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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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その時、階段を上って来る足音が聞こえた。きっと鈴木巡査だ。
次兄は階段の方へ向かって声をかけた。
「速かったじゃねぇか。さっさと検視書を寄越せ」
「お前、随分生意気になったね」
鈴木巡査ではない。しかも馴染み深い声だ。
見ると、長兄が爽やかな笑顔で上り切ったところだった。僕は驚いて飛び上がってしまった。
「検視書ならここにある。まぁ、これは写しだが。やっと出来たね、こいつを待ってたんだ。私は先程帰って来た。さてさて、検視書を見る前に我が優秀な弟達の調査結果を聞こうじゃないか」
僕と次兄は長兄に、今まで分かった事を細かく話した。誰が何を言ったか。その時の様子は。誰がいつ、どこにいたのか。
長兄は一切口を挟まず聞き終えた。
「いくつか確認したい事がある。沖塩氏が最後に目撃されたのは三日前の昼か?」
「はい」
その時、小波津さんが塩谷氏からハンケチを渡されたのである。
「小波津くんが八時、中嶋が九時、大串が十時に帰ったのだな? 凌雲閣は六時に閉まり、他の従業員達は七時に帰る」
「そうです」
「なるほどね」
長兄は深く頷いた。
次兄は階段の方へ向かって声をかけた。
「速かったじゃねぇか。さっさと検視書を寄越せ」
「お前、随分生意気になったね」
鈴木巡査ではない。しかも馴染み深い声だ。
見ると、長兄が爽やかな笑顔で上り切ったところだった。僕は驚いて飛び上がってしまった。
「検視書ならここにある。まぁ、これは写しだが。やっと出来たね、こいつを待ってたんだ。私は先程帰って来た。さてさて、検視書を見る前に我が優秀な弟達の調査結果を聞こうじゃないか」
僕と次兄は長兄に、今まで分かった事を細かく話した。誰が何を言ったか。その時の様子は。誰がいつ、どこにいたのか。
長兄は一切口を挟まず聞き終えた。
「いくつか確認したい事がある。沖塩氏が最後に目撃されたのは三日前の昼か?」
「はい」
その時、小波津さんが塩谷氏からハンケチを渡されたのである。
「小波津くんが八時、中嶋が九時、大串が十時に帰ったのだな? 凌雲閣は六時に閉まり、他の従業員達は七時に帰る」
「そうです」
「なるほどね」
長兄は深く頷いた。
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