだ。
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