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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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「ところで、鵶が舞助兄上を狙っているのは本当ですか?」

 鈴木巡査は重々しく頷いた。

「倉橋探偵は強進派でも何でもありませんが、鵶から邪魔者と思われているようです。度々危険な目に遭っています。殺そうとまでは思われてないようですが」

「兄上はどうして、そこまでして鵶を……」

「何か理由があるようです。修助さんも」

「兄上達なら、さっさと捕まえられそうなのに。そんなに手がかりが無いのですか?」

「男で、年寄りではないだろう、というぐらいですね」

「人類の半分以下まで絞れました」

「倉橋探偵によると、変装が得意だそうです。そうやって姿を変えながら強進派やその周囲の人々に近付く。厄介な奴ですよ」

 執念を感じた。

 鵶の歪んだ正義感。きっと奴は、沖塩氏と共に海の向こうに逃げたりしないだろう。

 それどころか横浜港で、事の結末を見届けようとしているかもしれない。

 長兄の忠告が頭の中で木霊した。

 僕は無事に帰って来れるのだろうか。

 そして僕らを乗せた列車は帝都から遠ざかり、横浜へと到着したのだった。



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