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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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次兄は椅子に座り直した。
「悪かった。どこまで話したっけ」
「昨日の夜の出来事についてです」
大串も佇まいを直した。ちゃんと受け答えする気はあるようだ。
次兄に代わって僕が聞いてみた。
「あなたが帰る時、誰か他に人を見ましたか?」
「い、いえ。凌雲閣の中にも、外にも、いませんでした」
「あなたより前に帰った、最後から二番目の人物は、清掃員の中嶋兵次郎で間違いありませんか?」
大串はこくんこくんと頷いた。
「は、はい。彼だと思います」
「思いますとは?」
「な、名前は知らないのです。呼ぶ時は姓で呼びますし」
大串によると、清掃員とすれ違う事はあっても会釈したり挨拶したり手短に世間話をするだけで、互いの顔を覚えてるほど親しくはないとか。持ち場が違うのだから当然だろう。
「二階の食事処で働く小波津さんという少女を知っていますか? 背の高いおかっぱの子です」
大串は、癖なのだろうか、胸に手を当てて考えた。
「そ、そちらも名前を知りませんが、多分、見た事あります」
「僕らはその小波津さんと沖塩伊太夫という政治高官の関係を調べているのですが、何か知りませんか?」
今のところ、沖塩氏が小波津さんにハンケチを渡した、という事しか分かってない。事実かどうかも曖昧だ。
「悪かった。どこまで話したっけ」
「昨日の夜の出来事についてです」
大串も佇まいを直した。ちゃんと受け答えする気はあるようだ。
次兄に代わって僕が聞いてみた。
「あなたが帰る時、誰か他に人を見ましたか?」
「い、いえ。凌雲閣の中にも、外にも、いませんでした」
「あなたより前に帰った、最後から二番目の人物は、清掃員の中嶋兵次郎で間違いありませんか?」
大串はこくんこくんと頷いた。
「は、はい。彼だと思います」
「思いますとは?」
「な、名前は知らないのです。呼ぶ時は姓で呼びますし」
大串によると、清掃員とすれ違う事はあっても会釈したり挨拶したり手短に世間話をするだけで、互いの顔を覚えてるほど親しくはないとか。持ち場が違うのだから当然だろう。
「二階の食事処で働く小波津さんという少女を知っていますか? 背の高いおかっぱの子です」
大串は、癖なのだろうか、胸に手を当てて考えた。
「そ、そちらも名前を知りませんが、多分、見た事あります」
「僕らはその小波津さんと沖塩伊太夫という政治高官の関係を調べているのですが、何か知りませんか?」
今のところ、沖塩氏が小波津さんにハンケチを渡した、という事しか分かってない。事実かどうかも曖昧だ。
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