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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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「弦助。先入観が邪魔しているよ。小波津くんの話で沖塩氏が良い人だと思い込んでいる。言っただろ。氏は善人ではないかもしれない、と」
「まさか……」
「沖塩氏は犯罪の片棒を担いだ。実行犯は、おそらく鵶。被害者は役者の世界に興味があった、しがない一般市民だよ。可哀想に、彼は殺されてしまった。氏の死体と見せかけるために」
あまりの衝撃的な推理に、時が止まったかのように動けなかった。
信じられなかった。こんな非現実的な犯罪をやってのける人間がいるだなんて。しかも政治高官がその片棒を担ぐだなんて。
しかし、辻褄は合う。
遺体は何故裸で、バラバラにされ、首が無かったのか。顔だけは似てなかったからだ、沖塩氏と。服は身分や身元を隠すため破棄。バラバラにしたのは、意図的に首を隠した事を気付かれないようにするため。
沖塩氏の身分証は、沖塩氏自身が置いたのだ。何の手がかりも無い状態で、遺体の側にそれがあったら、身分証は被害者の物かもと思い込む。
被疑者となった小波津、中嶋、大串に、沖塩氏を殺す動機が無いのは当たり前だ。そもそも氏は殺されていないのだから。別の人間が殺されたのだから。
長兄は、遺体の胃に疾患があったと聞いた時に気付いたのだ。遺体は沖塩氏と別人だ、と。氏に病気は無かったのだから。
「兄上。お見事です。ですが……」
「そうだね。言いたい事は分かる。沖塩氏が死んでいないのなら、生きている事になる」
「では、沖塩氏は、今どこにいるのですか?」
「おそらく、横浜港」
「港?」
混乱した。何故港へ向かったのだ?
そういえば次兄と佐藤警部補も横浜へ向かった。
「まさか……」
「沖塩氏は犯罪の片棒を担いだ。実行犯は、おそらく鵶。被害者は役者の世界に興味があった、しがない一般市民だよ。可哀想に、彼は殺されてしまった。氏の死体と見せかけるために」
あまりの衝撃的な推理に、時が止まったかのように動けなかった。
信じられなかった。こんな非現実的な犯罪をやってのける人間がいるだなんて。しかも政治高官がその片棒を担ぐだなんて。
しかし、辻褄は合う。
遺体は何故裸で、バラバラにされ、首が無かったのか。顔だけは似てなかったからだ、沖塩氏と。服は身分や身元を隠すため破棄。バラバラにしたのは、意図的に首を隠した事を気付かれないようにするため。
沖塩氏の身分証は、沖塩氏自身が置いたのだ。何の手がかりも無い状態で、遺体の側にそれがあったら、身分証は被害者の物かもと思い込む。
被疑者となった小波津、中嶋、大串に、沖塩氏を殺す動機が無いのは当たり前だ。そもそも氏は殺されていないのだから。別の人間が殺されたのだから。
長兄は、遺体の胃に疾患があったと聞いた時に気付いたのだ。遺体は沖塩氏と別人だ、と。氏に病気は無かったのだから。
「兄上。お見事です。ですが……」
「そうだね。言いたい事は分かる。沖塩氏が死んでいないのなら、生きている事になる」
「では、沖塩氏は、今どこにいるのですか?」
「おそらく、横浜港」
「港?」
混乱した。何故港へ向かったのだ?
そういえば次兄と佐藤警部補も横浜へ向かった。
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