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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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「舞助兄上、修助兄上、無事ですか」

 僕は煙を吸わないようにしながら、なるべく後ろへ下がった。長兄と次兄も同じように後退りしていた。

 その後は、火事だと勘違いして消防団が駆け付けたり、僕らが煙を起こしたと誤解され警察から叱られたり、多くの船の出航が遅れて船員達から白い目で見られたり、散々だった。

 しかも、沖塩伊太夫と思われる遺体が海に浮いていた。

 遺体は船員姿で、持ち物も少なかったが、今度は顔のある遺体なので身元確認が出来た。本物の置塩氏だ。

 バラバラ死体を見た後だったので、水死体を見てもあまり恐いとは思わなかった。大事な感覚が麻痺している。

「そういえば」

 港の喧騒の中央。僕ら兄弟は立って待機していた。佐藤警部補を待っているのだがなかなか来ない。そんな時、僕はどうしても兄達に聞きたくなった。

「兄上達、いつからいたのですか」

「お前と鵶が長話してたやつの事か?」

 次兄は面倒臭そうに聞き返して来た。

「お前が、正義を否定するとか言う、少し前から」

「忘れて下さい。何故あんな恥ずかしい事言ってしまったのだろう……」

「お年頃だから仕方ねぇよ」

 ゲラゲラ笑う次兄。

 長兄も笑いを堪えている。

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