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第四章「月が綺麗な夜だから」
【夏南。再び】
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「……とんだ甘ちゃんだな。こんな茶番にひっかかるなんて。元極道の女が聞いて呆れる。カタギになって、いろいろ鈍っちまったんじゃないのか?」
傷を負った脇腹を抑えながら、男が銃を構えていた。
騙し打ちとは卑怯な奴だ。銃を持っている可能性に、もっと早く気づけていればと悔やまれる。
「貴様……! 迂闊だったね。私としたことが」
首だけを回して男を睨み、母が悪態をつく。僕の体にしがみついていた母の手から、力が抜ける。ごろりと仰向けになると、苦しそうな息遣いをしながら「はっ、はあっ……」と呻きを漏らした。
背中側から、着ているブラウスの表面がじわじわと赤黒く染まっていく。出血がかなりひどい。このままでは母さんは助からない……!
「光莉」
「う、うん」
救急車呼んでくれないか、と本当は言いたかった。だが、「おっと、動くんじゃねえぞ」と男に銃を向けられては、黙るほかない。やはりそこまで甘くはないか。
「救急車も、警察も、呼ばせるわけにゃいかないんだよ。こちとらもう、後戻りはできないんでね。……なあに、素直に言うことを聞けば、命だけは助けてやる」
どうだかね。表情を崩さずに、思考だけを働かせて対策を練る。
いま、男らに視認されているのは、僕、真人、光莉の三人だ。物陰に隠れている涼子が電話のある場所まで行ければ。そう思ったのも束の間。「おい、出てこい四人目」と男が叫んだことで、描いていた青写真は脆くも崩れた。
「髪の長い女がもう一人いるよな? 出てこい。出てこなかったら、この二人を今すぐ殺す」
これには歯噛みしてしまう。やはり、人数を把握されていたのか。
どうしよう、と光莉が視線を泳がせる。観念したように涼子が建物の陰から姿を現した。
「よーし。いい子だ」
男が舌なめずりをする。僕らの命運は、完全に向こうの手の内だ。
頼みの綱である母も身じろぎするのが精一杯だし、全員が姿を晒してしまった以上、こっちにはもう切れるカードがない。
――万事休す。
絶望が頭を支配したその時、ここまで黙り込んでいた真人が口を開いた。
「これで打つ手なしとでも思ったか?」
「なに?」
「これで勝ったとでも思ったか?」
「さっきからなんだ。頭がオカしくなって自棄でも起こしたか?」
気がつくと、倒れていた他の男三人も立ち上がっていた。状況がさらに悪化しているのに、いったいぜんたい真人はどうする気だ?
「俺たちはなあ、全部で五人いるんだぜ? お前らが一人ずつ止めたとしても、最後の一人が電話のある場所までたどり着く、かもよ?」
これは無論ハッタリだ。しかし、逸らされることのない真人の瞳と気迫に、男の表情が風に煽られた水面のごとく揺れる。
「はあ? お前、今の状況がわかってんのか? 人数が多いといっても、一人は虫の息じゃねぇか。そもそも、テメエみたいなガキにいったい何ができる?」
「ああ、たいしたことはできないだろうな。けど、足掻くくらいのことはできる……ぜッ!!」
「おい、よせ!」
真人の覚悟を察して制止の声を上げるのと、真人の右手が一閃されるのは同時だった。
いつの間に握っていたのか。真人の手から放たれた砂が銃を持った男の顔を襲う。手をかざし、男が一瞬目を閉じた。
「このガキ!」
「おおお!」
隙を逃さず、雄たけびを上げて真人が突進する。
距離はおおよそ五メートル。
タックルを決め、銃を奪うことができればあるいは、という状況だが、直後に響いた銃声が僕らの希望を打ち砕く。
「ぐあっ……!」
当てずっぽうに撃った弾は、しかし、真人の太ももに命中した。真人が男の前で激しく転倒する。運まで僕らの味方をしてくれない。神様がいないとこんなものか。
「おい、手筈と違うだろ!」と別の男が叫んだ。手筈ときたもんだ。語るに落ちるとはこのことだな。
ところが、銃を構えた男の視線は、僕を素通りして背後に向けられていた。
疑心を感じて振り向くと、建物の裏口を目指して駆けだす光莉の背中が見えた。
「あの女!」
男が銃を構える。
ダメだ。光莉が死角に入るまで間に合わない。そう悟った瞬間、弾かれるように僕の体が動いた。
光莉を庇うため射線に躍り出ると同時に、『パン』という乾いた銃声が鼓膜を叩いた。
銃口から発射された鉛玉が迫って来る様子が、不思議なほどスローモーションに見えた。
ああ、僕死ぬんだな、と走馬灯を見かけたその時、鉛玉が空中で静止する。
いや、止まっているのは、拳銃の弾だけじゃなかった。
まるで時間が凍り付いたみたい――。
この感覚に、ひどく心当たりがあった。
直後。ふわりと眼前に舞い降りてきたのは赤い巫女装束の少女。
濡れ羽色の髪がひるがえって、夏南は僕の顔を真っすぐ見た。
「夏南!」
ギリギリのタイミングで時間を止めたのは、約一日ぶりに姿を現した『神』だった。
「お前が時間を止めてくれたのか?」
「うん。ですが、ついにその時が来たのです。これで、チェックメイト」
「……そりゃまた、どういう意味だよ?」
夏南の声が極端に沈んでいることに、強い違和感を覚える。
「夏南! お前どこ行ってたんだよ。散々心配させやがって」
顔だけを上げて――というか、時間が止まっているので動けないのだが――真人が夏南に声をかけた。
「ほんとよ、いったいどこに行ってたの?」と涼子の声も響く。というか。
「涼子。お前、夏南の姿が見えるのか?」
「あれ、ほんとだ。イチと夏南さんが手を繋いでいないのに、どうして見えるのかな?」
「簡単な理屈だよ。ボクが神としての力を失い始めたことで、神と人との境目が不明瞭になっている。そのため、都と縁の強い人物から、ボクの姿が見えるようになっているのさ」
「待ってくれ」と僕は夏南に問い返した。「どうして、夏南が神の力を失うんだよ。根本から話が見えない。……それと、なぜ僕は動くことができない? いつもなら、時間が止まっている中でも僕だけは動けたのに」
「は? 都、お前時間が止まってる中でも動けるのかよ? そっちのほうが俺には意味不明なんだけど」
真人の問いに、「動ける」と僕は返した。
「なんでだ? って聞かれても、正直答えようがないんだけどな」
「いま動けないのは、君の運命が確定したからだよ。決まった運命からは逃れられない。変えられるとしたら、干渉できる第三者のみ。……まあ、そもそもの話。君が動けたという『これまで』のほうがおかしいんだ」
「と、いうと?」
「あれはね。君の存在そのものが、ボクに近いからなんだ」
「夏南に近い……?」
どういうことだ、と首を傾げた僕の頭の中で、三つの単語が並んで浮かんだ。
『誰かに肩入れをしてはいけない』
『枯れ始めた悠久の木』
『チェックメイト』
「そういう、ことなのか?」
点在していた情報が、段々線となって繋がり始める。
この推論が間違っていなければ、ここで消えるべきなのは僕だ。
それこそが、一度死んだ人間がたどる末路として本来正しい。
「なあ、夏南。俺が銃弾を逸らしてくれ、と願ったら、それは叶うか?」と真人が言った。
「叶う」
「なら」と言いかけた真人を、「その必要はない」と遮った。
「どのみち、僕は消える運命なんだよ。そうだろう? 夏南?」
唇をかみしめて夏南が頷いた。後悔が滲んだその顔に、予測は正しいんだと確信する。
「どうしてだよ? なんで二人して諦めようとしてんだよ!」
真人の声が、苛立ち含みになる。
「この場所に来るまでの道中、この中に、死んだあとなんらかの力で復活し、紛れ込んだ人物がいるんじゃないかとずっと疑ってきた」
全員が、薄々そう感じていたのだろう。息を呑む音が人数分聞こえた。
「そしてそれは、光莉なんじゃないかとすら、思っていたんだ」
「……!」
時間が止まっている中でさえ、光莉の表情が固くなったのがわかる。
「でも、そうじゃなかったんだな。それってさ、僕だったんだな。この世界に紛れ込んだ異物である僕が死に瀕した今、奇跡が終わってすべてが元通りになるときがきたのさ」
眼前に浮かんでいる鉛玉を、真っすぐ指さした。夏南は何も答えない。
「夏南に会えたら、今度こそ聞こうって覚悟を決めていたんだ。なあ、教えてくれ! 光莉がこの山に向かった六月のあの日、いったい何があったんだ?」
「私が、山に向かった? なんの、はなし?」
素っ頓狂な声を光莉が上げて、「そうだね」と夏南が伏し目がちに呟いた。
「ここで僕の願いを叶えてくれ! 真実を、教えてくれ!」
「そこまでわかっているのなら、ここで願い事を使うまでもないよ。いい加減に語ってあげよう。これからボクがする話で、すべての謎が解けるはず」
夏南の顔に憂愁の影が差す。顔をこちらに向けて、「――あの日」と続けた。
「光莉は確かに時越山を目指していた。そんな彼女には、一人だけ同行者がいたんだ」
「都、君だ」の声に涼子が瞳をまんまるくし、光莉が慄いた声を上げた。
「あ、ああ……。思い出した。どうして私、あの日のことを忘れていたんだろう」――と。
傷を負った脇腹を抑えながら、男が銃を構えていた。
騙し打ちとは卑怯な奴だ。銃を持っている可能性に、もっと早く気づけていればと悔やまれる。
「貴様……! 迂闊だったね。私としたことが」
首だけを回して男を睨み、母が悪態をつく。僕の体にしがみついていた母の手から、力が抜ける。ごろりと仰向けになると、苦しそうな息遣いをしながら「はっ、はあっ……」と呻きを漏らした。
背中側から、着ているブラウスの表面がじわじわと赤黒く染まっていく。出血がかなりひどい。このままでは母さんは助からない……!
「光莉」
「う、うん」
救急車呼んでくれないか、と本当は言いたかった。だが、「おっと、動くんじゃねえぞ」と男に銃を向けられては、黙るほかない。やはりそこまで甘くはないか。
「救急車も、警察も、呼ばせるわけにゃいかないんだよ。こちとらもう、後戻りはできないんでね。……なあに、素直に言うことを聞けば、命だけは助けてやる」
どうだかね。表情を崩さずに、思考だけを働かせて対策を練る。
いま、男らに視認されているのは、僕、真人、光莉の三人だ。物陰に隠れている涼子が電話のある場所まで行ければ。そう思ったのも束の間。「おい、出てこい四人目」と男が叫んだことで、描いていた青写真は脆くも崩れた。
「髪の長い女がもう一人いるよな? 出てこい。出てこなかったら、この二人を今すぐ殺す」
これには歯噛みしてしまう。やはり、人数を把握されていたのか。
どうしよう、と光莉が視線を泳がせる。観念したように涼子が建物の陰から姿を現した。
「よーし。いい子だ」
男が舌なめずりをする。僕らの命運は、完全に向こうの手の内だ。
頼みの綱である母も身じろぎするのが精一杯だし、全員が姿を晒してしまった以上、こっちにはもう切れるカードがない。
――万事休す。
絶望が頭を支配したその時、ここまで黙り込んでいた真人が口を開いた。
「これで打つ手なしとでも思ったか?」
「なに?」
「これで勝ったとでも思ったか?」
「さっきからなんだ。頭がオカしくなって自棄でも起こしたか?」
気がつくと、倒れていた他の男三人も立ち上がっていた。状況がさらに悪化しているのに、いったいぜんたい真人はどうする気だ?
「俺たちはなあ、全部で五人いるんだぜ? お前らが一人ずつ止めたとしても、最後の一人が電話のある場所までたどり着く、かもよ?」
これは無論ハッタリだ。しかし、逸らされることのない真人の瞳と気迫に、男の表情が風に煽られた水面のごとく揺れる。
「はあ? お前、今の状況がわかってんのか? 人数が多いといっても、一人は虫の息じゃねぇか。そもそも、テメエみたいなガキにいったい何ができる?」
「ああ、たいしたことはできないだろうな。けど、足掻くくらいのことはできる……ぜッ!!」
「おい、よせ!」
真人の覚悟を察して制止の声を上げるのと、真人の右手が一閃されるのは同時だった。
いつの間に握っていたのか。真人の手から放たれた砂が銃を持った男の顔を襲う。手をかざし、男が一瞬目を閉じた。
「このガキ!」
「おおお!」
隙を逃さず、雄たけびを上げて真人が突進する。
距離はおおよそ五メートル。
タックルを決め、銃を奪うことができればあるいは、という状況だが、直後に響いた銃声が僕らの希望を打ち砕く。
「ぐあっ……!」
当てずっぽうに撃った弾は、しかし、真人の太ももに命中した。真人が男の前で激しく転倒する。運まで僕らの味方をしてくれない。神様がいないとこんなものか。
「おい、手筈と違うだろ!」と別の男が叫んだ。手筈ときたもんだ。語るに落ちるとはこのことだな。
ところが、銃を構えた男の視線は、僕を素通りして背後に向けられていた。
疑心を感じて振り向くと、建物の裏口を目指して駆けだす光莉の背中が見えた。
「あの女!」
男が銃を構える。
ダメだ。光莉が死角に入るまで間に合わない。そう悟った瞬間、弾かれるように僕の体が動いた。
光莉を庇うため射線に躍り出ると同時に、『パン』という乾いた銃声が鼓膜を叩いた。
銃口から発射された鉛玉が迫って来る様子が、不思議なほどスローモーションに見えた。
ああ、僕死ぬんだな、と走馬灯を見かけたその時、鉛玉が空中で静止する。
いや、止まっているのは、拳銃の弾だけじゃなかった。
まるで時間が凍り付いたみたい――。
この感覚に、ひどく心当たりがあった。
直後。ふわりと眼前に舞い降りてきたのは赤い巫女装束の少女。
濡れ羽色の髪がひるがえって、夏南は僕の顔を真っすぐ見た。
「夏南!」
ギリギリのタイミングで時間を止めたのは、約一日ぶりに姿を現した『神』だった。
「お前が時間を止めてくれたのか?」
「うん。ですが、ついにその時が来たのです。これで、チェックメイト」
「……そりゃまた、どういう意味だよ?」
夏南の声が極端に沈んでいることに、強い違和感を覚える。
「夏南! お前どこ行ってたんだよ。散々心配させやがって」
顔だけを上げて――というか、時間が止まっているので動けないのだが――真人が夏南に声をかけた。
「ほんとよ、いったいどこに行ってたの?」と涼子の声も響く。というか。
「涼子。お前、夏南の姿が見えるのか?」
「あれ、ほんとだ。イチと夏南さんが手を繋いでいないのに、どうして見えるのかな?」
「簡単な理屈だよ。ボクが神としての力を失い始めたことで、神と人との境目が不明瞭になっている。そのため、都と縁の強い人物から、ボクの姿が見えるようになっているのさ」
「待ってくれ」と僕は夏南に問い返した。「どうして、夏南が神の力を失うんだよ。根本から話が見えない。……それと、なぜ僕は動くことができない? いつもなら、時間が止まっている中でも僕だけは動けたのに」
「は? 都、お前時間が止まってる中でも動けるのかよ? そっちのほうが俺には意味不明なんだけど」
真人の問いに、「動ける」と僕は返した。
「なんでだ? って聞かれても、正直答えようがないんだけどな」
「いま動けないのは、君の運命が確定したからだよ。決まった運命からは逃れられない。変えられるとしたら、干渉できる第三者のみ。……まあ、そもそもの話。君が動けたという『これまで』のほうがおかしいんだ」
「と、いうと?」
「あれはね。君の存在そのものが、ボクに近いからなんだ」
「夏南に近い……?」
どういうことだ、と首を傾げた僕の頭の中で、三つの単語が並んで浮かんだ。
『誰かに肩入れをしてはいけない』
『枯れ始めた悠久の木』
『チェックメイト』
「そういう、ことなのか?」
点在していた情報が、段々線となって繋がり始める。
この推論が間違っていなければ、ここで消えるべきなのは僕だ。
それこそが、一度死んだ人間がたどる末路として本来正しい。
「なあ、夏南。俺が銃弾を逸らしてくれ、と願ったら、それは叶うか?」と真人が言った。
「叶う」
「なら」と言いかけた真人を、「その必要はない」と遮った。
「どのみち、僕は消える運命なんだよ。そうだろう? 夏南?」
唇をかみしめて夏南が頷いた。後悔が滲んだその顔に、予測は正しいんだと確信する。
「どうしてだよ? なんで二人して諦めようとしてんだよ!」
真人の声が、苛立ち含みになる。
「この場所に来るまでの道中、この中に、死んだあとなんらかの力で復活し、紛れ込んだ人物がいるんじゃないかとずっと疑ってきた」
全員が、薄々そう感じていたのだろう。息を呑む音が人数分聞こえた。
「そしてそれは、光莉なんじゃないかとすら、思っていたんだ」
「……!」
時間が止まっている中でさえ、光莉の表情が固くなったのがわかる。
「でも、そうじゃなかったんだな。それってさ、僕だったんだな。この世界に紛れ込んだ異物である僕が死に瀕した今、奇跡が終わってすべてが元通りになるときがきたのさ」
眼前に浮かんでいる鉛玉を、真っすぐ指さした。夏南は何も答えない。
「夏南に会えたら、今度こそ聞こうって覚悟を決めていたんだ。なあ、教えてくれ! 光莉がこの山に向かった六月のあの日、いったい何があったんだ?」
「私が、山に向かった? なんの、はなし?」
素っ頓狂な声を光莉が上げて、「そうだね」と夏南が伏し目がちに呟いた。
「ここで僕の願いを叶えてくれ! 真実を、教えてくれ!」
「そこまでわかっているのなら、ここで願い事を使うまでもないよ。いい加減に語ってあげよう。これからボクがする話で、すべての謎が解けるはず」
夏南の顔に憂愁の影が差す。顔をこちらに向けて、「――あの日」と続けた。
「光莉は確かに時越山を目指していた。そんな彼女には、一人だけ同行者がいたんだ」
「都、君だ」の声に涼子が瞳をまんまるくし、光莉が慄いた声を上げた。
「あ、ああ……。思い出した。どうして私、あの日のことを忘れていたんだろう」――と。
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