探偵三兄弟の帝都事件簿

ヲダツバサ

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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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「弦助さん。忘れませんよ。お名前もお顔も。今日はお騒がせしましたね。恐縮ですが、これで失礼致します」

「逃げる気か」

「いえ。戦う気です」

 鵶が突然、僕らの足元に幾つか筒のような物を投げた。それらからモクモクと白い煙が上がり、辺りは一面深い霧のようになり見えなくなってしまった。

 体に害のある煙では無さそうだが、これでは迂闊に動けない。

 鵶がどこからか攻撃してくるかもしれないと、警戒していたが、

「戦うと言っても、肉弾戦ではなく頭脳戦で」

 鵶の声が遠ざかって行く。

「鵶!」

「次の事件で、また楽しませて下さい」

「待て……」

「サヨナラ」

 去る姿を見た訳ではないが、鵶は消えてしまった。気配が無くなった。
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