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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件

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 考えあぐねる僕の横で、鈴木巡査が「あっ」と声を上げた。

「船に乗って逃げるつもりですね!」

 その一言で僕の頭脳も答えを導き出した。

「そうか。たしか沖塩氏は外交関係の政治家。外国にツテがあるのですね」

「弟よ。その通りだ。沖塩氏は船に乗って外国へ逃げるつもりだ」

 なんて事だ。犯罪が起きたのは昨日の夜なのだから、もうとっくに逃げられているのでは……?

 焦る僕に、鈴木巡査が声をかけてきた。

「落ち着いて下さい」

「そう言われても……」

「船は夜に出航しません。客船なら尚更。なので、沖塩氏は朝まで待ったはず。さらに自分の企みが上手く行ったか、様子を見ていた時間もあるでしょう。分かりますか? まだ国内にいる可能性があるのです。それに客船は予定より遅れて出航するものです。手続きに時間がかかりますから」

「では、まだ港にいるかもしれないのですか?」

「運が良ければ」

 だから次兄だけならず佐藤警部補まで自ら向かったのか。

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